オペレーショナルエクセレンスとは?意味や実践方法などについて解説

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オペレーショナルエクセレンスとは?意味や実践方法などについて解説
株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

Introduction

企業は、生産や販売などのさまざまな業務を進める際に、業務の効率化や生産性の向上を目指す必要があります。業務効率が悪いと無駄なコストが生じますが、業務の自動化やDXを進めることで、製品の品質や顧客満足度の向上にもつながります。

各企業が、業務オペレーションの効率化を目指す際に重要視されるのが、オペレーショナルエクセレンスです。

この記事では、オペレーショナルエクセレンスとは何か、その意味や実践方法などについて解説します。

目次

オペレーショナルエクセレンスとは?

オペレーショナルエクセレンスとは

オペレーショナルエクセレンスとは、具体的にどういうことなのか、よく似た概念との違い、オペレーショナルエクセレンスが注目されている理由について解説します。

オペレーションの効率化によって、競争上の優位性を高めること

オペレーショナルエクセレンス(Operational Excellence)とは、企業などが業務オペレーションの効率化を目指すことで、自社独自の優位性をもつことを指します。社内で標準化された業務オペレーション品質が競合他社よりも優れており、卓越したオペレーションで利益を生み出している状態、または、現場が自ら改善を推進していける状態のことです。

経済産業省の『グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)』によると、以下のように定義されています。

オペレーショナルエクセレンス

オペレーショナルエクセレンスとは、価値創造のための事業活動の効果・効率を高めることで、競争上の優位性を構築し、徹底的に磨き上げることを指す。

企業が競合他社との競争に打ち勝ち、市場での優位性を得るためには、他社よりも優れた製品を生む、独自の広告戦略を打ち出すなどの必要があります。しかし、それでも他社に大きく差をつけられないこともあるでしょう。他社との差別化をはかるために、オペレーショナルエクセレンスを追求することも有効です。

BPRとの違い

オペレーショナルエクセレンスとよく似た用語にBPRがありますが、何が違うのでしょうか?

BPR(Business Process Re-engineering)とは、業務改革と訳され、企業が目標を達成するために行う改革のことです。BPRの対象範囲は業務オペレーションだけではなく、組織や社内制度などの見直し、再構築も含まれます。一方、オペレーショナルエクセレンスはオペレーションのみに特化しています。

BPRではトップダウンで根本的な改善を行いますが、その分リスクは高くなります。これに対して、オペレーショナルエクセレンスは現場でリスクが低い継続的な改善を持続させることで、最終的に大きな効果を目指す手法です。

BPRについてはこちらもご覧ください。
>>BPRとは?意味やBPOとの違い、メリット・デメリット、進め方について解説のページへ

なぜいま、オペレーショナルエクセレンスが注目されているのか

いまオペレーショナルエクセレンスが注目されている理由は、競争優位性の確立が非常に重要であるためです。

テクノロジーが発展したことで、新しい製品を市場に投入しても、簡単に模倣されるようになりました。そのようななかで競争優位性を確立するためには、他社が簡単にまねできないような、品質・コスト・スピードの3つを兼ね備えた業務オペレーションが必要です。

競合他社に差をつけるためには、外部から知ることがむずかしい、社内のオペレーションを改善することがきわめて有効です。

オペレーショナルエクセレンスの3つの柱「QCD」とは

オペレーショナルエクセレンスを実現していくためには、以下の3つの要素に着目して、どれもバランスよく最適化していく必要があります。

・品質(Quality)

・費用(Cost)

・時間(Delivery)

これらの要素は、互いにトレードオフの関係にあります。たとえば、ITシステムを開発するIT企業の場合は、システム品質だけを追い求めることで、コストや開発期間がかかりすぎてしまいます。逆にコストや開発期間を削減しすぎると、品質が大幅に下がってしまうでしょう。

オペレーショナルエクセレンスを追求する際は、上記のQCDをバランスよく追求することが重要です。これにより、お客様に対する価値の最大化を目指します。

QCDについてはこちらもご覧ください。
>>QCDとは?重要性や優先順位、管理方法をわかりやすく解説のページ

オペレーショナルエクセレンスの実践ステップ

オペレーショナルエクセレンス実現のための具体的な流れについて、ご説明します。ここでご説明する流れを通して、現場の担当者たちが自主的に課題を見つけて改善する文化をつくっていくのを目指します。

①現状の業務フローを分析して、課題を明確にする

まずは現状の業務フローを洗い出して分析し、潜んでいる課題を明らかにします。業務フローを棚卸して可視化する、担当者の意見を聞くなどして情報を収集し、どこに問題があるのかを分析します。

問題点はここだろうとあたりをつける、現場の意見を鵜呑みにするなどではなく、現状の業務を棚卸して詳細に見直し、事実から問題点を明らかにすることが重要です。現場の担当者たちが現状を把握し、自らが問題点を見つけることが肝心です。

②目標を設定する

明らかになった課題をもとに、オペレーショナルエクセレンスの戦略を明確化し、目標を設定します。たとえば、開発部門でエラー発生率が高いのであれば「エラー発生率を〇%未満にする」など、具体的な数値目標を設定することが重要です。そして、目標を達成するための具体的な対策を検討します。

現場の担当者たちが目標を定めることで、自らが目標に向かって改善を進めていくことができるでしょう。

③改善施策を実行する

立案した改善施策を実行し、目標の達成を目指します。その際には、組織全体に課題、目標、対策などを周知して、共有することが重要です。そうすることで、新しいことを行う際の関係者からの反発を減らせるため、社内の従業員からの協力を得られるでしょう。

④評価し、継続的な改善につなげる

対策を行った結果、最初に設定した目標を達成できたかどうかを評価し、継続的な改善につなげます。

たとえば、上記の「エラー発生率を〇%未満にする」という目標を達成できたかどうかを評価します。達成できなかった場合は、なぜ達成できなかったかを振り返り、対策を立て直して実行することが必須です。達成できた場合も、具体的にどのような対策が効果的だったのか、より改善できる点はないかなどを次に活かすことが重要です。

このように、現場の担当者たちが自ら問題点を見つけ、目標を立てて対策を検討して実施するまでを、自らが評価して次につなげます。この繰り返しにより、現場の担当者たちが自主的に課題を見つけて改善する文化がつくられていくでしょう。

オペレーショナルエクセレンスの成功を支えるツール

オペレーショナルエクセレンスを実現させるにあたり、以下でご紹介するようなITツールを活用することで大きな効果を得られる可能性があります。

SaaS

インターネットを経由して、クラウド上のソフトウェアやツールを活用できるクラウドサービスをSaaSと呼びます。SaaSを活用することで、自社にあったITツールを効率よく選択して、業務改善に役立てることが可能です。

ソフトウェアやツールを購入して、自社内のサーバーやパソコンにインストールする場合、初期の導入コストがかかるうえに、自社内で更新管理やライセンス管理などが必要です。その点、SaaSを活用すれば、初期費用をおさえて自社にあったサービスを導入できます。

SaaSについてはこちらもご覧ください。
>>SaaSとは?PaaSやIaaSとの違い、メリットを初心者向けに解説のページへ

AI

AIツールも、オペレーショナルエクセレンスを追求するために役立つツールです。蓄積された業務に関する膨大な情報を分析して、業務に役立つ情報を収集する、予測するなどができます。

たとえば、膨大な顧客情報と過去の販売履歴などから、お客様それぞれのおすすめ商品を分析して、お知らせメールや会員サイトにおすすめ情報として掲載するなども可能です。これらの業務を人間が行うのはほぼ不可能ですが、AIツールを活用すれば効率よく実施できます。

AIについてはこちらもご覧ください。
>>生成AIとは?できることや種類、活用事例、リスクについて解説のページへ
>>人工知能(AI)とは?仕組みや種類、活用するメリット・デメリット、導入事例について解説のページへ

オペレーショナルエクセレンスを導入する際のポイント

オペレーショナルエクセレンスを導入する際のポイント

オペレーショナルエクセレンスを導入する際の重要なポイントは、以下のとおりです。

単にプロセスを改善するだけでなく組織文化の変革を目指す

オペレーショナルエクセレンスを導入する真の目的は、現場の担当者たちが自ら課題を明確にして改善する文化をつくり出すことです。そのためには、担当者たちが自ら改善活動を推進できる組織文化を作り、リーダーを育成し、全員が参加できる体制を作る必要があります。

単に現場のオペレーションを改善するだけでなく、組織全体として自立的に改善していく文化を育てていかなければなりません。

オペレーション指標の設定を行う

オペレーション指標とは、オペレーションにおけるKPI(ゴールに向かうまでのプロセスにおける中間数値、中間目標)のことです。目標達成に向けた、進捗状況を把握するために用います。たとえば営業部門なら、成約率、商談数、新規顧客数などが指標になるでしょう。

オペレーションの改善度合いを表し、オペレーション指標を適切に設定して管理することで、オペレーショナルエクセレンス実現の進捗状況を客観的に評価できます。

経営層と現場が連携をとる

オペレーショナルエクセレンスを実現するためには、現場の人間が動くだけではなく、経営層が組織全体の方向性を決め、リーダーシップを発揮して進めることが重要です。

オペレーショナルエクセレンスを企業文化として根づかせ、トップダウンだけではなく、従業員が主体的に動けるようにするには、経営層が積極的に関わり、現場と連携する必要があります。

人材を最大限に活用する

オペレーショナルエクセレンスを実現するためには、適材適所の人材配置が必要です。それぞれの人材の強み、スキルを活かせる部署に配置する、適切に教育するなどにより、業務改善の効果が高まります。

ITツールを導入し、社内に浸透させる

上記でITツールについてご説明したとおり、ITツールの導入は、オペレーショナルエクセレンス実現に非常に役立ちます。SaaS、AIツールなどを積極的に業務に組み込むことは、業務の効率化、生産性の向上に大きく貢献します。

たとえば、チーム内でタスクや進捗状況をリアルタイムに把握できる社内システムを導入すれば、チームメンバーがそれぞれ無駄なく業務を遂行できるでしょう。また製造業では、製品の製造から出荷までのプロセスを一元化できる製造管理システムを導入することで、原材料の無駄や納期の遅れなどを防ぎ、効率よく製造を管理できます。

ITツールを導入して社内に浸透させることで、業務効率の改善を大幅に加速させることが可能です。

まとめ

オペレーショナルエクセレンス(Operational Excellence)とは、企業などが業務オペレーションの効率化を目指すことで、自社独自の優位性をもつことを指します。社内で標準化された業務オペレーション品質が競合他社よりも優れており、卓越したオペレーションで利益を生み出している状態、または、現場が自ら改善を推進していける状態のことです。

競合他社との競争に勝つためには、製品の品質やデザイン、サービス内容などで差をつけるだけではむずかしくなってきています。たとえばスマートフォンなどは、新しい機能を搭載した製品が登場しても、すぐに他社に模倣されてしまい、自社の優位性を保つことはむずかしいでしょう。

そのため、製品やサービス自体の強みだけではなく、他社がまねできない社内のオペレーションを改善することは、市場競争を生き抜くうえで非常に重要な施策です。

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永井 敏隆

 

監修

株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
永井 敏隆

大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。

担当講座

・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数

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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
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この記事を書いた人

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著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

SHIFTは「売れるサービスづくり」を得意とし、お客様の事業成長を全力で支援します。無駄のないスマートな社会の実現に向けて、ITの総合ソリューションを提供する会社です。

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