開発リソースが不足している場合の解決策は?原因についても解説

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開発リソースが不足している場合の解決策は?原因についても解説
株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

Introduction

システム開発プロジェクトなどで「開発リソースが不足している」という問題がよくきかれます。開発担当者の人材不足、時間が足りないなどの開発リソース不足が発生することで、生産性や品質が低下し、企業の競争力が落ちてしまうこともあります。
では、開発リソース不足を解決するためには、どうすればよいのでしょうか?この記事では、開発リソース不足が起きた際の影響や原因、解決策などについて解説します。

目次

開発リソースとは

開発リソースとは

開発リソースとは、システム開発や事業の成長に必要となる「人材・資金・物・時間・情報」などの経営資源(リソース)をまとめた言葉です。企業がプロジェクトを成功させるためには、これら5つの要素が適切に確保され、バランスよく使われることが重要です。どれか1つでも不足すると、開発スピードや品質に悪影響を及ぼします。

ここでは、「人材・資金・物・時間・情報」の5つのリソースについてご説明します。

・人的リソース(人材)
人的リソースとは、エンジニア、デザイナー、企画担当者など、必要なスキルを持った人材のことです。人材が揃っていないと、開発作業そのものが成り立ちません。特にIT業界では専門人材の需要が高まっているため、企業間の獲得競争も激しく、慢性的に不足しがちな領域です。

・資金リソース(お金)
開発には、システム構築のための外注費、ツールの利用料、ハードウェア購入費など、さまざまな費用がかかります。資金が不足すると必要なツールを導入できず、生産性が下がったり、品質が低下したりするリスクがあります。資金の確保と適切な配分は、開発の速度と品質を大きく左右します。

・物的リソース(設備・ツール)
開発に必要なパソコン、サーバー、ネットワーク環境、ソフトウェアツールなどの物的リソースは、作業効率を直接左右します。最新のPCやツールが揃っていないと、処理時間がかかって遅延が発生したり、ミスが増えたりすることもあります。設備投資は軽視されがちですが、重要なリソースの一つです。

・時間リソース(スケジュール)
どれだけ優秀な人材やツールがあっても、時間が足りなければ品質は保てません。無理なスケジュールは開発スピードの低下や品質問題につながり、最終的にはトラブルの原因になります。限られた時間をどう使うかという計画の立て方、優先順位づけは非常に重要です。

・情報リソース(知識・ノウハウ)
情報リソースには、技術的な知識、業務ノウハウ、競合情報、最新トレンドなどが含まれます。情報が不足すると、時代にあわないシステムを作ってしまう、非効率な方法を選んでしまうなどの可能性があります。特にIT業界は変化がはやいため、情報リソースが開発競争力に大きく関係します。

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開発リソース不足の主な原因

開発リソースの不足は、一つの原因だけで起こるものではありません。人材不足、予算不足、開発手法のミスマッチ、社内の体制の問題、経営方針の問題などが複合的に絡み合って発生します。

ここでは、開発リソース不足が発生する主な原因についてご説明します。

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市場全体でIT人材が不足している

日本では少子高齢化が進んでおり、労働人口そのものが減っています。内閣府の「高齢社会白書」でも、今後の生産年齢人口は継続して減少する見通しとされています。そのため、企業が求めるスキルを持つ人材が市場に十分に存在しない状況が続いています。

デジタル化、DX推進、AI活用などの流れにより、IT人材の需要は急激に増えています。しかし、経産省の「IT人材需給に関する調査」では、供給が需要に追いつかず、将来のIT人材不足がさらに拡大するとされています。結果として、企業は必要なスキルを持つ人材を確保しにくくなっています。

予算が不足している

予算が不足していると、開発自体に必要になるさまざまな開発リソースの確保ができません。前項で説明の通り、IT人材の確保から設備投資、ツールの導入、ノウハウ確保まで幅広い要素が「開発リソース」として挙げられ、これらの質と量の確保がプロジェクトの円滑な遂行には欠かせません。

予算不足に伴うリソース不足によって開発効率が落ち、プロジェクトが長期化し、余計なコストが発生する…という悪循環を生むことにもつながってしまいます。

不適切な開発手法を採用している

プロジェクトにあっていない開発手法を選ぶと、作業効率が大幅に悪化します。特に、ユーザーからの多様なニーズに応える必要があるシステムやソフトウェアを開発する場合には、ウォーターフォール開発のような柔軟性の低い手法を採用すると、手戻りが多くなり、リソース不足を引き起こします。

時代やニーズにあっていない不適切な開発手法を使い続けると、ますますリソース不足が悪化してしまうでしょう。

ウォーターフォール開発についてはこちらもご覧ください。
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社内の体制が整備されていない

社内の体制が整っていない場合、情報共有が不十分になり、作業が属人化します。特定の担当者しか内容を把握していない状態になると、その人の負担が増えるだけでなく、急な休暇や退職が発生した際にプロジェクト全体が止まるリスクがあります。また、管理ルールが曖昧だと作業効率も落ちます。

開発の方針に問題がある

経営層やマネジメントの方針が不明確なままプロジェクトが進むと、開発チームの判断がぶれ、余計な工数が多くなります。また、開発方針が頻繁に変わると、作業のやり直しが増え、必要以上にリソースを浪費してしまいます。このような方針の不統一は、現場の士気低下にもつながるでしょう。

開発リソース不足がもたらす4つの影響

開発リソース不足がもたらす4つの影響

開発リソースが不足すると、企業活動のあらゆる部分に悪影響が広がります。ここでは、開発リソースが不足すると企業活動にどのような影響を及ぼすかについて解説します。

生産性が下がる

もっともわかりやすい影響は生産性の低下です。必要な人材を確保できないと一人あたりの作業量が増え、結果として時間あたりに作れる成果物が少なくなります。無理な作業が続くとミスも増え、品質が落ちる可能性も高まります。

また、資金不足や設備不足も生産性を下げる原因になります。古いパソコンやツールを使わざるを得ない、必要なソフトを導入できないなどの状況では作業スピードが落ち、開発効率が大幅に低下します。設備投資の遅れは直接的なコスト増として跳ね返ってくるでしょう。

離職率が上がる

リソース不足が続くと従業員一人あたりの負担が増え、長時間労働が常態化したり、休みが取れなくなったりすることで、肉体的・精神的な疲労が蓄積します。その結果、離職を考える従業員が増えるのは自然な流れです。

また、資金不足で設備やツールなどが不十分な状態だと、本来は自動化できる作業を手動で対応しなければなりません。「効率の悪い環境で働き続けなければならない」という不満が従業員のストレスを増大させ、結果的に離職率を押し上げます。

開発スピードが下がる

開発リソースが不足すると、開発スピードは確実に落ちます。生産性が下がるため予定どおりに進まなくなり、納期に間に合わないリスクが高まります。さらに、スケジュールの遅れは後続作業の担当者にも負担を与え、チーム全体のストレスや混乱を生む原因になるでしょう。

また、開発スピードが遅くなると、新しいニーズや市場変化に間に合わず、ビジネスチャンスを失う可能性もあります。競合他社が先に新機能をリリースしてしまう、顧客の要望に応えられないなど、売上に直結する機会損失が起きることも珍しくありません。

競争力が下がる

人的リソースや資金が不足すると、新しい技術やツールを取り入れる余裕がなくなります。結果として、競合他社が取り入れている最新手法を導入できず、サービスの質や開発スピードで後れを取る可能性があります。

また、企業内に優れたアイデアがあっても、開発リソースが不足していると実現できないまま終わってしまいます。ノウハウ・情報リソースが不足している場合も、最新技術に対応できず、競争力を失う要因になります。これは企業として大きな損失です。

開発リソース不足を解消する方法

開発リソースの不足は、多くの企業が抱えている共通の課題ですが、状況にあった対策を講じることで解決可能です。その際に重要なのは、「何が不足しているのか」「どの解決策が最も効果的なのか」を見極め、計画的に取り組むことです。

ここでは、開発リソース不足を解消するための方法についてご紹介します。

現在の開発リソースの最適化

まず重要なのは、現在の作業内容やメンバーのスキル、稼働状況を正確に把握することです。誰が何の作業を抱えているのか、どの工程で時間がかかっているのかを可視化することで、適切な担当割り当てができます。属人化している作業を整理し、担当者の得意分野やスキルに合わせてポジションを最適化することが、生産性向上の第一歩です。

新たな人材の採用

必要なスキルを持つ人材を採用することで、リソース不足を直接的に補うことができます。特にIT業界では優秀な人材の争奪が激しく、いい人材は早い段階で他社に採用されてしまいます。そのため、フレックス、テレワークなどの柔軟な働き方や魅力的な職場環境の提示などが、採用競争で勝つための重要なポイントになります。

即戦力を求める場合には、フリーランスのエンジニアを活用するのも効果的です。必要な時だけ人材を確保できるため、急な人手不足に対応しやすい方法です。

社員の育成

既存社員を育成することで、長期的に安定した開発体制を築くことができます。

新たな採用と比べると費用を抑えやすい点がメリットですが、教育には時間がかかり、教える側にもノウハウが必要です。そのため、外部研修やOJTを外部企業に委託する方法も検討するとよいでしょう。

社内環境の改善

開発に使うPCを最新のスペックにする、作業を効率化するツールを導入するなどの方法で、社員の負担を大きく減らすことができます。快適な労働環境はモチベーション向上にもつながり、離職防止にも効果があります。

設備投資はコストがかかるものの、生産性の向上という形で大きなリターンを生む取り組みです。

タスクの自動化

自動化できる業務は積極的に自動化することで、開発者が本来注力すべき業務に時間を使えるようになります。

AIによるコード生成支援やRPAによるバックオフィス業務の自動化など、ツールの選択肢は増えています。自動化は人的リソースの不足を補う即効性の高い手段です。

アウトソーシングの活用

開発全体を外部企業に委託する方法や、一部の工程だけを任せる方法があります。特にSES(System Engineering Service)を活用すると、必要な人数を必要な期間だけ確保できるため、リソース不足に非常に有効な手段となります。

また、外部委託のなかでも、次のような選択肢があります。

・オフショア開発:海外拠点に委託し、人件費などのコストを抑える
・ニアショア開発:国内の地方拠点に委託し、オフィスの家賃などのコストを抑える
・ラボ型開発:専属チームを組み、長期で安定した開発体制を構築する

企業やプロジェクトの状況に応じて最適な形を選ぶことで、リソース不足を柔軟に補えるでしょう。特に、システムやソフトウェアを開発する際には、多様化するユーザーからのニーズやビジネス環境の変化に迅速に対応することが求められています。新しい開発手法や技術を取り入れて開発力を強化するためには、アウトソーシングの活用も検討するとよいでしょう。

まとめ

開発リソースとは、人材・資金・物・時間・情報の5つで構成されており、どれか一つでも不足すると開発品質やスピードに大きく影響します。現代の企業にとって、これらのリソースの確保と適切なバランスは、競争力の維持に欠かせない要素です。

リソースが不足すると、生産性の低下、離職率の上昇、開発スピードの遅延、競争力の低下など、多方面にわたって悪影響が広がります。特にIT領域では変化のスピードが速く、一度スケジュールが遅れると、その後の事業成長に大きな損失が生まれる可能性があります。

リソース不足の原因は、市場全体でのIT人材不足、予算制約、手法のミスマッチ、社内体制の不備、方針の問題などが複合的に絡んで発生します。まずは「どのリソースが不足しているのか」「その背景は何なのか」を明確にし、課題を可視化することが重要です。

リソース不足の解消方法には、作業内容やスキルの可視化による最適化、新規採用やフリーランス活用による即戦力確保、社員の育成、社内環境の改善、アウトソーシングの活用などがあります。企業の状況にあった対策を選択することで、無理なく改善が進むでしょう。

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永井 敏隆

監修

株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
永井 敏隆

大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。

担当講座

・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数

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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
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この記事を書いた人

株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

SHIFTは「売れるサービスづくり」を得意とし、お客様の事業成長を全力で支援します。無駄のないスマートな社会の実現に向けて、ITの総合ソリューションを提供する会社です。

サービスサイト:https://service.shiftinc.jp/
コーポレートサイト:https://www.shiftinc.jp/
X(旧Twitter):https://twitter.com/SHIFT_cp

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