Introduction
システム開発を外注するのか自社内で内製化するのか、悩んでいる方も多いでしょう。どちらを選ぶべきかを決めるためには、それぞれのメリットやデメリットを比較して決める必要があります。
システム開発を外注することで、開発会社に蓄積されたノウハウや知見を活かした開発が可能です。しかしその一方で、社内にノウハウが蓄積されない、情報漏えいのリスクがあるなどのデメリットもあります。このようなメリット、デメリットを比較して、自社の状況やニーズにあった方法を選ぶことが大事です。
この記事では、システム開発を外注する場合のメリットとデメリット、また、開発会社の選び方や費用相場について解説します。
目次
システム開発を外注するメリット

まずは、システム開発を外注することで得られるメリットとは何かをご説明します。
専門スキルと最新知見を活用できる
システム開発会社に外注するもっとも大きなメリットは、開発会社がもつ専門スキルや最新の知見を活用できるということです。
開発会社には、さまざまなシステム開発を手がけた経験があり、専門的なIT知識をもつエンジニアなどの専門家が在籍しています。そのため自社内に専門知識をもつ専門家がいなくても、開発会社に開発を外注することで専門的な知識や技術を活用した品質の高いシステムを開発できます。
システム開発に必要なリソースを必要時に確保できる
システム開発には、ある程度の工数が必要になります。社内でシステム開発を担当できるエンジニアの数には限りがあるため、開発プロジェクトが立ち上がった際に、必要な人員を社内だけで確保することが難しい場合があります。システム開発を外注することで、開発に必要なリソースを柔軟に確保することが可能です。
希望のスケジュールで開発ができる
開発経験が豊富な開発会社にはプロジェクトマネジメントの専門家も多数在籍しており、開発を効率よく進めるノウハウをもっています。発注側と取り決めたスケジュールにあわせて納品管理を徹底することで、スケジュールどおりに開発を進めてくれます。
ただし、希望通りのスケジュールで開発を進めるためには、発注側が要件を具体的に提示する、無理のない開発スケジュールを開発会社側と綿密にすり合わせたうえで組むというのが大前提になります。また、適宜コミュニケーションをとる、スケジュールに予実差が生じた際に開発会社に任せっきりにするのではなく発注側も協力する姿勢をとるなどの対応も必要です。
初期コストが削減できる
専門スキルをもつエンジニアを育成、または採用するためには多大なコストがかかります。また、開発のためのサーバーやネットワーク設備、ソフトウェアやツールなどの設備投資も必要です。
しかし外部の開発会社に外注することで、これらエンジニアの採用、育成コスト、設備投資といったプロジェクト開始にかかる初期コストを削減できます。
システム開発についてはこちらもご覧ください。
>>システム開発とは?工程や手法、依頼時のポイントまでわかりやすく解説
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システム開発を外注するデメリット
システム開発会社を利用するメリットは多いですが、一方でデメリットもあります。正しく理解し対策するために、システム開発会社に外注するデメリットについてご説明します。
ノウハウが社内に蓄積しにくい
システム開発を外注すると開発会社のノウハウや知見を活かした開発ができますが、一方で、社内にノウハウが蓄積しにくいという問題もあります。
そのため、システムの運用がはじまった後、システムのメンテナンスや機能の追加、変更が必要になった場合などに社内で対応することが難しくなります。この場合、再度開発会社に発注する必要が生じるでしょう。
長期的にシステムを運用したい場合には、システムの仕様書やマニュアルなどを整備し、ノウハウを社内に残すことが重要です。
コミュニケーションに工数が発生する
開発会社に外注する場合には、開発担当者と密にコミュニケーションをとらないと要望や連絡事項を正確に伝えることができず、双方に認識のずれが起きてしまいます。
要望や連絡事項などを、開発会社の窓口の担当者を通して連絡する必要があります。社内で開発している場合はチャットや電話などで連絡をとりやすいですが、外注の場合には連絡に時間がかかるなどコミュニケーションコストが発生します。
品質管理が難しくなる
システム開発を外注する場合、品質管理を発注側が行うのが難しいという問題もあります。品質を発注側で担保する場合、発注側が仕様書などのドキュメントをレビューする、テスト結果を検証する、ユーザーテストを発注側が行うなどの対応が必要です。しかし、自社内にレビューやテストを行うノウハウや知見がないと、品質を担保することが難しいでしょう。
その場合、第三者機関に品質保証を依頼する、または品質保証を任せられる信頼できる外注先を選ぶなどの対策が必要です。
仕様変更の際に多大なコストが発生する
開発プロジェクトが本格的に動き出したあと、社内状況やニーズの変化から仕様変更を余儀なくされるケースもあるでしょう。システム開発を外注した場合、途中で仕様変更をしてしまうと要件やスケジュールの見直し、工数の再見積もりなど、大きなコストが発生します。そのため、外注の際は事前に要件定義を綿密に行う必要があります。
もし要件がどうしても定まらない、途中で仕様変更する可能性が高いなどの場合は、アジャイル開発を検討しましょう。ただし、その開発手法内容から頻繁な要件の判断が求められるため、発注側がプロジェクトに密接に関与できることが前提になります。
アジャイル開発についてはこちらもご覧ください。
>>アジャイル開発とは?概要や進め方、ウォーターフォール型開発との違いやスクラムについて解説
セキュリティリスクが発生する
外部の開発会社に開発を依頼する場合、セキュリティリスクへの対策も必要です。開発するシステムが社内の重要な情報、たとえば顧客の個人情報や従業員の情報、商品やサービスの情報などを扱う場合、開発会社から情報が漏えいするリスクがないとはいえません。
そのため、社内の重要な情報を開発会社に渡す必要がある場合には、機密情報保持の契約を取り交わす、適切なセキュリティ対策を行っている会社を選ぶなどの適切な対応が必要です。
システム開発会社の選び方

開発を外注する際には、自社にあったシステム開発会社を選ぶことが非常に重要です。しかし、どのように開発会社を選べばよいのか、どのような点に気をつければよいのかわからない場合もあるでしょう。ここでは、システム開発会社を選ぶ際に確認すべき重要なポイントについて解説します。
システム開発会社の実績を確認する
システム開発会社の過去の実績を必ず確認しましょう。過去に似たタイプのシステムを開発した実績がある開発会社を選ぶことで、よりよい提案を受けられるためです。
たとえば、POSシステムを開発する場合には、POSシステムの開発実績がある開発会社に依頼することで過去の経験を生かした提案やアドバイスを受けられます。
システム開発会社の公式サイトを確認する、担当者に聞くなどの方法でシステム開発会社の過去の実績を確認し、依頼するシステムの開発経験がある会社を探してみてください。
コミュニケーション力や理解力が高い会社を選ぶ
システム開発を外注する際には、担当者のコミュニケーション力や理解力も重要なポイントです。
システム開発を行う際には、システムに求める要件や開発条件などを詳細に開発会社に伝えなければなりません。その際に、開発会社側の担当者のコミュニケーション力が低いと必要な要件が十分に伝わらない可能性もあります。
たとえば業務システムを開発する際には、開発会社側も業務内容について深く理解する必要があります。しかし、開発側が業務内容を十分に理解せずに開発に着手した場合、使い勝手が悪かったりさまざまなリスクが残ったりした業務システムになってしまうかもしれません。
このように、開発会社側のコミュニケーション力や理解力は重要なため、発注先の選定時にミーティングなどの場で確認しておくことをおすすめします。
アフターフォロー体制が整っている会社を選ぶ
システム開発が終わった後の運用・保守フェーズも非常に重要です。納品後に機能の追加や変更が必要になった、トラブルが発生したなどの場合には、開発会社に対応を求めることもあります。そのため、開発が完了した後にどのようなフォロー体制になっているかを確認しましょう。
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費用の内訳と相場
システム開発を外注する際の内訳と相場について解説します。
費用の主な内訳
費用の主な内訳としては、「人件費」「プロジェクト管理費」「設備費」「保守/運用費」などがあります。
人件費とは、開発を行うエンジニア、プロジェクトマネージャー、デザイナー、データサイエンティストなどの人件費です。人件費は必要な技術や専門知識が高度になるほど、高額になります。
プロジェクト管理費はプロジェクトの進捗管理、課題管理、調整などに必要な費用です。大規模プロジェクトになるほど高額になります。
設備費は、サーバー機器やネットワーク機器などのハードウェアの費用、ソフトウェアのライセンス費用などです。
保守・運用フェーズに入ると、システムを維持管理するための保守/運営費用が必要になります。開発時の契約に含まれておらず、開発完了後に別途契約が必要な場合もあります。
費用相場
費用相場は、プロジェクトの規模や性質によって大きく異なります。そのため、以下はあくまで一例としてご確認ください。
・小規模開発:20万円程度~
・中規模開発:100万円前後~
・大規模開発:1,000万円を超える場合もある
また、最先端のAI技術を必要とする開発など、必要な技術が高度な場合や難易度の高い開発案件の場合には、費用が増加することもあります。
システム開発の外注が向いているケースは?
ここでは、システム開発の外注が向いているケース、向いていないケースについて解説します。
外注に向いているケース
・社内にリソースや専門技術やノウハウが不足している
社内にリソースや専門技術、ノウハウがない場合、社内で開発することは困難です。そのような場合には、外部のリソースを活用することで高品質なシステムを得られるでしょう。
・開発スケジュールがタイト
納期が厳しい場合には、専門知識や技術、ノウハウをもつ開発会社に依頼することで、短期間で開発を完了できる場合もあります。(短納期を希望する場合、その分予算が膨らむ可能性があります)
開発会社は効率よく開発を進めるノウハウをもっているため、相談してみるとよいでしょう。
・一時的なプロジェクトをたちあげたい
一時的なプロジェクトをたちあげる場合には、外注する方がコスト効率が高いケースが多いです。短期的なプロジェクトは社内の体制構築にリソースを割くのではなく、外部リソースを活用する方が効率よく開発を進められるでしょう。
外注に向いていないケース
・社内の人材を育成したい場合
システム開発を外注すると社内の人材は育たず、社内にノウハウや知見を蓄積することができません。そのため、社内のエンジニアやプロジェクトマネージャーなどを育成したい場合には、時間やコストがかかりますが内製化した方が長期的にみるとメリットが大きいでしょう。
・長期的なプロジェクトの場合
開発したシステムを長期的に使いたい場合などは、内製の方が向いています。内製化することで自社のエンジニアやスタッフがシステムに関するノウハウや知見を蓄積でき、システムを長期的に維持運用できるようになります。また、将来的に機能追加や変更、改修を行う場合にもスムーズに対応できるでしょう。
・機密情報を扱う場合
社内の重要な機密情報、たとえば顧客の個人情報や従業員の情報などを扱うシステムの場合は、できるだけ内製化した方がよいでしょう。情報漏えいのリスクを下げることが可能です。
ただし、自社のノウハウが少ない場合は開発したシステムのセキュリティ対策も不十分になる可能性があります。その場合は外注したほうが機密情報を守れる場合もあるので、自社の技術力を客観的にて判断しましょう。
外注で失敗しないためには
システム開発を外注する際には、どのような点に注意すべきなのでしょうか?ここでは、外注で失敗しないために注意したい点について解説します。
要件定義を綿密に行う
システム開発の外注でもっとも重要なのは、システムに対する要件や開発条件などを開発会社に詳細に伝えることです。そのためには、要件定義を綿密に行い、要件や開発条件を明確に定義しておくことが重要です。要件を明確に言語化しておけば開発会社に伝えやすいでしょう。
要件定義の段階では定まらない部分があったり、仕様変更が見込まれたりする場合は、開発手法自体をアジャイル開発に変更することも検討しましょう。ただしアジャイル開発を採用する場合は、発注側もプロジェクトにより密接に関与する必要があります。
要件定義についてはこちらもご覧ください。
>>要件定義とは?作成手順や前後の流れをわかりやすく解説!のページへ
>>要求仕様書とは?要件定義書やRFPとの違いから書き方、構成まで解説のページへ
コミュニケーションは頻繁にとる
開発会社に要件を伝える開発初期、開発中、開発完了後の運用時のどのフェーズでも、開発会社と適切にコミュニケーションをとることが大事です。
開発初期は社内の要件を伝え、開発会社側の提案を理解することが重要なため、もっとも頻繁にコミュニケーションをとるべき工程です。開発中は定期的にミーティングの場を設け、進捗状況の確認や課題管理などを行う必要があります。
開発を外注先に丸投げしてコミュニケーションを怠ると認識のずれが大きくなってしまうため、適切にコミュニケーションをとるようにしましょう。
外注管理をしっかり行う
システム開発を外注する場合には、外注管理を行うことは非常に重要です。外注管理には、契約管理、進捗管理、リスク管理、品質管理などがあります。
システム開発は通常、企画工程、要件定義工程、設計工程、製造工程、テスト工程、納品、運用・保守と進みます。たとえば要件定義工程では、要件定義書を詳細にレビューして要件を固める、テスト工程でユーザーテストを行う、納品後に受入テストを行うなど、発注側が適切に介入する必要があります。開発をすべて開発会社に丸投げしてしまうと、求める要件からかけ離れたシステムになってしまうでしょう。
適切に外注管理を行い、品質を保ちつつ、開発会社側と認識のずれが発生することを防ぐことが重要です。
まとめ
この記事では、システム開発を外注する場合のメリットとデメリット、また、開発会社の選び方や費用相場について解説しました。システム開発を外注すると、開発会社がもつノウハウや知見を活用して品質の高いシステムを開発可能です。しかし、社内にノウハウが蓄積されない、機密情報漏えいリスクなどのデメリットもあるため対策が必要です。
システムを外注する場合にはメリットとデメリットを比較し、自社にあっているかを検討する必要があるでしょう。
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監修
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
担当講座
・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
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