プロジェクトの炎上とは?影響や適切な対応、予防策について解説

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プロジェクトの炎上とは?影響や適切な対応、予防策について解説
株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

Introduction

システム開発でできるだけ避けたいのが、プロジェクトの炎上です。プロジェクトが炎上してトラブルが多発するとメンバーが対応に追われることとなり、疲弊してしまうでしょう。そのような事態に陥らないようにするためには、どうすべきなのでしょうか?
この記事では、プロジェクトの炎上とはどういうことなのか、炎上が起きる主な原因や影響、炎上した際の立て直しの流れ、予防策などについて解説します。

目次

「プロジェクトの炎上」とは

「プロジェクトの炎上」とは

プロジェクトの炎上とは、単なる進捗の遅れではなく、プロジェクトが計画どおりに進まず納期・品質・コストなどの面で重大な問題が表面化し、収拾がむずかしくなっている状態を指します。

多くの場合、炎上は突然起きるわけではありません。小さな遅れや認識違い、コミュニケーション不足が積み重なり、気づけば「対処不能」に近いレベルまで問題が拡大しているケースがほとんどです。たとえば、要件の追加が止まらない、作業工数の見積もりが甘かった、リーダーの負荷が集中して判断が遅れるなどのパターンがあります。

炎上が厄介なのは、時間・コストの損失だけではなく、組織の信頼やメンバーのモチベーションにも深刻な影響を与える点です。企業の経営層から見ても、炎上は単なる現場の問題ではなく、事業や組織運営のリスクとして向き合うべきテーマといえます。

プロジェクトが炎上する主な原因

プロジェクトが炎上する理由は一つではありません。複数の課題が重なり、気づいた頃には手が付けられないほど大きな問題へと発展しているケースが多いでしょう。ここでは炎上が起きる主な原因についてご説明します。

企画・要件定義段階の問題

プロジェクトの土台となるのが「企画・要件定義」です。ここが曖昧なまま進行すると手戻りが大きくなり、炎上リスクが一気に高まります。

よくあるのが以下のようなケースです。

・要件が明確でないままプロジェクトが始まる
必要な機能や成果物がはっきりせず、後から変更が続く。

・ゴールまでの道筋や成功基準が曖昧
判断の軸がブレるため、優先順位が決まらず混乱しやすい。

・関係者の認識が揃っていない
顧客と現場の間で認識がずれる。

企画・要件定義は軽視されがちですが、ここが曖昧だと後工程で何倍もの手戻りが発生してしまうため、慎重に進めるべき工程といえるでしょう。

要件定義についてはこちらもご覧ください。
>>要件定義とは?作成手順や前後の流れをわかりやすく解説!のページへ

実行段階の問題

計画が妥当でも、実行段階の運用が適切でなければ炎上は起こります。

代表的な問題は以下のとおりです。

・進捗管理ができていない
「遅れがいつから発生していたのか」が誰も把握できず、問題発見が遅れる。

・見積もりが甘く工数が足りない
想定以上の作業が発生し、人員の増強でコストが膨らむ。

・属人化していてボトルネックが発生
一部のメンバーへ負荷が集中し、全体が停滞する。

特に「進捗を見える化できていない」状態は、炎上の温床です。遅れが顕在化した時点では手遅れになりがちです。

メンバーや組織の問題

プロジェクトにおけるメンバーや組織に以下のような問題があることでも、炎上が起きやすくなります。

・コミュニケーション不足
顧客との認識がずれる、社内の連携がうまくいかない、など。

・メンバーのスキル不足・経験不足
想定より作業に時間がかかり、品質が安定しない。

・リーダーの負荷集中や判断遅れ
チーム全体の意思決定がストップし、遅れが加速する。

このような人や組織の問題は数値として表れにくいため、気づいたときには深刻化しているケースが多いです。

外部要因の問題

社内の問題だけでなく、外部要因により炎上が発生するケースもあります。

・顧客都合による要件変更
追加要望が増え、スケジュールやコストが崩れる。

・外部パートナーのトラブル
外注先の遅延、品質トラブルなどが連鎖的に影響。

・環境変化(法改正・市場変化・災害など)
計画の見直しが必要になり、全体が予期せず停滞する。

外部要因はコントロールしづらいため、はやい段階での察知と適切なリスク管理を行うことが重要です。

プロジェクトが炎上した際の影響

プロジェクトの炎上は、単なる「遅れ」や「トラブル」という問題にとどまらず、チームや組織に深刻なダメージを与えます。特に経営層にとって重要なのは、炎上が人材・組織力・顧客信頼・事業コストなど、多方面に影響を広げるという点です。

ここでは、「メンバーへの影響」と「組織への影響」の2つに分けて整理します。

チームのメンバーに及ぼす影響

プロジェクトが炎上すると、最前線で対応するメンバーへの負担が急激に増します。

・プロジェクトリーダーへの精神的負荷が集中する
炎上すると原因追及や調整業務が増え、責任の所在がリーダーに集中しがちです。結果として、判断疲れ・プレッシャー・長時間対応など、強いストレスを受けることになります。

・エース級メンバーへの負荷が増大し離職リスクが高まる
トラブルが起こると、本来予定していない作業が増えます。この増えた作業はすぐの対応が求められるため、「できる人」が巻き取ることになり、エース社員の工数増加に伴う疲弊につながります。最終的に離職やモチベーション低下を招き、組織に大きな損失を与えることがあります。

・チーム全体の士気低下
炎上状態が続くと、「達成感が得られない」、「無理なスケジュールが続く」、「未来が見えず不安が増える」という状況になり、メンバーの士気が大きく下がります。

このように炎上は、チームメンバーの消耗という形で「見えない損失」を生み続けます。

組織に及ぼす影響

炎上はチームだけでなく、組織全体にも波及します。

・部外メンバーにも悪影響が伝播
炎上したプロジェクトが社内で噂になることで、「会社のプロジェクト管理は大丈夫か?」「次は自分が炎上案件にアサインされるのでは…」などと不安が広がり、直接関わっていない社員の離職率が高まるケースもあります。

・顧客対応コストの増大
スケジュール変更や追加調整のために、顧客との会議が増えます。その結果、他案件のリソースが奪われるなど、さらなる負の連鎖を生むことがあります。

・組織の信頼低下・ブランド価値の毀損
納期遅延や品質問題が続けば、顧客からの信頼低下につながります。企業間取引であれば「再発注されない」「契約が縮小される」といった事業への直接的なダメージも起こり得ます。

・コストの膨張
炎上の結果、「人件費が増える」、「外注追加が必要になる」、「検証・修正コストが膨らむ」など、当初の予算を大きく超えるケースも少なくありません。

このように炎上は現場だけの問題ではなく、人材流出・コスト増大・顧客離脱など、経営課題そのものにつながる重大リスクです。

プロジェクトが炎上した際の立て直しの流れ

プロジェクトが炎上した際の立て直しの流れ

プロジェクトの炎上にはさまざまなパターンがあるため、完全に同じ対処法が適用できるとは限りませんが、多くの炎上案件に共通する「基本の対処方法」は存在します。

ここでは、プロジェクトが炎上した際の立て直しの一般的な流れについて紹介します。

①状況把握

最初にすべきなのは、問題の正体を正確に、事実ベースで理解することです。

まずは「今、どのタスクが遅れているのか」、「ボトルネックはどこか」、「想定より作業量が増えた理由は何か」、「メンバーの負荷状況はどうか」など、状況を整理します。ここを曖昧にしたまま対策を打つと問題の本質を外してしまい、改善が進まなくなります。

そしてガントチャート、タスク管理ツールなどを使い、「何が起きているかを全員が共通認識できる状態」にすることが重要です。

ここで注意すべきは、最初に原因追求(犯人探し)から始めてしまわないようにすることでしょう。糾弾を恐れて情報が隠蔽される可能性があり、さらなる悪化が見込まれるためです。まず「事実の可視化」と「チーム全体の協力」が必要であることを、全員で認識することが大切です。

②タスクの整理

状況を正しく把握したら、次に「何から解決すべきか」を整理します。

問題を分解し、「重要度と緊急度の高いタスク」、「手戻りを防ぐために先に着手すべきタスク」など優先順位をつけます。炎上状態では、最適な人材配置になっていないことが多いため、スキルとリソースを見直し、適材適所に人を再配置します。

組織として「誰をどこにアサインすれば改善が最も早いか」を判断することが、立て直しの成否を大きく左右します。

③スケジュールの組み直し

タスク整理ができたら、次は「現実的なスケジュール」を再構築します。

炎上プロジェクトの多くは、当初のスケジュールがすでに破綻しているため、「リソース」、「タスクの難易度」、「外部依存の状況」を踏まえて、再度納期を設定し直します。

また、再スケジュールでは、想定外の問題が起きる可能性を考慮し、適度な余裕を持たせることが重要です。ここで遅れた分を取り返そうとタイトなスケジュールに設定すると、同じ轍を踏んでしまう可能性があるからです。

④顧客への説明と調整

スケジュールや体制の見直しが必要な場合、顧客への説明は避けられません。素早く・誠実に・具体的に「何が問題だったのか」、「どんな改善策を取るのか」、「どの程度スケジュール変更が必要か」を明確に伝え、理解を得ることが重要です。

また、炎上時は顧客の不信が高まりやすいため、「今後どのように成功させるか」を顧客と共に合意し直すことが大切です。

⑤解決策の実行

最後に、再構築した体制とスケジュールに基づき、解決策を着実に実行します。

その際には、「進捗を細かくチェックする」、「リスクの早期発見に努める」、「コミュニケーション頻度を増やす」などに注意しながら進めます。炎上プロジェクトの立て直しでは、これまでよりも密な管理が必要です。

また、改善した点をチームと顧客に共有し、モチベーションと信頼の回復につなげることも大事です。

プロジェクト炎上を予防するためのポイント

プロジェクトが炎上すると、立て直しに大きなコストと労力が必要になるため、炎上を未然に防ぐ仕組みを作ることが重要です。

ここでは、企画段階から実行、組織コミュニケーション、ツール活用などの炎上予防策について解説します。

企画・要件定義段階の予防策

炎上を防ぐうえでもっとも重要なのは、企画・要件定義工程で適切な計画を立てることです。

・タスクの洗い出しを徹底する
曖昧なタスクが残っていると、スケジュールが崩れやすくなります。そのため、関係者全員で抜け漏れのない要件整理やタスクの洗い出しを実施することが重要です。

・スケジュールに余裕(バッファ)を持たせ、適切に管理と活用をする
プロジェクトでは必ず予想外のできごとが起きます。そのため、最初から余裕を持った計画を立てるのが望ましいでしょう。また、形式的にバッファを取るだけでなく、プロジェクトマネージャーがバッファの管理をし、問題発生時に解決に向けて適宜割り振るのが大切です。

・メンバーのスキルを踏まえた適切配置
担当者の経験・強み・負荷を整理し、「適材適所」を徹底するだけで、後半のトラブルを大きく減らせます。

実行段階の予防策

プロジェクト開始後の実行段階で炎上の予防策を講じておくことも重要です。

・進捗を細かく把握する
週単位ではなく、日単位での進捗管理が理想です。進捗のズレを早期に発見できれば、手遅れを防止できます。

・問題が起きたらすぐ顧客と相談する
「問題が起きても後でまとめて顧客に説明すればいい」という姿勢は、炎上の原因になります。問題発生直後に共有することで、顧客とともに適切な対策を講じることが可能です。

・チーム内で状況を共有する仕組みを作る
朝会・夕会や短い共有ミーティングを取り入れることで、「問題を早期発見する文化」をチーム内に定着させることが重要です。

・レビューやテストなどの品質保証プロセスを確実に実行する
プロジェクト炎上の理由の一つに、とにかくプロジェクトの遅延を恐れて品質確保を先送りしてしまい、最終的に顧客とのイメージの乖離が発生する、というのがあります。スケジュールが多少タイトになったとしても、レビューやテストを確実に実施するほうが、結果的にプロジェクト進行をフォローし円満な完了に導いてくれるでしょう。

開発中のコミュニケーションに関する予防策

開発中のコミュニケーションの問題も炎上を引き起こしやすい領域のため、以下のような対策が必要です。

・コミュニケーションツールの活用と気軽に報告しあえる環境の構築
プロジェクト発足の際は、円滑なコミュニケーションとリアルタイムでの状況把握のために各種チャットツールの活用を検討しましょう。ただしチャットツールを採用しても、チーム自体の雰囲気がピリピリとしていてはメンバーが奥手となり、有効活用ができません。些細なことでも気軽に報告しあえる環境の醸成も、あわせて進めましょう。

・社内フィードバックを定期的に行う
社内フィードバックを定期的に実施し、「メンバーの困りごと」、「ボトルネック」、「進捗の遅れ」を日常的に見える化します。

・情報の「透明性」を高める
情報共有が途絶えるとチーム内に不安や誤解が広がるため、オープンなコミュニケーションを方針として明確にしておくことが大切です。

ツールや仕組みを活用した予防策

コミュニケーションツールだけでなく、プロジェクト管理ツールやタスク視覚化ツールなどを活用することで、人的ミスや認識ズレを減らせます。

・プロジェクト管理ツールの活用
「ガントチャート」、「タスク管理ツール」などを活用すると、進捗の遅れを即座に把握できます。

・タスク視覚化ツールの利用
タスク視覚化ツールを活用してタスクの依存関係や担当を見える化することで、ボトルネックを早期に発見できます。

・標準化されたワークフローを整備
プロジェクトごとに仕事の進め方が違うと炎上リスクが増えるため、共通のプロセスやチェックリストなどを設けることが有効です。

まとめ

プロジェクトの炎上は、どの企業にも起こりうる経営リスクです。炎上が発生すると、メンバーの負担増加、顧客との関係悪化、追加コスト、さらには組織全体への悪影響など、事業に深刻なダメージを与えます。

炎上は突然起こるわけではなく、要件定義の曖昧さ、進捗管理不足、コミュニケーションの断絶、外部依存のトラブル、などの複数の要因が少しずつ積み重なった結果として発生します。そのため、各工程で適切な予防策を講じておくことが重要です。

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永井 敏隆

監修

株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
永井 敏隆

大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。

担当講座

・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
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https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
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この記事を書いた人

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著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

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