Introduction
近年、ビジネスの現場でAIを活用することは当たり前の時代になってきました。AIによるタスクの自動化や効率化、機械学習技術を活用した顧客行動の分析と売上予測、経営戦略の策定、コンテンツの生成など、幅広い用途でAI技術がビジネスに役立っています。
そんななか、機械学習の分野で活用の場が広がっているのが「TensorFlow(テンソルフロー)」です。TensorFlowはGoogleが開発したオープンソースの機械学習ライブラリです。TensorFlowを活用すれば、機械学習の初心者から上級者まで機械学習モデルの構築や訓練、活用をスムーズに行えます。
この記事では、TensorFlowに関する基本情報や特徴、メリット、利用上の注意点、活用事例までをご紹介します。
目次
TensorFlow(テンソルフロー)とは

まずは、TensorFlowが具体的にどのようなものなのかをご説明します。
Googleが開発した機械学習や深層学習のモデルを構築・学習・実行するためのオープンソースプラットフォーム
TensorFlowとは、Googleが開発した機械学習やディープラーニングのモデルの構築、学習、実行をするためのオープンソースプラットフォームです。
機械学習とはコンピュータにデータを学習する力を与える技術ですが、TensorFlowはその学習プロセスを強力にサポートしてくれます。たとえば、TensorFlowには数値計算ライブラリが充実しており、複雑な処理を効率良く行うことができます。さらに、高度な機械学習技術である「ディープラーニング」にも対応可能です。
TensorFlowを活用すれば画像認識、音声認識、テキスト解析などに利用でき、しかも機械学習の初心者から上級者まで幅広い層が利用しやすいという特徴もあります。
TensorFlowはさまざまなプログラミング言語やプラットフォームに対応しており、多様な環境で動作するのも大きな強みです。PythonやC++、Javaなどに対応可能で、デスクトップPCやスマートフォンなどのモバイルデバイスなどでも動作します。
さらに、GPU、TPUなどの専用のハードウェアを活用して計算速度を向上させることで、大規模なデータセットを用いた学習やリアルタイムの推論処理なども実現可能です。
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PyTorch(パイトーチ)との違い
TensorFlowと並ぶ機械学習・ディープラーニングのオープンソースライブラリとして重要なのが、PyTorch(パイトーチ)です。PyTorchはFacebook(改めMeta)製、TensorFlowはGoogle製であり、機械学習・ディープラーニングの分野の2大フレームワークといえるでしょう。
TensorFlowの特色としては、実装が容易で運用サポートが手厚い、実用性が高くビジネスに向いているという点があげられます。一方のPyTorchは、カスタマイズがしやすい、ロジックを把握しやすいという特色があり、研究分野で人気が高いです。
関連サービスについて
TensorFlowでできること
ここでは、TensorFlowで実現できることとは何かをご説明します。
画像認識・分類・検索
TensorFlowは画像認識や分類、画像検索などができます。
画像から人物、文字などを認識して検出する機能を活用し、たとえば店内の防犯カメラの顔認識機能を実現するといったことなども可能です。
また、Googleの画像検索にはTensorFlowのディープラーニング技術が活かされています。膨大な画像データを用いて学習しているため精度の高い分類が可能であり、画像検索精度が非常に高くなっています。
画像認識についてはこちらもご覧ください。
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音声認識
TensorFlowは音声認識も可能で、さまざまな活用方法があります。たとえば、実際の音声を収録して別の人の音声に変換する、音声を発した人物を特定する、会議の録音データから議事録を文字起こしするなどが可能です。このような機能はビジネスの現場で役立つでしょう。
Googleの音声検索サービスにもTensorFlowが採用されており、高い精度の音声認識を実現しています。
音声認識についてはこちらもご覧ください。
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翻訳
言語の自動翻訳も可能であり、テキスト翻訳や音声翻訳などを高い精度で実現できます。ビジネスシーンでは文書の翻訳、海外の顧客や取引先との会議でのコミュニケーションなどに役立ちます。
テキスト生成・自然言語処理
自然言語処理、テキスト生成ができ、機械翻訳、文書の分類、文章の感情分析なども可能です。
自然言語処理についてはこちらもご覧ください。
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Web検索最適化
検索エンジンのアルゴリズム開発にも、TensorFlowが活躍していると考えられます。
Web検索のアルゴリズムは、検索クエリやユーザー属性から検索者が本当に欲しいと思われる情報を汲み取り、適切なページを検索結果として表示させるうえで必要になる要素です。TensorFlow自体がGoogleによって開発されたこともあり、Google自体の検索アルゴリズムを担っていることが推測されます。
予測分析
TensorFlowを活用すれば予測分析も可能です。この機能を用いて売上予測を行うなど、ビジネスの現場で役立つ使い方もできます。
TensorFlowの主な特徴・メリット
TensorFlowの特徴やメリットについてご説明します。
豊富な対応環境
TensorFlowはさまざまなプラットフォームに対応しています。Linux、Windows、macOSなど複数のOS上で動作し、パソコン、サーバー以外にもスマートフォン、小型デバイス、Webブラウザなどでも利用できます。具体的には、スマートフォン向けの「TensorFlow Lite」、Webブラウザ向けの「TensorFlow.js」などの製品展開があります。
このように、利用できる環境が多いのは大きなメリットといえるでしょう。
GPU・TPUによる高速処理
TensorFlowはGPU、TPUを活用して高速処理を実現できます。
GPU(Graphics Processing Unit)は画像や映像処理に、TPU(Tensor Processing Unit)は機械学習やディープラーニングの分野に特化したプロセッサです。TensorFlowにはGPUやTPUを自動的に活用する仕組みがあるため、高速でAIモデルの構築や学習を行うことが可能です。
そのため、高速処理が必要とされるリアルタイム翻訳などもスムーズに行えるでしょう。
幅広い分野に応用できる汎用性
TensorFlowは高度な処理や高速処理が可能なだけでなく、幅広い分野に応用できる汎用性も兼ね備えています。画像認識、音声認識、自然言語処理などだけでなく、予測モデルの構築なども可能です。
その汎用性の高さを生かして、あらゆる分野で活用できます。たとえば、高い画像認識機能を活用して医療現場でCTやMRIなどの検査画像を解析したり、金融分野で予測モデルを活用して市場予測したりと、幅広い分野で利用されています。
分散学習に対応した拡張性
膨大なデータの処理や複雑な計算などが必要とされる機械学習分野では、効率よく処理を行うことが非常に重要です。そのためには複数のコンピュータやプロセッサが処理を分担して効率化する分散学習が効果的ですが、TensorFlowには分散学習設定が簡単にできる仕組みが備えられています。TensorFlowが自動的に処理を分散させるため、高度な処理もスムーズに進められるでしょう。
オープンソースによるコミュニティ支援
Googleの公式ドキュメントやチュートリアルなどが充実していることから、TensorFlowについての知識やノウハウを得やすいのは大きなメリットです。また、TensorFlowの利用者の多さから、世界中にコミュニティが数多く存在します。そのため、インターネット上でTensorFlowのノウハウや情報を見つけやすく、またコミュニティで質問すれば有識者が有用な情報を教えてくれるでしょう。
また、TensorFlow Hubというサイトでは、すでに訓練されているモデルが利用できます。このサイトからモデルをダウンロードすれば、一からモデルを構築、訓練をする必要なく再利用できるでしょう。
このように、公式のドキュメントやチュートリアル、コミュニティなどが豊富なため、独学でもTensorFlowについて学びやすいでしょう。
TensorBoardやKerasなどのツールの充実
TensorBoardというツールを活用すれば、モデルの学習状況がわかりやすく可視化されるため、モデルの構築や訓練がしやすくなります。
また、Kerasという高レベルな機械学習とディープラーニングのアルゴリズムを集めたライブラリが存在しますが、TensorFlow Ver.2.xからKerasの機能がデフォルトで使えるようになっています。Kerasを活用すれば、複雑な機能や自動的にニューラルネットワークを生成する機能なども利用できます。
TensorFlow導入時の注意点

ここまでご説明したとおりTensorFlowは機械学習やディープラーニングのモデルの構築や訓練をスムーズに行える優れたプラットフォームです。しかし、導入する際には注意すべき点もあります。
まず、TensorFlowをスムーズに使用するためには高いマシンスペックが必要とされます。GPUを搭載した環境が必要であり、大量のデータ処理や高速処理を行うためには相応の環境を用意しなければパフォーマンスを維持できないでしょう。また、TensorFlow自体のバージョンアップ頻度も高いため、適切にバージョン管理する必要もあります。
TensorFlow導入時の利用方法
ここからは、TensorFlowの具体的な利用方法についてご説明します。
TensorFlowが利用できる環境と言語
TensorFlow Ver.2.x以降はLinux、Windows、macOSで動作可能です。また、TensorFlow LiteはiOS、Android、Raspberry Pi OS(Raspbian)で動作します。
利用できるプログラミング言語は、Python、C/C++、Java、Goなどがあります。
TensorFlowのインストールに必要な要件
TensorFlowをインストールするためには、システム要件やソフトウェア要件を満たす必要があります。
詳しくは、TensorFlowの公式サイトをご確認ください。
TensorFlowの実用的な活用事例
TensorFlowが具体的にどのような場面で活用されているのかについてご紹介します。
TensorFlowは、Googleの検索サービスや翻訳サービスで使われる機械学習の強化などに利用されています。また、X(旧Twitter)ではタイムラインのランク付け機能に、Web決済システムのPayPalでは不正対策やユーザー識別の精度向上のために使われています。
ほかにも、衛星画像からデータを抽出して情報分析を行う際にTensorFlowが使われることで、都市計画に役立てられているというケースもあります。
このように、非常に幅広い分野でTensorFlowが使われていることがわかります。
まとめ
TensorFlowはGoogleが開発したオープンソースの機械学習ライブラリです。TensorFlowを活用すれば、機械学習の初心者から上級者まで機械学習モデルの構築や訓練、活用をスムーズに行えます。
この記事でご説明したように、TensorFlowは非常に汎用性が高く幅広い分野で活用が進んでいます。TensorFlowをビジネスに導入すれば、顧客のニーズを分析してマーケティング戦略を最適化する、生産プロセスを最適化して生産性を高めるなども可能です。
TensorFlowをうまく活用できれば、ビジネスの現場で業務効率化や生産性の向上、顧客満足度の向上などに役立つでしょう。
ビジネスに最新のAI技術を活用したい場合は、SHIFT のAIに関する豊富な専門知識をお役立てください。
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監修
林 栄一
組織活性化や人材開発において豊富な経験を持つ専門家として、人材と組織開発のリーダーを務め、その後、生成AIを中心にスキルを再構築し、現在新人研修プログラムや生成AI講座開発を担当している。2008年にスクラムマスター資格を取得し、コミュニティーを通じてアジャイルの普及に貢献。勉強会やカンファレンス、最近では生成AI関連のイベントに多数登壇している。チームワークの価値を重んじ、社会にチームでの喜びを広める使命をもつ。
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
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