Introduction
システム開発やソフトウェア開発を進める際に欠かせないのが、開発ロードマップの作成です。開発ロードマップとは、プロジェクトの目標達成までの道筋を表した資料で、開発チームや経営層、営業担当などの関係者が情報を共有するために用いられます。
この記事では、開発ロードマップとは何か、作成する目的やロードマップの種類、作成時の注意点などについて解説します。
目次
開発ロードマップとは

開発ロードマップとは、プロジェクトやプロダクトにおいて目標達成までの道筋を時系列で表した資料のことです。どのタイミングで何を達成し、最終的にどこを目指すのかをひと目で把握できるため、組織にとって「共通の地図」のような役割をもちます。
エンジニアだけでなく、経営層、営業、サポート部門、外部パートナーなど、多くのステークホルダーが理解しやすい形にまとめられている点が特徴です。
ただし、「開発ロードマップ」という言葉は少し曖昧です。厳密にはロードマップには「プロジェクトロードマップ」と「プロダクトロードマップ」があり、両者は目的も使われ方も異なります。そのため、開発ロードマップを作成する際には、どちらなのかを事前に確認しておくと安心です。
プロジェクトロードマップとプロダクトロードマップの違い
プロジェクトロードマップは、プロジェクトを時間軸で整理し、どの工程をいつ実行するのかを示したものです。ゴール、主要なタスク、マイルストーン、関係者、期限などがまとめられており、プロジェクト全体の進め方がひと目でわかるようになっています。
一方、プロダクトロードマップは、プロダクト(製品・サービス)の開発計画を示したものです。どのようなプロダクトにするのか、プロダクトの方向性や搭載する機能の優先順位などを決め、開発計画として記載します。製品開発チームだけでなく、マーケティング部門でも活用し、顧客に公開される場合もあります。
この記事では、一般的に仕事の現場で使われることが多い「プロジェクトロードマップ」について解説します。
ロードマップとマイルストーンの違い
ロードマップとよく混同される言葉に「マイルストーン」がありますが、両者は役割がまったく異なります。
ロードマップは、プロジェクト全体の流れや計画を示す「地図」のことで、ゴールまでの道筋や順番、関係者の動きを俯瞰できるようにまとめたものです。
一方、マイルストーンはプロジェクトの重要な節目となる「チェックポイント」です。ロードマップを道路全体の地図とたとえるなら、マイルストーンは道路にある「進捗確認の看板」のようなイメージです。
「計画の全体像」がロードマップ、「進捗の節目」がマイルストーンであり、ロードマップの中にマイルストーンが含まれています。
関連サービスについて
ロードマップを作成する目的とメリット
ロードマップを作成する最大の目的は、「チーム全体で同じゴールを見ながら前に進むための共通基盤をつくること」です。
プロジェクトは、開発チームだけでなく経営層、ビジネス部門、営業、サポート、外部パートナーなど、多くの関係者が関わります。ロードマップがあれば、プロジェクトの目的や方向性、期限、優先順位などがひと目でわかるため、チーム内の認識が揃い意思決定が速くなります。
また、計画を時系列に整理できるため必要な調査や手配を先行して進めることができ、遅延などのリスク管理がしやすくなります。さらに関係者も同じ情報を共有できるため、関係者との合意形成がスムーズになります。
ロードマップは目標共有だけでなく、関係者との調整、スケジュール可視化、リスク管理などをスムーズに行えるマネジメントツールです。プロジェクトの成功率を高めるために欠かせない存在といえるでしょう。
ロードマップの基本的な作り方

ここでは、実務でそのまま使えるロードマップ作成の5つのステップを紹介します。
STEP1:プロジェクトのゴールを明確にする
最初のステップは、「プロジェクトの最終的なゴール」を明確にすることです。ゴールが曖昧なまま計画を作ると、タスクの優先順位やスケジュールがぼやけ、後から手戻りが発生しやすくなります。
ゴールを設定する際には、「誰にどのような価値を提供するのか」、「成果物は何か」、「ゴール達成をどう判断するのか」などを明確にすることが重要です。ゴールが明確になればロードマップ全体の方向性が固まり、チーム全員が同じ目的を共有できるようになります。
STEP2:達成までの期限を設定する
次にプロジェクトの期限を設定します。期限が定まることで計画にメリハリが生まれ、優先順位をつけやすくなります。
期限設定の際は、「ゴールに対して現実的な期間か」、「リソースは足りているか」、「関係者とのスケジュール調整は問題ないか」、「繁忙期などの変動要素はないか」などを確認しておきましょう。
STEP3:現状を把握し、課題整理とリスクの洗い出しをする
ゴールと期限が決まったら、次は「現状の把握」と「課題・リスクの整理」を行います。現状分析を行わずに計画をつくると、突発的な問題や予期せぬ遅延が発生しやすくなってしまうため、重要な作業です。
特に、次のポイントを整理しておくと計画の精度が高まります。
・現在の進捗状況
・過去の類似プロジェクトで発生した問題
・チーム内のリソース状況
・外部要因による遅延リスクの有無
課題とリスクを早い段階で明確にしておくことで、ロードマップに対策やバッファを組み込みやすくなります。
STEP4:時系列で計画を立てる(マイルストーン設定)
ここまで整理した内容をもとに、具体的なロードマップを作成します。このステップではタスクを時系列で並べ、重要なポイントに「マイルストーン」を設定します。
最初は大まかに作成し、チームレビューや状況変化に応じて更新していくことで、より実務に耐えられるロードマップになります。
STEP5:チーム全体で共有・レビューする
最後に、ロードマップをチーム全体で共有し、レビューを行います。プロジェクトメンバーや関係部署からフィードバックを受けることで見落としや改善点が明らかになり、計画の精度が高まります。
ロードマップはつくって終わりにするのではなく、定期的に見直しつねに最新の状態に保つようにしましょう。
ロードマップをつくるうえで押さえておきたいポイントと注意点
ロードマップは使い方を誤ると形骸化したり、逆に混乱を招いたりすることがあります。ここでは、ロードマップを実務で活かすために押さえておくべき5つのポイントをまとめます。
詳細を詰め込みすぎない
ロードマップに細かいタスクを詰め込みすぎると、「スケジュール表」との違いが曖昧になってしまいます。本来、ロードマップはプロジェクトの全体像を示すものです。詳細な内容を詰め込みすぎるとわかりにくくなり、全体像が伝わらなくなってしまうでしょう。
そのため、ロードマップは「大枠」「方針」「節目」に絞り、必要最小限の内容で構成することが重要です。ツールについても特に専門的なものではなく、パワーポイントやエクセルなど誰でも扱えるもので図を作成する形で問題ありません。
マイルストーンは節目ごとに絞る
マイルストーンを設定する本来の目的は、節目ごとに状況を確認し、方向性がずれていないかを見極めることです。マイルストーンを増やしすぎると、達成できているかチェックすることに追われてしまうため、マイルストーンは節目ごとに絞ることが重要です。
適切なマイルストーンの設定とは、たとえば以下のようなものがあります。
・仕様の確定
・開発完了
・テスト完了
・リリース判断
プロジェクトの重要な節目に絞ることで、ロードマップの見やすさや使いやすさが向上します。一般的に、最初は以下のような粒度で作成されることが多いです。(なお、複数サイクルのロードマップを作成することもあります)
【2026年】
│─────│─────│─────│─────│─────
│①月 │②月 │③月 │④月 │⑤月
│要件定義 │設計 │開発 │テスト │リリース
PDCAで定期的に見直す
ロードマップは一度作って終わりの資料ではありません。市場環境、顧客からの要望、仕様変更、リソース状況の変化など、プロジェクトを取り巻く環境はつねに変化するため、PDCA(計画→実行→評価→改善)で定期的にロードマップを見直すことが重要です。
たとえば月次の進捗会議、仕様変更が発生時、リリース判断時、リスクが顕在化したときなどがロードマップを見直すタイミングになります。状況の変化にあわせて最新化しておくことで、ロードマップはプロジェクト全体の判断を支える強力なツールになるでしょう。
まとめ
開発ロードマップは、プロジェクトを成功させるための「共通の地図」の役割を果たします。ゴールや期限、タスクの流れ、重要な節目を整理し、関係者全員が同じ方向を向いて進めるようにするための重要なツールです。
ロードマップを作成することで、判断のスピードが上がる、作業の優先順位が明確になるなどのメリットがあり、リスクの早期発見にもつながります。適切なロードマップを作成して運用することで、プロジェクトの成功率は大きく向上するでしょう。
SHIFTのアジャイル開発支援で、イレギュラーにも柔軟な対応を
システム開発では適切なロードマップを作成してチームや関係者が認識をあわせることが重要ですが、イレギュラーな出来事が起こりスケジュールどおりに進まないことも多いでしょう。イレギュラーな出来事にも柔軟に対応できる開発体制を整えたい場合には、SHIFTのアジャイル開発支援(SHIFT 1LINE)をご活用ください。
SHIFTのアジャイル開発支援では、激しいビジネス環境の変化に対応できる開発体制の構築を支援いたします。お客様のアジャイル内製開発体制の構築を支援し、人材確保や人材育成などにも対応しています。
監修
株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
担当講座
・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数
――――――――――
ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
――――――――――


