OSPFとは?
OSPFとは、TCP/IPネットワークにおけるルーティングプロトコルのひとつです。インターネットなどのネットワーク通信においては、さまざまな通信方法が存在し、それぞれのネットワークにあったルーティングプロトコルを選ぶ必要があります。
ここでは、OSPFの仕組みや、そもそもTCP/IPネットワークとは何か、ルーティングプロトコルとは何かなどを解説します。
TCP/IPネットワークにおいて、最適なルートを割り出すプロトコル
OSPFとは「Open Shortest Path First」の略で「もっとも短い経路を最初に開く」と訳されます。TCP/IPネットワークで、最適な通信ルートを選ぶためのルーティングプロトコルのことを指します。大規模なネットワークで使われることが多いです。
OSPFは「リンクステート型」と呼ばれるプロトコルを指します。リンクステート型とは、それぞれのルーターがもつ、ネットワークの接続状況の情報をルーター同士で共有して、最適なルートを選ぶ方法です。
ネットワークの通信経路はひとつではなく、複数の経路が存在し、それぞれのルートにコストが設定されています。通信速度がはやい回線ほどコストが低く設定されており、トータルでコストがもっとも低くなるようにルートを選択します。そのため、OSPFを採用することでデータ転送効率があがり、ネットワーク遅延を最小限に抑えることが可能です。
従来は、経由するホップ数と呼ばれるルーターの数からルートを選ぶプロトコルの、RIPが用いられていました。この方法は計算が単純で、処理能力の低い当時のルーターでも実現可能な方法でした。
しかし、現在はルーターの性能が大幅に向上しており、OSPFのコストを計算して、最適なルートを選ぶ処理を実現できるようになりました。その結果、より高速で効率のよいルートを選べるようになっています。
ルーティングプロトコルとは?
ルーティングプロトコルとは、パケットを転送するルートを決めるための方法を定めたものです。ルーティングプロトコルには、さまざまな種類があるのが特徴です。
企業ネットワークなどの大きなネットワークのかたまりは、AS(Autonomous System)と呼ばれ、AS内部のルーティングかAS外部のルーティングかで種類がわかれます。AS内部のルーティングはIGP、外部のルーティングはEGPと呼ばれます。
IGPには「リンクステート型」や「ディスタンスベクタ型」があり、OSPFはリンクステート型のルーティングプロトコルです。リンクステート型とは、ルーター間の接続状況をほかのルーターと共有することで、すべてのルーターがその情報をもとに経路を決める方法です。
この方法には、経路変更が起こってもすばやく対応できるという特徴があります。一方、ディスタンスベクタ型は、ルーターが宛先の機器までの距離情報を交換することで、距離が最短のルートを選ぶ仕組みです。上記でご紹介したRIPは、ディスタンスベクタ型です。
また、AS外部で使われるEGPには、BGPというルーティングプロトコルがあり、AS間で経路情報を交換する際に使われます。
このように、ルーティングプロトコルにはさまざまな種類があり、状況に応じて適切なプロトコルが使われています。
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OSPFの仕組みを理解するうえで重要なポイント
OSPFの仕組みを理解するために、OSPFの重要なポイントについて解説します。
LSAによる情報交換
すでにご説明したとおり、OSPF はリンクステート型と呼ばれるルーティングプロトコルで、LSA(Link State Advertisement)という情報を各ルーターが交換します。LSAには、それぞれのルーターの接続状況、帯域幅などの情報が含まれます。
OSPFでは、ルーター同士がLSAを共有してルーティングテーブルをつくることで、最適なルートを選択できる仕組みです。
「コスト」に基づいたルーティング
OSPFの仕組みにおいて重要なのが、コストという概念です。
コストはそれぞれのルートに設定されており、通信速度がはやく、広帯域な回線のコストは低くなっています。ルート選択時には、このコストがトータルでもっとも低くなるようにルートを選んでいくことで、データ転送効率を向上させることが可能です。
「エリア」による効率的な運用・管理
OSPFには、ネットワークを「エリア」と呼ばれる単位に分割することで、ルーターの負荷を軽減する仕組みも存在します。ネットワークの規模が大きすぎると、そこに含まれるルーターの情報を共有する際に、扱う情報量が多くなりすぎる可能性が高いです。
ルーターにかかる負荷が大きくなりすぎると、ネットワーク全体の通信速度が低下する恐れもあります。エリアを適切に分割することで、ルーターにかかる負荷を軽減することが可能です。
OSPFのメリット
大規模なネットワークの管理がしやすくなる
OSPFはネットワークの規模が大きくなっても、複雑な処理を効率よく行えるため、大規模ネットワーク向けです。また、ネットワーク内で障害が発生した際なども、迅速に対応することが可能です。
ネットワーク変更が生じた場合にも対応がすばやい
OSPFは、ネットワーク内でルーターの配置などに変更が生じた場合も、情報のアップデートがすばやく行われます。
OSPFには、AS内部のすべてのルーターが共有するルーティングテーブルがあり、ネットワーク変更が生じた際には、差分だけをほかのルーターに伝える仕組みです。そのため、ネットワーク内の変更が共有されるまでの時間がはやく、変更に対する対応がすばやく行われます。
ループの発生を抑えられる
ルーティング時に大きな問題になるのが、ループの発生です。ルーティングが正しく行われず、同じルートを何度もループすると、パケットが宛先に届かなくなってしまいます。
しかし、OSPFは上記でご説明したとおり、ネットワーク変更が生じた際にすばやく情報共有が行われるため、ループが発生しにくいというメリットがあります。
ネットワークの負荷分散が可能
OSPFはコストという概念を使用して、最適なルートを選択する方法です。ルートが複数存在し、どれも同じコストだった場合は、それぞれのルートに分散し、パケットを送信して負荷分散を行うことも可能です。
OSPFの導入にあたっての注意点
OSPFには、欠点も存在します。ここでは、OSPFの注意点について解説します。
運用には専門知識が必要になる
OSPFを運用する際には、設定の複雑さ、運用のむずかしさなどが障害になることもあります。大規模ネットワークにはOSPFが適していますが、複雑な設定や運用を行える専門知識と経験をもつ人材が必要になるでしょう。
大規模ネットワークでOSPFを導入する際は、適切なネットワーク運用や継続的な監視ができる体制を整えておく必要があります。
メモリやリソースの消費が多い
OSPFは、ルーティング時に扱う情報量が多いため、多くのメモリとリソースを消費します。そのため、高性能なルーターを用意できない場合には、ほかのプロトコルを選んだ方がよいケースもあります。
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まとめ
OSPFは、大規模ネットワーク向けのルーティングプロトコルで、コストという概念を用いるのが大きな特徴です。ネットワーク変更にも強い、ループが発生しにくいなどのメリットもある一方で、運用するためにはある程度の専門知識をもつ人材が必要です。
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監修
株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
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