Introduction
企業や組織の重要なデータを守るためには、ファイアウォールやセキュリティ対策ソフトなどで、社内システムを守るだけでは十分といえません。
万が一データを盗まれたり、不正アクセスされたりした場合も、解読できない状態であれば、情報が外部に流出することを防げます。しかし、データの暗号化とはどのように行われているのか、どうすれば暗号化対策ができるのかわからない人も多いでしょう。
この記事では、暗号化の種類や仕組み、具体的な方法などについて解説します。企業内の重要なデータを守る方法を検討している場合は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
暗号化とは?
暗号化とは、データを違う文字列に変換して、第三者にデータの内容がわからないようにすることです。
ここでは、暗号化とは具体的にどのような仕組みになっているのかを解説します。
データの内容を第三者に解読されないようにする方法
暗号化とは、総務省の『国民のためのサイバーセキュリティサイト』によると、以下のように定義されています。
暗号化
暗号化とは、データの内容を他人には分からなくするための方法です。
近年はサイバー攻撃が高度化し、企業が保有する重要なデータが不正アクセスやマルウェア感染などの攻撃を受けて、外部に流出するリスクが高まっています。しかし、データを暗号化しておけば、万が一データが第三者に閲覧されたとしても解読できず、データが外部に漏れることを防げます。
データを暗号化・復号化する仕組み
データを暗号化したあと、元の状態に戻す復号化を行います。
具体的には、アルゴリズムを元にデータを変換する方法があります。たとえば、アルファベットを一文字後ろにずらすなどは、もっとも単純な復号化のアルゴリズムのひとつです。たとえば、AはB、BはCと一文字ずつずらすと、「sun」は「tvo」になります。
また、暗号鍵で暗号化する方法もあります。暗号鍵は、データを暗号化するための要素で、鍵が変わると暗号化の結果も異なるのが特徴です。この方法だと、鍵が盗まれなければ、データが元に戻されることはほとんどありません。しかし、鍵が第三者の手にわたると復号化されてしまうので、鍵が盗まれないように厳重に管理しなければなりません。
ハッシュ化との違い
暗号化によく似たものにハッシュ化がありますが、この二つはまったく異なります。
ハッシュ化とは、ハッシュ関数を用いてデータを変換して「ハッシュ値」と呼ばれる値を生成することです。同じデータから得られる「ハッシュ値」は同一であることから、データが改ざんされていないことを確認する場合などに、ハッシュ値を使用します。
たとえば、契約書の原本からハッシュ値をあらかじめ生成しておけば、あとから契約書が改ざんされても、ハッシュ値を比較することで改ざんを検知することが可能です。
このように、暗号化と似ているものの、ハッシュ値は復号化して元のデータに戻せない点が異なります。暗号化はつねに復号化とセットになっており、可逆性があることが特徴です。一方で、ハッシュ化は非可逆になります。
暗号化技術が使われる場面
暗号化の技術は、どのような場面で使われているのでしょうか。
たとえば、Webサイトにおけるデータの送受信時、無線LAN通信や電子メールなどで暗号化技術が使われます。サイバー攻撃者に通信を傍受されれば、送受信したデータが閲覧され、外部に漏れてしまうでしょう。それを防ぐために、データを暗号化して送受信する必要があります。
暗号化方式(アルゴリズム)の種類
データを暗号化して送信する場合、送信する側と受信する側が暗号鍵を共有しなければなりません。この鍵の扱いの違いにより、暗号化方式は主に以下の3つの種類にわかれます。
ここでは、それぞれの方式の仕組みやメリット・デメリットをご説明します。
共通鍵暗号方式
データの送信者と受信者が同じ暗号鍵を用いて、データの暗号化・復号化を行う方法です。この場合の暗号鍵を「共通鍵」と呼び、あらかじめ送信者と受信者が共通鍵を共有することで、暗号化、復号化を実施します。
共通鍵暗号方式のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット | ・暗号化・復号化の処理速度がはやい ・仕組みがシンプルでわかりやすい |
デメリット | ・共通鍵を安全に共有する必要があるため、鍵の管理がむずかしい |
公開鍵暗号方式
この方式は、共通鍵暗号方式とは異なり、暗号化時と復号化時に異なる鍵を使います。データのやりとりと鍵の扱いの流れは、以下のとおりです。
1.受信者は公開鍵と秘密鍵を生成し、公開鍵のみ送信者に送る
2.送信者は送られてきた公開鍵でデータを暗号化し、受信者に送る
3.受信者は最初に生成した秘密鍵でデータを復号化する
公開鍵暗号方式のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット | ・公開鍵を共有しやすく、鍵の管理が容易 ・公開鍵を大人数と共有しやすいため、大人数とのデータのやりとりに向いている |
デメリット | ・暗号化、復号化の処理時間がかかる |
ハイブリッド暗号方式
上記でご説明した、二つの暗号化方式のメリットをあわせもつ方式です。
1.受信者は公開鍵と秘密鍵を生成し、公開鍵のみ送信者に送る
2.送信者は共通鍵を生成、受信者から送られた公開鍵で共通鍵を暗号化して受信者に送る
3.受信者は送られてきた共通鍵を最初に生成した秘密鍵で復号化する
4.送信者は公開鍵でデータを暗号化して送り、受信者は共通鍵でデータを復号化する
上記のとおり、公開鍵方式を使って、送信者と受信者が共通鍵を共有します。この方式なら、データの暗号化速度を落とさず、安全にデータをやりとりできます。
ハイブリッド暗号方式のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
メリット | ・暗号化・復号化の処理速度がはやい ・安全性が高い |
デメリット | ・処理が複雑 |
暗号化のメリット
データを暗号化してやりとりすると、以下のようなメリットを得られます。
セキュリティレベルを強化できる
データを暗号化せず、そのままインターネット上でやりとりをすると、データの改ざんや盗聴などのリスクがあります。データを暗号化しておけば、通信が盗み見られるリスクを下げられ、セキュリティレベルの強化につながります。
データの流出を防げる
万が一、データが盗聴されたとしても、暗号化されていればデータを秘匿できます。データそのものが第三者の手にわたったとしても、暗号化により解読できない状態になっているので、データの流出を防ぐことが可能です。
暗号化のデメリット
暗号化するとセキュリティレベルを強化できる、データの流出を防げるなどのメリットがある一方、デメリットもあります。ここでは、データを暗号化する際に知っておくべきデメリットについて、ご説明します。
パスワードを紛失すると復号化できなくなる
復号化に必要な鍵を紛失すると、データを復号化できなくなってしまいます。最悪の場合はデータが復元できなくなり、重要な情報が失われてしまうこともあるので、注意が必要です。そのため、鍵の管理は厳重に行わなければなりません。
PCに大きな負荷をかける場合がある
データを暗号化、復号化する際には、PC内で処理が発生しています。暗号化データを扱う際は、PCに大きな負荷がかかることが多いので、注意が必要です。
データが大量な場合、暗号化ツールの処理速度が遅い場合などは、とくにPC操作に影響が出てしまうこともあります。そのため、暗号化ツールを導入する際には、PCとツールのスペックを十分に検討する必要があるでしょう。
暗号鍵が第三者にわたると容易に解読されてしまう
どれだけ高度な暗号化アルゴリズムでデータを守っていても、暗号鍵が第三者にわたると、データが解読されてしまう恐れがあります。そのため、パスワードの使いまわしをしない、文字種や桁数を増やしてパスワードの強度をあげるなどの対策が必要です。
暗号化の強度を高めるための方法
せっかく暗号化しても、暗号化の強度が低いと解析されてしまうことがあります。解析されればデータが復号化され、データの中身が外部に流出する可能性もあります。そのため、少しでも強度の高い暗号化方法を採用する必要があるでしょう。
ここでは、暗号化強度を高める方法についてご説明します。
鍵長を大きくする
暗号化強度を高めるためには、暗号鍵の長さを長くすることが効果的です。鍵長が長いと解読されにくくなり、セキュリティレベルを高められます。
また、より安全で信頼性の高い暗号化アルゴリズムを選ぶことも、重要です。
鍵を定期的に変える
暗号鍵の有効期限を設定し、鍵を定期的に変えることで、安全性を高めることが可能です。
いつも同じ鍵を使っていると、万が一鍵が外部に流出した際に、データの盗聴のリスクが高まります。定期的に暗号鍵を更新しておけば、鍵が外部に出てしまったとしても、被害を最小限におさえられるでしょう。
通信経路を暗号化する
データを暗号化するだけでなく、通信経路を暗号化することで、セキュリティレベルが高まります。
通信経路が暗号化されている場合、通信の傍受がむずかしくなります。さらにデータそのものが暗号化されていることで、万が一データが盗まれたとしても、データが復号化されない限り外部に漏れることはありません。
このように、通信経路だけでなくデータも暗号化し、二重の守りをしておくことで、安全性を高めることが可能です。
アルゴリズムに脆弱性がないかを確認する
暗号化アルゴリズムに脆弱性が存在する場合、その脆弱性をついて暗号が解読されてしまうこともあります。サイバー攻撃は年々高度化しており、暗号化アルゴリズムの脆弱性を利用したデータの盗聴が起こることも考えられます。
暗号化アルゴリズムを採用する際には、脆弱性の有無を確認し、信頼度の高いアルゴリズムを選ぶ必要があるでしょう。
データを暗号化するための方法
データを暗号化するための方法は、暗号化ソフトを導入するか、クラウド上の暗号化サービスを利用するかのどちらかです。ここでは、この二つの方法について、特徴やメリット、デメリットについてご説明します。
暗号化ソフトを導入する
データを暗号化する専用のソフトを利用する方法です。Windowsなどに標準搭載されている圧縮ソフトに暗号化機能がついている場合や、サードパーティー製のソフトウェアなどさまざまな製品があります。
すでにご説明したとおり、暗号化ソフトを導入すると、データの読み込みや書き込みを行うたびに暗号化・復号化処理を行うため、PCに負荷がかかります。また、OSや使用中のソフトウェアとの相性が悪いと動作が遅くなり、場合によっては動作しないこともあるでしょう。そのため、PCのスペックやOS、既存ソフトウェアとの相性などを考慮し、体験版などで動作を試してから、暗号化ソフトを選ぶことをおすすめします。
クラウドサービスを利用する
PCやサーバーなどに暗号化ソフトをインストールするのではなく、クラウド上の暗号化サービスを利用する方法もあります。
クラウドサービスを利用すれば、暗号化・復号化処理が自分のPCのスペックなどに影響しないことがメリットです。また暗号鍵の管理も、クラウドサービス側がまとめて行ってくれるので、利用する側は煩雑な鍵の管理を行う必要もありません。利用者は、暗号化・復号化の処理を行っているという意識がなく、普通にファイルにアクセスする感覚で利用できます。
ただし、クラウドサービスによって、サービスレベルが異なります。サービス内容、価格、サポート体制などを比較して、自社にあったサービスを選びましょう。
まとめ
この記事では、暗号化の種類や仕組み、具体的な方法などについて解説しました。
データを暗号化することで、万が一データを盗聴されたり、不正アクセスされたりしても、内容が外部に漏れるのを防ぐことが可能です。とくに、社内の機密情報や個人情報などの重要データは、何重にもセキュリティ対策を行う必要があります。
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