Introduction
「自動運転技術で車や人を認識して安全に運転してくれる」「防犯カメラで指名手配中の犯人がつかまった」など、画像認識技術の活躍の場が広がっています。画像認識の精度が向上した背景には、AI技術の進化があることをご存じでしょうか?画像認識技術に、ディープラーニングの技術は欠かせません。
では、実際に画像認識技術とはどのようなもので、導入するとどのようなメリットがあるのでしょうか?
この記事では、画像認識の定義、種類、画像認識におけるAIの重要性などについて解説します。
目次
画像認識とは
画像認識とは、画像に写っているものをコンピューターが認識する技術のことです。
ここでは、画像認識の定義、画像認識技術の歴史、活用事例について解説します。
画像から人やモノを認識して検出する技術のこと
画像認識とは、画像に写っている人やモノなどを認識して、検出する技術のことです。自動運転や監視カメラなどのあらゆる分野で、この技術が活かされています。
画像認識技術には、機械学習やディープラーニングなどの技術が欠かせません。大量の画像データを学習させ、車とはどのような形や色なのかなど、特徴をコンピューターに学習させます。そうすることで、コンピューターが車の画像を認識して、車が写っているか写っていないかを判断できるようになるのです。
画像認識技術の歴史
画像認識技術の研究がはじまった時期は、1940年代にさかのぼります。その歴史の流れは、以下のとおりです。
1940年代:バーコードを光学認識する技術が登場
1960年代:2次元画像の画像認識技術が登場
1970年代:3次元データの物体認識技術が発展
1980年代:パソコンの普及により画像処理専用CPUが登場
2000年代:インターネットの普及によりGoogle画像検索などが登場
2010年代:ディープラーニングの進化により画像認識の精度が飛躍的に向上
画像認識技術が急速に発展したのは、2010年代に登場したディープラーニングの存在が大きいことがわかります。
ビジネスにおける画像認識の活用事例
ビジネスシーンにおいて、画像認識技術は幅広い分野で活用されています。その事例の一部について、ご紹介します。
・人や車両、道路、障害物、標識などを認識する
・工場の製造ラインなどで不良品を画像で検出する
・建物の入り口のゲートや防犯カメラなどで顔認証を行う
・郵便物の自動仕わけ、データのとり込みなど
このように、自動車業界、製造業、セキュリティの分野など、幅広い分野で活用されていることがわかります。画像認識技術は、上記以外にも多くの場面で活躍しています。
画像認識の種類
画像認識には、いくつかの種類があります。それぞれの内容や活用されている場面について、ご説明します。
物体検出
物体検出とは、画像内にある物体を検出する技術です。画像のなかから車などを検出して、認識します。
物体検出技術が活用されている代表的な分野といえば、自動運転技術です。車や人、道路、標識、障害物などを検出して判別します。
物体検出の評価指標「mean Average Precision (mAP)」について
物体検出を行う際には、mAPという評価指標が用いられます。多クラス分類タスクに対する評価指標で、各クラスの平均適合率を平均した値を意味するものです。mAPの値が1.0に近いほど、機械学習モデルの性能が高いことを表します。
画像分類
画像分類とは、その画像が何の画像なのかを種類ごとに分類していく技術です。無作為に並べられた画像から特徴をつかみ、たとえば車の画像なのか食品の画像なのかなどと分類わけしていきます。
工場などの生産ラインの製品仕わけ、ピッキング、画像検索、在庫管理などに活用されています。
画像キャプション生成
画像認識と自動言語処理を組み合わせることで、画像キャプション生成が可能です。画像キャプション生成とは、画像を認識して何が写っているか、状態はどうかなどを判断し、適切な文章を生成してつけるものです。
動画視聴サイトなどで活用されており、文字読みあげ機能も組み合わせて、読みあげサービスを実装している動画サイトもあります。目が見えない人や、動画のざっくりした内容を知りたい人などが便利に利用できます。
セグメンテーション
セグメンテーションとは、画像を分類していく技術です。たとえば、画像に写った人物と背景などを別のものととらえ、分類します。
セグメンテーションは、画像の加工を行う際に役立つものです。画像に写った人物だけを切りとり、背景を変える、後ろに写ったものを消すなどの作業過程で使われます。
異常検知
異常検知とは、同じような物体のなかから、異常を検知する技術です。通常の状態と異常状態を認識し、異常の場合のみを検知して、アラートを発するなどの使い方をします。
活用方法としては、製造業での生産ラインで不良品を検知する、医療業界でCT画像から患部を検出する、インフラの整備で異常箇所を検知するなどがあります。
顔認証
顔認証は、あらかじめ登録した顔の画像に一致するかを判断する技術です。顔の輪郭、目、鼻、口、耳などの位置、形、特徴からそれぞれの顔を認識します。
セキュリティゲートやスマホロックの顔認証などで、実用化されています。
文字認識
文字を認識してテキストデータに変換する、翻訳に活用するなどの技術です。
郵便物の宛先の自動仕わけ、テキストデータを画像で読みとってデータ化する、画像で文章を読みとって翻訳するなどの使われ方があります。
画像認識におけるAIの重要性について
画像認識技術の進化の過程で、AIの存在は非常に重要です。ここでは、ディープラーニングがかかわる画像認識の仕組みなどについて、解説します。
ディープラーニングを活用した画像認識の仕組み
画像認識技術の進化の過程では、ディープラーニング技術の存在が必要不可欠です。
ディープラーニングとは、コンピューターに大量のデータを学習させて、人間が行うような認識や判断などを可能にする技術のことです。ディープラーニングは、人間の脳の仕組みによく似たニューラルネットワークをベースにしてつくられており、人間が行うような作業を実現します。
ディープラーニングで大量の画像データをコンピューターに学習させることで、画像認識の精度が格段に向上しました。たとえば、自動運転で画像認識技術が使われていますが、最初から自動車や人、道路、標識などを認識できたわけではありません。大量の画像を学習することで、人間がするように車両や人、道路、標識などを認識し、判断できるようになったのです。
画像認識で使われる主要なプログラミング言語は「Python」
Pythonは、AIの分野で用いられることが多いプログラミング言語であり、画像認識の分野でもよく使われます。
Pythonには、画像認識に役立つライブラリのOpenCV、Pillow、scikit-imageなどがあり、画像認識処理がしやすくなっています。たとえば、OpenCVを用いれば、画像加工ソフトウェアのトリミング、左右反転、フィルター処理などをプログラム可能です。
このようにPythonを使うと、画像認識処理をプログラミングしやすいため、多くのエンジニアが利用しています。
画像認識をビジネスで活用するメリット
画像認識をビジネスシーンで活用することで得られるメリットについて、見てみましょう。
業務効率化ができる
画像認識技術はあらゆる分野で活用され、業務の効率化に役立っています。
たとえば、生産ラインの不良品検知、防犯カメラで特定人物の検知、医療現場でCT画像などの患部検出、郵便物の自動仕わけなどです。画像認識技術が登場する前は、目視で不良品を見つける、郵便物を手作業で仕わけるなど、すべて人が作業を行っていました。
しかし、精度の高い画像認識技術が登場したことで、これらの作業を自動化できるようになり、業務効率が大幅に向上しました。
作業の精度が向上する
上記でご説明したとおり、生産ラインでの不良品検出や、防犯カメラで特定人物の検知などが画像認識で行われるようになりました。これにより、業務効率が向上しただけでなく、作業の精度も向上しています。
人が長時間生産ラインや防犯カメラを見て不良品や人物を探すと、どうしても作業精度が落ちます。目が疲れて対象を見逃したり、見わけがつきにくくなったりするでしょう。しかし、画像認識であれば、高い精度で識別作業や検出作業を長時間つづけることが可能です。
リアルタイムな監視・分析が可能になる
人が監視カメラの監視を長時間行ったり、大量の分析をしたりすると、どうしても作業効率や検知・判断の精度が落ちます。そのため、大量の人員を用意する必要があり、コストがかかってしまいます。
しかし、画像認識システムがあれば、リアルタイムで長時間監視することも、大量のデータを一定の精度で分析することも容易です。低コストで、リアルタイム監視作業や分析作業を行えるでしょう。
ヒューマンエラーや事故を防止できる
上記でもご説明したとおり、画像認識技術を用いれば、人が目視で判断するよりもミスが起こりにくく、事故を防止することも可能です。
慣れた人が判断すれば、高い精度で作業を行えるというメリットもありますが、ヒューマンエラーはなくせません。万が一の事故が起こる可能性も、十分にあります。
しかし、画像認識なら、一定の精度で作業品質が落ちることはなく、事故を防止することが可能です。
画像認識における課題
画像認識は精度が高く、業務効率の改善や作業精度の向上など多くのメリットが得られます。しかし、新しい分野の技術のため、課題も残されているのが現状です。ここでは、画像認識における課題について解説します。
さらなる精度の向上
画像認識は、ディープラーニング技術の登場により精度が向上したとはいえ、分野によっては不十分なケースもあります。たとえば、顔認識で、顔がよく似た双子を判別できないなどの場合もあるでしょう。また、自動運転技術は人の安全にかかわる分野なので、さらなる精度の向上が求められます。
このように、画像認識技術はまだ発展途上の段階であるため、過信は禁物といえるでしょう。
ハードウェアの小型化・省エネルギー化
画像認識を行うためのカメラや機器などのハードウェアの小型化や、消費電力の省エネルギー化なども求められています。ハードウェアの製造技術が向上したとはいえ、まだまだ発展の余地はあります。また、高機能で、省エネ効率の高い機器は製造にコストがかかるため、省コストで製造する技術も求められるでしょう。
倫理面やプライバシーの問題への対策
監視カメラで人の画像という個人情報を膨大な量管理する、顔認識システムで個人の顔データを保有するなど、プライバシーの問題もあります。大量の個人データの扱いを間違えると、個人情報の流出につながるなどの問題が発生する可能性もあるでしょう。また、個人情報を別の目的に流用するなど、倫理面の問題もあります。
安全性の確保
画像認識技術を活用していくためには、さらなる安全性の確保が必要です。
たとえば、自動運転技術で認識精度が悪く、判断速度が遅いと事故が起こる可能性があります。また、CT画像やMRI画像を画像認識で診断する際に、重大な疾病を見逃すと人の命にかかわるでしょう。
このようなケースもあるため、より高い安全性の確保が求められています。
AIシステムの品質保証
本資料は、AIシステムの品質保証をテーマに、 SHIFTで実施しているノウハウを紹介しながら具体的な手法や進め方などを説明しています。
AIシステムの安全性と信頼性を確保することで、ユーザーに安心感を提供し、その結果、より広範囲での利用を促進いただけます。品質が確保されたAIシステムは、予測精度が高まり、ビジネスの意思決定や社会問題の解決に大きく貢献します。ぜひご覧ください。
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まとめ
この記事では、画像認識の定義、種類、画像認識におけるAIの重要性などについて解説しました。
画像認識技術は幅広い分野で実用化されており、いまやなくてはならない技術です。しかし、AI技術はまだまだ発展途上であり、ミスが混入するケースも考えられます。そのため、AI品質を高める対策を講じていく必要があるでしょう。
SHIFTでは、AI特化型の品質保証サービスを提供しています。AIシステムに特化した品質フレームワークを導入し、安全性の高いシステム開発を支援します。AI開発の品質向上を目指したい場合はご相談ください。
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