RAG(Retrieval-Augmented Generation)
RAGとは?
RAG(Retrieval-Augmented Generation)とは、検索拡張生成と呼ばれる技術で、大規模言語モデル(LLM)の知識不足を補い、より正確で信頼性の高い回答を生成するための手法です。LLMは大量のテキストデータを学習していますが、最新情報や特定のドメインに関する知識が不足している場合があります。RAGは、LLMが回答を生成する前に、外部の知識源から関連情報を検索し、その情報を基に回答を生成することで、この問題を解決します。
RAGの仕組み
RAGは、大きくわけて「検索」と「生成」の2つのステップで構成されています。まず、「検索」ステップでは、ユーザーからの質問や指示(クエリ)に基づいて、関連する情報を外部の知識源から検索します。知識源としては、Webサイト、データベース、ドキュメントなどが利用されます。検索には、キーワード検索やセマンティック検索などの技術が用いられ、クエリとの関連性が高い情報が抽出されます。次に、「生成」ステップでは、LLMが検索された情報を基に回答を生成します。LLMは、検索された情報を理解し、ユーザーの質問に答えるために適切な文章を生成します。この際、LLMは自身の知識と検索された情報を組み合わせることで、より正確で詳細な回答を生成することができます。
RAGのメリット
RAGを導入することで、LLMの回答精度と信頼性を大幅に向上させることができます。
RAGの主なメリットとしては、まず、LLMの知識不足を補完できる点があげられます。RAGは、LLMが学習していない最新情報や特定のドメインに関する知識を外部から取り込むことで、より幅広い質問に対応できるようになります。
次に、回答の根拠を示すことができる点も大きなメリットです。RAGは、回答を生成する際に利用した情報を明示することで、ユーザーは回答の信頼性を判断することができます。
また、回答に誤りがあった場合でも、根拠となった情報を確認することで、原因を特定しやすくなります。
さらに、LLMの再学習が不要になる点もメリットとしてあげられます。LLMは学習に膨大な時間とコストがかかりますが、RAGは外部の知識源を更新するだけで、LLMの知識を最新の状態に保つことができます。
RAGの課題
RAGは非常に有用な技術ですが、いくつかの課題も存在します。まず、検索の精度が回答の質に大きく影響するという点です。検索された情報が不正確であったり、質問との関連性が低かったりすると、LLMは誤った回答を生成してしまう可能性があります。そのため、検索エンジンの性能向上や、適切な知識源の選択が重要になります。
次に、LLMが検索された情報をうまく活用できない場合があるという点です。LLMは、検索された情報を理解し、自分の知識と組み合わせて回答を生成する必要がありますが、情報の種類や形式によっては、うまく処理できない場合があります。そのため、LLMの性能向上や、検索された情報をLLMが理解しやすい形式に変換する技術が必要になります。
RAGの活用事例
RAGは、さまざまな分野で活用されています。
例えば、カスタマーサポートの分野では、RAGを活用することで、LLMが顧客からの質問に自動で回答することができます。RAGは、FAQやマニュアルなどの知識源から関連情報を検索し、顧客の質問に最適な回答を生成します。
また、医療の分野では、RAGを活用することで、LLMが医師の診断や治療を支援することができます。RAGは、医学論文や診療ガイドラインなどの知識源から関連情報を検索し、医師に最新の情報を提供します。
さらに、教育の分野では、RAGを活用することで、LLMが学生の学習を支援することができます。RAGは、教科書や参考書などの知識源から関連情報を検索し、学生の質問に答えるだけでなく、理解を深めるための解説や例題を提供します。
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監修
林 栄一
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