クラスタリングとは?仕組みや手法、注意点、活用シーンをわかりやすく解説

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クラスタリングとは?仕組みや手法、注意点、活用シーンをわかりやすく解説
株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

Introduction

ビジネスの現場ではビッグデータの活用が必須となり、顧客行動の理解や設備の異常検知などを行う際に膨大なデータの分析が必要です。そこで有効なのが「クラスタリング」という手法です。クラスタリングは機械学習における重要なデータ分析手法として、注目を集めています。
この記事では、クラスタリングについて、その仕組みや導入するメリット、課題、活用シーンについて解説します。

目次

クラスタリングとは

クラスタリングとは

まずはクラスタリングの概要や機械学習、教師なし学習とは何かをご説明します。

大量のデータをいくつかのグループ(クラスタ)に自動的に分類する技術

クラスタリングとは、大量のデータをいくつかのグループ(クラスタ)に自動的に分類する手法のことで、「教師なし学習」の代表的な手法のひとつです。

機械学習とは、コンピューターに学習する機能を持たせる技術のことで、代表的には「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」に大別されます。近年は、少量のラベルを併用する半教師あり学習や、自己教師あり学習などの枠組みも広く使われています。 「教師あり学習」では事前に正解データ(教師データ)を与えて学習させますが、「教師なし学習」では正解データを必要としません。この「教師なし学習」で入力されたデータのパターンや構造を見つけ出して学習する際に、クラスタリングが使われます。

クラスタリングを行う際には、データに対して事前に「どんな分類にしたいか」をラベルとして与える必要がありません。たとえば、顧客データの場合、「購入金額が高い」「行動パターンが似ている」「閲覧履歴が近い」などの特徴をもとに、アルゴリズムが自動でグループ(クラスタ)をつくり出します。人間が気づかない潜在的なまとまりの性質を見つけられる点が、クラスタリングの大きなメリットです。

また、人間が感覚的に行う分類作業をAIや統計アルゴリズムが高速かつ正確に行えるというメリットもあります。データの種類や量が増えると人の手で分類するのがむずかしくなりますが、クラスタリングを使えば複雑なデータも効率的に整理できます。近年はマーケティングから製造、医療まで幅広い分野で導入が進んでいます。

機械学習についてはこちらもご覧ください。
>>機械学習とは?AIやディープラーニングとの違い、活用事例などを解説のページへ

クラスタリングの主な目的と注目される理由

クラスタリングを活用する目的には以下のようなことがあります。

・データから新しい気づきを得られる

大量のデータを分類することで、人間が気づけない潜在的なデータの構造を明らかにできます。たとえば、顧客行動のパターンや工場の機器の異常な挙動の兆候など、ビジネスに直結する発見につながります。

・分析や施策立案がしやすくなる

データを似た特性をもつグループに分類し整理することで、マーケティング施策やリスク管理の精度が向上します。データの分類ごとに最適なアクションを行えるため、企業活動全体の効率化にも貢献します。

・急増するデータを扱いやすくする

クラウドやIoTの発展により、企業が扱うデータが膨大になりました。クラスタリングは、こうした大量データをシンプルな構造に変換し、可視化や分析を容易にします。

クラスタリングの技術を活用することで、上記のようにさまざまなことを実現できます。今後ますますデータの活用が必要不可欠になっていくことから、クラスタリングは重要な技術であることがわかります。

クラスタリングの主な種類と手法

クラスタリングにはいくつかの手法があり、それぞれ特徴が異なります。ここではクラスタリングの主な種類と手法について解説します。

非階層的クラスタリング

非階層的クラスタリングは、階層を作らずにデータをグループわけしていく手法です。あらかじめいくつに分類するかという「クラスタ数」を設定し、その数に合わせてデータを最適にグループ化する方法です。計算が比較的速く、実務でも広く利用されるタイプです。

【k-means法】
k-means法はもっとも一般的な手法で、以下のような性質があります。

・データをあらかじめ決めた数(k個)のクラスタにわける
・各グループの中心点(重心)を計算して割り当てを繰り返す
・シンプルで高速なため、顧客セグメンテーションなどに広く利用されている
・最初に決めた値に影響されやすいというデメリットがある

【混合正規分布(ガウス混合モデル:GMM)】
左右対称、釣り鐘型の性質をもつ確率分布のグラフを「正規分布」、「ガウス分布」と呼びますが、この正規分布を複数個用いる手法が混合正規分布です。

・データが「いくつかの正規分布の混合で構成されている」と仮定して分類
・k-meansよりも柔軟に形状の異なるクラスタを表現できる
・統計的に洗練された手法で、マーケティングや金融分野でも活用されている

【DBSCAN】
データの密度に基づいてクラスタわけする手法で、ノイズを含むデータを扱う際に適しています。

・点が密集している部分をクラスタとみなし、周辺の孤立点は「ノイズ」として扱う
・実世界のデータに強い
・異常検知などにも適用しやすい

階層的クラスタリング

階層的クラスタリングとは、データ同士の距離や類似度に基づいて、樹形図(デンドログラム)を作りながら段階的にグループ化していく方法です。データを一つひとつ比較し、似ているもの同士をクラスタにするという作業を繰り返していきます。クラスタ数を事前に決める必要がなく、データの構造を直感的に理解しやすいのがメリットです。

グループ化する際のデータ間の距離の決め方の違いで、以下のような手法があります。

【ウォード法】
階層的クラスタリングのなかでもっとも一般的な手法です。

・各クラスタ内のばらつき(分散)が最小になるようにする
・安定した結果になりやすい
・計算量が多くなるというデメリットがある

【群平均法】
・2つのクラスタのデータのすべての組み合わせの距離の平均をクラスタの距離とする
・クラスタ内の外れ値の影響を受けにくいバランス型の手法
・ウォード法と比べて計算量が少ない

【最短距離法】
・2つのクラスタ間でもっとも近い2点の距離をクラスタの距離とする
・ウォード法と比べて計算量が少ない
・外れ値、ノイズの影響を受けやすい
・分類の精度が低くなる可能性がある

【最長距離法】
・2つのクラスタ間でもっとも遠い2点の距離をクラスタの距離とする
・ウォード法と比べて計算量が少ない
・外れ値、ノイズの影響を受けやすい

クラスタリングのメリット

クラスタリングのメリット

クラスタリングによってデータを整理することで、ビジネスにおける判断の質を高めることが可能です。特に「どのような顧客がいるのか」「どの設備に異常が発生する傾向にあるのか」などを明らかにしたい場面で効果を発揮します。

ここでは、企業がクラスタリングを導入する際に得られる主なメリットをご紹介します。

データを構造化でき理解促進に役立つ

大量のデータをそのまま扱うとパターンが見えにくく、分析に時間がかかります。そこでクラスタリングを使うと、似た特徴を持つデータ同士を自動でまとめられるため、データ全体の構造がわかりやすくなります。

たとえば、顧客データをクラスタリングすることで、「価格重視の層」「新商品への関心が高い層」「購入頻度の高いヘビーユーザー」などのわかりやすいグループに整理することが可能です。

このようにデータが構造化されることで現場や経営層の意思決定もスムーズになり、分析時間の大幅な削減にもつながります。

潜在的なグループを発見できる

クラスタリングの大きな強みは、「人間の目では気づきにくい隠れたグループ」を見つけられるという点です。データの裏側に潜むパターンを発見することで、たとえば次のようなことを実現できます。

・新たな顧客層の発見
・顧客の購買行動の変化や兆候の把握
・設備などの故障予兆や異常パターンの洗い出し
・医療データにおける新たな症例の分類

ビジネスの場でこのような新しい気づきを得られれば、マーケティング戦略の改善やリスク管理の高度化につなげることが可能です。

データ処理の効率化が期待できる

クラスタリングによってデータがグループ化されると、その後の分析作業がシンプルになります。

具体的には、以下のような場面で効果を発揮します。

・顧客ごとに異なる施策を打つ際、クラスタ単位で施策を考えられる
・AIモデルの学習時に、クラスタ単位で特徴量を作成できる
・大量データの可視化やレポート作成が容易になる

このようにクラスタリングによって作業効率があがるため、業務全体の生産性向上にも貢献します。

クラスタリングのデメリット・課題

クラスタリングには多くのメリットがある一方で、実務に採用する際にはいくつかの注意点や課題も存在します。特に「クラスタ数の決め方」「初期値による結果の変動」「計算コスト」といった点は、どの企業でも必ず直面するテーマです。

クラスタリングの価値を最大化するためには、これらを理解したうえで適切に運用する必要があります。ここでは、クラスタリングのデメリット、課題について解説します。

クラスタ数の決定が困難

多くのクラスタリング手法、特にk-means法などの非階層的クラスタリングでは、クラスタ数を事前に決める必要があります。

しかし、「最適なクラスタ数」はデータによって異なり、実務では明確に決めることがむずかしい場合もあります。「エルボー法」「シルエット係数」などの指標を用いてクラスタ数を見積もることもありますが、それでも明確なクラスタ数を決められるわけではありません。

そのため、目的や利用シーンにあったクラスタ数を検討する、専門家の意見を聞くなどして最適なクラスタ数を探ることが求められます。

初期値によって結果が変わる

クラスタリングのなかには、初期値の設定によって結果が変わってしまう手法があります。特にk-means法は初期値の影響を強く受けるため、設定によってはまったく異なるクラスタが形成されることもあります。

これを防ぐために、複数回実行して安定した結果を選ぶ、初期値を自動で最適化する「k-means++」を利用するなどの工夫が必要です。

初期値の問題を理解していないと、誤った分析結果を基に意思決定してしまうリスクがあるため、初期値は慎重に決めなければなりません。

計算コスト(計算時間)がかさむことがある

データ量が増えるほど、クラスタリングに必要な計算量も増加します。

特に階層的クラスタリングは、データ数が多くなると計算コストが急激に大きくなるため、大規模データには向かないこともあります。また、DBSCANなどの密度ベース手法も、データが高次元、大量になるほど処理に時間がかかります。

そのため、実務では以下のような計算コストを削減する対策が有効です。

・データをサンプリングし代表データだけを使う
・主成分分析(PCA)を用いるなどデータの構造を簡易化する
・計算負荷の低い手法を併用する
・事前にデータを前処理して計算負荷を軽減する

これらの工夫により、大規模データでも現実的な時間、コストでクラスタリングを実行できるようになります。

クラスタリングの実務的な活用シーン

クラスタリングは、業界や部門を問わず幅広い業務で活用できる汎用的なデータ分析手法です。データの背後にあるパターンを見つけることで、意思決定の高度化や業務効率化につながります。

ここでは、実際のビジネスシーンでよく採用される代表的な活用例を紹介します。

顧客セグメンテーションとマーケティング施策

マーケティング領域は、クラスタリングが最も活用されている分野です。顧客データのクラスタリングを行うことで、顧客を次のような観点から自動で分類できます。

・購入頻度や購入金額が似ている顧客
・閲覧履歴や興味関心が近い顧客
・サービスの利用方法が似ている顧客グループ

これにより、企業はグループごとに最適なマーケティング施策を実施できます。たとえば「新商品に関心が高い層には早期案内」、「価格重視層には割引クーポン」など、セグメントごとに最適なマーケティングが可能になります。その結果、広告効率や顧客満足度の向上につながるでしょう。

異常検知・予防保全

製造業やIoTの現場では、クラスタリングを使って機器の挙動パターンを分析し、異常の兆候を早期に検知できます。たとえば密度ベース手法(DBSCANなど)では、密度の低い点をノイズとして扱えるため、外れ値候補の抽出や異常兆候の探索に活用されることがあります。

ただし、外れ値の扱いは手法やパラメータに強く依存するため、目的に応じた評価が必要です。たとえば、「機械の稼働ログ」、「センサー情報」、「温度・振動・圧力データ」などのデータをクラスタリングすることで、従来の目視検査では捉えづらい異常パターンも可視化できます。その結果、設備保全の効率化やダウンタイム削減に役立つでしょう。

医療・画像解析における特徴抽出

医療データのなかには、膨大で複雑な情報が含まれています。ここでもクラスタリングを活用することで、症例の特徴を整理し、似たパターンを持つ患者群を抽出できます。

具体的には、「がん細胞の分類」、「CT/MRI画像のパターン分析」、「症状の似た患者グループの把握」などに利用されており、診断支援や治療方針の検討にも役立ちます。

このような技術により、医療の質の向上や効率化の促進につながっています。

テキストの話題抽出・文書分類

クラスタリングは大量のテキストデータの整理にも強みがあります。

ニュース記事、SNS投稿、FAQデータなどは内容が多様で量も多いため、人間が分類することは困難です。そこで、クラスタリングを使えば、文章がどのテーマに近いかを自動でまとめることができます。たとえば、「顧客の問い合わせ内容のグルーピング」、「口コミのテーマ分析」、「文書の自動カテゴリ分類」などに活用できます。

生成AI関連の前処理・特徴量作成

近年は生成AIの発展により、クラスタリングのニーズが高まっています。特に、AIモデルの前処理として以下のような用途で使われることが増えています。

・学習データをクラスタごとに整理して品質を高める
・類似したデータをグループ化し、重複削除やノイズ除去に活用する
・クラスタごとの特徴を抽出し、モデルに入力する特徴量として利用する

このように、クラスタリングは生成AIの利用時にも重要な基盤技術となっていることがわかります。

まとめ

クラスタリングとは、大量のデータを似ているもの同士で自動的にグループ化する手法のことで、非常に汎用性の高い分析手法です。マーケティング、製造、医療、テキスト分析、そして生成AIのデータ前処理に至るまで、幅広い分野で活用できます。

本記事で紹介したとおり、クラスタリングには「データの構造を整理し、理解しやすくできる」、「潜在的なグループを発見できる」、「後続の分析や施策立案を効率化できる」というメリットがあります。

一方で、「クラスタ数の決定」、「初期値の影響」、「計算コストの高さ」など、注意すべき点も存在します。これらの課題を理解したうえで運用することで、クラスタリングの価値を最大限に引き出せるでしょう。

データを活用した経営が求められるなか、クラスタリングは企業にとって「最初に導入すべき分析技術」の一つといえます。データの構造をつかむことで、顧客理解を深める、予測精度を高める、業務の効率化などを実現できます。

今後もクラスタリングは、AI活用の基礎としてますます重要性を高めていくことでしょう。

ビジネスに最新のAI技術を活用したい場合は、SHIFT のAIに関する豊富な専門知識をお役立てください。

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林 栄一

監修

株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
林 栄一

組織活性化や人材開発において豊富な経験を持つ専門家として、人材と組織開発のリーダーを務め、その後、生成AIを中心にスキルを再構築し、現在新人研修プログラムや生成AI講座開発を担当している。2008年にスクラムマスター資格を取得し、コミュニティーを通じてアジャイルの普及に貢献。勉強会やカンファレンス、最近では生成AI関連のイベントに多数登壇している。チームワークの価値を重んじ、社会にチームでの喜びを広める使命をもつ。

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https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
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この記事を書いた人

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著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

SHIFTは「売れるサービスづくり」を得意とし、お客様の事業成長を全力で支援します。無駄のないスマートな社会の実現に向けて、ITの総合ソリューションを提供する会社です。

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