Introduction
ITシステムを構築・運用するために欠かせないのが、ITインフラです。サーバーやネットワークなどの環境を構築するだけでなく、セキュリティや拡張性などへの考慮、運用設計なども大事なポイントといえるでしょう。
しかし「インフラ設計では具体的にどのようなことを検討すべきなのか」「自社のインフラを改善したいが、どうすべきかわからない」という企業様も多いかもしれません。
この記事ではインフラ設計とは何か、インフラ設計の主な作業内容、作業を外注する際のポイントなどについて解説します。
目次
インフラ設計とは

ここでは、インフラ設計とは何か、インフラ構築やインフラ運用との違いなどについて解説します。
関連サービスについて
アプリケーションやサービスの運用に必要なIT基盤を計画・設計すること
インフラ設計とは、ITシステム基盤を構築する際に必要な環境を設計するプロセスのことです。ITインフラにはサーバーやネットワークなどがあり、どのような環境を構築したいのか、そのためにどのようなハードウェアやソフトウェアが必要なのかを検討し、設計を行います。
インフラ設計を行う際は、さまざまな観点から検討が必要です。たとえばサーバーやネットワークにどこまでのパフォーマンスを求めるのか、それを実現するために必要な機器はどれなのか、どのように構成すべきかなどを検討します。
また、物理的な設計だけではなくセキュリティの観点や耐障害性、冗長性や拡張性、運用保守性などについても配慮が必要です。
どれだけスペックの高い機器を採用して性能が高くても、ファイアウォールなどのセキュリティを高める機器が十分でなければ、サイバー攻撃にさらされてしまうでしょう。重要な機器が一ヶ所に集中してしまうと、その機器が故障した場合はすべてがダウンしてしまいます。そのためさまざまな観点から考慮して、インフラを設計する必要があるのです。
インフラ構築・インフラ運用との違い
インフラ設計とインフラ構築、インフラ運用との違いは何なのでしょうか?
インフラ設計とは、要件を満たすために環境を設計することです。一方のインフラ構築は、インフラ設計のフェーズで決まった設計内容のとおり、実際にサーバーやネットワークなどの機器を設置し、設定を行う作業のことを指します。そしてインフラ構築が完了した環境を実際に運用するフェーズで、定期メンテナンスや監視、トラブル対応などを行うのがインフラ運用です。
順番としては、インフラ設計→インフラ構築→インフラ運用となります。
ITインフラの対象領域
ITインフラの対象領域とは、具体的にどこまでを指すのでしょうか?
ITインフラの領域は、大きくハードウェアとソフトウェアにわかれるのが特徴です。
ハードウェアにはサーバー、パソコン、ネットワークなどの機器があります。サーバーやパソコンの内部にある、CPUやGPU、メモリ、SSD、HDDや付属機器のマウス、スキャナー、モニター、スピーカーなども含まれます。電源ケーブルやLANケーブルなども重要な要素です。
一方で、ハードウェア上にインストールするセキュリティソフトなどのソフトウェアも、ITインフラとして必要なパーツです。また、OS、ミドルウェアなどもあります。
このように必要なITインフラは非常に幅広いものがあり、インフラエンジニアにはさまざまなハードウェアやソフトウェアの知識・技術が必要なことがわかります。
インフラ設計の重要性
ここではインフラ設計がどれくらい重要なのかについて、ご説明します。
事業の信頼性と継続性を支える
企業が業務を遂行していくためには、ITシステムやネットワークなどの存在が欠かせません。業務を紙ベースの書類や電話、FAXなどを使って行っていた昔とは異なり、現在はパソコンやネットワーク通信、業務システム、社内システムなどを用いて業務を行っています。
このようなITシステムやネットワークを支えているのが、ITインフラです。サーバーやネットワーク機器などが適切に稼働しなければ企業活動はつづけられません。つまり、ITインフラが事業の信頼性と継続性を支えているともいえるでしょう。
コスト最適化と運用効率の向上に直結する
ITインフラに必要なコストは、全体のコストのなかでも大きな割合を占めており、インフラコストの最適化が求められています。またITインフラを運用する際の効率の向上をはかることも大事です。
ITインフラのコストの最適化や運用効率の向上のためには、適切なインフラ設計を行う必要があります。たとえば障害の発生に備えてネットワークの冗長化は重要ですが、いかに無駄なく冗長化するかを検討しなければなりません。またインフラの定期メンテナンスや整備を効率よく行えるように、インフラ設計を行う必要もあります。
このように、ITインフラ設計の質は、コストの最適化や運用効率の向上に直結することがわかります。
セキュリティ性の高さを左右する
ITインフラの設計でもっとも重要なのが、セキュリティ対策です。
近年、サイバー攻撃の手口の高度化、多様化が進んでおり、社内ネットワークへの侵入、メールに添付されたマルウェアからの感染、機器の脆弱性をついた攻撃など、さまざまなセキュリティリスクへの対応が必要です。そのためITインフラを設計する際は、ファイアウォールの設置、セキュリティソフトや監視システムの整備などが必要になります。
サイバー攻撃の手法は日々進化しているため、一度インフラを設計したから安心できるというわけではなく、日々の運用においても対策を進めていかなければなりません。
インフラ設計の流れ
インフラ設計の基本的な流れについて、解説します。
ニーズのヒアリングと要件定義
ITインフラに求めるものは何か、利用者へのニーズのヒアリングを行うなどして、要件をまとめます。たとえば社内のインフラを設計する場合、システムの利用目的、従業員は何人か、今後どれくらい増える可能性があるか、ネットワーク回線に求められるスペックはどれくらいかなどを明確にします。またセキュリティポリシーや冗長性、運用保守性などの要件についてもまとめるのが特徴です。
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基本設計・詳細設計の作成
要件定義の内容をもとに、インフラの基本設計、詳細設計を行います。具体的にはハードウェア、ソフトウェア、ネットワークの構成図の作成、サーバーの数やスペックの検討、OSやソフトウェアの選定などです。
またバックアップや拡張性、セキュリティ、運用保守性などを確保するための具体的な設計を行います。クラウドインフラを導入する場合は、AWS、Azure、Google Cloudなど、どのような製品を選ぶかを選定し、利用するサービスを決めます。
ほかのシステム連携や他拠点と連携する場合などは、連携先との情報共有、インターフェースの確認などを行うことも重要です。
インフラ構築作業
設計どおりにインフラ設備を構築し、設定作業を行います。設定が完了したら動作確認を行い、当初想定した要件どおりに動作していることを確認します。
運用保守
運用保守フェーズに入ります。監視作業、定期メンテナンスなどを行い、障害発生時にはすみやかに対応を行います。監視をつづけた結果問題があった場合は、必要に応じて設計の見直しを行うこともあるでしょう。また、経年劣化でハードウェアの交換が必要になる場合もあります。
インフラ設計を外注・委託する際のポイント

インフラ設計を社内で行わず、外注、委託する際に気をつけるべきポイントについて解説します。
外注のメリット・デメリットを把握する
外注する際はメリットだけでなく、社内のITインフラという重要な設備を外注することによるデメリットも正しく把握しておく必要があります。
まずは社外に社内の重要な設備の設計・構築を任せるため、セキュリティ面について細心の注意を払わなければなりません。個人情報や社外秘など、重要なデータが格納されたサーバーまわりの作業は社内で対応する、管理者権限の管理を厳格に行う、契約時に情報の扱いに関するとり決めを行うなどが重要です。
もちろん、インフラに関する専門知識と対応実績がある外注先に作業を依頼すれば、適切なインフラ設計・構築ができるというメリットを得られるでしょう。
委託できる作業範囲を把握する
委託できる作業範囲を明確にし、外注先と認識をあわせておく必要があります。上記でもご説明したとおり、社内の重要な情報が格納されているエリアは除外することも重要です。また、コストの関係から作業範囲を限定することもあるでしょう。
委託する範囲は、ここからここまでと明確にとり決めることで、トラブルを避けることが可能です。
ニーズと要件の整理をしっかり行う
インフラ設計作業を外注する際は、ニーズと要件を整理して詳細にドキュメント化し、外注先ととり交わすことも重要です。社内で作業を行うわけではないので、依頼する作業を明確な状態にして、外注先に伝えなければなりません。ドキュメント化することで要件が見える化され、互いの認識の違いを正せます。
外注先とコミュニケーションを綿密に行う
インフラ設計を依頼する外注先と、コミュニケーションを綿密に行うことも重要です。依頼する側が「細かく伝えなくとも、外注先がうまくやってくれるだろう」と考えて詳しく要件やニーズを外注先に伝えないと、求めるインフラを得られないでしょう。
最初に要件を決める際は、具体的に現場の課題やインフラ設計の目的を伝え、外注先から提示された要件定義書を必ず詳細にレビューしましょう。不明点や問題点はその場で確認し、納得するまでレビューを繰り返してください。
また、インフラ設計作業中も定期的にコミュニケーションをとり、問題が発生したらその都度解決することで問題が小さいうちに解決できます。さらにインフラの運用がはじまったあとも問題なく稼働しているかを確認し、問題が生じた場合はその都度伝えて対処してもらいましょう。
保守運用やトラブル対応がしっかりしている会社を慎重に見極める
外注先を選定する際は、保守運用対応がしっかりしており、トラブル対応時にも十分な対応をしてくれるところを選ぶ必要があります。
具体的にどのような保守運用の作業をしてくれるのか、トラブル時の体制はどうなっているかを細かく確認することが重要です。また過去のトラブル対応の実績なども考慮して、信頼できる外注先を比較検討して選定しましょう。
まとめ
インフラ設計とは、ITシステム基盤を構築する際に必要な環境を設計するプロセスのことです。ITインフラにはサーバーやネットワークなどがあります。どのような環境を構築したいのか、そのためにどのようなハードウェアやソフトウェアが必要なのかを検討し、設計を行います。
ITインフラの設計は、企業運営を支える重要なものです。インフラ設計が甘いことで脆弱性をついてサイバー攻撃をしかけられ、重要な情報が外部に流出してしまうなどの事故が起こることもあります。
重大なセキュリティインシデントが発生すれば、企業としての信用が低下し、信頼をとり戻すためには相当な時間がかかるでしょう。そのようなことが起きないよう、インフラ設計は慎重に行わなければなりません。
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「社内のインフラを改善してセキュリティ対策を強化したい」「社内のサーバー環境やネットワーク環境を改善したいが、ITに詳しい人材がおらずノウハウもない」と、お悩みの企業様は多いかもしれません。
この記事でもご紹介したとおり、ITインフラ設計は企業にとって重要なものです。インフラ設計が甘いとセキュリティ対策がおろそかになる、トラブル発生時に影響が大きくなるなど、多くの問題が発生します。
しかし、社内でITインフラ設計を適切に行うためには、インフラ設計・構築に関する専門的な知識や技術が必要です。社内にITインフラのスペシャリストがおらず、インフラの改善ができないという場合もあるでしょう。
そこで、SHIFTのインフラ設計・構築サービスをご活用いただければ、お客様のビジネス要件にあわせたインフラ設計や構築を、企画から運用までトータルサポートいたします。DXに関する豊富な知見や多種多様な業界ノウハウを活かして、お客様の業務やお悩みに対する最適なご提案をいたします。

監修
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
担当講座
・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
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https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
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