データ前処理

データ前処理とは?

データ前処理とは、機械学習やデータ分析を行う前に、生データ(raw data)を分析に適した形に変換する一連のプロセスのことです。生データは、欠損値、ノイズ、不整合など、さまざまな問題を抱えていることが多く、そのままではモデルの性能を十分に発揮できません。そこで、データ前処理を行うことで、データの品質を高め、より正確で効率的な分析を可能にします。データ前処理は、AIモデルの精度向上に不可欠なステップと言えるでしょう。

データ前処理の主な目的は、大きく分けて以下の3点です。

1.データの品質向上:欠損値の補完、ノイズの除去、外れ値の処理などを行い、データの信頼性を高めます。

2.モデルの性能向上:特徴量のスケーリングや変換を行い、モデルが学習しやすいようにデータを整形します。

3.分析の効率化:データの形式を統一したり、不要なデータを取り除いたりすることで、分析作業を効率化します。

データ前処理には、さまざまな手法が存在します。代表的なものとしては、欠損値処理、外れ値処理、特徴量スケーリング、特徴量エンジニアリングなどがあります。これらの手法を適切に組み合わせることで、データの特性に合わせた最適な前処理を行うことができます。

<欠損値処理>

欠損値とは、データセット内の一部の値が欠落している状態のことです。欠損値があると、分析結果に偏りが生じたり、モデルが正常に動作しなかったりする可能性があります。そのため、欠損値を適切に処理する必要があります。欠損値処理の方法としては、主に以下の3つがあります。

– 削除:欠損値を含む行または列を削除します。欠損値の割合が少ない場合に有効ですが、削除するデータが多いと、分析に必要な情報が失われる可能性があります。

– 補完:欠損値を何らかの値で補完します。欠損値を平均値、中央値、最頻値などで埋める方法や、機械学習モデルを用いて予測する方法などがあります。

– 無視:欠損値をそのままにして、モデルによっては自動的に処理されます。

どの方法を選択するかは、データの特性や欠損値の割合などを考慮して決定する必要があります。

<外れ値処理>

外れ値とは、データセット内の他の値から大きくかけ離れた値のことです。外れ値は、データの入力ミスや測定誤差などによって発生することがあります。外れ値があると、分析結果に大きな影響を与える可能性があるため、適切に処理する必要があります。外れ値処理の方法としては、主に以下の3つがあります。

– 削除:外れ値を含む行または列を削除します。外れ値の原因が明らかな場合に有効ですが、削除するデータが多いと、分析に必要な情報が失われる可能性があります。

– 修正:外れ値を適切な値に修正します。外れ値を平均値、中央値などで置き換える方法や、外れ値の原因を特定して修正する方法などがあります。

– 変換:外れ値の影響を軽減するために、データのスケールを変換します。対数変換や平方根変換などを用いて、データの分布を正規分布に近づけることで、外れ値の影響を軽減します。

<特徴量スケーリング>

特徴量スケーリングとは、特徴量の値の範囲を一定の範囲に調整することです。特徴量の値の範囲が異なると、モデルの学習に影響を与える可能性があります。例えば、ある特徴量の値が非常に大きく、別の特徴量の値が非常に小さい場合、モデルは値の大きい特徴量に偏って学習してしまうことがあります。

特徴量スケーリングの方法としては、主に以下の2つがあります。

– Min-Maxスケーリング:特徴量の値を0から1の範囲にスケーリングします。データの範囲を固定したい場合に有効ですが、外れ値の影響を受けやすいという欠点があります。

– 標準化:特徴量の値を平均0、標準偏差1になるようにスケーリングします。外れ値の影響を受けにくいという利点がありますが、データの範囲が固定されないという欠点があります。

どちらの方法を選択するかは、データの特性やモデルの特性などを考慮して決定する必要があります。

<特徴量エンジニアリング>

特徴量エンジニアリングとは、既存の特徴量から新しい特徴量を作成することです。新しい特徴量を作成することで、モデルの性能を向上させることができます。特徴量エンジニアリングの方法としては、主に以下の3つがあります。

– 特徴量の組み合わせ:既存の特徴量を組み合わせて、新しい特徴量を作成します。例えば、商品の価格と割引率を組み合わせて、割引後の価格を計算するなどがあげられます。

– 特徴量の分解:既存の特徴量を分解して、新しい特徴量を作成します。例えば、日付データを年、月、日に分解するなどがあげられます。

– ドメイン知識の活用:ドメイン知識を活用して、新しい特徴量を作成します。例えば、医療データにおいて、患者の年齢と病歴を組み合わせて、リスクスコアを計算するなどがあげられます。

データ前処理は、AIモデル開発において非常に重要な工程です。適切なデータ前処理を行うことで、モデルの精度向上、学習時間の短縮、汎化性能の向上が期待できます。

データ前処理は、データの種類や分析の目的に応じて、さまざまな手法を組み合わせる必要があります。そのため、データ分析者は、データ前処理に関する知識と経験を習得し、最適な前処理を行うことが求められます。データ前処理を丁寧に行うことで、AIモデルはより賢く、より頼りになる存在となるでしょう。

 

監修

株式会社SHIFT「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
林 栄一

>>ヒンシツ大学のページへ

AI用語集一覧に戻る

お役立ち資料

お役立ち資料をもっと見る

関連コラム

コラムをもっと見る

Top