Introduction
ホワイトハッカーとは、IT知識やセキュリティに関する技術を正しい目的に使って、企業や組織のセキュリティ対策を行う存在です。サイバー攻撃が多様化、高度化するなか、どのような企業や組織にも必要とされる存在といえるでしょう。
この記事では、ホワイトハッカーとはどのような存在なのか、仕事内容や活躍している場所、求められるスキルなどについて解説します。
目次
ホワイトハッカーとは?
情報通信技術が進化した現代には、ホワイトハッカーと呼ばれる「健全なハッカー」の存在が欠かせません。
ここでは、ホワイトハッカーとはどのような存在なのか、具体的にご説明します。
コンピューターや情報システムの高度な知識を、善良な目的で使用する者のこと
ホワイトハッカーとは、コンピューターや情報システムの知識や技術を、善良な目的に使用する専門家のことです。いわゆる「健全なハッカー」と呼ばれ、企業や組織、個人の情報資産をサイバー犯罪者から守ってくれます。
サイバー攻撃をしかけてくる犯罪者はもっているスキルを悪用しますが、同じスキルをもっていても、よい目的に使うのがホワイトハッカーです。
ブラックハッカーとの違い
ホワイトハッカーとは真逆の存在が、ブラックハッカーです。
IT知識や技術を悪用してサイバー攻撃をしかけ、企業や個人の情報資産を盗みとって、売買するなどの犯罪行為をします。マルウェアを仕込んだり、大量のデータを送りつけてサーバーダウンをさせたり、機密情報を盗んだりするのです。
このような高度なサイバー攻撃を行うためには、IT知識やセキュリティに関する技術などが必要です。これらのスキルを悪用するのがブラックハッカーで、よい目的に使うのがホワイトハッカーといえます。
セキュリティエンジニアとの違い
セキュリティエンジニアは職種名のひとつで、ホワイトハッカーと同じ存在を指しています。
セキュリティエンジニアは、ITやセキュリティに関する専門的な知識や技術をもち、セキュリティシステムの開発や運用などを行います。ホワイトハッカーも同様に、企業や組織のセキュリティ業務を行いますが、職種を表す言葉ではありません。
ホワイトハッカーの仕事内容
ホワイトハッカーは、具体的にどのような仕事を行っているのかについて、ご説明します。
セキュリティ対策
ホワイトハッカーは、企業や組織のなかで、セキュリティ対策業務を担当しています。たとえば、セキュリティシステムの設計や導入、実装、定期的な脆弱性診断の実施、システム運用・保守などです。
現代では、ITシステムやネットワーク機器などなくしては、企業や組織が業務を行い、運営はできません。しかし、ITシステムやネットワークなどを運用する場合、サイバー攻撃につねにさらされるため、セキュリティ対策が必須です。
そこで、セキュリティソフトの導入や管理、備品の管理などを行い、セキュリティ対策を担当する部署が必要になります。ホワイトハッカーはそのような部署で、企業や組織の情報資産を守るために働いています。
脆弱性診断についてはこちらもご覧ください。
>>脆弱性診断とは?診断の種類や必要な理由、やり方やツールについても解説のページへ
>>脆弱性診断のよくある質問にお答えします。種類や必要性、外注先の選び方などのページへ
関連サービスについて
インシデント対応
日ごろから十分なセキュリティ対策を行っていても、サイバー攻撃にさらされてしまうこともあります。そのようなセキュリティインシデントが発生した際に対応を行うのも、ホワイトハッカーの大事な仕事です。ネットワークを経由して、マルウェアに感染した端末がある、内部犯行により機密情報が漏洩したなどのインシデントが発生した際の対応を行います。
たとえば、社内ネットワーク内の端末がマルウェア感染した場合は、感染源を特定して感染した端末を隔離し、ほかに影響がないかを調査します。影響調査が終わったら、感染した端末の初期化や、ウイルスの除去なども行わなければなりません。侵入経路や感染原因、犯罪者の行動履歴などを調べ、状況の分析も必要です。また、取引先や顧客へのアナウンスを行い、状況や影響度あいなどについて報告する必要もあるでしょう。
このように、セキュリティインシデントが発生したら、多くの対応を素早く行わなければなりません。すぐに対応しないと、ウイルスがあっという間にネットワーク内に広がってしまうためです。また、感染源を特定して隔離した後も、ウイルスが残存している可能性が高いので、注意深く調査する必要があります。
このように、ホワイトハッカーは、セキュリティインシデントが発生した際の対応を行います。迅速かつ確実に対応を行う必要があるため、高いITスキルやセキュリティに関する知識、技術、経験が求められるでしょう。
セキュリティインシデントについてはこちらをご覧ください。
>>セキュリティインシデントとは?原因や被害事例、企業がとるべき対策を解説のページへ
ホワイトハッカーが働く場所
ホワイトハッカーが活躍している場所は、さまざまです。ここでは、ホワイトハッカーが働いている場所について、ご説明します。
IT企業
ホワイトハッカーは、IT企業でセキュリティに関する業務を担当していることが多いです。
ITサービスやソフトウェアなどの開発、構築、運用を行うIT企業では、サービスや製品をつくることだけが業務ではありません。ITサービスや製品を開発する際に、セキュリティに関する検討や実装、運用が必要になります。具体的には、開発したサービスにセキュリティホールの有無の調査、製品のセキュリティパッチの更新対応などを行います。
自社が開発したITサービスや、ソフトウェアなどの製品がサイバー犯罪者に狙われ、脆弱性を利用したセキュリティインシデントが発生することは、絶対に避けなければなりません。そのために、ホワイトハッカーがつねに自社製品に対するセキュリティ対策を行っています。
金融業界
金融業界のセキュリティ対策は、最高レベルの水準が求められます。金銭のやりとりを行うシステムを扱うという性質上、サイバー犯罪者から狙われることも多いためです。金融業界には、優秀なホワイトハッカーが常駐し、セキュリティ監視や対策の実施を行っています。
銀行などの金融機関だけではなく、証券業界、クレジットカード関連企業などでも、多くのホワイトハッカーたちが活躍しています。
官公庁
官公庁も、サイバー犯罪者に狙われやすい場所です。個人情報を扱う場所なので、官公庁のシステムやネットワーク内に侵入することで、個人情報を得られる可能性があります。自治体の住民の情報や企業の情報などを得られれば、ダークウェブのような犯罪者が集う闇のサイバー空間で売りさばいて、大金も得られるでしょう。
また、官公庁や警察などのシステムのデータを暗号化し、元に戻すかわりに、身代金を要求するランサムウェアがしかけられることもあります。官公庁や警察のような組織には、個人情報のような重要なデータが保管されています。そのため、サイバー犯罪者はそこを狙って、サイバー攻撃をしかけてくるケースが多いのです。
ホワイトハッカーは、このようにサイバー犯罪者に狙われることが多い官公庁にも、常駐しています。そして、大事な個人情報や重要情報を守るために、日々セキュリティ業務を行っています。
ホワイトハッカーに求められる知識・スキル
ホワイトハッカーになるためには、どのような知識やスキルが必要なのでしょうか。ここでは、ホワイトハッカーに求められる知識やスキルについて、ご説明します。
情報セキュリティについての高度な知識、技術力
情報セキュリティに関する高度な知識や技術力が必要です。どのようなセキュリティの脅威が存在するのか、どのような仕組みでサイバー犯罪が行われるのか、防ぐためにはどうすればよいかなどの知識や技術が必要とされます。
また、セキュリティ対策に必要なプログラムを組んだり、ソフトウェアを解析したりするため、プログラミング技術が必要とされることもあるのです。
ホワイトハッカーになるために役立つ資格には、以下のようなものがあります。
・情報処理安全確保支援士
・CND(認定ネットワークディフェンダー)
・CompTIA認定資格
・認定ホワイトハッカー/Certified Ethical Hacker(CEH)
・認定サイバーセキュリティ技術者/Certified Cyber Technician(CCT)
サイバーセキュリティ分野の具体的な知識や技術が求められる、これらの資格を取得すれば、セキュリティのスペシャリストとして活躍する際に役立つでしょう。
IT関連の法律、法令についての知識
IT関連の法律や法令などに関する知識も必要です。法律や法令に従って対策を行うことで、ある程度はセキュリティレベルを高めることも可能です。
また、企業活動を行うためには、法律や法令に従う必要があります。
英語力
セキュリティに関する技術は日々進化を遂げており、つねに最新の情報を得る必要があります。しかし、最新の情報はそのほとんどが英語でやりとりされており、日本語化されるまで待っていると、時間がかかってしまいます。
そのため、ホワイトハッカーとして必要な最新の情報を手に入れるためには、英語力が必要です。
ホワイトハッカーの育成について
サイバー攻撃の多様化、高度化が進んでおり、世界的にもホワイトハッカーの育成の必要性が高まっています。
たとえば、情報通信研究機構(NICT)では「ナショナルサイバートレーニングセンター」が設置され、実践的なサイバートレーニングが行われています。ほかにも、経済産業省が「ホワイトハッカー育成コース」を、一般社団法人 ITキャリア推進協会が「CEH(認定ホワイトハッカー)資格講座」をそれぞれ開設しているのです。
このように、ホワイトハッカーを育成する仕組みが充実しはじめているため、ホワイトハッカーを目指す人は利用してみるとよいでしょう。企業としてIT人材を育てたい場合にも、利用する価値は十分あります。