局所最適解

局所最適解とは?

局所最適解とは、ある範囲内においてはもっともよい解(最適解)であるものの、全体的に見ると必ずしも最適な解とは限らない状態を指します。AI、特に機械学習の分野でよく用いられる用語で、モデルの学習過程において、最適化アルゴリズムが局所的な改善に囚われてしまい、真に最適な解にたどりつけない状況を表します。

機械学習モデルの学習は、多くの場合、損失関数(目的関数)を最小化するパラメータを探すプロセスです。この損失関数は、多次元空間における複雑な地形のようなもので、無数の谷や丘が存在します。最適化アルゴリズムは、この地形を探索し、最も低い地点(損失が最小となる地点)を目指しますが、途中で小さな谷に落ちてしまうことがあります。この小さな谷が局所最適解であり、そこから抜け出して、より深い谷(大域的最適解)にたどり着くことが難しい場合があります。

たとえば、製造業における生産計画をAIで最適化するケースを考えてみましょう。AIが、ある特定の期間におけるコストを最小化する計画を見つけたとします。しかし、その計画が、別の期間における需要の急増に対応できない場合、全体として最適な計画とはいえません。この場合、AIが見つけたのは局所最適解であり、全体的な視点で見ると、よりよい生産計画が存在する可能性があります。

局所最適解に陥る原因はさまざまですが、主なものとしては、初期パラメータの選択、学習率の設定、最適化アルゴリズムの選択などがあげられます。初期パラメータが悪いと、最初から局所最適解に近い位置から探索が始まる可能性があります。学習率が高すぎると、最適解を飛び越えてしまい、逆に低すぎると、探索が遅々として進まず、局所最適解に囚われやすくなります。また、最適化アルゴリズム自体にも、局所最適解に陥りやすいものと、そうでないものがあります。

このような局所最適解の問題を解決するために、さまざまな手法が用いられています。代表的なものとしては、以下のようなものがあります。

– 初期値の変更:異なる初期値から複数回学習を開始し、もっともよい結果を採用します。

– 学習率の調整:学習率を動的に変化させることで、探索の初期段階では大域的な探索を促し、終盤ではより精密な探索を行います。

– モーメンタム法:過去の勾配情報を利用して、探索方向を慣性的に進めることで、局所最適解からの脱出を試みます。

– 確率的勾配降下法(SGD):勾配を計算する際に、一部のデータのみを使用することで、ノイズを発生させ、局所最適解からの脱出を促します。

– 焼きなまし法(Simulated Annealing):ランダムな変動を加えながら探索を行うことで、局所最適解からの脱出を試みます。

– 遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm):複数の解候補を生成し、交叉や突然変異といった操作を繰り返すことで、よりよい解を探索します。

これらの手法を組み合わせることで、局所最適解に陥るリスクを低減し、よりよいモデルを構築することが可能になります。

AIの性能を最大限に引き出すためには、データの前処理、特徴量エンジニアリング、モデルの選択、パラメータ調整など、さまざまな要素を総合的に考慮する必要があります。また、現場のニーズを的確に把握し、AIの導入目的を明確にすることも重要です。AIプロジェクトを成功させるためには、技術的な知識だけでなく、ビジネス的な視点も不可欠です。

 

監修

株式会社SHIFT「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
林 栄一

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