コラム

  • 2021.05.07
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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が活況です。2018年に経済産業省がDXレポートを発表した際には「2025年の崖」がバズワードとなり、多くの方が「DX」「2025年の崖」のワードを耳にしたことでしょう。一方で2020年に発表されたDXレポート2では、決して多くの企業がDXに取り組んだわけではないとの報告がなされました。

メディアで耳にしない日のないDXですが、その実態は約95%の企業はDXに未着手であるか、散発的な実施に留まっているとされ衝撃を与えています。

DXレポート2では以下のような反省があります。

「先般のDX レポートでは『DX=レガシーシステム刷新』等、本質的ではない解釈を生んでしまい、また『現時点で競争優位性が確保できていればこれ以上のDX は不要である』という受け止めが広がったことも否定できない」(DXレポート2)

本来、新型コロナウイルス禍は言葉を選ばずに言及すると、DX着手・実行の大きな機会と言えます。DXレポート2では、「2025の崖」を引きあいに出しながら「2025 年を待つ猶予はなくなった」と述べています。

なぜ、このようなコロナ禍の状況下においても日本のDXは加速できないのでしょうか。

DXの定義

経済産業省による定義

日本のDXの現状を知るためにも、改めてDXの定義から振り返ってみる必要があります。

2018年12月に経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン) Ver. 1.0」によるとDXの定義は以下の通りです。

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”

さらに、IDC JAPANの定義をみてみましょう。

“企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立することを指す”

ご覧いただいた通り、2つの定義には共通点があります。

・社会や生活や市場の変化と、それに伴う顧客の変化に対応すること。
・そのためにデジタルを活用した事業や組織を変革させて競争優位を確立すること。

これこそがDXを実現する難しさであると言えるかもしれません。社会や生活や市場の変化を捉える必要があり、かつその変化のなかにいる顧客の変化を見出せなければならないのです。
変化の中心にはデジタルがあることは疑う余地がありません。デジタルテクノロジーは日々多く生まれてきています。事業において、どのように有益なデジタルテクノロジーを発見するのか、どのように選択するのか、どのように運用に落とし込んでいくのかは、自社の理解、事業の理解、そして広い視野とデジタルリテラシーをもつ人材が必要です。

既存事業の進化だけを目的として遂行するだけでは、近視眼的になってしまいDXは後回しになってしまいます。DXを実現するためには、現状を認識して競争優位を確立するための企業戦略が必要です。つまり、DXは企業変革そのものと言えます。

「DX」と高らかに宣言したところで、企業変革を伴わなければ実現することができないのです。

デジタイゼーションとデジタライゼーション

DXの定義は見てきた通りですが、みなさんもご承知の通りDXの定義とは異なる解釈をしている例は多くあります。情報や文書などをアナログからデジタルに変換することをDXと称している例です。例えば業務プロセスの一部をRPAに置きかえすることや、ハンコから電子契約に変更することもこちらに該当します。
これは上述の定義から大きく逸脱していることがわかります。なぜならこれらのことでは通常、競争優位が確立されるわけではないからです。

ここでDXレポート2による定義をみてみます。DXにおいては、デジタイゼーションやデジタライゼーションもセットで言及されていますが、その言葉の違いについて説明しています。

DXの定義の図

DXレポート2(経済産業省ホームページより)

このようにデジタイゼーションやデジタライゼーションとは異なり、デジタルを活用した全社的なビジネスの変革であることがDXなのです。

デジタイゼーションやデジタライゼーションは、DXとは言えませんがDX遂行のためには重要です。そもそも組織がデジタルに対応できないことには、デジタルを活用してビジネス変革を行うDXは実現できないからです。

DXの第一歩としては、まずはデジタルの可能性をしっかりと理解することが必要です。そのうえで、デジタイゼーションやデジタライゼーションを目的とするのではなく、DXを目的として活動することが重要です。そうではないと、単なる業務の最適化だけに終始してしまい、本来の目的達成をすることはできなくなるからです。

DXが注目される理由・背景

内部の脅威:2025年の崖

2025年の崖のイメージ

DXが一気に注目を浴びた理由にDXレポートの「2025年の崖」という非常にキャッチーなワードがありました。

「2025年の崖」とは、全社的なシステム活用もデータ活用もできない既存システムが、過剰なカスタマイズなどによる複雑化や老朽化、ブラックボックス化されたことにより、かつITシステムの運用・保守に貴重な資源であるお金や人材、時間が多くとられ、さらには運用・保守の担い手の引退などにより、業務基盤そのものの維持・継承が困難になるという問題です。このようなリスクに伴う経済損失は2025年以降で最大12兆円/年にのぼる可能性があるとしています。

つまり、このままでは貴重な資源が無駄に費やされるためレガシーシステムを刷新して、「2025年の崖」を克服することが必要だと述べています。
しかし、これはDX実現のための準備でしかありません。繰り返しますが、レガシーシステムの刷新はDXではありません。

外部の脅威:ゲームチェンジャーの登場

ゲームチェンジャーの登場のイメージ

DX=レガシーシステムの刷新 ではないことがご理解いただけたと思います。それでは、そもそもの目的としてなぜDXが必要なのでしょうか。

現代はデジタルテクノロジーを活用して異業種やスタートアップなどからゲームチェンジャーが登場して既存事業ドメインを駆逐していく構図が多く見られます。
DXでよく事例として見る機会のあるUberやAirbnbはまさに好例です。Uberはタクシー事業者ではありませんが、タクシー業界の創造的破壊を行いました。Airbnbは宿泊事業の創造的破壊を行いました。両社共にデジタルテクノロジーを活用したゲームチェンジャーと言えます。

レガシーシステムをもたずデジタルテクノロジーを使いこなすフットワークの軽いゲームチェンジャーと直接市場競合するケースは今後ますます増えていくと予想されます。

ゲームチェンジャーに敗北することなく競争優位を構築していくためにも、デジタルテクノロジーを活用するための環境が必要です。しかし、既存のレガシーシステムに依存して、かつ優秀なエンジニアがレガシーシステムの保守や更新に携わり、多くの資源を投入している状況では、最新技術を伴ってやってくるゲームチェンジャーと戦うことすらできないのかもしれません。

DXどころではなく、そもそもの現状を問題視しているのが「2025年の崖」です。コンペティターや社会・顧客の変化の「外部の脅威」と、そもそも企業がレガシーシステムに貴重な資源を囚われている「内部の脅威」が同時に起こっていることに対して警鐘を鳴らしたのです。

グローバル化され、デジタルテクノロジーが中心とされた経済においては、もはやゲームのルールは変わっています。GAFAMや中国などの大企業は膨大な資金力と最先端のテクノロジーを活用してさまざまな事業を起こしつづけています。このような状況下では、DXはもはや自社だけの課題ではありません。DXは国策であると言えます。

外部の脅威:顧客の変化

顧客の変化のイメージ

さて、見てきた通りDXはレガシーシステムの刷新でもなければ、業務効率化でもなく、コスト削減でもありません。企業戦略として競争優位を確立するものです。そのうえでの重要な視点が先述のDXの定義にも触れられている「顧客エクスペリエンスの変革」であり「顧客起点の価値創出」です。

P.F.ドラッカーは名著「現代の経営」でこのように言っています。
“事業にとって最重要なのは、顧客にとっての価値である”

競争優位を確立するためには顧客体験(UX:ユーザーエクスエペリンス)における価値を創出しなければなりません。デジタルテクノロジーを活用する理由は、顧客体験を変革して顧客にとっての価値を創出することであるべきなのです。先のUberもAirbnbも顧客にとっての価値を創出したからこそ創造的破壊者であるのです。

近年においてUXが改めて注目されている理由はまさにここにあります。デジタルは顧客接点を変革しています。顧客は続々と生まれてくるさまざまなデバイス(パソコン、スマートフォン、ウェアラブルデバイスなど)を駆使して、フィジカル/サイバーに関係なくアクセスしています。

企業は顧客の変化に対応していかなければなりません。UXは顧客関係性を築くための重要な要素です。企業は市場とともに変化していく顧客を理解して、バリューチェーンすべてにおいて顧客とのインタラクションを通して、価値を創出する必要があります。
つまりDXとUXは密接な関係にあります。フィジカル/サイバーに関係なく顧客に一貫した良質の体験を得てもらうためにも顧客の変化に対応したUXはDX実現に不可欠な要素です。

DXを支えるテクノロジー

DXを支えるテクノロジーイメージ

ここからDXを支えるテクノロジーについてみていきます。ここで取り上げるものはDXにおけるテクノロジーのすべてではありませんが、重要な示唆を与える目的で厳選しています。

IoT

インターネットを介して「モノ」と「モノ」がつながることでさまざまな価値を生み出しています。IoTは日本が目指すべき未来として提唱されているSociety5.0の中核に据えられています。

Society5.0とは「サイバー空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」と定義されており、フィジカル空間からセンサーとIoTを通じてあらゆる情報を取得することが出発点です。

世界ではドイツが国策として「インダストリー4.0(第四次産業革命)」と称して、製造業においてIoTを活用して既存のバリューチェーンの変革や新たなビジネスモデルの構築をもたらすことを目的としています。

AI(人工知能)

機械学習やディープラーニングなどAIは近年で飛躍的に進化を遂げています。日々多くのデータが生まれている現代において、人の手でデータをすべて認識して分析することは最早不可能です。AIはすでに我々の日常を支えています。「予測」「画像認識」「音声認識」「自然言語処理」「ビッグデータ分析」などの技術はAIが進化したからこそ可能になっていると言えます。翻訳や自動運転やレコメンドなどすでに馴染みがあります。

AIが進化したことによりIoTから大量のデータを取得し、それを解析してシミュレーションを行い人間への提案を行うことができます。大量のデータとAIの組み合わせで生み出されることにより、経営の意思決定を支える技術であるとも言えます。

一方でAIは人の生活を支える反面、倫理の問題も抱えています。AIからの提案によるバイアスや自動運転の事故の問題など今後ますますAIによる問題は増えていくことが予想されます。

5G

第5世代移動通信システム「5G」がはじまっています。5Gの特徴は「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」の3点が挙げられます。

5Gの商用化はすでにはじまっていますが、その真価は先のIoTから得られる膨大なデータを収集してリアルタイムに活用できることにあります。
自動運転や医療、監視カメラ、スマート工場など、さまざまなものが繋がりリアルタイムに処理できることで、さまざまな産業への応用が期待されています。

デジタルツイン

IoTやAI、5Gを活用することでデジタルツインを実現することができます。デジタルツインとは、その名の通り現実に置かれている設備・機器などをデジタル上で再現する技術です。

例えば、物理的な工場をデジタル上で構築できることにより、作業状況や生産量、設備の保守など、さまざまな情報がリアルタイムで理解ができ、それを現場にフィードバックすることで多くのメリットが享受されます。
物理的な工場ではなかなか行えないような試みも、デジタル上でシミュレーションが行えることで、経営の重要な意思決定が可能となります。

DXの取り組み状況

これまで見てきた通り、企業が直面しているのは外部と内部の脅威の両面です。そして新しいデジタルテクノロジーが生まれてきています。これは担当者レベルの話でもなく事業レベルの話でもありません。これは企業戦略として取り入れなければならない課題です。

DXレポート2ではIPAの自己診断結果を取り上げて、「自己診断結果等から明らかになった実態は、DX の推進、あるいは、デジタル化への取組は既存ビジネスの範疇で行っているということであり、経営の変革という本質を捉え切れていないということが言える」と述べています。

結局、DXレポートの警鐘による危機感は生まれていないと言えます。企業変革である以上、企業として取り組まなければならないDXは事業戦略として捉えられている可能性が高く、それはトップが遂行すべき事項であるにも関わらず実行されていないのです。企業はトップがDXの本質を正しく理解して、内部外部の脅威に対応してデジタルテクノロジーを積極的に取り入れてDXを実現していかなければなりません。

DX推進のためのガイドライン

それでは、どのようにDXを推進していけばよいのでしょうか。ここからは具体的なDX推進について、経済産業省が策定している「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」を参照して考察していきます。

DXガイドラインの図

DXガイドライン(経済産業省ホームページより)

ガイドラインには「DX推進のための経営のあり方、仕組み」と「DXを実現するうえで基盤となるITシステムの構築」と大きく二つにわかれています。

DX推進のための経営のあり方、仕組み

経営戦略・ビジョンの提示

まず重要なプロセスとして経営戦略・ビジョンの提示があります。戦略やビジョンなき経営は羅針盤のない航海のようなものです。ビジョンや戦略は企業の存在意義をもたらすものであり、DX実現のための関係者の明確な共通目的となります。

「DXをやりたい」「AIを使いたい」「PoCをやりたい」といった漠然とした手段の話をするのではなく、本来達成すべき目的を明確にしなければ何も生まれることなく、次に繋がることもありません。

例えば、目的なくPoCを行ってしまい、撤退基準はおろか進行基準すらないため市場投入することもできず、かつ投資をサンクコストとして割り切ることもできずお金を垂れ流しつづけるなど、DXにまつわる失敗事例は多くあります。

このような失敗を避けるためにも、もっとも重要なことは経営戦略としてロードマップを描くことです。なぜDXが必要なのか、企業はDXを遂行することで顧客にとってどのような価値創造を行い、競争優位を確立するのか。戦略を描きロードマップに落としこむことが重要です。

経営トップのコミットメント

DXは企業戦略であることは先に述べた通りです。経営トップが変革にコミットメントをもって取り組まなければ、DXは実現できません。

例えば、新しくDX部署を立ちあげて、担当者任せや事業部任せであってはなりません。DX実現においては、必要な企業資源にアクセスできなければなりません。また、新しい取り組みであるが故に抵抗勢力が出やすいのも事実です。DX遂行のためには経営トップが深く関与して、そのような壁を取り除き、DX遂行を推進していかなければなりません。

DX推進のための体制整備

経営トップがどれだけ高尚なことを言ったところで体制が整っていなければDX推進はできません。ガイドラインでは、「マインドセット」「推進・サポート体制」「人材」の3点に言及しています。

マインドセット
マインドセットは挑戦できる環境があるか、維持できるかということです。例えば、既存事業と同じ評価制度をとっている場合、DX推進にはフィットしない可能性があります。まったく新しい分野への挑戦と既存事業の成長への取り組みは、その評価においては異なる仕組みが必要だからです。0から1を生む業務と、1を10にする業務ではまったく異なるアプローチが必要であることは想像に難くありません。

また、失敗を許容する仕組みも同時に必要です。新しい分野への挑戦を促すマインドセットを醸成するためにも、失敗を許容して、その失敗から多くを得て次へ繋げられるようにしなければなりません。

例えば、中国では失敗を許容する文化であるのはよく言われています。スピーディーに実行・検証して、また実行を行っていくことで、中国は驚異的なスピードでDXを実現してきたのは周知の通りです。

DXレポート2でも「関係者間での協働を促すためにも、アジャイルマインド(俊敏に適応しつづける精神)や、心理的安全性を確保すること(失敗を恐れない・失敗を減点としないマインドを大切にする雰囲気づくり)が求められる」としています。

推進・サポート体制
DXのような新規事業は孤立しやすいことが挙げられます。チャールズ・オライリーの「両利きの経営」でも語られる通り、トップの強力なコミットメントのもとで、DX推進を実行する部隊が必要な資源にアクセスできるようにし、適切なサポート体制を得られるようにすることが必要です。

人材
人材の育成・確保はDX推進において重要な要素ですが簡単なことではありません。先述している通り、社会環境を知り、事業を知り、戦略を理解して、さらにデジタルリテラシーが高い必要があります。しかもIT人材は不足している状況です。

DXレポート2ではジョブ型雇用への移行や社外も含めた多様な人材とのコラボレーションが重要だとしています。また、「常に新しい技術に敏感になり、学び続けるマインドセットを持つことができるよう、専門性を評価する仕組みや、リカレント学習の仕組みを導入すべきである。また、副業・兼業を行いやすくし、人材流動や、社員が多様な価値観と触れる環境を整えることも重要である」としています。

投資等の意思決定のあり方

DX推進の投資は企業戦略として実行しなければなりません。DX推進をコストと捉えていては重要な判断はできません。DXは投資です。担当者任せの投資では、小さな投資でとどまる可能性があります。変革のために思い切った投資をするためにも企業戦略が必要なのです。

DXにより実現すべきもの:スピーディーな変化への対応力

環境の変化の速い現代の経営ではスピードが重要なのは周知の通りです。VUCAと言われる通り、社会環境やグローバルでの競争環境を敏感に察知して、素早く対応していかなければなりません。いま取り組んでいるデジタル化は実は半年後には陳腐化している可能性は十分にありえます。

現代の経営は、サンクコストにとらわれることなく、スピーディーに意思決定をして未来を切り拓く勇気が必要です。DXレポート2でも「常に変化する顧客・社会の課題をとらえ、『素早く』変革『し続ける』能力を身に付けることが重要である」と述べています。

DXを実現する上で基盤となるITシステム構築

体制・仕組み

ここからIT基盤の構築の必要性に言及しています。つまり、DX遂行のための全社横断のITシステムがあり、それが各事業部門でデータやデジタル技術を活用できるか基盤があるかということです。

DXレポート2では、CIO (Chief Information Officer)やCDXO(Chief DX Officer)/CDO Chief Digital Officer)の役割・権限について大きく言及しています。役割・権限を明確にして、トップダウンでDX推進のために適切な資源配置や仕組を整える必要があります。

各事業部門で導入するITシステムが既存システムや全社的なシステムと連携されて個別最適にならずに、全社最適になるようなガバナンスを確立するためにも明確な役割・権限が必要です。同じようなシステムが別事業部ごとにあると言う話はよく聞く話です。組織の壁の問題でもあり、統制の問題でもあります。このような問題が起きないような体制を構築する必要があります。

実行プロセス

バリューチェーンにおける自社の強み弱みを明らかにして、DX遂行するために何に投資をして何に投資をしないかを判断することが必要です。全社横断でシステムを活用して、データ活用やシステム活用が行えて全社最適を行えるかが重要な要素です。

その際、自社資産とするためにすべて自前で作るのではなく、自社の事業ドメインとして重要ではない領域は、クラウドの活用や共通プラットフォームを活用することも重要な選択です。アセットライト化することで事業のスピードを高めることができます。

海外では、パッケージ製品をそのまま使うことの方が多く、カスタマイズすることはあまりありません。なぜならば、システムに業務をあわせることでスピーディーに業務に投入することができるからです。変化の速い市場環境においてはアセットライトのほうが有利です。

成功企業の事例・特徴

成功企業の事例・特徴のイメージ

これまでDXの定義から具体的な推進について見てきました。最後にDX成功企業として3つを挙げていきます。
一つは都市全体のDXを行っているシンガポール。そして、2020年8月に経済産業省と東京証券取引所が共同で発表した「DX銘柄2020」においてグランプリを受賞したコマツとトラスコ中山について紹介します。

バーチャル・シンガポール

バーチャル・シンガポールはその名の通り、シンガポールをそのまま3Dデジタル空間で再現するものです。デジタルテクノロジーを活用して市民の生活を豊かにすることが目的です。公的機関がもつ街の情報(地図、ビルなど)や気象情報、歩道や移動手段のセンサーやスマートフォンなどから情報を取得することで、人や車の流れもデジタル空間で再現しています。

つまり都市全体のデジタルツインというわけです。バーチャル・シンガポール上でのシミュレーションをすることで、都市の意思決定をしやすくできるということです。

すべての公的機関が同じ情報を閲覧できるため、例えばバラバラに公共工事を行うことなく組織的に効率的な工事を行うことができます。そのほか都市計画や避難経路、太陽エネルギー生産の分析などさまざまな意思決定に活用されるとしています。

コマツ

DXが騒がれる前からDXを推進している建設機械・鉱山機械の大手メーカーのコマツ(株式会社小松製作所)は、日本のDXの代表と言えると思います。有名な「KOMTRAX」は日本の製造業のデジタル化で先鞭をつけてきたが、部分的なデジタル化だけでは施工全体のプロセスの最適化はできないとして、2015年2月から「スマートコンストラクション」を開始しました。KOMTRAXが部分的な「縦のデジタル化」に対して、施工の全工程をデジタルでつなぐ「横のデジタル化」を実現したものです。

ドローンやセンサーなどを活用して建設現場の施工プロセスすべてをデジタル上で可視化することにより、生産性を向上して建設業界の人手不足を解消するだけでなく、安全性の向上もはかるイノベーションです。

コマツはご存知の通り建設機械・車両メーカーでしたが、いまや建設業のプラットフォーマーと言えます。

トラスコ中山

トラスコ中山は機械工具・工場用消耗品を中心とした卸売企業です。顧客にメリットを生まない「在庫回転率」ではなく、ご注文の〇%を在庫から出荷し、即納でお届けできたかを示す「在庫ヒット率」を経営の最重要指標におき、レガシーシステムの保守が切れるタイミングで2020年1月に基幹システムを刷新してITやAIを活用したサプライチェーン全体の利便性を高めたといいます。

さらには、究極の即納を目指して開発された「MROストッカー」は、デジタルテクノロジーと顧客の購買データなどの分析を行って、生産現場に在庫を置くリードタイム0の「置き工具」のビジネスモデルを開始しています。

こちらの事例も単なる卸販売からDXを実現したサービス業としてサプライチェーン全体を変革している事例です。

まとめ

これまでDXについてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
成功事例からもDXが企業戦略であり経営が主体となって実行しなければならないことがご理解いただけたと思います。

ビジネスをとりまく環境は、ますます予測できなくなっていきます。我々はレガシーシステムを刷新して、DXを実行していかなければなりません。大切なことは未来を正確に予測することではなく、変化する未来や顧客に対応していくことです。
そのためにも、経営トップが強力なリーダーシップを発揮してDXを成功させていかなければなりません。

この記事がみなさまに少しでもお役立てできれば望外の喜びです。
ともにDXを成功させていきましょう。



参考資料

経済産業省
「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver. 1.0」
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004.html

経済産業省 デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会
「デジタルトランスフォーメーション レポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」
※本文では「DXレポート」と表記
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html

経済産業省 デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会
「DX(デジタルトランスフォーメーション) レポート2(中間取りまとめ)」
※本文では「DXレポート2」と表記
https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004.html

内閣府
「Society 5.0「科学技術イノベーションが拓く新たな社会」説明資料」
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/

経済産業省、株式会社東京証券取引所
「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/keiei_meigara/report2020.pdf

首相官邸 政策会議 統合イノベーション戦略推進会議(第4回)
内閣府特命担当大臣(科学技術政策)平井卓也
「AI戦略(有識者提案)及び人間中心のAI社会原則(案)について」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tougou-innovation/dai4/siryo1-1.pdf

IDC Japan
https://www.idc.com/jp/research/explain-word

P.F.ドラッカー
「現代の経営」(ダイヤモンド社)
https://www.diamond.co.jp/book/9784478307007.html

チャールズ・A・オライリー/マイケル・L・タッシュマン
「両利きの経営」(東洋経済新報社)
https://str.toyokeizai.net/books/9784492534083/

IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
「DX推進指標 自己診断結果 分析レポート」
https://www.ipa.go.jp/ikc/reports/20200528.html

Singapore Government
「Virtual Singapore」
https://www.nrf.gov.sg/programmes/virtual-singapore

株式会社小松製作所
https://home.komatsu/jp/

トラスコ中山株式会社
http://www.trusco.co.jp/

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