VUCAとは?
VUCAとは、先行きが不透明で、将来を予測することがむずかしい状態のことを指す用語です。もともとは軍事用語でしたが、近年はビジネスにおいても使われるようになりました。
ここでは、VUCAについて詳しく解説します。
変化の激しい現代の世界を4つの要素で表したもの
VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとってつくられた言葉です。先行きが不透明で、将来を予測することがむずかしい状態のことを指しています。
VUCA は、1990年後半ごろから使われはじめた言葉で、もともとは軍事用語でした。当時は、アメリカとロシアの冷戦が終結して先行きが不透明な時代であり、複雑化した国際情勢のなかで刻々と変化する状況を、正確に把握するために生まれた言葉です。
そのあと、2010年代以降になると、国家・地域間の紛争、コロナ禍によるパンデミック、AIの進化やデジタル化など、短期間でさまざまな変化が起きました。このような不確実な時代を迎え、VUCAという言葉はビジネスにおいても使われるようになったのです。
すでにご説明したとおり、VUCA はVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの要素からなる言葉です。ここでは、それぞれの要素についてご説明します。
Volatility:変動性
Volatility(変動性)とは、ものごとの変わりやすさ、急激な変動性を意味します。近年では、新型コロナウイルスの急速な感染拡大が起き、企業は勤務形態などをすみやかに変化させる必要がありました。また、テクノロジーの分野においても、AI技術が急激に発達し、社会が大きく変化しています。
このような急激な変動を察知して、迅速な判断を下しつつ、的確な対応をしていくことが求められています。
Uncertainty:不確実性
将来に起こることが予測できない状態です。たとえば、気候変動、新型コロナウイルスの感染拡大などは、予測することがむずかしい現象です。不確実な要素が多いなかで、意思決定を行うことは非常に困難ですが、経営者はこのような状況でも的確に判断を下していく必要があります。
Complexity:複雑性
さまざまな要素が複雑に絡みあい、ビジネスの複雑化が進んでいます。
たとえば、経済のグローバル化を進めるためには、異なる文化や習慣、ルールへの対応が必要です。また、SNSやインターネットが浸透したことで大量の情報が飛び交い、市場のニーズは複雑化しています。このように複雑化が進む状況でも、的確な判断を行うことが求められているのです。
Ambiguity:曖昧性
ここまでご説明した、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)により、因果関係がわからず曖昧な状況に陥ることがあります。このような状況では、問題が発生した場合に原因の特定が困難で、対策を立てづらく、対応が困難です。過去に成功した事例を参考にしたやり方が通用するとは限らない、曖昧性の高い状況に突入しています。
VUCAが注目されている背景
近年、世界をとりまく状況は大きく変化し、不確実な要素が多い時代となりました。異常気象による災害、先進国の少子高齢化問題、新型コロナなどのパンデミックなど、外部環境が不確実です。また、SNSやインターネットが浸透したことで、大量の情報が飛び交い、市場のニーズは複雑化しています。
このような不確実な時代が到来したことで、企業は状況の変化をすばやく察知して、柔軟に適応していく必要があります。そのため、VUCAという概念が、再度注目されるようになっているのです。
VUCA時代で必要となるスキル
VUCAの時代は、複雑で想定外のことが起きます。そのような状況のなかで必要とされるスキルとは、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、VUCAの時代に必要なスキルについて解説します。
情報収集力・情報処理能力
どのような決断を下すためにも、まずは状況を正しく把握することが重要です。大量の情報のなかには、正確性の低い情報も含まれており、そこから確実な情報を選びとる必要があります。そのためには、高い情報収集力や情報処理能力が必要不可欠です。
仮説思考力
正確な情報を収集しようとしても、つねに必要な情報が出そろうとは限りません。そのような場合には、集められた情報をもとに仮説を立てて、検証していく仮説思考力が必要です。日ごろから仮説を立てて行動し、状況に応じて仮説を再度立て直すことで、仮説思考力を訓練していく必要もあります。
決断力・行動力
多くの情報から正確な情報を選び、仮説を立てるなどの行動は、的確な判断を下すために必要なことです。しかし、そのような準備行動に終始して、大事な決断を下せないのでは、意味がありません。失敗を恐れることなく実践する決断力や、行動力も必要とされます。実践してみることで、事前に立てた仮説の正しさを検証でき、次の行動につなげることが可能です。
臨機応変な対応力
不確実な要素が多い時代に、何が起きるかを予測することは困難です。そのため、どのような問題が起きても、臨機応変に対応できる力も必要とされます。
コミュニケーション力
状況が不確実ななかで直面した問題を解決していくためには、一人の力だけではなく、チーム力が必要です。チーム内で連携をとるためには、メンバーそれぞれが高いコミュニケーション力をもつ必要があります。
リーダーシップ
先のことを予測するのがむずかしい時代で組織を動かすためには、先頭に立って目標を示しながら、周囲を導くリーダーシップが求められています。メンバーの主体性を喚起しながら、自らが率先して動くリーダーがいることで、チームとしての実力を高めることが可能です。
VUCAに対応した組織づくりのポイント
VUCA時代に対応するためには、個人がそれぞれスキルを磨くだけでなく、企業が組織としてどのように対応していくかを考える必要もあります。ここでは、企業がVUCAに対応した組織づくりを行うために、重視すべきポイントについて解説します。
ビジョンを明確にし、組織内で共有する
組織が軸をブレさせることなく変化に対応していくためには、将来のあるべき姿、つまりビジョンを明確にして、組織内で共有する必要があります。組織内でビジョンが共有されていれば、それぞれの部署や担当者がそのビジョンに向かって、個々に方針や取り組みを進めていくことが可能です。
イノベーションを追求し、つねに挑戦しつづける
つねに変化をつづける状況に対応するためには、前例や実績を重視し、固定観念や過去の成功にとらわれることは好ましくありません。イノベーションを追求して、挑戦しつづけられる体制を整えておく必要があります。具体的には、柔軟なプロセスの構築、チャレンジを推奨する企業文化などが求められています。
多様な人材を採用・育成する
人材を採用する際には、同じようなレベルの人材を採用するのではなく、多様な人材を採用して育成していくことが望ましいでしょう。価値観や仕事のやり方、考え方などが異なる多様な人材を受け入れ、それぞれの個性を伸ばすことで、VUCA時代に対応できる組織をつくりあげていく必要があります。
迅速に意思決定を行う
VUCAの時代では迅速な意思決定が求められますが、そのためには「OODAループ(ウーダループ)」と呼ばれる思考法が役立ちます。これは、Observe(観察)、Orient(適応)、Decide(意思決定)、Act(行動)という要素からなるフレームワークです。観察、適応、意思決定、行動という過程を繰り返すことで、迅速な意思決定が可能になります。
リスクヘッジを行う
VUCAの時代では、先の予測がむずかしく、どのようなリスクが潜んでいるかわかりません。たとえば、地震や洪水などの自然災害、戦争やテロ、感染症の大流行など、さまざまなリスクに備えておく必要があります。リスクヘッジを整備しておくことで、問題やトラブルが発生しても、被害や影響を最小限にとどめることが可能です。
DXを推進する
VUCA時代に対応するために、企業にはDXを推進しデジタル技術を積極的に活用していくことが求められています。
国内外の競争が苛烈を極めるなか、デジタル技術を活用した作業時間の短縮、コストの削減、顧客体験の向上などを行い、競争優位性を確保することは必須となっています。ECサイトの導入、ITツールの活用などで、生産性の向上や販売チャネルの拡大などをはからなければ、市場で優位に立つのはむずかしいでしょう。
DXの推進は深刻な人手不足の解消にも役立ちます。たとえば、AIやビッグデータを活用すれば、人間が判断する業務を減らすことも可能です。またDXを推進することで、老朽化した既存システムから脱却し、セキュリティ面のリスクやシステム運用コストの増大などの問題も解消できます。相次ぐ自然災害のリスクや感染症の蔓延、国際間の紛争問題などのリスクに備えるためにも、データの冗長化などを含めたDXの推進が必要です。
そしてVUCA時代の変動性、不確実性、複雑性、曖昧性に対応していくために、DXの推進は必要不可欠です。たとえば、災害で紙媒体の情報が紛失するケースなどを想定し、ITツールを活用して柔軟に対応できる体制を整えておく必要があります。また、多様で複雑なニーズに対応するために、AIやビッグデータを活用して判断の精度を高めることは有効です。
ここまでご説明したとおり、VUCA時代に対応するためには、DXを推進してデジタル技術を積極的に活用していくことが必要不可欠といえるでしょう。
VUCA時代の開発アプローチ
システム開発VUCA時代の開発アプローチの現場で採用されることが増えた「アジャイル開発」は、顧客の要望や市場の変化に柔軟に対応できる開発手法です。
アジャイル開発では、従来のウォーターフォール開発などとは異なり、重要な部分から先に開発して、テスト、リリースを繰り返していきます。そのため、顧客の要望を柔軟にとり入れながら、サービスをすばやく提供することが可能です。
システム開発の現場でVUCA時代に対応していくためには、変化に柔軟に対応できるアジャイル開発による開発アプローチが求められています。
アジャイル開発についてはこちらもご覧ください。
>>アジャイル開発とは?概要や進め方、ウォーターフォール型開発との違いやスクラムについて解説のページへ
関連サービスについて
まとめ
この記事では、VUCAとはどういうことなのか、VUCA時代に必要なスキルや、VUCAに対応した組織づくりのポイントなどについて解説しました。
刻々と状況が変化するVUCA時代において、企業の経営者は適切に情報を収集して、判断を下していかなければなりません。そのために企業は、VUCA時代に適応可能な人材を育成し、組織づくりを進めていく必要があります。
システム開発の現場でも、VUCA時代に対応できる開発プロセスの構築が必要です。SHIFTでは、VUCA時代に適応したアジャイル開発のノウハウと実績を保有しています。アジャイル開発の導入を検討している場合は、SHIFTにお任せください。アジャイル開発のノウハウ不足や、人材不足に関するお悩みを解決いたします。
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「顧客のニーズに柔軟に対応できる開発体制を整えたい」「アジャイル開発の手法をとり入れたいが、ノウハウや対応できる人材がいない」「変化が著しい市場に対応できる開発環境を構築したい」などの悩みを抱えている企業様は多いでしょう。
アジャイル開発を導入して、スピーディーに開発ができる体制が整えば、顧客からの要望にすばやく対応でき、変化が激しい市場にも対応可能です。そのためには、従来の開発手法を一新して、アジャイル開発の手法を現場にとり入れる必要があります。
しかし、従来の開発手法とはまったく異なるアジャイル開発を導入することは、非常に困難です。アジャイル開発を進められるノウハウをもつ人材が必要不可欠であり、開発、テスト、リリースまでの作業を頻繁に行える体制、開発環境の用意も必要です。
SHIFTのアジャイル開発支援(SHIFT 1LINE)をご利用いただければ、アジャイル開発導入に関する課題を解決いたします。お客様のアジャイル開発体制の構築やプロジェクト推進のために、短期的な人材確保や長期的な人材育成など、すべての局面で強力に支援します。
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監修
株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
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