Introduction
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、経済産業省が進めているデジタルによる変革の取り組みですが、DXをうまく進められないという企業が多いのが現状です。
日本企業のDX化(DXによる業務改善への取り組み)が思うように進まない理由は何なのでしょうか?「そもそもDXをどのように進めていけばよいかわからない」、「社内に対応できるIT人材がおらず、なかなか進められない」などの悩みをもつ企業も多いでしょう。
この記事では、DX化が進まない現状と理由、DX化が進まない企業の傾向、企業がまず取り組むべきことについて解説します。
目次
DX化が進まない現状と背景

デジタル技術が急速に進化するなか、日本企業では「DXの重要性は理解しているが実行できない」というギャップが大きくなっています。多くの企業がDX推進を掲げているものの、実際には部分的なツール導入にとどまり、業務全体の変革には結びついていません。背景には、組織文化や既存システムの複雑さ、人材不足、経営層の認識ギャップなど、複数の要因が絡み合っています。
ここではDX化が進まない現状と背景について解説します。
DX化についてはこちらもご覧ください。
>>DX化とは?IT化との違いやメリット・デメリット、進め方を解説のページへ
日本企業や行政機関のDXの取り組み状況
日本では、民間企業だけでなく地方自治体などの行政機関においてもDXが大きなテーマとなっていますが、実際の進捗は決して十分とはいえません。企業側では「現場が忙しくて変革に手をつけられない」「何からはじめればよいのかわからない」という状況が多く、行政側でもシステムの老朽化や手続きの複雑さがDX推進の障害となっています。
また、企業規模によって状況はさらに差があります。大企業はシステムが複雑で改革に時間がかかり、中小企業は投資余力や人材の不足が壁になります。その結果、国全体としてDXが必要だと理解しながらも、実行に移しきれていないのが現状です。https://service.shiftinc.jp/column/4990/
ツール導入=DXという誤解
DXが進まない大きな理由の一つが、「デジタルツールを導入すればDXになる」という誤解です。DXとは単なるデジタル化ではありません。DXの本質は、企業の提供価値やビジネスモデルを変え、業務プロセス全体を最適化することです。
しかし多くの企業では、紙業務の電子化やチャットツール導入など、部分的な改善のみで終わってしまうケースが目立ちます。このような取り組みは「デジタイゼーション」であって、本当の意味でのDXではありません。DXを進めるためには、経営レベルでの目的・戦略と現場の業務変革がセットで必要なのです。
「2025年の崖」が意味するもの
DXが急務といわれる理由の一つが、経済産業省が発表した「2025年の崖」です。これは老朽化した基幹システムを放置することで、企業に大きなリスクが発生することを警告したものです。
老朽化したシステムはブラックボックス化し、改修コストが増大します。また、熟練エンジニアの引退により維持管理も困難になります。この状態がつづけば、システムの脆弱性からくるサイバーセキュリティの強度低下、業務停止リスク、競争力低下といった問題が発生し、国内全体で年間12兆円の経済損失が生まれる可能性があると指摘されています。
つまり「2025年の崖」とは、単なるIT化の遅れという問題ではなく、企業の経営基盤そのものが揺らぐ重大な課題なのです。
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DX化が進まない代表的な理由
DX化が進まない背景には、「経営・戦略面」「組織・人材面」「業務・システム面」という領域で共通した課題が存在します。
ここでは、上記の3つの領域における、DX化が進まない代表的な理由について解説します。
経営・戦略面
経営・戦略面での課題についてご説明します。
・経営層にDXの危機感・理解不足
DXに関する意思決定は、経営レベルで行う必要があります。しかし、「自社にはまだ関係ない」「現状のままでも対応できている」という認識が残っている企業も少なくありません。DXの本質である「競争力の強化」や「事業モデルの変革」まで踏み込んで理解していないため、投資判断が先送りされてしまう状況が続いています。
・DXのビジョン・経営戦略が立てられていない
多くの企業でDXが失敗する原因の一つに、「明確なビジョンが欠けていること」があります。「何のためにDXを行うのか」という目的が曖昧だと、現場での取り組みが分散し、効果を感じられないままプロジェクトが停滞します。DXは単なるIT導入ではなく、経営戦略と直結した取り組みであるため、経営層がビジョンを示し全社で共有することが不可欠です。
・短期的な費用対効果を重視してしまう
DXは中長期で投資回収を見込むプロジェクトが多く、すぐに成果が見えないケースがあります。そのため、「費用対効果がわかりにくい」「短期で成果が見えない」と判断し、施策が進まないことがよくあります。短期的なコスト削減だけに注力すると、本来必要な改革まで手をつけられなくなります。
組織・人材面
組織や人材の面でも、DXが進まない課題が潜んでいることがあります。
・DXを推進する体制が整っていない
DXは経営・現場・IT部門が連携して取り組む必要がありますが、専門部署が存在せず、担当者を兼任で置いているだけという企業も多いです。推進体制が曖昧だと、誰が意思決定をするのか、どのように進めるのかが不明確になり、プロジェクトが前に進みません。
・推進できる人材が社内にいない
データ分析、クラウド、システム開発など、DXには幅広いスキルが必要です。しかし日本企業ではこれらのスキルをもつ人材が不足しており、外部ベンダーに依存せざるを得ません。ベンダー任せになると、目的が企業側とずれやすく、費用だけかかって期待した成果が出ないケースも多く見られます。
・現場マインドセットが変わらず抵抗感が強い
現場の協力はDXの成否を決める重要な要素です。しかし、「いまのやり方のほうが慣れている」「新しいシステムは使いにくそう」といった心理的抵抗がよく起こります。特に長年同じ業務をつづけてきた部署では変革が負担と感じられ、DX推進の大きな壁になります。
業務・システム面
業務、システムの面でDXの推進を妨げている状況もあります。
・既存システムが足かせになっている
古い基幹システムは複雑にカスタマイズされており、改修するだけでも大きなコストがかかります。担当者が退職して内部が「ブラックボックス化」している企業も多く、DXを進めたくても手がつけられない状態に陥っています。
・紙やハンコなどアナログ業務が根強く残っている
日本企業では根強く紙文化が残っており、申請・承認・管理など多くの業務がアナログのままのところも多いです。このような状況はデータ化しない限り効率化が難しく、DXの出発点である「業務のデジタル化」が進みません。
・業務プロセスが整理・標準化されていない
業務プロセスが属人化している企業は、デジタル化しにくいという問題があります。ベンダー任せでシステムが複雑化していたり、「いまのやり方を変えたくない」と現場が抵抗したりすることで、DXの基盤づくりがストップしてしまいます。
DX化が進まない企業の傾向

DXが進まない企業にはいくつか共通した傾向があります。これらの傾向を理解することで、自社の課題を客観的に把握し、どこから改善すべきかを見極められるでしょう。
予算やリソースが不足している
DXを進めるうえで、もっとも多く聞かれる課題が「予算不足」です。特に中小企業ではデジタル投資に割ける資金や人員が限られており、新しいシステム導入に躊躇するケースが多く見られます。
しかし、実際にはすべてのDX施策が大規模投資を必要とするわけではありません。たとえば紙業務のデジタル化やワークフロー整備など、比較的低コストではじめられる取り組みも多数あります。
基幹システムの刷新やデータ活用基盤の構築といった大規模施策には一定の投資が必要ですが、それだけが「DX化」ではありません。予算不足によりDXが止まる企業は、「小さくはじめて大きく育てる」という発想が不足していることも多く、最適な投資判断ができていない傾向にあります。
IT担当に依存してしまう
多くの企業では、DX推進をIT担当者に任せきりにしてしまう傾向があります。しかしIT担当者が少ない場合、業務改善の企画、ツール選定、システム管理など多くの役割が一人に集中します。その結果、対応が追いつかずDXが進まなくなります。
さらに問題なのは、IT担当者だけでは業務の深い理解がむずかしいという点です。DXは現場の業務プロセスを変革する取り組みであり、現場との連携が不可欠です。それにもかかわらず、「システムのことはITがやればよい」という認識のままでは、プロジェクトが部分最適化に留まり、全社的な変革にはつながりません。
コア業務が忙しくDXに手が回らない
DXが進まない企業に共通する傾向として、「日常業務が忙しすぎてDXに取り組む余裕がない」という状況があります。
現場のメンバーは既存の業務を回すだけで精一杯で、新しいツールの導入や業務見直しにかかる負担を避ける傾向があります。「DXをはじめると余計に仕事が増えるのではないか」という不安もあり、導入が進みにくくなります。
しかし、DXの本来の目的は業務負担の削減です。最初の一歩として小規模な改善に取り組むことで、現場の負担を軽減しながら改革を進めることが可能です。「忙しいからDXできない」状態に陥っている企業は、短期的な負担を恐れて長期的なメリットを逃している傾向があります。
DX化を進めるためのポイント
DXを成功させるためには、単にデジタルツールを導入するだけでは不十分です。企業全体で共通の目的を明確にし、推進体制を整え、継続的に取り組むことが欠かせません。
ここでは、DX推進のための重要なポイントについて解説します。
DX化をする理由を明文化する
DXの取り組みが頓挫する大きな理由のひとつに、「なぜDXを行うのか」がはっきりしていないことがあります。理由が曖昧なままでは、現場の理解が得られなかったり、取り組みが中途半端なまま止まってしまったりします。
まずは、経営層が以下のような視点で明確な目的を文章化して全社的に共有することが大事です。
・生産性向上のため
・顧客体験を改善するため
・新しい収益モデルを生み出すため
・業務やシステムの老朽化リスクに備えるため
目的が明確になれば、全社的な共通認識が生まれ、現場も「なぜ必要なのか」を理解したうえで行動しやすくなります。また外部ベンダーと協力するときも、目的が明文化されていることでブレのないプロジェクト運営が可能になります。
DX化のビジョンとゴールを設定する
DXを成功させるには、目的だけでなく「どんな未来を実現したいのか」というビジョンが必要です。ビジョンがない状態でツール導入を進めても方向性があいまいになり、改善が部分的になってしまいます。
たとえば、
・3年後に業務で使う紙帳票の70%をデジタル化(帳票電子化)する
・顧客対応をオンライン化し、問い合わせ対応を迅速化、24時間対応化する
・データを使った経営判断を標準化する
などの形で具体的なゴールを設定すると、プロジェクトの優先順位が定まり、関係者全員が同じ方向を向いて動けるようになります。
さらに、ビジョンは社員のモチベーションにも大きく影響します。「DXによって自分たちの仕事がどう良くなるのか」が見えると、現場の協力を得やすくなるからです。
DX推進体制の役割を明確にする
DX推進には、多くの部署・人材が関わるため、役割分担があいまいだとプロジェクトが停滞してしまいます。よくある問題は、「誰が意思決定をするのか」「現場調整は誰が行うのか」「技術選定は誰が担当するのか」が決まっていないというケースです。
推進体制を整える際は、以下のような役割分担が効果的です。
・経営層:目的・ビジョンの設定、意思決定
・DX推進部門(またはプロジェクトチーム):全体計画の設計、進行管理
・現場部門(業務担当):業務課題の抽出、業務プロセス見直し
・IT部門:技術選定、セキュリティ管理、システム整備
役割が明確になることで、組織全体で動きやすくなり、プロジェクトが止まるリスクを大幅に減らすことができます。また、各部署が「自分の役割」を理解することで、無理なくDXを推進できる体制が整います。
DX化を進めるためにまず取り組むべきこと
DX化は壮大な計画を立てるだけでは前に進みません。特に最初の段階では、「小さくはじめて、大きく育てる」アプローチが有効です。ここでは、どの企業でも比較的取り組みやすい「最初の一歩」を紹介します。
紙の申請や承認のデジタル化によるスピード向上と連携強化
もっとも取り組みやすいDX施策が、紙による業務のデジタル化です。請求書・勤怠・稟議など、多くの企業で紙とハンコ文化が残っていますが、これらをデジタル化するだけでも大きな効果があります。
具体的な取り組み例:
・請求書の電子化(PDF管理、電子インボイス対応)
・電子サインの導入(社内稟議のスピード化)
・書類のPDF化・クラウド管理(検索性向上、紛失防止)
紙による業務をデジタル化すると、業務スピードがあがるだけでなく、保管コスト削減や情報共有の効率化にもつながります。また、在宅勤務と相性がよいため、働き方改革にもつながる取り組みです。
チャットボット導入による社内外でよくある問い合わせへの回答効率化
社内外からの問い合わせ対応は、多くの企業で手間と時間を取られる業務です。そこで効果的なのが、問い合わせをチャットボットに集約する施策です。
具体的な効果:
・担当者の対応時間を大幅に削減
・夜間や休日でもユーザーが自己解決できる環境を提供
・問い合わせ内容の傾向分析が可能
特に総務・人事・社内ITなど、繰り返し聞かれる質問が多い部署で対応できれば、高い効率化が見込めます。チャットボットは初期導入のハードルが低いサービスも多く、DXの早期成果につながりやすい分野です。
データを活用した売上や経営状況の可視化とマーケティング最適化
DXの本質である「データ活用」をはじめる第一歩として、売上・在庫・顧客データなどを可視化する取り組みがあります。データを見える化すると、直感ではなく事実に基づく経営判断が可能になります。
活用例:
・売上推移をグラフ化して異常値を把握
・部門別の利益率を可視化し、改善ポイントを特定
・顧客行動データをもとにマーケティング施策を最適化
データ化することで、「必要な情報がすぐに取り出せる」「管理が標準化できる」「属人化を解消できる」といった効果も得られます。
まとめ
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なるデジタルツールの導入ではなく、企業の競争力を高めるための「経営改革」です。しかし日本企業、特に中小企業では、経営層の理解不足、推進体制の不備、現場の抵抗、そして老朽化したシステムなど、さまざまな課題が絡み合い、思うようにDXが進まない状況が続いています。
DXの推進で重要なのは、目的を明確にし、全社で共通認識を作ることです。そのうえで、ビジョンと具体的なゴールを設定し、経営層・推進部門・現場・IT部門が一体となって取り組む体制を整えることが必要です。
取り組みの第一歩としては、紙業務のデジタル化やチャットボット導入、データの可視化など、負担の少ない施策からはじめることで、早期に効果を実感できます。改善を積み重ねることで、組織全体がDXへの前向きな姿勢を育てていくことができるでしょう。
DXは一度で完成するものではなく、継続的に改善し続けるプロセスです。変化の激しい時代において、DXを進める企業とそうでない企業の差はますます広がっていきます。経営層がリーダーシップを発揮し、将来の成長に向けた基盤づくりに取り組むことが求められています。
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監修
株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
担当講座
・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
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https://www.hinshitsu-univ.jp/
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