プロジェクト遅延の原因とリカバリ方法は?初動対応や再発防止の対策を解説

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プロジェクト遅延の原因とリカバリ方法は?初動対応や再発防止の対策を解説
株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

Introduction

システム開発プロジェクトを計画通りに進めることは非常に困難です。プロジェクトの遅延が発生しないように、つねに対策を講じておかなければなりません。
また、遅延による影響を最小限にするためには、あらかじめ遅延の原因となりそうな要因をできるだけ取り除く、リカバリ手段を用意しておくなどの対策が必要です。
ここでは、プロジェクト遅延の原因やリカバリ方法、遅延が発生した際の初動対応や再発防止策などについて解説します。

目次

プロジェクトに遅延が発生する主な原因

プロジェクトに遅延が発生する主な原因

システム開発におけるプロジェクトの遅延原因は、事前にある程度想定ができます。まずは、プロジェクトに遅延が発生する主な原因について解説します。

要件定義の曖昧さ・認識ズレ

プロジェクトが遅れる最も一般的な原因の一つが、要件定義の曖昧さです。

システム開発を外部会社に外注する場合、発注側と開発会社側で「どの機能を、どの品質で、いつまでに実装するのか」という認識がズレたまま進行すると、後になって修正が発生します。特にITシステム開発プロジェクトでは、要件定義工程で混入した認識のズレがそのまま大きな工数増につながります。

そのため要件定義を「技術的な文書」と認識するだけではなく、「ビジネスのゴールを明文化する契約書」と位置付けることが大事です。初期段階で関係者全員が同じ理解を持てるようにレビューを入念に行うことで、後の手戻りを大幅に防ぐことができます。

要件定義についてはこちらもご覧ください。
>>要件定義とは?作成手順や前後の流れをわかりやすく解説!

システム開発についてはこちらもご覧ください。
>>システム開発とは?工程や手法、依頼時のポイントまでわかりやすく解説

スケジュール設計の甘さ

プロジェクトの遅延は、現実的でないスケジュール設定から始まることもあります。「この程度の開発なら2週間でできるだろう」などと経験や勘に頼ってスケジュールを立てると、実際の作業に想定外の時間がかかることが少なくありません。また、レビュー期間や顧客の承認、他チームの作業待ちなどを見落としているケースも多くみられます。

そのため、計画時にチェックすべきポイントとしては、「バッファが設定されているか」「前提条件を見落としていないか」などがあります。前提条件を無視したスケジュールでは、遅延は避けられないでしょう。

人員不足・スキルギャップ・アサインミス

プロジェクトメンバーのリソースが不足している、必要なスキルを持つ人が配置されていないなどの場合には、作業効率が大きく低下します。よくあるのは、急な離職や兼務による人手不足、経験の浅いメンバーが中心になってしまうなどのケースです。このような状態では、作業スピードが落ちるだけでなく、品質の低下にもつながります。

そのため、プロジェクト立ち上げ時には「必要スキルマップ」や「代替人員計画」を策定しておくことが有効です。人材リスクを定量的に把握し、リソース確保の責任を明確化しておくことで、遅延を防ぐ体制が作れます。

進捗管理の不足

進捗状況を定期的に確認しないままプロジェクトを進めてしまい、後になって遅れが発覚するケースがあります。プロジェクトマネージャーが報告を受けていたとしても、完了率、工数消化率などの定量的な指標を用いていないと、遅延の兆候を的確に把握できません。

遅延の兆候を早期に発見するために週次で進捗会議を実施し、遅れを1週間単位で可視化できる体制を整える、などの対策が必要です。

コミュニケーション不足・関係者間の連携不良

チーム間の連携が取れていないことも、遅延の大きな原因です。

「誰がどの作業を担当しているか」「どこまで完了しているか」などの情報が共有されていないと、作業の重複や漏れなどが発生します。特にリモートワーク環境では、コミュニケーション不足によって情報の遅延や誤解が生まれやすくなります。

そのため、情報共有をチャットやメールなどの連絡ツールに頼るだけではなく、プロジェクト管理ツールを導入し、情報共有の仕組みとして整備することが効果的です。

リスク検知と対応が遅れたことによる膨らみ

リスクの検知やリスクが顕在化した後の対応が遅れることも、遅延の原因になります。

たとえば「外部ベンダーの納期が遅れそう」「顧客から仕様変更が入りそう」などの兆候が早期に報告されないと、遅延を防げません。また、リスクを検知したのにすぐに対応をとれる体制になっていない場合にも、被害が大きくなりがちです。

対策としては、定例ミーティングを行うだけでなく、リスクを報告しやすい文化を組織として作ることが重要です。現場が早めに問題を共有できるようにすることで、致命的な遅延を未然に防ぐことが可能です。

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プロジェクト遅延を防止するための事前対策

プロジェクトの遅延は「発生してから」ではなく、「発生する前」にどれだけ対策できるかが鍵になります。特に重視すべきなのは、プロジェクトマネジメントの仕組みを整えることです。

以下では、5つの事前対策を紹介します。

綿密な要件定義と関係者間の合意形成

プロジェクトを成功させるために大事なのは、メンバー全員が同じゴールを目指す体制を作ることです。そのためには、要件定義の段階で「何のために」「何を」「どの範囲で」作るのかを明確にし、関係者全員の合意を取ることが必要です。

そのため、要件定義工程のレビュー体制を強化し、社内だけでなく顧客や外部ベンダーも含めて合意を得て意識のズレを防ぐことが大事です。

適切なタスク分解とWBS・ガントチャート作成

プロジェクト全体を「いつ」「誰が」「何をするか」に分解して見える化することが、遅延を防ぐための基本です。

この際に活用されるのがWBS(Work Breakdown Structure)とガントチャートです。WBSは、作業を細かく分けて管理できる仕組みで、作業の漏れを防ぎます。ガントチャートはスケジュール全体を可視化する表で、進捗状況を一目で把握できます。

WBSやガントチャートで進捗状況を定期的に確認することで、早期異常検知が可能になります。

十分なリスクマネジメントと予備工数の確保

プロジェクトでは想定外のことが必ず起こります。たとえば天候の変化や外部ベンダーの進捗遅延、顧客からの仕様変更など、すべてを予測することは不可能です。

そこで重要なのが、リスクマネジメントの事前設計とバッファの確保です。リスクを事前に洗い出し、発生確率と影響度で優先順位をつけた対応計画を立てましょう。

余裕を前提にしたスケジュール設定をすることで、遅延を防ぎ安定したプロジェクト運営につながります。

コミュニケーションルール・定例会議の設定

チーム内で情報共有がうまくできないと無駄が発生し、遅延につながります。そのため、プロジェクトの初期段階で「いつ・誰が・何を報告するか」というコミュニケーションのルールを明確にしておく必要があります。

たとえば週1回の定例会議、日次の進捗報告、緊急時の連絡手段(チャット・電話・ビデオ会議など)のルールを明確にします。会議を形式的なものにはせず、問題を発見する場にすることが大事です。

プロジェクト管理ツールの活用

近年では、さまざまなプロジェクト管理ツールが登場しています。プロジェクトごとに適したツールを活用することで、タスクの進捗、期限、課題などの管理を一元化できます。

特にリモートワークや複数拠点での開発では、このようなツールが情報共有の生命線になるでしょう。また、プロジェクトでの議論や決定をツール上で記録するルールを定めることで、属人的な情報伝達のズレを防ぐことができます。

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遅延が発生してしまったら?適切な初動対応

遅延が発生してしまったら?適切な初動対応

どれほど入念に準備しても、プロジェクトの遅延を完全に防ぐことはできません。重要なのは、「遅延をどう防ぐか」だけではなく、「遅延が起きたときにどう動くか」です。初動対応を誤ると、わずかな遅れがプロジェクト全体に影響することもあります。

実際に遅延が発生したら、まずは「バッファを使って遅れを取り戻す」ことを考えます。遅れの程度や内容を確認して、プロジェクト発足時に確保していたバッファを割り振りましょう。

その際に大切なのは、プロジェクトマネージャーが直接バッファの残量を管理し、遅れているところに適切に配分することです。開発メンバーにバッファ割り振りを委ねると、個人の裁量で消費して使い切ってしまう可能性があります。

なお、バッファを利用する際は予定の線表に後から組み入れるのではなく、線表ごと引き直すことをおすすめします。今後もバッファを利用するたびに線表を引き直し、厳密に管理しましょう。

また、さらなる遅れを防止するために、以降のステップも実施しておきましょう。

STEP1:WBS・ガントチャートを再確認し遅延が起きている領域の特定

「どの作業が、どの程度遅れているのか」を客観的に把握することが、遅れを解消する第一歩です。感覚や印象で判断せず、WBSやガントチャートを用いて遅延の発生箇所を可視化しましょう。また、一か所の遅延が他の工程に波及する場合には、早急にスケジュール全体の再設計が必要です。

「遅れているのはどの領域か」「どの程度の期間か」「どの工程に波及しているか」を確認し、判断につなげます。

STEP2:遅延理由を事実ベースで整理

次に行うのが、遅延の原因分析です。事実ベースで「なぜ遅れたのか」を整理することで、対策の方向性が見えてきます。

たとえば、以下のように分類して考えます。

・内部要因:作業見積りミス、メンバーの離脱、進捗管理の不徹底など
・外部要因:顧客の仕様変更、ベンダー遅延、承認プロセスの停滞など

このように、遅延理由を「管理可能な内部要因」と「外部依存の要因」に切り分けることで、対策が立てやすくなります。

STEP3:緊急ミーティングと優先度の再設定

遅延範囲と原因が明確になったら、すぐに関係者全員で緊急ミーティングを開きます。ミーティングの目的は「責任の追及」ではなく、「今からどう巻き返すか」を決めることです。

対策を講じる際には、リソースの再配分、外部委託の追加、要件の一部延期など、迅速に判断すべきことが多くあります。慎重に検討して判断を下し、タスクの優先順位を再設定していきます。影響が大きいタスクから優先的に対応し、他のタスクは段階的に調整するのがよいでしょう。

プロジェクト遅延を巻き返すリカバリ戦略

ときには、プロジェクト発足時に確保していたバッファでは巻き返せない遅延が発生することもあるでしょう。前述の3ステップで遅延の原因と範囲を把握したら、次に行うのは「どうリカバリを行うか」の計画立案です。ただし、やみくもな人員増や残業で補おうとすると、メンバーが疲弊し品質低下を招く場合もあり逆効果です。

ここでは、4つのリカバリ戦略についてご紹介します。

ファスト・トラッキング

ファスト・トラッキングとは、本来は順番に実施する工程を、可能な範囲で同時進行させてスケジュールを短縮する手法です。

たとえば、設計が完了する前に開発の一部を先行着手する、テスト設計を開発と並行して進めるなどの方法があります。

これにより、スケジュール全体を圧縮できますが、この方法はリスクも伴います。前の工程が完了していない状態で次の作業を進めることで、後から修正が発生する可能性があるためです。

この判断を行う場合には、「どの範囲なら並行化しても安全か」を見極め、並行可能なタスクを限定することが大切です。ファスト・トラッキングはスピードを生む反面、品質への影響が出やすいため、「短期的な遅延回復」に適した戦術といえます。

クラッシング

クラッシングとは、特定のタスクに追加の人員やコストを投入し、短期間で遅延を取り戻す方法です。

たとえば、開発チームに外部エンジニアを増員する、専門スキルを持つスタッフを一時的に参加させるなどの方法があります。このとき、「どのタスクで増員するか」と「その費用対効果が見合うか」を見極めなければなりません。すべてのタスクでクラッシングすることは不可能なため、増員の効果がもっとも高いタスクを特定し、そこにリソースを集中させます。

この方法は即効性がありますが、短期間でコストが膨らむため、ROI(投資対効果)を意識した判断が必要です。また、外部人員を急に入れるとチーム内の調整や教育コストが発生するため、投入タイミングを慎重に見極めることも重要です。

要件や仕様のスコープ調整

スケジュール回復のもっとも現実的な手法の一つが「スコープ調整」、つまり開発範囲の見直しです。すべてを最初の計画どおりに完成させようとするのではなく、「今必要な部分」と「後からでもよい部分」を明確にわけます。

そのためには、顧客やステークホルダーと交渉し、「納期を守るために一部機能を後回しにする」合意を取る必要があります。このとき重要なのは、「段階的に実装する」という認識ですり合わせをすることです。そうすることで、顧客の理解を得やすく、信頼関係を損なわずに遅延を取り戻せる可能性が高まるでしょう。

スコープ調整はコストを増やす必要がなく、比較的リスクの少ない戦略ですが、優先順位を誤ると製品価値が下がるため慎重に行う必要があります。

契約・納期調整

どうしてもリカバリが難しい場合の最終手段として、契約や納期の見直し交渉があります。

あくまで最終手段であり、顧客やステークホルダーと調整を行う際に重要なのは、「誠実な説明」と「信頼の維持」です。単に「遅れました」と報告するだけではなく、以下のような内容を伝えることがポイントになります。

・どの工程でどんな問題が発生したか
・それによってどの程度の遅延が発生しているか(どの程度の納期延長が必要か)
・どのような対策をすでに講じたか
・今後どんな再発防止策を実施するか

信頼を損なわないように、直接顧客と対話して明確な説明を行うことを心がけましょう。また、契約書に「変更条項」や「納期延長の条件」を明文化しておくことで、法的なトラブルを最小化できます。

まとめ

プロジェクトの遅延は、どの企業にも起こり得るリスクです。そのため重要なのは、「遅延を完全になくすこと」ではなく、「発生したときに、どれだけ早く、正確に対応できるか」といえます。

この記事でご説明したように、あらかじめ遅延のリスクを想定しておき事前に対策しておく、初動対応やバッファの利用、リカバリ戦略を適切に行うことが重要です。適切なプロジェクトマネジメントを行うことで、開発の品質を維持しながらプロジェクトの遅延を防ぎ、開発をスムーズに進められるでしょう。

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SHIFTの品質コンサルティング/品質PMOでは、上流工程のコンサルティングから各開発工程の品質PMOまで、総合的な品質向上とリスク低減をお手伝いします。品質の標準化やテスト戦略の策定で品質を底上げし、品質PMOの導入でプロジェクト運営をスムーズに進めます。さらに、テスト工程の巻き取りなども可能です。

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永井 敏隆

監修

株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
永井 敏隆

大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。

担当講座

・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
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この記事を書いた人

株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

SHIFTは「売れるサービスづくり」を得意とし、お客様の事業成長を全力で支援します。無駄のないスマートな社会の実現に向けて、ITの総合ソリューションを提供する会社です。

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