ビッグローブ株式会社様 導入事例
「テスト実行の旗振りとして、
SHIFTさんにはご活躍いただきたい」マルチベンダーコントロールも含めたゼロベースからのテスト支援
Summary
めまぐるしく新プランがリリースされるモバイル業界に、新サービス「donedone(ドネドネ)」を2021年7月1日にリリースしたビッグローブ株式会社。マルチベンダー開発で、さらに度重なる仕様変更が行われるというプロジェクトに対して、SHIFTはスピード感を落とすことなく開発と並行しながら、全体のテスト計画からWeb申込システムの脆弱性診断までご支援いたしました。
SHIFTのクオリティフレームワークを活用し、計画段階からプロジェクトの特徴を踏まえたうえでテスト実行。
新ブランド「donedone(ドネドネ)」を立ち上げる大事なプロジェクトで、弊社にお声がけいただいた一番のポイントをお聞かせください。
BIGLOBEに入社する前、もともと前職からSHIFTさんとはお付き合いがありました。そのころから、実際に仕事を一緒にするなかで、テストに関する高い信頼度をもっていました。
そういった個人的な高い信頼度も前提にありますが、今回は開発期間が非常に短く、なおかつシステムをいちからつくり上げていく必要がありました。そうなると、どうしても開発と並行してテストの計画を立てなければなりません。
SHIFTさんはさまざまな業界業種で培ってきた知見をもっていることもあり、テストを実行するだけではなく、プロジェクトごとに適したテストを計画段階からピンポイントに実行していただける会社だなと認識しております。その点が、今回の依頼における一番のポイントだと思います。
我々としても、開発に専念いただき、テストベンダーは品質を担保しながら、遅延せずにリリースをしていくことを考えております。そのために、もちろん業務知見を保有しているメンバーがいることもそうですが、それ以外にもテスト計画において、SHIFTがこれまで行ってきた品質保証活動のナレッジをベースに品質保証のベストプラクティスを構築するフレームワークであるSQFを備えているところも強みの一つだと思っております。
今回の「donedone(ドネドネ)」における支援も、このSQFを用いて品質向上に向けての施策をご提案させていただきました。
すでに貴社では「BIGLOBEモバイル」というモバイルサービスがあると思いますが、今回、新たに「donedone(ドネドネ)」をローンチした背景を教えてください。
「donedone(ドネドネ)」は、お客様からいただく月額利用料の一部を社会貢献活動に寄付するサービスです。弊社がこの先10年をどうしていくか、幹部を含めて考えたとき、社会貢献活動が一つのテーマとしてあげられました。そこから派生して生まれたのが「お客様から頂いた料金の一部を社会貢献活動に寄付をする」というアイデアです。
ただ、既存の「BIGLOBEモバイル」にその要素をいれることは、社内でも議論があり、そこで新サービスとして展開するという結論になったというわけです。
このプランは単発ではなく、継続して社会貢献活動に参加することができるというのが大きな特徴ですね。なかなか、世の中にはないサービスだと思います。また弊社の技術である、ゼロレーティングの技術を使って、お客様に最適なプランを提供できるので、モバイルサービスとしても魅力的なものであると自負しております。
そのなかで、我々SHIFTが行った支援内容について具体的に教えてください。
全体テスト計画という役割で、テスト全体の管理役としてプロジェクトに参画しておりますが、メインで行ったのはシステムテストと受入れテストの部分です。
あとはフロント部分のチームにおける単体テスト、結合テスト。また、フロントとバッグエンドと基盤部分といったいくつかのワーキングにわかれていたため、そのワーキングをまたいだテストもSHIFTが参画しております。
システムテストは、例えば「ユーザーが新規申込をする」「プラン変更する」など、BIGLOBE様で作成されたビジネスユースケースを活用し、発生しうるテストパターンを洗い出しながら、シナリオごとにテストをしました。
より具体的にいうと、「新規申込」であれば3つのプランのパターンがあり、あとお客様に送付する書面も、郵送と電子書面が選択可能なので2つのパターンがあります。
このように、さまざまなケースを組み合わせて、シナリオをつくりシステムテストとして実施していました。
受入れテストにおいては、このシステムを運用するセンターの方が今回構築したシステムで問題なく業務ができるかという観点でテストを実施しております。
「donedone(ドネドネ)」はeKYC(※1)、eSIM(※2)については今後の導入ということだったため、本人確認はセンターが行っています。またSIMの配送もセンターの方が対応しております。そのような点を今回構築したシステムでも運用できるのか、確認していました。
このほかには、スマホアプリのフロント部分をつくっているチームに参画し、ユニットテストの作成を行ったり、結合テストの作成や、フロントとバッグエンドのインターフェースの確認なども実施したりしました。
さらには、今回のシステムはWebで申込を行うので、脆弱性診断も実施しています。
※1.eKYC: 『electronic Know Your Customer』。「電子(オンライン)での本人確認」という意味。
※2.eSIM: Embedded SIM。端末に挿入する必要がある従来のSIMカードとは異なり、あらかじめ端末内にSIMが組み込まれている。
実際、計画段階から「どういうところに品質リスクがあるか」をプロジェクトの特徴を踏まえたうえでテスト実行をしてくれる会社はなかなかありません。そういう意味で、お世辞抜きで、今回もSHIFTさんを選んで本当によかったと思います。
SHIFTが先導を切ることで実現できた大規模なマルチベンダー体制における品質意識の統一
宮下様は前職時代に、テスト推進リーダーを経験されたことがあると聞いております。自社でテスト推進をしていくのと、弊社のようなテスト専門会社を活用して仕事をしていくのと、何か違いはありましたか?
そうですね、前職でいくつかのプロジェクトのテスト推進リーダーを経験してきましたが、各工程のテストの理解、造詣が深くないといけません。
ただ、一ユーザー企業のなかで、すべてのテスト工程を理解している人材を育てるのは非常にむずかしいと考えます。
そういう意味で、今回テストのスペシャリストが揃うSHIFTさんがプロジェクトに入ってくれるのはありがたいため、その点も今回任せたいと思ったポイントです。
特にSHIFTに任せてよかったと感じるのはどこでしょうか?
特にシステム横断系のテストですね。システムテストや、受入れテストといったフェーズの対応も、SHIFTさんにお願いしました。
やはりベンダーをまたがるテストになると、ベンダーコントロールも必要です。そのあたりをテストの知見に基づいて実施するというところはなかなかむずかしいポジションになりますが、今回そこをSHIFTさんにお願いすることで、非常にスムーズに進むことができたと思います。
実際、社内でそのポジションで旗振りする人材をアサインするのはむずかしかったと考えております。
開発ベンダーが複数存在する大規模な開発において、SHIFTに期待していたことはありましたか?
SHIFTさんには、テストの観点でいくと、テスト実行の旗振りをマルチベンダーコントロール含めて、ぜひご活躍いただきたいなという期待をしておりました。
今回のプロジェクトには、10以上のベンダーが関わっています。今回でいうと、「donedone(ドネドネ)」のサービスはいちからシステムを作り上げる、スクラッチシステムの部分もありますし、SaaSを使う部分もありました。したがって、テスト全体の旗振りは非常に骨が折れるところと感じております。
実際にはどのように旗振りを担っていったのでしょうか?
テストを実行していくなかでの週次でのミーティングや、システムテストをはじめてからは「テスト夕会」というのを毎日開催して、そこでベンダー同士の意識統制を行っていきました。システムテストが始まった段階で複数のベンダーごとの代表が参加し、「本日こういう不具合が発生しました」といった共有や、日々の修正とリリース内容の報告がメインです。複数のベンダーが絡むと意思疎通が、非常にむずかしくなるという部分もあると思うので、その点を「テスト夕会」でキャッチアップしながら、進めていきました。この点が個人的には功を奏したと思います。
そういう集まりのなかでマルチベンダー体制ではありましたが、品質に対する一体感が生まれたのではないでしょうか。
日進月歩で変化するモバイルサービス。そのスピード感に対しても柔軟に対応し、テストを設計。
今回のプロジェクトは何度も仕様変更があり、その点も課題だったと伺っております。
モバイルサービスは日進月歩のスピード感で変化があるため、日々他社の動向を見極めながら仕様を変更していく部分があります。それは「donedone(ドネドネ)」も例外ではなく、幾度の仕様変更がありました。
そのためテストにおいても、「仕様変更」を管理していくところが課題だったと思います。
変更点については、BIGLOBE様との週次定例にてシステムテスト設計における不明点とともに確認しながら解消し、その結果はすぐに設計に反映していきました。その定例会があったことは非常にやりやすかったですね。
要件定義書をドキュメント上では改版するのですが、テスト設計に落とし込むのはドキュメント上のやり取りだけでは非常にむずかしかったと思います。日々コミュニケーションをとりつつ、お互いで管理しながら進められたというのはよかったですね。
このコロナ禍という環境で、対面ではなくオンライン上のやり取りが多かったですが、普段からコミュニケーションをとっていたので、相談しやすい関係性にもなっていたと思います。
ただ今回、お客様に「donedone(ドネドネ)」を使ってもらう上で、スマホアプリを提供しているのですが、そのUI/UXも社内では非常に重要視しておりました。そのデザインにおける幾度かの変更があったので、画面周りの開発が遅れてしまいました。プロジェクト中盤ではお互いかなり大変な思いをしましたね。
その時、後工程のシステムテストのスケジュールにおいて、システム開発が遅れているところに関わるテストを後回しにしていただくなど、柔軟にテストのスケジュールを計画段階から設計しなおしていただきまして、そのときは大変感謝しました。
言葉でいうのは簡単なのだと思いますが、かなりご苦労されたところがあるんじゃないかなと思います。
スケジュールの再設計はかなり苦労しました。そのため「画面のデザインが反映されていないので、画面の確認を後回しにしましょう」と極力できるところから、「システムとしてきちんと動く」という観点でテストを行ってきました。画面の確認に関しては、SHIFT側の別チームにアドホックテストを依頼し、そこで品質検証を行っております。「やれることから手をつけ、そうではないところは別の形で対応する」というように柔軟に対応できたのがよかったですね。
そのなかでもうまくテストのスケジュールを組みなおしてもらえて、さすがSHIFTだなと思いました。本当にありがとうございました。
新サービスであっても、いままで以上の高い品質でサービスを継続。「SHIFTさんがあらゆる工程のテストに参画いただいたおかげです」
マルチベンダープロジェクトにおいてテストスケジュールを再設計しなおすのは、かなり大変なのではないでしょうか?
何が大変かというと、テスト全体の計画を再設計するということは、下手をすると全部のベンダーと調整しないといけない点ですよね。そこをSHIFTさんに陣頭に立ってもらって、円滑に進めてもらったのは、非常に頼りになりました。
複数のベンダーがいるむずかしさは常々感じておりましたね。ベンダー側は、BIGLOBE様と契約していますので、全体感を見ていないわけではないと思いますが、プロジェクト通貫というよりは、ベンダーとBIGLOBE様側との契約部分を注視するのが通常です。その点を我々はテストを通じて、プロジェクト全体をコントロールする必要があるのではないかと考えております。
さらにテスト夕会をはじめとして、コミュニケーションの場をきちんと設置したことで、結果として、マルチベンダーではありましたが、ひとつのチームとしてプロジェクトを進めることはできたかなと思います。
宮下様ご自身から見た今回のSHIFTの評価についてお聞かせください。
マルチベンダーコントロール、テストの旗振りなどさまざまなところでご活躍いただいたなと思います。
ローンチから1ヶ月経ちますが、この「donedone(ドネドネ)」は十分満足のいく品質でサービスを提供させて頂いております。結果として、品質の高いサービス提供が出来たのはSHIFTさんがあらゆる工程でテストに参画いただいたおかげであると思っております。ありがとうございました。
ローンチ後も開発支援をつづけさせていただいており、ローンチ当初では対応できていなかった5G対応におけるテストも私たちが担当しました。また、テストだけではなく、UI/UXにおける支援などもSHIFTグループ全体で取り組んで行っております。このように今後も開発に関してご支援させていただき、より品質の高いものをつくっていきたいです。
ビッグローブ株式会社様