Introduction
近年、生成AIや自動化技術の発展により、AIは一部のIT企業だけでなく、製造業、医療、金融、物流、販売、教育など、あらゆる業界で活用が進んでいます。その中核を担う存在がAIエンジニアです。
しかし、そもそもAIエンジニアとはどのような職業なのでしょうか。そしてAIエンジニアになるためにはどのようなスキルが必要なのでしょうか。
この記事では、AIエンジニアの仕事内容や必要なスキル、将来性などについて解説します。
目次
AIエンジニアとは

ここでは、AIエンジニアとはどのような職業なのかについてご説明します。
AI技術の開発、実装、運用を専門とするエンジニア
AIエンジニアとは、AI技術の「開発・実装・運用」を業務とし、これらを一貫して担うことが多いエンジニアです。単にAIシステムやアプリを開発するだけではなく、実際にビジネスの現場で使えるかたちに落とし込み、継続的に改善していく役割を担っています。
具体的には、次のような業務を行います。
・ビジネス課題を整理し、「どこにAIを使うか」を検討する
・AIに学習させるためのデータを整える
・機械学習モデルや生成AIモデルを開発する
・開発したAIを社内システムやアプリに組み込む
・導入後も、精度の改善やトラブル対応を行う
従来のシステムエンジニアは、あらかじめ決められたルールどおりに動くシステムの開発・運用が主な役割でした。一方のAIエンジニアは、データから学び、予測し、判断する「賢いシステム」そのものをつくる点が、従来のエンジニアと大きく異なっています。
たとえば、「売上を予測する」「不正を検知する」「画像から異常を見つける」といった、人の判断を支援・代替する仕組みを構築します。また、「つくって終わり」ではなく、「使われ続けて成果を出すAI」を育てていくという役割も担っています。
企業にとってAIエンジニアは、AIを活用して企業の利益に結びつけるために欠かせない人材といえるでしょう。
▽あわせて読みたい▽
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AIエンジニアの役割
AIエンジニアが受けもつ3つの主な役割についてご説明します。
1つ目は、業務や事業の課題をAIで解決する役割です。たとえば、「人手不足」「属人化」「判断のばらつき」「予測の難しさ」などの課題に対し、AIを活用した仕組みを設計・開発します。経営レベルの課題と現場の業務を、技術でつなぐ橋渡し役ともいえます。
2つ目は、データを価値に変える役割です。多くの企業には販売データ、顧客データ、稼働データなど、膨大なデータが眠っています。AIエンジニアは、それらのデータを分析し、「売上向上」「コスト削減」「品質改善」につながる情報に変換する役割を担います。
3つ目は、AIを安全かつ継続的に運用する役割です。AIは、学習時のデータ分布と本番環境のデータ分布がずれる(データドリフトが起こる)ことで、精度が低下する可能性があります。そのため、導入後の監視・改善・トラブル対応まで含めて責任をもつ点も、AIエンジニアの重要な役割です。
AIエンジニアの主な種類
一口にAIエンジニアといっても、役割や専門分野によっていくつかの種類にわかれます。ここでは代表的な4つの職種をご紹介します。
機械学習エンジニア
機械学習エンジニアは、AIの中核となる「学習アルゴリズム」を設計・実装・運用する専門家です。機械学習とは、データから規則性を学び予測や分類を行う技術のことで、たとえば次のような分野で活躍しています。
・需要予測:どの商品がどれだけ売れるかなどを予測する
・画像認識:不良品検出、顔認証など
・音声認識:コールセンターの自動化など
・不正検知:金融取引の異常検出など
機械学習エンジニアは、AIの「賢さ」を直接左右する非常に重要なポジションであり、高度な数学・統計やプログラミングスキルなどが求められます。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、ビッグデータを分析し経営や事業に役立つ情報を導き出す専門家です。AIエンジニアと混同されがちですが、データサイエンティストは「分析」寄りの役割が強いのが特徴です。
主な業務は次のとおりです。
・膨大なデータの整理・分析
・傾向や因果関係の発見
・売上向上や業務改善につながる提案
・新サービスや新商品の企画支援
経営層にとってデータサイエンティストは、意思決定をデータで支える存在といえるでしょう。AIエンジニアと連携しながら、分析結果を実際のシステムやサービスに反映していきます。
AIプランナー
AIプランナーは、AI技術を活用した事業やサービスを企画・推進する役割を担う職種です。エンジニアというよりも、「企画」「事業開発」「プロジェクト推進」に近い立場になります。
具体的には、次のような役割を果たします。
・「AIで何ができるか」をビジネス視点で企画
・事業部門とエンジニアの橋渡し
・AI導入による効果測定や改善
・社内外の関係者との調整
経営層に非常に近い立場でAI活用を推進する存在であり、「AIを使って何を実現するのか」を描く重要な役割を担います。
生成AI・AIエージェント開発エンジニア
近年急速に注目されているのが、生成AIやAIエージェントを活用したシステムを開発するエンジニアです。ChatGPTのような生成AIを業務に組み込み、文章作成、問い合わせ対応、業務自動化などを実現します。
AIエージェントとは、人の代わりに複数の作業を自律的にこなすAIのことです。たとえば、「問い合わせ内容を理解し、最適な回答を生成し、社内システムと連携して処理まで完了する」といった高度な仕組みも実現可能になりつつあります。
この分野はまだ新しく、今後の企業競争力を大きく左右する成長領域として、多くの企業が注目しています。
生成AIやAIエージェントについてはこちらもご覧ください。
>>生成AIとは?ChatGPTだけじゃない生成AI活用法や注意点などを解説のページへ
>>AIエージェントとは?仕組みや種類、活用事例などをわかりやすく解説のページへ
AIエンジニアの主な仕事内容
AIエンジニアの仕事は、「AIをつくること」だけではありません。企画から開発、運用、改善までを一貫して担うことが大きな特徴です。ここでは、AIエンジニアの代表的な5つの仕事内容について解説します。
企画・設計
AIを開発する際には、「何のためにAIを導入するのか」を明確にする企画・設計フェーズが必要です。ここを間違えると、どれだけ高度なAIをつくっても成果にはつながりません。
たとえば、次のような課題が対象になります。
・需要予測ができず、在庫ロスが発生している
・人手不足で業務が回らない
・顧客対応の品質にばらつきがある
・熟練者の判断を若手が再現できない
AIエンジニアは、これらの課題に対して「どの業務をAIに任せるのか」、「どんなデータが必要か」、「どこまで自動化するのか」などの要件を整理し、AI導入の全体像を設計します。
ここで経営層や現場責任者と意識をあわせ、経営戦略と現場業務の両方を理解したうえでAI活用を設計できるかどうかが重要です。
AIモデルの開発
企画が固まったら、次はAIモデルの開発に入ります。AIモデルとは、データをもとに「予測」「分類」「判断」を行うためのプログラムの頭脳部分です。
たとえば、以下のようなAIモデルがあります。
・売上を予測するAI
・不良品を見つける画像認識AI
・問い合わせに自動対応する生成AI
この工程では、Pythonなどのプログラミング言語を使い、機械学習やディープラーニングの技術を用いてAIを構築します。この段階ではまだAIは完成しておらず、次の工程の「学習」が極めて重要になります。
ディープラーニングについてはこちらもご覧ください。
>>ディープラーニングとは?機械学習との違いやできること、活用事例を解説のページへ
学習
AIは生まれた瞬間から賢いわけではなく、大量のデータを与えて学習させることではじめて実用レベルの判断ができるようになります。
AIエンジニアは、次のような作業を行います。
・社内外からデータを集める(販売履歴、画像、文章、ログなど)
・品質の悪いデータや不要なデータをとり除く
・AIが理解しやすい形にデータを整理する
・データを使ってAIに繰り返し学習させる
ここで重要なのは、「データの質がAIの性能を決める」という点です。どれだけ優れた技術を使っても、データが不正確であればAIの判断は誤ったものになります。有効なデータを得るためには、日ごろから社内データの整備をしておくことが大事です。
システム実装
学習を終えたAIモデルは、そのままでは業務に使えません。実際に使う業務システムやアプリ、Webサービスに組み込む必要があります。これがシステム実装の工程です。
具体的には、以下のような作業を行います。
・社内システムとAIを連携させる
・WebサイトやアプリにAI機能を組み込む
・クラウド環境で安定して動くように環境構築する
この工程によって、はじめてAIは現場で使われる実践的なツールになります。
たとえば、以下のように業務でAIが使われます。
・営業支援AIが、日々自動で需要予測を行う
・問い合わせAIが、24時間対応を実現する
・検品AIが、不良品をリアルタイムで検出する
分析・改善・運用
AIを導入したらAIエンジニアの役目が終わるわけではなく、運用をはじめてからが本当のスタートです。実際の業務で使いながら、精度を検証し、改善や最適化をしつづける必要があります。
具体的には、次のような作業を行います。
・AIの判断が正しいかどうかを測定
・ミスや誤判定の原因を分析
・新しいデータを追加して再学習
・業務環境の変化に合わせて調整
たとえば売上予測AIであれば、「予測と実績がどれくらいズレているか」、「季節変動や市場変化に対応できているか」などを継続的にチェックし、改善します。
このような作業によってAIを使えば使うほど精度が高まり、企業にとっての価値が大きくなっていきます。
AIエンジニアに必要なスキルセット

近年は「未経験からAIエンジニアになるにはどうすればよいか」「資格は必要か」といった関心が高まっていますが、重要なのは実務で使えるスキルの組み合わせです。高度な技術力(ハードスキル)だけではなく、ビジネスを動かすための人間力(ソフトスキル)も求められています。
ここでは、企業がAIエンジニアに求める代表的なスキルを、技術スキルと非技術スキルにわけて解説します。
主な技術スキル(ハードスキル)
AIエンジニアには、次のような技術スキルが求められます。
・機械学習・ディープラーニング
AIの中核となる技術です。予測、画像認識、音声認識、自然言語処理など、さまざまなAIの仕組みはこの技術で動いており、業務を自動化・高度化する心臓部といえます。
・生成AIモデル・LLMの活用・構築スキル
ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)を業務に組み込むスキルです。文章作成、要約、問い合わせ対応、自動化などに活用されます。今後の業務改革を左右する最重要スキルの一つです。
・プログラミング(Pythonなど)
AI開発で最も多く使われているのがPythonであり、AIモデルの開発、データ処理、システム連携まで幅広く活用されます。プログラミングスキルは、AI開発の土台となる基礎スキルといえます。
・AIツール・API(OpenAI、Claudeなど)活用能力
外部のAIサービスをAPIで連携し、自社システムに組み込むスキルです。自社で一からつくらず、スピーディにAI活用を進めるために必要です。
・数学・統計
AIはデータを数値として扱うため、確率・統計・線形代数といった数学の知識が必要です。AIの判断がなぜそうなるのかを説明できる土台となる知識です。
・データベース・SQL
AIは大量のデータを扱うため、データベースやSQL(データ検索言語)の知識が不可欠です。社内データをAIに活かせるかどうかを左右するスキルです。
・クラウド(AWS、Azure、GCPなど)
現在のAIは、クラウド上で開発・運用されることがほとんどです。クラウドの活用は安定稼働、コスト最適化、セキュリティ対策にも関係します。
大規模言語モデル(LLM)についてはこちらもご覧ください。
>>LLM(大規模言語モデル)とは?文章を作成する仕組みや種類について解説のページへ
主な非技術スキル(ソフトスキル)
AIエンジニアは黙々とプログラムを書く職人ではなく、経営層や現場、エンジニアの間に立ってAI活用を成功に導く調整役でもあります。そのため、次のようなソフトスキルが非常に重要です。
・論理的思考力・問題解決力
「なぜこの問題が起きているのか」「AIで本当に解決できるのか」を論理的に整理する力です。闇雲なAI導入による失敗を防ぐために必要です。
・ビジネス要件の言語化・調整力
経営層や現場の「やりたいこと」を、AIで実現できるかたちに落とし込む力です。経営戦略をAIに翻訳する役割を担います。
・情報収集力
AI技術は日進月歩で進化しており、新しい技術、ツール、事例をつねに収集し続ける姿勢が欠かせません。競合他社よりも一歩先に進む力になります。
・AI倫理への理解
個人情報の扱い、著作権への配慮など、AIには多くの倫理的課題があります。AI倫理への理解を深めることは企業リスクを防ぐために不可欠です。
経営層の立場から見ると、「技術だけ強いAIエンジニア」よりも、「技術とビジネスの両方を理解できるAIエンジニア」こそが、本当に価値の高い人材といえるでしょう。
AIエンジニアの年収・キャリアパス
AIエンジニアは、IT職種のなかでも特に年収水準が高く、将来のキャリア選択肢も非常に幅広い職種です。背景には、DX(デジタルトランスフォーメーション)や生成AIの急速な普及に対して、AIを実務レベルで扱える人材が圧倒的に不足している現状があります。
経済産業省が2025年5月に発表した将来試算によると、「AI・ロボット活用を担う人材(AIエンジニアを含む)」は2040年に約498万人の需要が見込まれるものの、現状の人材供給の傾向のままでは172万人の供給にとどまる見込みです。
【AIエンジニアの年収】
AIエンジニアの年収は、一般的なITエンジニアよりも高水準にあります。経験やスキルレベル、そして就職する企業にもよりますが、目安として厚生労働省の職業情報提供サイトを参照すると、AIエンジニアの全国平均年収は628.9万円とされています。
特に、以下のようなスキルをもつ人材は金額的に優遇される傾向があります。
・機械学習・ディープラーニングの高度な実務経験
・生成AI・LLMを業務システムに組み込んだ実績
・クラウドやMLOpsまで含めた一貫した運用経験
・ビジネス課題の設計からAI導入まで主導できる人材
【AIエンジニアのキャリアパス】
AIエンジニアは、スキルと経験を積み重ねることでさまざまな方向にキャリアを広げることができます。たとえば、以下のようなキャリアパスがあります。
・AI研究者
より高度な数理・アルゴリズムの分野に進み、最先端のAI技術そのものを研究・開発する道です。大学や研究機関、または大手IT企業の研究部門などで活躍します。
・プロダクトマネージャー
AIエンジニアの知識を活かして、AI搭載サービスやプロダクト全体の責任者になるキャリアです。「どのようなAI機能を搭載するか企画する」、「エンジニアと営業・マーケティングの橋渡し」、「売上・利益・ユーザー満足度の最大化」などの役割を担います。
・データサイエンティスト・MLOps特化エンジニア
AIエンジニアは、次の2方向に専門特化するケースも多いです。
・「データサイエンティスト特化」
分析・統計・予測の専門家として、経営判断に直結する分析業務を担います。
・「MLOps(エムエルオプス)特化」
MLOpsとは、AIモデルを「安定して」「継続的に」「安全に」運用するための仕組みのことです。AIはつくるよりも、「運用し続けること」の方がむずかしいといわれており、この分野の人材は特に希少です。
・AIコンサル・AI戦略策定
技術者としての経験を積んだ後、企業のAI戦略を上流工程から設計するコンサルタントに転身する道もあります。経営層と直接対話しながら、AIを経営戦略の中核に組み込んでいく役割を担います。
AIエンジニアの将来性
AIエンジニアの将来性は、結論からいえば「極めて高い」といえます。
理由は明確で、AIがすでに一部の先進企業だけでなく、あらゆる業種・業界に広がりはじめているからです。医療や物流などさまざまな分野でAIが活用されており、技術の進歩によりAIで実現できることも増えています。
実際、現在の転職市場を見るとAIエンジニアの求人は増加傾向にあります。しかも現在は、AIを「使いたい企業」は急増している一方で、実務レベルでAIを扱える人材が決定的に不足している状態がつづいており、AIエンジニアの市場価値は高まっています。
まとめ
この記事では、AIエンジニアとは何か、仕事内容、必要なスキル、年収・キャリアパス、将来性について解説しました。
AIエンジニアは単なるIT技術者ではなく、企業の競争力と成長性を左右する「経営に直結する人材」です。AIエンジニアに必要なスキルはプログラミングや機械学習などの技術力だけではありません。ビジネス要件を正しく理解し、関係者と調整しながらAI活用を推進する力も求められます。
企業にとってAIエンジニアの確保と活用は単なるIT投資ではなく、企業の未来そのものへの投資といえるでしょう。
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監修
株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
林 栄一
組織活性化や人材開発において豊富な経験を持つ専門家として、人材と組織開発のリーダーを務め、その後、生成AIを中心にスキルを再構築し、現在新人研修プログラムや生成AI講座開発を担当している。2008年にスクラムマスター資格を取得し、コミュニティーを通じてアジャイルの普及に貢献。勉強会やカンファレンス、最近では生成AI関連のイベントに多数登壇している。チームワークの価値を重んじ、社会にチームでの喜びを広める使命をもつ。
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
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