Vertex AIとは?
AIや機械学習モデルをビジネスに活用する際は、アプリケーションやシステム開発に組み込むためのプラットフォームを選定する必要があります。Vertex AIは、Google Cloudの機械学習の統合型プラットフォームです。
ここでは、Vertex AIについて、具体的な機能などをご説明します。
機械学習モデルを迅速に運用するための統合型プラットフォーム
Vertex AIは、Google Cloudが提供している機械学習の統合型プラットフォームです。機械学習開発に必要なモデルやツール類がそろっており、機械学習モデルの構築からデプロイまでを完結させることが可能です。
Google Cloud Japanの『5分で分かるVertex AI』(YouTube)によると、以下のように定義されています。
Vertex AI
開発者とデータサイエンティストが機械学習(ML)モデルとアプリケーションを迅速かつ効率的に本番環境に投入するためのend to endな統合型プラットフォーム
Vertex AIの「Model Garden」を活用することで、Googleが提供するマルチモーダルAIのGemini、Google製、サードパーティー製、オープンソース製のモデルのなかから、さまざまなAIモデルを選んで利用できます。
またVertex AIには、すでに学習済みのモデルが用意された「Vertex AI Studio」と、チームで一元的に機械学習モデルの構築を行える「Custom ML Platform」があります。そのため、求めるモデルの用途や精度、利用者の技術、スキルなどにあった使い方を選ぶことが可能です。
Vertex AIが注目されている背景
近年のビジネスにおいて、機械学習モデルの有用性が注目されています。機械学習モデルを構築するためには、データの収集と処理、トレーニング、デプロイ、モニタリングなど、すべきことが数多くあります。
しかし、作業ごとにツールが細分化されていると、ツール間のデータの互換性が低い、モデル構築に手間と時間がかかるなど、多くの問題を抱えていました。
Vertex AIには、機械学習モデルやツール類が統合されており、構築からデプロイまでを行うことが可能です。Vertex AIを活用すれば、短時間で比較的簡単にモデルを構築できます。また、Google関連のツール類との互換性が高いのも、大きなメリットです。
機械学習のニーズが高まりつつあるなか、機械学習モデルの構築が効率化するVertex AIに、注目が集まっています。
Vertex AIの主な機能
Vertex AIには主に「Model Garden」「Vertex AI Studio」「Custom ML Platform」の3つの機能があります。ここでは、これらの機能について解説します。
Model Garden
Model Gardenでは、GoogleやGoogleパートナーが提供する、さまざまなモデルを利用できます。Google独自の評価基準を満たすモデルが厳選されており、それぞれのビジネスニーズにあうモデルを選ぶことが可能です。
具体的には、以下のようなモデルが含まれています。
【Model Gardenに含まれる主なモデル】
Google製モデル
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基盤モデル
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・マルチモーダル生成AIのGemini
・テキストから画像へ変換するImagen
・テキストから動画、画像から動画へ変換するVeo
・音声入力用のChirp2.0
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事前トレーニング済みAPI
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・Speech-to-Text
・自然言語処理
・翻訳
・ビジョン
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オープンモデル
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・Gemma 2、CodeGemma、PaliGemma
・Meta の Llama 3.1、3.2
・Mistral AI、AI21
・TII の Falcon、BERT、T-5 FLAN、ViT、EfficientNet
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サードパーティーモデル
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Anthropic の Claude Model Family
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※2025年1月時点のもの
上記の表からもわかるとおり、Google社以外が提供するモデルも利用可能です。
Vertex AI Studio
Vertex AI Studioには、学習済みのAIがすでに用意されており、自然言語処理、音声分析、画像認識などの高性能なAIを迅速に活用できます。学習済みモデルをチューニングすれば、追加のデータを学習させることも可能です。
プロンプトを入力して、目的のテキストや画像、動画などを得る、翻訳を行うなどの使い方ができます。また、プロンプトを改善するプロンプトギャラリーや、プロンプトチューニングなどの機能も備わっています。AIに関する高度な知識がなくても、比較的簡単に扱うことが可能です。
Custom ML Platform
機械学習のデータの収集と処理、トレーニング、デプロイ、モニタリングという各フェーズのサポートをする機能や、インフラを提供するプラットフォームです。Custom ML Platformを導入することで、これらの作業をチームが一元的に行うことも可能です。
Vertex AIでのトレーニング方法
Vertex AIでのトレーニング方法には、AutoMLとカスタムトレーニングの2種類があります。ここでは、それぞれのトレーニング方法について解説します。
AutoML
AutoML(Automated Machine Learning)とは、機械学習モデルを構築するために、繰り返し行う学習を自動化する仕組みのことです。この方法を選ぶと、コードの記述やデータの分割などの準備を行わなくても、トレーニングが可能です。
機械学習モデルを構築するためには、大量のデータを解析して、繰り返し学習させる必要があります。その際に、適切な学習アルゴリズムの選択、ハイパーパラメーターのチューニング、学習データの前処理など、さまざまなことを行わなければなりません。これらの作業を適切に行うためには、機械学習の専門的な知識や技術が必要です。
AutoMLでは、上記のような作業も含めて、モデルの作成作業が自動化されています。そのため、トレーニング用のデータを用意すれば、一定の精度のモデルを作成することが可能です。ただし、モデルを細かくカスタマイズしたい場合、この方法は向きません。
カスタムトレーニング
構築するモデルを細かくカスタマイズしたい場合には、カスタムトレーニングを行うことも可能です。独自のトレーニングコードの記述、ハイパーパラメーターのチューニングなどを行うことで、トレーニングの内容を完全に制御できます。
モデルを目的にあわせて細かくカスタマイズしたい場合に適していますが、機械学習に関する高度な知識や技術が必要になるでしょう。
Vertex AIを利用するメリット
Google CloudのVertex AIを利用するメリットについて、解説します。
さまざまなモデルを利用できる
Vertex AIでは、Google製のモデルだけではなく、他社のモデルや豊富なツールを利用できます。
『Model Garden』でもご説明したとおり、Google製、オープンソース製、サードパーティー製のモデルを利用可能です。たとえば、Meta社のLlama、Anthropic社 の Claudeなど、他社モデルも利用できます。
1つのプラットフォームで機械学習開発が完結する
Vertex AIには、機械学習に必要なモデルやツールが一通りそろっています。そのため、ツール間の互換性などを気にする必要もなく、1つのプラットフォーム上で開発作業が完結するのが大きなメリットです。
Vertex AI 独自の多彩な機能を利用できる
Vertex AIは、他社の製品にはない独自の機能が数多く用意されています。
たとえば、ハイパーパラメーターの自動チューニング機能を活用すれば、それぞれのモデルに適したパラメーターを自動的にチューニングできます。
また「Datasets」機能を活用すれば、機械学習を行うための学習データセットを効率的に作成することも可能です。アノテーション作業支援や知識が少なくても、簡単にラベリングできるツールなども利用できます。
機械学習のワークフローの管理機能も搭載されており、ワークフローの自動化、モニタリング、管理が可能です。これにより、データの入力からモデルの構築、本番環境へのデプロイまでの作業時間を大きく短縮できるでしょう。
このようなVertex AIの独自機能を活用することで、機械学習モデル構築でとくに時間がかかる、パラメーターチューニングや学習データセットの作成作業、構築からデプロイまでの作業管理などを効率化することが可能です。
Google Cloudとの統合が容易
Google Cloud製品とシームレスに統合できるのも、大きなメリットです。Google Cloudのストレージやデータベースなどと簡単に連携できるため、作業効率の向上に期待できます。
たとえば、ビッグデータの高速分析が可能なBigQueryや、ストレージサービスのCloud Storageと連携させることで、大量データを扱いやすくなります。機械学習モデルのトレーニングを行う際に、大量データにアクセスしやすくなるでしょう。
まとめ
Vertex AIは、Google Cloudが提供している機械学習の統合型プラットフォームです。機械学習開発に必要なツール類がそろっており、機械学習モデルの構築からデプロイまでを完結させることが可能です。
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この記事でもご紹介したとおり、Vertex AI を利用すれば、機械学習モデルをビジネスに活用することが可能です。AIや機械学習をビジネスに活用できれば、業務の効率化やコストの削減、顧客満足度の向上などのメリットを得られるでしょう。
しかし、そのためには、機械学習やAIに関する知識や技術、ノウハウが必要です。IT人材の不足により、新しい機械学習やAIの仕組みを導入するのがむずかしい企業様も多いかもしれません。
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監修
株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
林 栄一
組織活性化や人材開発において豊富な経験を持つ専門家として、人材と組織開発のリーダーを務め、その後、生成AIを中心にスキルを再構築し、現在新人研修プログラムや生成AI講座開発を担当している。2008年にスクラムマスター資格を取得し、コミュニティーを通じてアジャイルの普及に貢献。勉強会やカンファレンス、最近では生成AI関連のイベントに多数登壇している。チームワークの価値を重んじ、社会にチームでの喜びを広める使命をもつ。