Introduction
サンドボックスとは、隔離された状況で、ウイルスなどのプログラムの検証を行うための仮想環境のことを指します。ウイルス感染したファイルなどが添付されたメールを、サンドボックス環境で実行してみることで、脅威の有無を確認できる仕組みです。
この記事では、サンドボックスの定義、機能やできること、メリット、注意点などについて解説します。
目次
サンドボックスとは
近年、サイバー攻撃が激化しており、どんなに対策していても、攻撃を受けてしまうことがあります。そこで、サンドボックス環境を用意しておくことにより、侵入したウイルスを隔離するなどの処置が可能です。
ここでは、サンドボックスの定義や必要とされている背景、仕組みなどについて解説します。
隔離された状況でプログラム検証を行うための仮想環境のこと
サンドボックスとは、日本語に訳すと「砂場」となります。隔離された状況で、ウイルスなどのプログラムの検証を行うための仮想環境のことを指しています。
サンドボックスと呼ばれる仮想環境は、ほかの環境とは完全に独立しています。マルウェア感染したとしても、サンドボックス内に隔離されるので、感染が広がることはありません。
このようなサンドボックスの特性を活かし、マルウェア感染が疑われるファイルやメールなどをサンドボックス環境で開封して、確認することが可能です。
サンドボックスが必要とされている背景
近年、サイバー攻撃が多様化しており、不特定多数を狙った攻撃だけでなく、特定の組織や企業を狙った標的型攻撃も増えています。標的型攻撃は手法が高度化しており、従来のセキュリティ対策では防げない可能性が高いです。そのため、マルウェア感染したファイルやメールが届いてしまうなどのリスクを完全に防ぐことは、むずかしくなっています。
そこで、サンドボックス環境を用意しておけば、疑わしい挙動をするファイルやプログラムの動作を確認できます。社内ネットワークや重要なデータが格納された端末などに影響を与えることなく、検証することが可能です。
このように、セキュリティの脅威をある程度受けることを想定して、サンドボックス環境を用意することは非常に有効です。高度化、多様化をつづけるサイバー攻撃に対応するために、サンドボックス環境の必要性が高まっています。
サンドボックスで脅威を検知する仕組み
サンドボックスでセキュリティの脅威を検知する仕組みは、次のとおりです。
1.ウイルスなどが仕組まれたファイルやプログラムが含まれるメールなどを受信する
2.サンドボックス環境で実行して動作を確認する
3.不正なファイルやプログラムだった場合は削除する
一度、隔離された安全な場所であるサンドボックスで、疑わしいファイルやプログラムなどを開封して確認した後、問題がなければユーザーに送信します。このような仕組みで、セキュリティの脅威からユーザーを守ります。
サンドボックスの機能・できること
サンドボックスにはどのような機能があるのか、何を実現できるのかについて解説します。
仮想環境を再現する
サンドボックス環境は、コンピューター端末やシステムの仮想環境を再現することが可能です。仮想環境で、ウイルス感染などが疑われるファイルやプログラムを実行することで、ほかの環境に影響を与えることがありません。安全に脅威の有無を確認できます。
プログラムを実行し、マルウェアなどの脅威を検知する
サンドボックスは、外部から隔離された仮想環境なので、ウイルス感染したファイルや悪意あるプログラムの侵入を監視し、検知できます。
マルウェアには、以下のようなものがあります。
【マルウェアの種類】
名称 | 特徴 |
ウイルス | ファイルやプログラムに寄生し、自己増殖できる |
ワーム | 単体で動作でき、自己増殖できる |
トロイの木馬 | 単体で動作でき、通常のプログラムになりすます |
スパイウェア | 外部に情報を自動送信し、感染に気づきにくい |
バックドア | 外部と不正な通信をするためにサイバー攻撃者が設置する感染に気づきにくい |
ランサムウェア | データやファイルの内容を暗号化し、復号化するかわりに身代金を要求する |
アドウェア | 偽の広告や警告を表示して、課金させる |
スケアウェア | 偽の警告を表示して金銭や個人情報を盗みとる |
ボット | 外部から遠隔操作できる |
キーロガー | キーボードの操作を記録して、パスワードなどを盗みとる |
レポートを作成する
サンドボックス内で実行したファイルや、プログラムに関する詳しいレポートを作成する機能が搭載されている場合もあります。このレポートからセキュリティの脅威を分析し、セキュリティ対策に活かすことが可能です。
サンドボックスを導入するメリット
サンドボックスを導入することで、得られるメリットについてご説明します。
自社のコンピューターへの影響を回避できる
サンドボックス環境がないと、自社のコンピューターやシステムに、サイバー攻撃の影響を直に受けてしまいます。しかし、サンドボックス環境を一度挟めば、自社環境への影響を回避できます。
直接脅威にさらされている状態ではなく、サンドボックス環境で疑わしいファイルやプログラムを開封できる環境にしておくことが大事です。
未知の脅威にも対応できる
サンドボックスは、未知のマルウェアなどの脅威にも対応できるのが、大きなメリットです。
セキュリティソフトなどでは、既知の脅威をあらわすシグネチャによるパターンマッチングを用いて、脅威を検知します。しかし、従来のパターンマッチングによる検知方法だと、既知の脅威しか防げません。
サンドボックス環境なら、一度ファイルやプログラムを実行して試してみることが可能なので、未知のマルウェアなどの脅威も防げます。既知の脅威を防ぐセキュリティソフトなどと併用すれば、幅広いセキュリティ対応が可能です。
とくに、特定の組織や企業を狙った高度な攻撃である、標的型攻撃に対処できるのは、大きなメリットです。近年、企業の担当者や取引先名などが記載されたメールが届き、ファイルを開いてしまうことで、マルウェアに感染するなどの標的型攻撃が増えています。あらかじめ個人情報を集め、サイバー攻撃に利用する巧妙な攻撃方法であり、成功率が高まっています。このような標的型攻撃も、サンドボックス環境で実行してみることで、脅威を防止することが可能です。
比較的容易に導入できる
サンドボックス環境を用意するのは、比較的容易です。ネットワーク構成の大幅な変更などは必要なく、設定変更などを行うだけで簡単に導入できるでしょう。
サンドボックスの注意点・デメリット
サンドボックスによる脅威の検知を行うことで、多くのメリットを得られる一方、注意点やデメリットもあります。ここでは、サンドボックスを利用する際の注意点やデメリットについて解説します。
分析完了までに時間を要する
サンドボックス環境を利用した対策は、一度ファイルやプログラムを実行してから結果を確認し、分析する必要があります。そのため、分析が完了するまでに、時間がかかるというデメリットがあります。
ツールが自動的に、検知、分析をしてくれるわけではありません。一度URLやファイルをクリックしてみる、その結果を見てみるなどの必要があるため、脅威を検知するまでに時間がかかります。
リアルタイムでの検知がむずかしい
脅威を受けたときに、リアルタイムで検知できるわけではありません。たとえば、マルウェアに感染させるファイルが添付されたメールを受信したら、開いて実行してみて、その結果を分析するという動作が必要です。
サンドボックスでは検知しきれない脅威も多い
サンドボックスにおかれたことを検知するマルウェアなども登場しはじめており、サンドボックスでは検知しきれない脅威もあります。また、サンドボックスによる検知をうまくすり抜けるマルウェアなども存在します。
そのため、サンドボックス環境を過信せず、あらゆる脅威に備えて、ほかのセキュリティツールを併用する必要があるでしょう。
導入や運用に費用がかかる
サンドボックス環境の導入作業自体は簡単ですが、初期費用や運用にかかる費用が高額です。
初期費用は、一般的に数百万円程度といわれており、製品によっては1,000万円以上する場合もあります。
また、運用時には、専門的なセキュリティに関する知識やスキルが必要とされます。脅威を含む恐れがあるファイルやプログラムを実行した結果を分析し、脅威であるか否かを判断しなければなりません。この判断を誤ると、脅威を内部に入れてしまう恐れがあります。そのため、セキュリティに関する知見をもつ優秀なセキュリティ人材を雇う必要があり、運用費用が高額になるでしょう。
サンドボックスとともに実施したいセキュリティ対策
サンドボックス環境を用意して対策するのと同時に実施する必要がある、セキュリティ対策についてご説明します。
システムをつねに最新状態に保つ
セキュリティツールやOS、ネットワーク機器、サーバー機器、アプリケーションなどの状態をつねに最新に保つことが重要です。最新の状態ではないと、脆弱性が放置されたままになる恐れがあります。
サイバー攻撃者は、脆弱性をついた攻撃もしてきます。脆弱性を放置すると、サイバー攻撃者からの攻撃を許す状態になってしまうため、危険です。
機器やシステム、OSなどを定期的にアップデートできる状態になっているか、アップデートの自動設定の状況などを確認しましょう。
ほかのセキュリティソリューションと併用する
すでにご説明したとおり、サンドボックスだけでは対処できないセキュリティの脅威も存在します。そのため、以下のようなほかのセキュリティソリューションと併用することで、互いに役割を補完しあうことが可能です。
・ファイアウォール:ネットワークに設置して外部からの脅威を遮断する
・IDS/IPS:不正侵入を検知・防止する
・EDR:パソコンやサーバーなどのエンドポイントの不審な挙動を検知して対応する
ほかの役割をもつセキュリティソリューションと併用することで、とりこぼしを防げるでしょう。
従業員へのセキュリティ教育を実施する
いくらシステム的にセキュリティ対策を施しても、実際に使う従業員たちの意識が低いと、セキュリティインシデントを防げません。たとえば、社内システムのパスワードを社員同士で共有する、USBメモリに顧客情報をコピーしてもち出すなどをすれば、不正アクセスや情報漏えいが起こってしまうでしょう。また、内部犯行による情報の流出などが起こる可能性もあります。
従業員のオペレーションミスや内部犯行などによるセキュリティインシデントを防ぐためには、定期的なセキュリティ教育が欠かせません。具体的なITツールの運用ルール、どのようなメールにウイルスが仕込まれているのかなどについて、定期的に研修などを行いましょう。
脆弱性診断を実施する
OSやセキュリティツール、サーバー機器やネットワーク機器などに脆弱性が放置されたままだと、サイバー攻撃のリスクが高まります。そのため、新しく社内ネットワークを構築した際などには、脆弱性診断を行うと脆弱性の有無を診断できます。脆弱性があった場合には、すみやかに対策を行うことで、セキュリティリスクを下げられるでしょう。
また、一度行うだけでなく、定期的に行うことで、その後に登場した新しい脆弱性に対しても対策を行うことが可能です。
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まとめ
この記事では、サンドボックスの定義、機能やできること、メリット、注意点などについて解説しました。サンドボックスを導入すると、セキュリティ対策の改善につながりますが、それだけで対応できるわけではありません。ほかのセキュリティソリューションも組み合わせることで、対策を充実させる必要があるでしょう。
SHIFTでは、セキュリティソリューション導入の支援を行っています。セキュリティ対策を充実させたい場合には、お気軽にお問い合わせください。
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