Introduction
AGIとは、従来のAIよりも高度な機能をもち、人間のように自ら問題を解決できる「強いAI」と呼ばれるものです。しかし、現在のところ、まだその技術は実現しておらず、近い将来に登場するのではないかといわれています。
この記事では、AGIについて、実現できること、いつごろ実現できそうなのか、今後の課題などを解説します。
※2024年10月時点での情報に基づいて作成しています。
目次
AGI(汎用型人工知能)とは?
AGI(汎用型人工知能)とは、従来のAIと何が違うのでしょうか?ここでは、AGIとは何か、これまでのAIとの違いなどについて解説します。
人間レベルの汎用的な知能をもつAIのこと
AGIとは「Artificial General Intelligence」の略語で、汎用人工知能と訳されます。人間と同じように多様なタスクをこなし、自ら問題を解決できる汎用的な知能をもつAIのことです。
総務省の『デジタルテクノロジーとのさらなる共生に向けて』によると、次のように定義されています。
AGI
AIが自己学習能力を持ち、様々な状況に対応できるようになる、汎用型人工知能(AGI:Artificial General Intelligence)
AGIは現時点で実現していませんが、AI技術の進歩はめざましく、近い将来実現するのではないかといわれています。
これまでのAIとの違い
AGIは従来のAIとは異なり、背景の知識がほぼなくても、人間レベルでタスクを実行できる「強いAI」と呼ばれています。これに対して、従来のAIは与えられた範囲内でのみタスクをこなすAIであり、「強いAI」に対して「弱いAI」と呼ばれることもあります。
従来のAIとAGIにはどのような違いがあるか、以下の表で比較しました。
【従来のAIとAGIの比較】
|
従来のAI | AGI |
学習能力 | あらかじめプログラムされた大量のデータを学習する | 経験から学習もでき、新たな情報・知識から状況に応じた判断を行う |
柔軟性 | あらかじめ決められた手法にもとづいてタスクを実行する | 新しい問題にアプローチし、解決方法を導き出す |
自己進化 | 自己進化はせず、与えられた範囲内でタスクを実行する | 限定的な自己進化を行って、データや経験から学び能力を向上させる |
AGIからさらに進化した「ASI」
AGIをさらに凌駕した、ASIという概念も存在します。ASIは「Artificial Superintelligence」の略で、訳すと「人工超知能」です。ASIは人間よりも優れた能力をもち、自己学習・自己進化が可能で、自らの知識や能力を向上させられます。人間には解決が困難な問題も、解決できるような能力をもっています。
人間の知能をはるかに超えたASIが現れたとき「シンギュラリティ」という現象が起こるといわれており、社会は大きく変化するでしょう。ASIが登場することで、人間が解明できなかった科学や数学の問題が解決する、ビジネスや労働のありかたが変わることで経済構造が大きく変わるなどといわれています。
シンギュラリティについてはこちらもご覧ください。
>>シンギュラリティとは?意味や迎えるタイミング、社会に与える影響を解説のページへ
AGIが必要とされている背景
AGIが登場すると、ビジネスにさまざまな変化が訪れると予想されています。たとえば、製造業でAGIを活用して生産プロセスが大幅に改善される、医療分野でAGIが診断や治療計画策定の助けを行い、医師不足の解決につながるなどです。
日本では少子高齢化が進み、「2025年の崖」「2040年問題」などの課題に直面しています。2025年になると、高齢者の割合が日本の総人口の30%に達すると同時に、ITインフラの老朽化による問題が起こるともいわれているのです。そして、2040年には高齢者の割合が35%を超え、労働力不足が深刻化します。
このような社会的な課題を解決するためには、従来の弱いAIだけではなく、人間と同様に柔軟な思考で解決策を引き出せる、AGIの実現が期待されているのです。
AGIができること
ここでは、AGIが実際に実現できることは何か、とくにビジネスシーンでどのように活躍するのかについて解説します。
自らの判断で問題を対処・解決する
AGIは、自らの判断で問題を対処・解決する能力をもっており、さらに人間では処理できない膨大なデータの処理が可能です。たとえば、医療の分野では、大量の検査データをもとに病気の診断を行う、病気の根本原因を特定するなどが可能になるでしょう。
人間と対等にコミュニケーションをとる
AGIは高度な判断力をもっているため、人間と対等にコミュニケーションを行えるといわれています。たとえば、サポート対応業務において相手の感情をくみとり、まるで人間のスタッフのように、問い合わせ対応ができるかもしれません。
新たなアイデア・理論を創出する
AGIは、自己学習を繰り返して、自身の知識レベルを向上させることが可能です。その結果、新しい画期的なアイデアや企画、理論、作品なども生み出せます。ビジネスにAGIの能力を活用すれば、新商品や新サービスの提案などもできるでしょう。
AGIの登場によってビジネスはどう変化する?
AGIが登場することで、ビジネスは大きく変わることが予想されています。
人間の手を介さなくても、AGIが判断を下して高度なタスクを任せられるようになり、労働力不足の解消や作業効率の向上などのメリットが考えられます。AIに人間の仕事が奪われるのではという懸念もありますが、仕事の質や作業効率の向上など、プラス面の方が大きいでしょう。
AGIはいつ実現する?
AGIの実現時期について、現時点で明確なことはいえませんが、多くの有力者が前向きな見解を述べています。
たとえば、ソフトバンクグループの孫正義氏は、2023年10月に登壇した講演において、AGIの世界が今後10年以内にやってくると発言しました。また、2023年5月には、OpenAI社CEOのサム・アルトマン氏がブログにて、今後10年でAIが多くの分野で専門家のレベルを超えるだろうと述べています。
このように、近い将来において、AGIが実現するのではないかという展望を述べる有力者もおり、AGIが実現する日は近いかもしれません。
AGIを構成する3つの要素
AGIは「機械学習」「認知アーキテクチャ」「認知ロボティクス」の大きく3つで成り立っています。ここでは、それぞれがどのようなものなのか、AGIをどのように成り立たせているのかについて解説します。
機械学習
機械学習は、従来のAIでも重要な要素となっていますが、AGIでも重要な位置を占めています。
AGIでは、機械学習のなかでも高度な「ディープラーニング」と「強化学習」が行われるのが特徴です。ディープラーニングでは、階層化されたニューラルネットワークを活用して、繰り返し学習することで、高度な知能を獲得していきます。強化学習では、与えられたデータから人間の感情や行動を学び、状況にあった行動は何かを学習します。
このように、AGIには高度な機械学習の仕組みが必要不可欠です。
機械学習についてはこちらの記事もご覧ください。
>>機械学習とは?AIやディープラーニングとの違い、活用事例などを解説のページへ
ディープラーニングについてはこちらもご覧ください。
>>ディープラーニングとは?機械学習との違いやできること、活用事例を解説のページへ
認知アーキテクチャ
AGIは、人間の思考回路のパターンから、人間が物事を認知するためのアーキテクチャを導き出し、AIに学習させます。これにより、人間の認知機能をモデル化できるようになります。認知アーキテクチャは、AGIが人間の認知能力を獲得するために必要なものです。
認知ロボティクス
人間がさまざまな課題に直面したときは、その都度最適な解決方法を見出します。このような認知をAIが行えるようにするのが、認知ロボティクスです。
認知ロボティクスには、生まれたばかりの赤ちゃんが周囲の環境から学習する、言語を獲得するために学習する、社会的なコミュニケーションを学習するという3種類が存在します。
AGIの先駆けとなる技術
AGIの技術が生み出されるために研究されてきた技術は、非常に多いです。ここでは、そのなかでもとくに重要な技術について解説します。
生成AI
生成AIモデルは、大規模なデータを学習し、自然なテキストや音声などを生成できます。膨大なデータを学習することで、実際に人間が書いたような文章や、人間が発したような音声を生成して返してくれます。
生成AIについてはこちらもご覧ください。
>>生成AIとは?できることや種類、活用事例、リスクについて解説のページへ
自然言語処理(NLP)
自然言語処理とは、人間の言語をコンピュータが理解して、生成するために必要な仕組みです。文章をトークンと呼ばれる最小単位に分割し、コンピュータが理解しやすいように変換して、文章を理解します。自然言語を扱うAIにとって、なくてはならない仕組みです。
自然言語処理(NLP)についてはこちらもご覧ください。
>>自然言語処理(NLP)とは?仕組みやできること、活用事例、課題について解説のページへ
AGIの課題
AGIの技術が実現すれば社会が大きく変わるといわれていますが、一方で課題も存在します。ここでは、AGIの今後の課題について解説します。
人間によるコントロールがきかなくなる可能性がある
人間を超える判断力や能力をもつなど、AIの力があまりに強くなりすぎることで生じる問題もあります。人間の能力を超えたAIの力が悪用された場合は、大きな脅威となるでしょう。そのため、高い能力をもつ、AGIをコントロールできるポリシーを整えておく必要があります。
規制や関係法律の整備が必要となる
AIが悪用された場合だけでなく、通常の使い方をしていても、セキュリティ面やプライバシーの面で問題が発生する場合もあります。たとえば、AIに入力した情報が外部に流出する問題や、著作権の問題などが考えられます。そのため、これらの問題を想定した規制や法律の整備が必要です。
実現しない可能性も否めない
今後、AI技術が進化することでAGIが実現するだろうといわれていますが、実現しない可能性も十分にあります。AGIが登場するかは現在のところ、誰にもわかりません。そのため、今後のAIに関する最新の情報を確認していく必要があるでしょう
まとめ
この記事では、AGIについて、実現できること、いつごろ実現できそうなのか、今後の課題などを解説しました。
AGIが実現すれば、人間レベルの判断能力や認知能力をもちながら、大量のデータを扱うことで人間以上の能力を発揮できるといわれています。一方で、AGIはまだ実現していない技術であり、今後実現するかどうかもわかっていません。今後も、AGIにつながるAIの最新の技術に注目が集まるでしょう。
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