Introduction
企業が業務システムや社内システム、ツール類などを開発する際は、開発要件にあった開発環境を用意する必要があります。パソコンやサーバーなどのハードウェアはもちろん、使用するプログラミング言語にあった開発プラットフォームや開発ツールなど、適した環境を選ぶことが重要です。
適切な開発環境がそろっていないと開発効率が落ち、開発の質を下げることにもつながります。そのため、自社の開発要件にあった開発環境を用意する必要があるのです。
この記事では、開発環境とは何か、開発環境の選び方や自社で開発環境を構築する際のチェックポイントについて解説します。
目次
開発環境とは

ここでは、開発環境とは何かについて解説します。
システムを開発するために必要な機材やソフトウェアなどの組み合わせ
開発環境とは、システムを開発するために必要なハードウェアとソフトウェアの組み合わせのことです。開発要件によって、開発環境が指す内容は大きく異なります。
たとえば、パソコンやサーバーなどのハードウェア、テキストエディタなどの開発ツール、コンパイラ、デバッガ、プログラムの実行環境、ライブラリなどがあります。必要な環境は、選ぶプログラミング言語や開発要件によって、大きく異なります。
また、開発に必要なエディタ、コンパイラ、デバッガなどのツールを一式組み込んでパッケージになった「統合開発環境(IDE、Integrated Development Environment)」も存在します。開発要件にあったIDEを導入することで、必要な開発環境が一式そろうため、採用する現場も多いです。
IDEについては、後ほど『統合開発環境(IDE)とは』で詳しくご紹介します。
開発環境を整えるのに必要な構成要素
開発環境に必要な構成要素は、大きくソフトウェアとハードウェアにわかれます。ここでは、それぞれの具体的な構成要素について解説します。
ソフトウェア
開発環境に必要なソフトウェアとしては、プログラミングを行うために必要なテキストエディタ、コンパイラや実行環境などがあります。
プログラムを書く際は、メモ帳などのテキストエディタを使っても問題なく開発できます。しかしそれよりは、プログラムの文法に沿って関数の候補を表示したり、タグなどが自動で記述されたりする専用のエディタを使った方が効率よくミスを少なくできるでしょう。
また、使うプログラミング言語にあったコンパイラやデバッガ、実行環境なども必要です。そのほか、開発をスムーズに進めるためのツール類やライブラリ環境、フレームワークなどをインストールすることもあります。
ハードウェア
開発環境にはパソコンやサーバー、ネットワーク環境などのハードウェアも必要です。
開発を行うパソコンは、開発要件にあったスペックをもつ製品を選ぶ必要があるでしょう。たとえば大規模なプログラムを開発した場合、コンパイルに時間がかかることがあります。コンパイルするたびに時間をとられてしまっては開発効率が大幅に落ちてしまうため、CPUやメモリなどの性能を十分に考慮しなければなりません。
また、遠隔地でも開発を行う場合はとくにネットワーク環境を強化する必要もあります。開発中のシステムの情報が外部に漏れることがないよう、セキュリティ対策の強化も必要になるでしょう。
このように、開発要件に適した開発環境を用意する場合は十分な性能を備えたハードウェアも必要です。
クラウド型開発環境の選択肢
上記でご説明したとおり、開発ツールなどのソフトウェアとパソコンなどのハードウェアを自社で用意して開発環境を整える場合、オンプレミス型の開発環境になります。
この場合、自社内に専用の開発環境を用意できるため、完全に自社向けにカスタマイズした使い勝手のよい専用環境にできるでしょう。しかし、環境を自社でメンテナンスしつづける必要があり、ほかの環境に変えづらいという問題もあります。
そのような問題を解決するためには、クラウド型開発環境を選ぶのも一つの方法です。クラウド型開発環境とは、提供事業者が用意する開発環境をインターネット経由で利用する形態のことです。自社では操作するためのパソコンがあればよく、開発環境としてのソフトウェアやハードウェアを用意する必要がありません。
クラウド型開発環境を導入すれば、初期導入費用を抑えられるうえに、開発環境のメンテナンスが不要、かつ環境の乗り換えがしやすいというメリットがあります。しかしランニングコストがかかる、ネットワーク経由なので動作が重くなる場合がある、というデメリットもあるため注意が必要です。
クラウド型開発環境にはAWS Cloud9、Replit、GitHub Codespacesなどがあり、開発要件にあった環境を選ぶとよいでしょう。
統合開発環境(IDE)とは
統合開発環境(IDE、Integrated Development Environment)とは、プログラミングなどの開発作業に必要な複数のソフトウェアが統合された、開発プラットフォームです。
プログラミング言語の文法に添って関数の色わけ表示や自動入力などの機能が備わったエディタ、開発言語に対応したコンパイラ、デバッガなどがそろっています。
コードの記述やコンパイル、デバッグなどの開発作業に必要なソフトウェアが一式そろっているため、対応するIDEを一つ用意すればよく、便利です。
IDEの役割とメリット
IDEがないと、エディタやデバッガなどを一つずつ自分で用意し、それらをすべて管理しなければなりません。しかしIDEがあれば必要な要素はすべてそろい、アップデートなども一度に行えるため便利です。
オプションも豊富に準備されており、必要なプログラミング言語や機能が増えた場合は追加もできます。さらに、開発は複数人で行うことがほとんどですが、リポジトリサーバーと連携することで複数人でのコード共有やバージョン管理が可能になり、チームでの作業もスムーズになります。
このように、IDEを導入することで開発環境の準備やメンテナンスが楽になる、拡張機能がある、複数人での開発がしやすいなど、多くのメリットを得られるでしょう。
一般的に利用されているIDE
一般的に利用されているIDEには、具体的に以下のような製品があります。それぞれの特長を知り、自社の開発要件にあったIDEを選ぶとよいでしょう。
・Visual Studio
Microsoft社のメジャーなIDEです。インストールすればすぐに使える、拡張性や自由度が高いなどのメリットが多く、「.NET(C#/F#/VB.NET/ASP.NET)」「C++」に対応しています。
・VS Code(Visual Studio Code)
軽量なのに多機能で拡張性が高く、多くのプログラミング言語に対応しています。UIは直感的で、初心者からプロフェッショナルまで利用しやすいでしょう。
・IntelliJ IDEA
主にJavaを中心に、さまざまな言語に対応しています。使いやすく洗練されたUIで、初心者も使いやすく、生産性をあげるための機能が多数搭載されています。
・Eclipse
基本的にはJavaの開発環境として利用されますが、ほかにも「C、C++、PHP、Python、Ruby」など、多くのプログラミング言語に対応しています。プラグインが豊富で自由に拡張可能であり、基本的に無料で使えるのが魅力です。
・Xcode
Apple製品向けの統合開発環境で、Macパソコンでの開発用です。Apple社製のソフトウェア、スマホアプリ、パソコンアプリなどの開発に適しています。
開発環境の選び方
開発要件にあった開発環境を選ぶ際に、注意すべきことについて解説します。
業務内容や開発言語との相性はよいか
業務内容、開発要件にあっているか、開発言語との相性がよいかなどを必ず確認しましょう。
開発環境には得意、不得意があり、Java開発ならEclipse、Web開発ならVS Codeなど、開発内容によって適した環境が異なります。
チーム構成・スキルレベルにあっているか
開発担当者のスキルレベルにあっているかも重要です。操作がむずかしい、クセが強いなどの場合、開発チームに初心者が多いと開発効率が落ちることもあります。チームメンバーが使いやすい環境を選ぶことも重要なポイントです。
クラウド型かオンプレミス型(インストール型)か
上記でご説明したとおり、開発環境にはクラウド型とオンプレミス型が存在します。
クラウド型にすれば導入コストが抑えられますが、ランニングコストがかかります。しかし、メンテナンスやセキュリティ対策を任せられるというメリットもあります。一方、オンプレミス型が導入コストは高額ですが、ランニングコストはかかりません。しかし自社でのメンテナンスが必要で、他環境に移行しづらいというデメリットもあります。
このようにそれぞれ性質が異なるため、自社にあった形態はどちらかを検討する必要があるでしょう。
▽あわせて読みたい▽
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将来の拡張性や保守性は十分か
今後、開発に必要なプログラミング言語が変わる、必要なフレームワークが増えるなどの可能性も十分に考えられます。また、運用をつづけていくなかでデータベースやメモリなどの拡張も必要になるでしょう。
長期的なことを考えて、将来の拡張性や保守性に対応しているかも確認が必要です。
会社で開発環境を構築する際のチェックポイント

自社内で開発環境を構築する際に、チェックすべきポイントについて解説します。
セキュリティとバージョン管理
開発環境のセキュリティ対策が十分でないと、ソースコードの流出なども考えられます。開発者の管理者権限を適切に設定できるか、開発環境のネットワーク環境は安全かなどを十分に検証しましょう。また、環境のバージョン管理なども適切に行う必要があります。
外注・開発パートナーを活用する際の注意点
開発作業を外注企業や開発パートナーに任せる場合は、それぞれの担当者に適切に開発環境を用意できるか、ライセンスなどに問題はないかも注意しなければなりません。外注先が用意する場合などもあるため、契約時には状況を正しく把握しておく必要があります。
まとめ
開発環境とは、システムを開発するために必要なハードウェアとソフトウェアの組み合わせのことです。開発要件によって、開発環境が指す内容は大きく異なります。
たとえば、パソコンやサーバーなどのハードウェア、テキストエディタなどの開発ツール、コンパイラ、デバッガ、プログラムの実行環境、ライブラリなどがあります。企業がシステム開発を行う際は、適切な開発環境を用意することで効率を向上させられるでしょう。
継続的なプロダクト開発に伴走する、SHIFTのアジャイル開発支援
開発作業を効率化させて顧客満足度の高い開発を行うためには、開発環境の改善だけでなく、適した開発手法を選ぶことも重要です。アジャイル開発は、顧客満足度を高めるために有効な開発手段の一つです。
しかし、「アジャイル開発手法を導入して、顧客満足度の高い製品を開発したい」「アジャイル開発を導入したいが、社内にノウハウがない」などの悩みを抱えている企業様は多いかもしれません。
アジャイル開発は短いスパンの開発を繰り返すため、機能変更や機能追加に柔軟に対応できるというメリットがあります。しかし、アジャイル開発をスムーズに進めるためには、設計、開発、テストという短いスパンを繰り返し、つねにフィードバックを行う必要があり、豊富な専門知識や経験、ノウハウが必要です。
アジャイル開発に関する知識やノウハウ、優れた開発メンバーなどがそろわない状態で、アジャイル開発にシフトするのはむずかしいでしょう。
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短期的な人材確保や長期的な人材育成など、お客様のニーズにあわせて対応し、お客様のシステム開発に柔軟性とスピードをもたらします。

監修
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
担当講座
・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
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