Introduction
システム障害が起こると、企業にさまざまな悪影響を及ぼします。そのためシステム障害を防ぐための対策を、日ごろから講じておかなければなりません。
システム障害への対策を万全にするためには、システム障害とは何か、その原因や予防策について正しく理解しておくことが重要です。この記事では、システム障害とは何か、その原因や予防策、対応フローなどについて詳しく解説します。
目次
システム障害の定義と範囲

システム障害とは、企業が利用しているITシステムが何らかの原因により「本来想定されている通りに動作しない状態」を指します。完全に停止してしまうケースだけでなく、動作が極端に遅くなる、一部の機能が使えなくなる、誤った処理結果が表示されるといった状態も、広くシステム障害に含まれます。
企業が重視すべきなのは「技術的なエラー」そのものではなく、業務や顧客に対してどのような影響を与えるかという点です。たとえば社内の基幹システムが停止すれば業務が止まり、ECサイトや会員サービスが使えなくなれば売上損失や顧客満足度の低下などが起きてしまうでしょう。
システム障害の対象は、特定のシステムに限られません。多くの企業では、たとえば以下のように幅広い領域が対象となります。
・業務システム(販売管理、会計、人事、在庫管理など)
・WebサイトやECサイト
・スマートフォンアプリやオンラインサービス
・社内ネットワークやメールシステム
・クラウド上で稼働する業務基盤
近年はクラウドサービスや外部システムとの連携が進んでいるため、自社内に直接原因がない場合でも、外部要因によってシステム障害が発生するケースが増えています。そのため、「自社で完全にコントロールできない領域」まで含めて、範囲を広げて検討する必要が生じています。
システム障害の定義を考える際には、その影響の大きさを考慮することも大事です。たとえば一部の社員だけが影響を受ける軽微な障害と、全顧客がサービスを利用できなくなる重大障害とでは、企業への影響が大きく異なります。短時間の障害であっても、社会的な信用やブランド価値に影響を与える障害もあります。SNSやニュースを通じて障害情報が拡散されることで、企業イメージの低下につながるケースも少なくありません。
ここまでご説明したようなシステム障害の定義や範囲を正しく理解していないと、「これは障害として扱うべきか」「どこまでを自社の責任範囲とするか」といった判断が遅れ、初動対応に失敗する恐れがあります。
そのため、
・どのシステムが止まると事業に深刻な影響が出るのか
・障害が発生した場合、どこまでが自社の管理範囲なのか
などをあらかじめ整理しておくことが重要です。そうすることで、後述する原因分析やリスク評価、予防策の検討に適切につながるでしょう。
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よくあるシステム障害の原因
システム障害の原因は大きく分けて、「内部要因」と「外部要因」の2つに分類できます。ここでは代表的なシステム障害の原因について解説します。
内部要因例
内部要因とは自社のシステム設計、運用、人的作業などが原因で発生する障害です。適切な対策を講じることで、発生確率を下げやすい点が特徴です。
具体的には以下のような要因が考えられます。
・ソフトウェアの不具合・バグ
システムを動かすプログラムに不具合、バグがあると、特定の操作で処理が止まったり、最悪の場合はシステム全体が停止したりします。新機能の追加や改修時に発生しやすく、プログラム不具合による稼働停止は、システム障害のなかでも非常に多い原因の一つです。
・設定ミス・パラメータ変更ミス
システムの設定値やサーバのパラメータを誤って変更してしまうことで、正常に動作しなくなるケースです。一見小さな変更でも、連動する他の機能に影響を与え、結果としてプログラム不具合と同様の稼働停止を引き起こすことがあります。
・キャパシティ不足・高負荷
想定以上のアクセスやデータ処理が集中すると、サーバの処理能力を超えてしまい、システムが遅くなる、もしくはダウンします。たとえば繁忙期、キャンペーン期間中、テレビ・SNSでの露出後などに起こりやすく、高負荷・処理性能超過によるダウンは、事業機会を逃す大きな要因になります。
・テスト不足・品質管理不備
新規開発、または機能追加や改修をしたシステムやソフトウェアなどを本番環境に反映する前のテストが不十分だと、実際の利用状況で想定外の不具合が発生します。特にスケジュール優先で開発が進んだ場合、結果としてプログラム不具合による稼働停止につながるリスクが高まります。
・ヒューマンエラー
操作ミス、確認漏れ、手順の誤りなど、人の作業が原因で起こる障害です。「うっかりミス」であっても、重要なシステムでは大きな影響を及ぼし、プログラム不具合と同様にシステム停止を招くことがあります。
外部要因例
外部要因は、自社の努力だけでは完全に防ぐことがむずかしい障害です。そのため、発生を前提とした備えが重要になります。
具体的には以下のような要因が考えられます。
・ハードウェア故障
サーバやストレージ、ネットワーク機器などの物理的な故障により、システムが停止するケースです。ハードウェアが故障すると、結果的にプログラムが正常に動かず稼働停止に陥ります。(オンプレミス環境での故障の場合は内部要因に分類されます)
・ネットワーク障害
通信回線やネットワーク機器のトラブルにより、システムに接続できなくなる障害です。クラウドサービスや拠点間通信が使えなくなり、通信網やネットワーク障害によるサービス停止が発生します。
・クラウド・外部サービス側の障害
利用しているクラウド基盤や外部サービスに障害が発生すると、自社システムも影響を受けます。一つの障害が連鎖的に広がり、外部クラウド障害による影響拡大につながる点が特徴です。
・サイバー攻撃・ウイルス感染
不正アクセスやランサムウェアなどにより、システムが制御不能になるケースです。この場合、単なる停止にとどまらず、顧客情報や従業員情報などの個人情報流出、システムの乗っ取りや改ざん、データ暗号化による身代金要求などの重大なセキュリティインシデントが起こることもあります。その結果、業務継続ができなくなる深刻な事態に発展する場合もあるため、特に注意が必要です。また、システム復旧や影響の調査に時間を要することも少なくありません。
ランサムウェアについてはこちらもご覧ください。
>>ランサムウェアとは?種類や被害事例、感染を防ぐための対策まで詳しく解説のページへ
・自然災害・停電などのインフラトラブル
地震、台風、大雪、停電などにより、通信設備やデータセンターが影響を受けるケースです。結果として、通信網やネットワーク障害、クラウド障害によるサービス停止が発生します。
システム障害が発生したときのリスク

システム障害は「一時的なトラブル」で終わらないケースが多く、経営にさまざまな悪影響を及ぼします。特に近年は、ITが事業の中核を担っている企業が増えており、障害発生時のリスクは以前よりも大きくなっています。
ここでは、システム障害が発生した場合のリスクについて、具体的にご説明します。
サービス停止による機会損失
システム障害によってサービスが停止すると、その時間帯に本来得られるはずだった売上や商談の機会を失ってしまいます。たとえば自社が運営するECサイトが停止した場合、購入を検討していた顧客は離脱し、別のサービスへ流れてしまうでしょう。
重要なのは、障害が復旧しても失われた機会を再び元に戻すのは非常にむずかしいということです。特に競合が多い市場では、一度離れた顧客が再び戻ってくるとは限りません。
顧客満足度の低下
企業が運営するサイトやサービスが使えない状態が発生すると、顧客の不満は一気に高まります。一度の障害であれば理解を得られる場合もありますが、頻繁に障害が起こると「信頼できない企業」という印象を与えてしまいます。
また、SNSなどで不満が拡散されることで、実際に影響を受けていない人にも悪い印象が広がり、ブランド価値の低下に繋がる恐れがあります。
保守・復旧コストの増大
システム障害が発生すると、復旧のために多くのコストが発生します。たとえば緊急対応に追われるエンジニアの人件費、外部ベンダーへの追加依頼、場合によっては夜間・休日対応による割増費用など、想定外の支出が増えてしまいます。
二次被害・情報漏えいの可能性
システム障害がセキュリティインシデントと結びついた場合、被害はさらに深刻になります。データの改ざんや個人情報・機密情報の漏えいが発生すると、顧客や関係者に対する損害賠償が必要になることもあります。
このような二次被害は、金銭的な損失だけでなく、企業の信用そのものを大きく損なうリスクを伴います。一度失った信用を回復するには、長い時間と多大なコストがかかる点を認識しておく必要があります。
システム障害発生時の対応フロー
システム障害が発生した際、被害を最小限に抑えられるかどうかは「初動対応」に大きく左右されます。企業として重視すべきなのは、技術的な詳細よりも組織としてどのような流れで対応するのかを把握しておくことです。
ここでは、企業が適切に把握しておくべきシステム障害発生時の対応フローについて解説します。
STEP1:障害の把握・状況整理
最初に行うべきは、「何が起きているのか」を正確に把握することです。システムが完全に停止しているのか、一部機能のみ影響が出ているのか、影響範囲や発生時刻などを整理します。
この段階では、原因の特定よりも事実の整理を優先します。情報が曖昧なまま判断すると、対応の遅れや混乱を招く恐れがあります。
STEP2:関係部署・ステークホルダーへの初動連絡
障害の概要が把握できたら、速やかに関係部署や経営層、必要に応じて外部ベンダーへ連絡します。早い段階で情報を共有することで、社内の混乱を防ぎ、役割分担を明確にできます。
報告する際には、
・影響範囲
・想定される事業への影響
・現在の対応状況
を簡潔に伝えることが重要です。
STEP3:影響範囲の特定と原因調査
次に、どのシステムや業務に影響が出ているのかを詳細に特定し、原因調査を行います。社内要因か外部要因かを切り分けることで、対応の方向性が明確になります。
この段階では、復旧を最優先にしつつ、再発防止につながる情報を記録することが重要です。
STEP4:復旧作業と機能検証
原因に応じた復旧作業を行い、システムを元の状態に戻します。
復旧後は、単に「動いている」だけでなく、主要な機能が正しく動作しているかを確認します。十分な検証を行わないまま再開すると、再び障害が発生するリスクがあるため注意が必要です。
STEP5:ユーザー・顧客への情報開示
社外のユーザーや顧客に影響が出ている場合は、適切な情報開示が欠かせません。
障害の内容、影響範囲、復旧見込みなどを、わかりやすい言葉で伝えることが信頼維持に繋がります。隠すのではなく、誠実かつ迅速な説明を行う姿勢が重要です。
STEP6:再発防止策の策定と改善
障害が収束した後は、原因を振り返り、再発防止策を検討します。システム面だけでなく、運用ルールや体制、教育面の改善も含めて見直すことが重要です。
このプロセスを継続的に行うことで、組織全体の障害対応力が高まります。
システム障害予防のために導入すべき対策
システム障害を完全にゼロにすることはむずかしいものの、適切な対策を講じることで発生確率や影響を大きく下げることは可能です。重要なのは、「技術者任せ」にするのではなく、組織としてどのような備えを行うかを把握しておくことです。
ここでは、システム障害予防のために導入すべき対策について、具体的にご説明します。
障害を早期に検知する仕組み
障害を最小限に抑えるためには、早期発見が欠かせません。サーバの状態やアクセス状況、エラーログを常時監視できるツールを導入することで、異常の兆候をいち早く察知できます。これにより、障害を早期に検知してスピーディーに対応でき、事業への影響を最小限に抑えることも可能です。
バックアップ運用
万が一障害が発生しても速やかに復旧できるよう、定期的なバックアップが重要です。バックアップするのはデータだけでなく、システムの設定情報や構成そのものも含めて保存しておくことで、復旧作業を効率化できます。
さらに、「バックアップはあるが、実際に戻せない」という事態を防ぐため、定期的な復元テストも欠かせません。
負荷対策
アクセス集中や処理量の増加に耐えられるシステム構成をあらかじめ用意しておくことも重要です。サーバの増強や負荷分散、クラウドの自動スケーリング機能などを活用することで、高負荷によるダウンを防ぎやすくなります。
日ごろから事業成長を見据えたキャパシティ設計をしておくことが、安定運用に繋がります。
システム脆弱性対策とセキュリティ強化
サイバー攻撃や不正アクセスに備えるため、セキュリティ対策は欠かせません。セキュリティソフトや脆弱性診断、常時監視ツールなどを導入し、リスクを早期に発見・対処できる体制を整えます。
企業としては、セキュリティ対策をコストではなくリスク投資として捉える視点を持つ必要があるでしょう。
ヒューマンエラー対策
多くのシステム障害は、人の操作ミスが引き金になることがあります。たとえば作業手順の標準化、ダブルチェック体制の構築、定期的な教育・研修を行うことで、ヒューマンエラーを減らせます。また、組織体制の見直しや役割分担の明確化も、安定運用に大きく寄与します。
まとめ
この記事では、システム障害の定義と範囲から、よくある原因、発生時のリスク、対応フロー、そして予防策までを整理して解説しました。
システム障害は、もはやIT部門だけの問題ではなく、企業経営そのものに直結する重要なリスクです。業務システムやWebサービス、クラウド基盤など、企業活動の多くがITに依存している現在、システム障害が発生すれば、売上機会の損失や顧客満足度の低下、さらには企業の信用失墜といった深刻な影響を招く可能性があります。
また、システム障害への備えは、一度整えれば終わりではありません。事業環境や技術の変化に合わせて、継続的に見直し・改善を行うことで、企業全体のリスク耐性を高めていくことが重要です。
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監修
株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
担当講座
・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
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