オムロン デジタル株式会社 様 導入事例
週次で組織を可視化。
オムロン デジタルが実践する人財・経営の高速化


Summary
2025年10月、オムロングループのソフトウェア領域を担う企業がオムロン デジタル株式会社(ODC)として新たな一歩を踏み出しました。受託開発中心の体制から「人的資本経営」を軸に市場価値の高い共創型組織への変革を目指しています。
そのパートナーに選ばれたのがSHIFTでした。組織の在り方を抜本的に見直す本プロジェクトは、ツール導入に留まらず、現場の可視化や企業文化の刷新を推進しています。
共創型の組織へ、泥臭い変革への挑戦
直面していた組織課題と危機感
今回のプロジェクトが発足した背景についてお聞かせください。

今回の体制変更により、私たちはオムロングループ全体のDX/AIのケーパビリティ(能力)を底上げする「デジタルCoE(Center of Excellence)」戦略子会社という位置付けになりました。これまで強みを培ってきたOT領域に加えIT領域など、複数の価値提供領域を横断した構想力から運用までを一貫して担うことが当社ODCの特徴です。
具体的には、①グループ内のデータサービス事業開発領域、②グループ内のデバイス開発領域、③社外向けの直接事業領域、④社内DX領域の4つで活動しています。
前身組織から発展するなかで、業務範囲は大きく広がり、求められる水準も一段と高まりました。一方で、人員を急激に増やすことは現実的ではありません。だからこそ「いまいる人財でいかに成果を最大化するか」という問いが、重要な経営テーマとなっていました。

これまではあくまで「孫会社」という立ち位置で、オムロン全体の一部機能を担う存在でした。しかし、グループ全体がデジタル化を加速させるなか、我々自身がもっと前に出て、価値を再定義する必要があったのです。
「要求実現力をベースとした仕事のやり方」に加え、「価値を自ら創出するやり方」へ変えていく。そのためには、技術力の向上だけでなく、人事戦略や組織の仕組みそのものを変える必要がありました。
その課題に対して、どのようなアプローチを検討されたのでしょうか?
必要だったのは、制度や分析の枠を超え、経営として実際に回る仕組みの実装です。 具体的には、以下の2点を重視しました。
・データとAIの活用: 判断やマネジメントの質とスピードを高める
・人的資本経営の実践: これまで以上にエンジニアの市場価値(LTV)を高め、正当に評価し、組織の成果を最大化する
こうした課題を解決するためのモデルケースとして、独自の成長をつづけるSHIFTさんの知見は、まさに我々が目指すべき理想と重なるものでした。

最初に「SHIFTが社内で実践しているマネジメントの仕組みを導入したい」というお話をいただいたときは、正直、冷や汗が出ました(笑)。SHIFT社内でも最も難易度が高く、我々自身が試行錯誤しつづけているテーマだったからです。ただ、その泥臭い取り組みに価値を感じていただけたのだと腹を括り、この1年、必死に向き合ってきました。
「Excel?」の衝撃
コンサルへの期待を裏切るSHIFTの泥臭い実態
SHIFTのアプローチを自社に取り入れるにあたって、どのような期待を込められていたのでしょうか?
当初は、SHIFTさんの手法をそのままもち込むだけでは機能しないのではないか、という思いもありました。企業文化や規模も違いますし、一般的なコンサルティング提案にもどこか腑に落ちない部分を感じていたからです。構想や理論は綺麗でも、実際の経営や現場で本当に機能するのかは疑問が残りました。
具体的には、どのような点を重視されたのでしょうか?

我々が重要視したのは、制度や分析そのものではなく、現実の制約や多様な業務のなかでどう意思決定し、改善をつづけているかという点です。導入後の定着や現場への適用まで伴走できるかを重視しました。
そんななかでSHIFTさんの提案は衝撃的でしたよね。特にあの講演会での「滝チャートExcel事件」(笑)。
あれですね(笑)。我々が普段、売上や予実管理に使っているツールをお見せした時のことです。「どんな高度なシステムを使っているのか」と期待されていたなかで、開いてみたら――ただのExcelだった、という。
「えっ、Excelなんですか?」と驚きましたが、その泥臭さが逆に信頼できました。
みなさん驚かれますが、週次で変化する状況に対応しながら売上管理や人材アサインを行うには、現時点ではExcelが最も柔軟でスピーディーな手段だと考えています。重要なのは、現場の実態を可視化し、意思決定につなげることです。
そこなんですよね。世のなかでいわれる「データドリブン」は、多様な経営データをダッシュボード化することが目的化しがちです。でもSHIFTさんは、数字を見て現場がどうアクションを起こすかまで設計されている。自社で試行錯誤を重ね、実際に経営や現場で使われている“実践知”をもっている点が、他社と大きく異なりました。現実のなかでどう回しているかまで見せてもらえたことで、「これなら一緒につくっていける」と確信したんです。
ツールよりも「現場のアクション」
綺麗なプロセスよりもスピードを重視する理由
綺麗なシステムを導入することよりも、泥臭くても「実態が見える」ことを優先されたのですね。

はい。SHIFTメンバーのアプローチは現場感が強い印象があります。我々も「ヒトログ」というSHIFTさんが開発したタレントマネジメントシステムを導入しようとしていますが、システムはあくまで箱に過ぎません。重要なのは、経営層や現場のマネージャーがそのデータを見て、どれだけ本気で議論できるかです。
SHIFTさんは、システム上のデータをもとに、評価会議などで経営陣が長時間かけて本気で議論されていますよね。あの姿勢こそが、我々が取り入れるべきエッセンスだと感じました。
ありがとうございます。我々としても、「これが正解です」とパッケージを押し付けるつもりはありません。「我々も試行錯誤しています。だから一緒に一番いい方法を探しましょう」というスタンスです。オムロン デジタル様がそれを受け入れ、面白がってくださったことが、プロジェクトが前に進んだ最大の要因だと思います。
月次から「週次」へ。
滝チャートによる人財・経営の高速化
プロジェクトがはじまって半年ほど経過したとのことですが、組織のなかで変化はありましたか?

最も大きな変化は、経営管理やプロジェクト管理の「時間軸」が変わったことです。
これまでは月次で数字を見て対策を考えるのが当たり前でしたが、それでは変化の激しいソフトウェア開発の現場には対応できません。導入を進めている「滝チャート」によって、週次で状況が見えるようになりつつあります。
短期間で売上や生産性が大きく変わる取り組みではありません。ただ、意思決定の「質」には確かな変化が出始めています。経営層・管理層が「何をデータで見るべきか」を共通言語としてもてるようになり、人財に関する議論も、これまで以上にデータを前提に行われるようになりました。
「最初から完璧を目指さない」という点も大きかったですね。
そうですね。「データが揃ってから」「システムが完成してから」といっていては、いつまで経ってもはじまりません。「まずはいまあるデータで見る」と踏み出したことで、週ごとに打てる対策の回数が増えました。月1回の判断が週1回になれば、改善スピードは単純計算でも4倍以上です。
分散データの統合:残業時間とキャリア志向をつなぎ、仮説を立てる
週次での可視化が進むなかで、どのようなデータ活用が行われているのでしょうか?

特に価値を感じているのは、これまで社内に分散していたデータが、一つの視点で見えるようになったことです。例えば、プロジェクトごとの「稼働時間」と、個人の「キャリア志向」のデータ。これまでは別々に管理されていましたが、つなげて見ることで新たな仮説が生まれます。
「最近、残業が増えているメンバーがいる。それがキャリア志向の変化に影響しているのではないか」といった推測ができるようになるわけですね。
もちろん、それが正解とは限りません。ただ、データを一元化することで「つながり」が見え、対話のきっかけが生まれます。「最近忙しそうだけど、キャリアについてどう考えている?」と声をかけるタイミングや質が変わる。これが、人的資本経営を実践していくための第一歩だと感じています。
AI活用による最適解
個人のキャリア志向と組織成果の最大化の両立
今後は、そこにAIを活用した分析も組み込んでいく予定です。 個人の「やりたいこと(キャリア志向)」と、組織としての「やるべきこと(成果の最大化)」は、時に相反します。その最適解をどう見つけるかが大きなテーマですね。
そこは一番期待している部分です。人が考えると、どうしてもバイアスがかかったり、単純に見落としたりすることがありますから(笑)。AIが「この人のスキルと志向なら、このプロジェクトが最適では?」とレコメンドしてくれれば、アサインの精度も本人の納得感も高まるはずです。

すでに、「蓄積されたデータをどうAIに使い、どう活かすか」というアイデア出しもはじまっていますよね。
はい。まさにオンゴーイングです。「ヒトログ」のデータとプロジェクト状況を掛け合わせ、次にどんな手を打つべきか。SHIFTさんの知見をお借りしながら、我々なりの「正解」を模索している最中です。
2週間でPoC実行:大企業の常識を覆す意思決定とスピード感
お話を伺っていると、大企業であるオムロン デジタル様が、ベンチャー企業のようなスピード感で動かれている印象を受けます。
それこそが、今回の狙いの一つです。象徴的だったのが、あるビジネスケースのPoC(概念実証)です。SHIFTさんから「グローバルで実践されているモデルを、オムロン デジタル流にアレンジして試してみませんか」と提案をいただき、即座に「やりましょう」と決断しました。現場で動き出すまで2週間でした。

本当に早かったですね。通常、この規模の企業様ですと、検討だけで数ヶ月かかることも珍しくありません。「まずはやってみよう」と現場が動き、経営層もそれを受け止めてくれる。そのベンチャースピリットを強く感じました。
現場で試してみないと、本当に使えるかどうかはわかりませんからね。うまくいったものはインフラとして残し、ダメならすぐに止める。そのサイクルを回せるようになったのは、SHIFTさんが杓子定規な提案ではなく、「まずは試しましょう」と背中を押してくれたからだと思います。
外部視点で見つかった「埋もれていた強み」と組織文化の再発見
SHIFTさんとご一緒するなかで、自分たちでは気づいていなかった「強み」を再発見できたことも、大きな収穫でした。内部にいると当たり前になってしまうのですが「このプロセスは非常に強い」「このデータは宝の山だ」と外部視点で示していただけるんです。
決して、我々が一方的に教えているわけではありません。オムロン デジタル様の現場には、優秀なエンジニアの方々と、高度な品質管理の文化があります。我々がお手伝いしているのは、その「埋もれていた強み」をデータとして可視化し、成果につなげる回路をつくることです。
昨年7月から担当していますが、「つねに進化しつづける余地(のりしろ)」をあえて残している懐の深さを感じます。「これで完成」と満足せず、「もっとよい方法はないか」と外部の知見も貪欲に取り入れる。その姿勢があるからこそ、我々もパートナーとして本気で向き合えるのだと思います。
「デジタル業界共進化組合」へ
日本発の競争力を世界へ生み出すビジョン
最後に、今後の展望についてお聞かせください。
今回のプロジェクトを通じ、取引先の組織文化や現場の実態を深く理解することの重要性を改めて実感しました。営業として前面に出るだけでなく、お客様と一体となって学び、組織全体の変革に貢献できることは、我々にとっても大きな喜びです。これからも、自分たちの役割がお客様の成長に直結しているという実感をもって、全力で取り組んでいきたいと考えています。
会話のなかで、私たちのテストセンター課の強みをお伝えすると「いいよ、やろう」と即座に判断いただき、翌週には会議もセッティングされるなど、意思決定の速さと現場の機動力を実感しました。こうしたスピード感ある組織だからこそ、実現化に向けた取り組みも順調に進んでいます。今後もオムロン デジタル様を通じて支援をつづけ、一緒にプロジェクトを前に進めていきたいと思っています。
今後のキーワードは、まさに井上様が仰った「共進化(Co-evolution)」に尽きると考えています。どちらかが正解を教えるのではなく、互いに影響を与え合い、高め合うことでともに進化していく関係です。
「共進化」、まさにいまの我々に必要な言葉ですね。我々もSHIFTさんも、同じデジタル業界に身を置き、未来をつくる立場にあります。AIの活用も働き方の変革も、もはや一社だけで完結できる時代ではありません。SHIFTさんというパートナーとともに、オムロングループ、ひいては日本のデジタル産業全体の競争力を底上げするような、新しいモデルを確立していきたいと考えています。
欧米の手法をなぞるのではない「日本発」のデジタルトランスフォーメーション。この両社のタッグなら必ず実現できると信じています。グローバルで戦える真の競争力を、ここから世界へ発信していきたいですね。
ソフトウェアやシステム開発を取り巻く環境は、いま大きな変革期にあります。そこで問われているのは、開発手法だけでなく、いかに価値を生み、いかに人と組織をマネジメントするかという本質的な課題です。
これまでの取り組みをベースに、データ、人的資本、そしてAIを組み合わせ、この業界における新しい経営モデル―実践を通じて形にしていきたい。単なるサービス利用ではなく、試行と学習を重ねながらともに進化する関係でありたいですね。

※内容は2026年1月の取材時のものです。

オムロン デジタル株式会社





