AI OCRとは?
AI OCRとは、手書きの文書やフォーマットが決まっていない文書の読みとりもできる、文字データ変換技術です。
ここでは、AI OCRの技術について詳しく解説します。
画像データの文字をAIで抽出し、テキストデータに変換する技術
OCRとは「Optical Character Recognition」の略で「光学文字認識」と訳され、画像データに記載された文字を認識し、文字データに変換する技術のことです。AI OCRは、AIとOCRを組み合わせることで、従来のOCRに比べて、文字の読みとり精度が飛躍的に向上しています。
独立行政法人中小企業基盤整備機構の情報サイト「J-Net21」の『AI 開発』で、以下のように定義されています。
AI OCR
AI-OCRとは、文書に記載されている文字情報をAIに読み取らせ、テキストデータに自動変換する技術である。
人間は、紙の文書や画像に書かれた文字を、無意識に読みとれます。しかし、コンピューターはそれがむずかしいため、OCRという技術によって紙の文書をスキャナーで読み込み、文字データに変換する必要があります。OCRの技術によって、人間が文字を読みとって、データ入力する手間を減らせるようになりました。
しかし、従来のOCRでは、手書きの文字や、フォーマットが決まっていない文書に書かれた文字などを読みとることが困難でした。一方、AI OCRでは、文字の筆跡の特徴を学習していくため、手書き文字の読みとり精度があがっています。
また従来のOCRは、読みとる帳票などのフォーマットを指定する必要がありましたが、AI OCRなら、そのような手間を減らすことも可能です。
このように、AI OCRはAIの技術をとり入れたことで、従来のOCRより読みとり精度が向上しています。 そのため、AI OCRをビジネスに活用することで、業務効率の改善につなげることも可能です。
従来のOCRとの違い
AI OCRと従来のOCRとの違いは、AIによる機械学習の有無です。
従来のOCRは、活字の読みとりは効率的に行えますが、手書き文字の認識率はそこまで高くないという問題点がありました。たとえば、カタカナの「ン」と「ソ」、カタカナの「エ」と漢字の「工」などの区別がつきにくいケースもあります。
一方、AI OCRは、ディープラーニングによって誤認識したケースを学習していくため、文字の認識率を向上させることが可能です。手書き文字や専門用語、業界用語などに関しても、さまざまなケースを学習することで、対応できるようになります。
ディープラーニングについてはこちらもご覧ください。
>>ディープラーニングとは?機械学習との違いやできること、活用事例を解説のページへ
AI OCRを導入するメリット
AI OCRを導入することで、多くのメリットを得られます。ここでは、AI OCRを導入するメリットについて解説します。
読みとりの精度(識字率)が高い
AI OCRは、過去に読み込んだ文字列のデータを学習していくことで、文字の読みとり精度を高めることが可能です。
従来のOCRは、もともとある情報の範囲のなかで、決まったパターンの文字を認識する仕組みです。そのため、認識パターンを更新しない限り、誤認識をしてもそのまま変わりません。一方、AI OCRは誤認識した結果を学習することで、読みとり精度を高めていくことが可能です。
ペーパーレス化でコスト削減ができる
紙媒体の申込書や文書などをデータ化することで、ペーパーレス化を実現できます。各種手続きに必要な申込書、伝票などの帳票、名刺などを運用している場合には、すべてAI OCRで読みとってデータ化することで、管理しやすくなります。書類をファイリングし、インデックスをつけ、必要な場合に探す手間などをなくすことで、コスト削減につながるでしょう。
RPAや既存システムとの連携により、業務効率化を実現できる
AI OCRで紙媒体の情報をデータ化することで、RPA(Robotic Process Automation)や、既存システムともスムーズに連携できます。
たとえば、請求書のデータを読みとってデータ化することで、請求書システムにそのまま入力することが可能です。請求書のデータを人間が読みとって、請求書システムに入力するよりも、AI OCRでデータを読みとってそのままシステムに連携する方が、業務効率を高められます。
このように、AI OCRで読みとったデータを、そのままRPAや業務システムに連携することで、業務効率の向上につながります。
データベース化より、情報の活用範囲が拡大する
AI OCRで紙媒体の文書を読みとり、データベース化すれば、その情報をさまざまな範囲に活用できるようになります。
たとえば、紙の注文書の情報をデータベース化すれば、顧客の年齢や性別、注文履歴などを分析することが可能です。データを分析することで、どの層にどのような商品が売れるのかなどの分析ができ、マーケティング戦略に活かせます。
このように、AI OCRを用いて紙の情報をデータベース化すれば、幅広く情報を活用できるようになります。
AI OCRの活用事例
紙媒体の情報を高精度で読みとる機能は、あらゆる分野で活用されています。ここでは、その活用事例の一部をご紹介します。
製造業
取引先などから届く注文書や請求書などの情報をデータ化し、受発注システムと連携させることで、業務効率が改善されています。
自治体
自治体がとり扱う各種申請書を読みとり、申請システムと連携させるなど、申請処理業務の効率化に役立っています。
金融機関
金融機関が扱う口座開設申込書、口座振替依頼書、各種申込書などの手書きの帳票をデータ化し、銀行システムと連携させます。これにより、窓口業務の効率化を実現しています。
物流業
倉庫の作業予定やトラックドライバーの配車計画など、手書きで管理されている情報をデータ化することで、業務の効率化を進められます。
AI OCRの種類
AI OCRには、読みとる帳票の種別とフォーマットの違いによって、以下の3種類が存在します。
【AI OCRの種類】
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汎用×定型フォーマット型
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汎用×非定型フォーマット型
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業務特化×非定型フォーマット型
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帳票種別
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汎用
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汎用
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業務特化
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帳票フォーマット
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定型
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非定型
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非定型
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メリット
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・認識精度が高い
・さまざまな帳票に対応可能
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・フォーマットの定義作業が不要
・さまざまな帳票に対応可能
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・フォーマットの事前学習が不要
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デメリット
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・フォーマットが増えるとその都度定義が必要
・定義したフォーマットしか読みとれない
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・事前のフォーマット学習が必要
・新規フォーマットの場合、読みとり精度が低くなる可能性がある
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・特定の業務や帳票にしか対応できない
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それぞれについて解説します。
汎用×定型フォーマット
読みとる帳票は汎用で、帳票のフォーマットは定型のタイプです。
事前にフォーマットを定義するため、文字の認識精度が高いですが、フォーマット定義の作業が必要です。また、フォーマットが増えると、新たに定義する手間が発生します。
汎用×非定型フォーマット
読みとる帳票は汎用で、帳票のフォーマットは非定型のタイプです。
AIで帳票フォーマットを学習させるため、フォーマットを定義しなくても文字認識できます。フォーマットの定義作業が不要で、そのうえさまざまなフォーマットに対応できます。ただし、AI学習のためのデータの準備や時間がかかることと、学習量が少ないと認識精度が下がることがデメリットです。
業務特化×非定型フォーマット
読みとる帳票は業務に特化したもので、帳票のフォーマットは非定型のタイプです。
あらかじめ業務に特化したフォーマットを学習させておくことで、事前学習をしなくても、さまざまなフォーマットの帳票の読みとりが可能です。ただし、あらかじめ学習したフォーマットにしか対応できません。
AI OCRの選び方
AI OCRを選ぶ際に確認したい、重要なポイントについてまとめました。
実文書への適応力で選ぶ
実際に読みとる文書に対応しているか、具体的な項目なども確認して検討する必要があります。導入したあとに対応していないことがわかると、大きな手戻りになってしまいます。
導入のしやすさで選ぶ
ツールを導入しやすいか、自社の既存システムに対応しているかなども重要です。導入サポートを受けられるかどうかも、確認しておいた方がよいでしょう。
サポート体制の手厚さで選ぶ
AI OCRの運用時に問題が発生した場合にサポートを受けられるか、問い合わせ対応が可能かなども重要なポイントです。
連携機能で選ぶ
自社の既存システムと連携可能かなど、連携機能の有無も確認しておきましょう。実際に運用する際に、連携したい機能をあらかじめ確認しておく必要があります。
セキュリティで選ぶ
帳票データには、顧客情報や社内の機密情報などが含まれている場合もあります。AI OCRで読み込んだデータが、外部に流出するリスクを考慮して、セキュリティ面についても検討しましょう。
AI OCRを導入するときの注意点
AI OCRを導入する際の注意点についても、まとめました。
人間による最終チェックと修正が必要になる
AI OCRで読みとったデータが誤っている可能性もないとはいえないため、最終的には人間によるチェックが必要です。AI OCR導入時には、人によるチェックと修正を行える体制を整えておく必要があるでしょう。
認識精度を向上させるのに長期間かかる場合がある
AI OCRの認識精度を向上させるためには、学習データを蓄積して学習させる必要があります。そのため、高い精度で認識できるようになるまで、時間がかかることに注意が必要です。
まとめ
OCRとは「Optical Character Recognition」の略で「光学文字認識」と訳され、画像データに記載された文字を認識して、文字データに変換する技術のことです。AI OCRはAIとOCRを組み合わせることで、従来のOCRに比べて、文字の読みとり精度が飛躍的に向上しています。
AI OCRを活用することで、紙媒体の申込書や文書類を高い精度でデータ化でき、業務効率の向上が期待できます。
AI OCRを自社のビジネスに導入したい、顧客満足度の向上や業務の効率化に役立てたいなどの場合には、SHIFTのDXサービス開発をご活用ください。それぞれのニーズやシステム環境にあった対応で、お客様のDX推進を強力にサポートいたします。
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この記事でもご紹介したとおり、AI OCRを社内システムや業務システムに導入することで、紙媒体の文書の文字情報をデータ化できます。情報を電子データ化できれば、業務効率の向上につながるでしょう。
一方で、自社のシステムや帳票フォーマットにあったAI OCRを選び、既存システムに連携させる必要もあります。そのためには、業務内容を検証し、自社にあったAI OCR を選ばなければなりません。しかし、IT人材が不足しており、AI OCRの導入やシステム連携を自社内で行うのは、むずかしいとお悩みの企業様も多いでしょう。
そこで、SHIFTのDXサービス開発をご活用いただければ、そのようなお客様のお悩みを解決いたします。 SHIFTは、DX支援に豊富な実績があります。独自のノウハウでお客様に最適なソリューションをご提案します。
監修
株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
林 栄一
組織活性化や人材開発において豊富な経験を持つ専門家として、人材と組織開発のリーダーを務め、その後、生成AIを中心にスキルを再構築し、現在新人研修プログラムや生成AI講座開発を担当している。2008年にスクラムマスター資格を取得し、コミュニティーを通じてアジャイルの普及に貢献。勉強会やカンファレンス、最近では生成AI関連のイベントに多数登壇している。チームワークの価値を重んじ、社会にチームでの喜びを広める使命をもつ。