AIエージェントとは?仕組みや種類、活用事例などをわかりやすく解説

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AIエージェントとは?仕組みや種類、活用事例などをわかりやすく解説
株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

Introduction

近年、AIの技術は飛躍的に向上し、日常生活や企業活動になくてはならないものとなりました。そんななか、AIエージェントと呼ばれるさらに高度なAIシステムが登場したことをご存じでしょうか?

この記事では、AIエージェントについて仕組みや種類、活用事例などをわかりやすく解説します。

目次

AIエージェントとは

AIエージェントとは

従来のAIは、ユーザーがAIに指示を与えて得られた応答を活用するという使い方が主流でした。これに対し、AIエージェントは単に情報を生成するだけでなく、自らが目標達成に向かって計画を行い行動することが可能です。

特定のタスクを自律的に実行するために設計されたAIシステムのこと

AIエージェントとは、目標の達成に向けて自律的に計画や情報収集、分析、意思決定などを行うAIシステムのことです。

ChatGPTやGeminiなどの生成AIは、ユーザーからの指示に対して出力を返す、与えられた情報をもとに画像を生成するなど、ユーザーが求める結果やコンテンツを生成します。一方、AIエージェントは設定した目標を達成するために、計画や情報収集、分析、意思決定などを自律的に行うことが可能です。これにより、従来のAIでは実現がむずかしかった複雑なタスクを実行できるようになりました。

たとえば、「新商品を市場投入する際の戦略の策定」という目標をAIエージェントに与えたとします。するとAIエージェントは、外部データセットから顧客情報や市場動向などを取得して分析し、状況にマッチした最適な戦略を提案してくれます。

AIエージェントをビジネスに活用すれば、業務の効率化や意思決定スピードの向上、人件費や教育コストの削減などにつながるでしょう。
AIエージェントを取り巻く市場は今後、急速な拡大が見込まれています。

AIエージェントの基本的な仕組み

AIエージェントは、ユーザーから目標が与えられると計画、推論、学習という3つのステップで目標達成のために自律的に行動します。
3つのステップの内容は以下のとおりです。

・ステップ1:計画
与えられた目標を達成するためのタスクを洗い出し、必要に応じてタスクを分解していきます。そして、効率よく目標を達成するためにどのようにタスクを実行するかを計画します。

たとえば、「新商品のマーケティング戦略を考えてほしい」という目標が与えられた場合、「過去5年分の市場調査」「顧客のニーズ調査」「競合商品の情報収集」などの必要なタスクを洗い出します。

・ステップ2:推論
洗い出されたタスクを遂行するために必要なツールはなにか、どのように行動すれば効率がよいかなどを推論します。必要な情報を収集するためには、外部データセットの活用やWeb検索などの方法がありますが、そのなかから最適な方法を選び実行します。

・ステップ3:学習
環境やユーザーからのフィードバックを受けて学習し、推論の精度やパフォーマンスを向上させます。

AIエージェントと生成AIの違い

AIエージェントと生成AIはどちらもAI技術を用いたシステムですが、両者には大きな違いがあります。生成AIは過去の学習データなどをもとに新しいコンテンツを生み出すことが可能です。一方、AIエージェントはユーザーから与えられた目標を達成するために自律的に行動します。

両者の違いを以下の表でご説明します。

 

 

AIエージェント

生成AI

機能

外部からの情報収集、分析、計画、推論、意思決定が可能

状況に応じた判断や行動を自律的に行う

ユーザーからの入力に対して結果を出力する

与えられた情報から画像や動画などの新しいコンテンツを生成する

判断の基準

ユーザーや環境からのフィードバック、収集したデータをもとに判断する

過去に学習したデータ、パターンをもとに判断する

実現できること

高度で複雑なタスク

単純なタスク

 

AIエージェントの種類

AIエージェントにはいくつかの種類があり、それぞれ機能や目的が異なります。ここでは、それぞれの特徴についてご紹介します。

反応型エージェント

事前に定義されたルールに基づいて行動する、シンプルな構造をもつAIエージェントです。特定の入力内容に応答するチャットボット、指定された条件どおりに温度調節するヒーターなどが該当します。ただし、定義されていない状況には対応できません。

モデルベース型エージェント

現在の状態を内部モデルとして保持しておき、状況に応じてモデルを更新し適切な行動を行うAIエージェントです。部屋にある家具や壁などの障害物を感知して掃除するロボット掃除機などが該当します。

目標ベース型エージェント

目標達成のために最適な行動を行うAIエージェントです。目的地までの最短ルートを割り出すナビゲーションシステムなどがあります。

効用ベース型エージェント

単に目標を達成するだけでなく、効果の最大化を重視します。金融取引におけるAIトレーダーなどがこれに該当し、複数の選択肢から最適な判断を行うことが可能です。

学習型エージェント

経験を積むことで学習し、自己改善が可能なエージェントです。たとえば、カスタマーサポートで問い合わせに対応するAIエージェントは、過去のデータを学習してより適切に回答できるように進化していきます。

AIエージェント導入のメリット

企業や組織がAIエージェントを導入すると、どのようなメリットを得られるのでしょうか。

業務効率化と自動化

AIエージェントの導入で業務が自動化されることにより、時間やコストの削減が可能となり、結果として業務効率が向上します。定型的な作業や繰り返し作業を自動化すれば人員をより価値の高いクリエイティブな業務に集中させることが可能となり、企業競争力の強化にもつながるでしょう。

顧客対応の24時間化・品質向上

AIエージェントを活用すれば、顧客の行動履歴や購入履歴などのデータをもとに顧客それぞれに適したサービスを提供できます。その結果、人間の労働時間の制約に関係なく顧客対応の24時間化も可能です。また、詳細なデータをもとに顧客対応を行うことで、顧客サービスの品質向上にもつながります。

意思決定のスピード・精度向上

AIエージェントは組織全体のデータをリアルタイムに活用、分析して判断、実行まで行うことが可能なため、企業内の意思決定のスピードアップにつながります。また、過去の判断結果を分析することで、精度を向上させることも可能です。

データに基づく戦略的判断の支援

AIエージェントは大量のデータを分析し必要な情報を抽出できます。この機能を活用すれば、企業は市場の動向、顧客のニーズなどを適切に把握して戦略的判断を行うことが可能です。

人件費・教育コストの削減

業務の効率化や顧客対応の自動化などが実現できれば、人件費や教育コストの削減にもつながります。

AIエージェントが求められる背景と課題

AIエージェントが求められる背景と課題

自律的に行動するAIエージェントの概念の始まりは1950年代。AI研究初期から存在し、Russell & Norvigの教科書(1995年初版)ですでに体系化されていました。

2023年頃に大規模言語モデル(LLM)の進化が進み、AutoGPTやBabyAGIなどのLLMベースAIエージェントの登場によって再注目され、2025年に実用化が本格的に進められるようになりました。この2025年は「AIエージェント元年」とも呼ばれ、企業での本格的な導入が加速します。

その背景には、大規模言語モデル(LLM)が飛躍的に進化を遂げたことがあります。また、労働力不足の深刻化による業務効率化のニーズの高まりや、企業競争力強化のためのデータ活用が求められていることも背景にあるでしょう。

しかし、AIエージェントにはさまざまな課題も存在します。技術的な課題としては、膨大なデータを扱うための高度な処理能力や精度の向上が求められていることがあげられます。倫理的な課題としては、大量のデータを扱うにあたっての個人情報保護の問題、不正アクセスによる機密情報漏えいのリスクなどがあります。導入コストがかかること、AIエージェント実用化に必要な技術や知識をもつ技術者が不足していることなども大きな課題です。

冒頭でも紹介の通り、AIエージェントを取り巻く市場は今後、急速な拡大が見込まれています。
一方で日経BPの2025年7月の調査によると、日本企業のAIエージェント導入率は29.7%と決して高くはない数字となっています。
今後AIエージェントを活用していくためには、これらの課題について検討が必要になるでしょう。

企業におけるAIエージェント活用事例

ここでは企業がどのようにAIエージェントを活用しているのかについて、具体的にご紹介します。

カスタマーサポート・FAQ自動応答

AIエージェントを搭載したチャットボットや音声アシスタントを活用することで、問い合わせの一時対応を自動化でき、オペレーターの負担を軽減することが可能です。24時間対応なども可能になり、顧客満足度の向上も期待できます。

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営業支援AIアシスタント

膨大な顧客データの分析や管理を営業支援AIアシスタントに任せることで、より効果的で効率的な営業活動を展開できます。AIの顧客データ分析を活用すれば最適な営業活動ができ、契約手続きの自動化で作業ミスの削減も可能です。

バックオフィス業務の自動処理

バックオフィス業務におけるスケジュール管理、データ入力などの定型作業や書類のチェック作業を自動処理することも可能です。これにより、どの企業でも必ず発生するバックオフィス業務の大幅な効率化を実現できるでしょう。

サプライチェーン・物流最適化

AIエージェントによるリアルタイムな需要予測を活用すれば、サプライチェーンや物流の最適化も可能です。これまでは人が経験や個々の知識で判断していた部分ですが、AIエージェントを導入することで、需要予測の精度向上や均一化が期待できます。

関連サービスについて

AIエージェントの導入が特に効果的な業種

AIエージェントは幅広い業種に役立ちますが、特に導入が効果的な業種についてご説明します。

小売・EC業界

小売業界における在庫・需要予測、カスタマー対応、ECサイトのレコメンド機能などにAIエージェントは役立ちます。たとえば販売データや顧客データ、天候データなどから在庫や需要を予測する、それぞれの顧客にマッチしたおすすめ商品をレコメンドするなどの高度な機能の活用が期待できます。

製造業・物流業界

製造業や物流業界では設備の稼働監視・異常検知・工程の最適化、サプライチェーン最適化などに活用できます。自動化によるミスや事故の防止、作業精度の向上などが期待できるでしょう。

金融・保険業界

金融・保険業界ではAIエージェントの高度な機能が与信審査や顧客サポート、リスク分析などに役立ちます。

医療・ヘルスケア業界

医療・ヘルスケア業界では、AIエージェントによる遠隔診断、患者の問診サポート、予約管理、診療記録の入力などに活用できます。

その他業界

上記の業界以外でも、AIエージェントによるカスタマーサポートは幅広い業界で活用が可能です。また、不動産・建設業界、教育・人材業界、コンサルティング業界などでも、データを活用したAIエージェントにより自動化や効率化が進むことが期待できます。

まとめ

AIエージェントとは、自律的に判断し行動することが可能な新しいAIシステムです。従来のAIはユーザーからの指示に対して応答を行うことが主流でしたが、AIエージェントは自律的に計画を立てて最適な行動を選択し、実行することが可能です。

*AIエージェントの歴史は長く、始まりとなる概念の誕生は1950年代でした。そこから1980-1990年代にはエキスパートシステムとして実用化が開始され、2000年代にはWebエージェント、推薦システムの普及が始まります。

2010年代にはSiri、Alexaなどの音声アシスタント登場により一般にも広く普及が始まり、2023年にはLLMベースの自律型エージェント(AutoGPTなど)が登場します。そして2025年、企業での本格採用加速が始まり、AIエージェント元年となりました。

企業がAIエージェントを活用すれば、業務の効率化や自動化、顧客満足度の向上、人件費の削減などにつながるでしょう。

SHIFTでは、AIシステムに特化した品質保証フレームワークを導入し、安全性の高いシステム開発を支援します。AIによる開発の品質向上にお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。
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【*年表に関する参考文献】
・Russell & Norvig “Artificial Intelligence: A Modern Approach” (1995初版)…エージェント分類を確立
・IEEE Access 2025年論文「Agentic AI: Autonomous Intelligence for Complex Goals」
・arXiv 2025年「Distinguishing Autonomous AI Agents from Collaborative Agentic Systems」

林 栄一

監修

株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
林 栄一

組織活性化や人材開発において豊富な経験を持つ専門家として、人材と組織開発のリーダーを務め、その後、生成AIを中心にスキルを再構築し、現在新人研修プログラムや生成AI講座開発を担当している。2008年にスクラムマスター資格を取得し、コミュニティーを通じてアジャイルの普及に貢献。勉強会やカンファレンス、最近では生成AI関連のイベントに多数登壇している。チームワークの価値を重んじ、社会にチームでの喜びを広める使命をもつ。

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この記事を書いた人

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著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

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