Introduction
アノテーションとは、データにタグをつける仕組みのことで、AI開発の分野においてとくに重要な役割を果たすものです。AI開発以外の分野でも、ビッグデータを活用する機会はますます増えており、アノテーションの必要性は高まっています。
この記事では、アノテーションの役割や種類、活用事例などについて解説します。
目次
アノテーションとは?
アノテーションとは「注釈」と訳されるもので、IT分野ではデータに注釈をつけることを指しています。
ここでは、アノテーションの定義や、アノテーションが必要とされている背景について解説します。
データにラベルをつける作業のこと
アノテーションとは、データにラベルをつける作業のことです。テキストデータや音声、画像、動画などに、タグやメタデータなどで注釈をつけることにより、利用者はデータを有効活用できるようになります。
とくにAIの分野において、データにタグづけすることは極めて有効です。機械学習を行う際には膨大なデータを活用するため、その際にデータに情報を付与しておけば、学習しやすくなります。アノテーションは、正確な機械学習を行うために必要な準備作業です。
政府 CIO 補佐官等ディスカッションペーパーの『AI システムにおけるデータ利用の特性と取扱い上の留意点』によると、以下のように定義されています。
アノテーション
データアノテーションとは、収集したデータに人が意味を持たせるラベル付けの作業を指します。
たとえば、YouTubeで動画を再生すると、動画の最後に次のおすすめ動画が表示されるでしょう。登録ボタンが表示され、チャンネル登録をうながされることもあります。これらも、一種のアノテーションです。
このように、ユーザーがデータを活用する際に、どのようなデータなのか、何がおすすめなのかが一目でわかるような仕組みになっています。
アノテーションの必要性が高まっている背景
近年、アノテーションの必要性が高まっており、その背景には膨大なデータを有効活用する必要があることがあげられます。
機械学習の分野では、とくに膨大なデータをインプットとして必要とします。その際に、入力するデータに正確なタグづけを行うアノテーションは、必要不可欠です。アノテーションによってデータを分類し、パターン化することで、ビッグデータを効率的に活用できるようになるのです。
アノテーションは、多くのデータを活用する機会が増えた現代において、必要な作業といえるでしょう。
AI開発におけるアノテーションの役割
AI開発において、とくにアノテーションが重要な役割を果たしています。ここでは、どのような役割を果たしているのか、具体的にご説明します。
機械学習に必要な教師データの作成
機械学習には「教師あり学習」と「教師なし学習」があり、アノテーションは「教師あり学習」を効率よく行うために必要不可欠です。
AIに機械学習を行う際は、教師データを大量に読み込ませる必要があります。その際に、教師データをアノテーションしてタグづけを行います。すると、機械学習を行う際に、その教師データが何なのかがわかるため、効率よくデータを学習できるのです。
ビッグデータの効率的な収集・管理
機械学習の分野だけでなく、あらゆるデータを効率よく収集、管理するためにも、アノテーションは有効です。
Web上には多くのデータが存在しますが、そのなかから必要なデータを収集するのは、容易なことではありません。そこで、アノテーションによってデータにタグづけがされていれば、目的のデータを収集しやすくなります。また、収集したデータに目的別、種類別などのタグがついていれば、管理もしやすいです。
このように、情報にタグづけを行うアノテーションは、ビッグデータを効率よく収集したり、管理したりするためにあらゆる分野で役に立ちます。
アノテーションの種類
アノテーションには、タグづけをするデータによって種類が異なります。ここでは、それぞれを解説します。
画像・映像データのアノテーション
アノテーションがよく行われるものとして、画像や映像データがあります。
たとえば、ECサイトで商品を紹介する際に、商品画像に商品名の情報だけでなく、購入者の属性、同時に購入したほかの商品などの情報もタグづけしておきます。すると、ユーザーが商品情報を閲覧する際に「この商品を購入した人はほかにもこのような商品を購入しています」などの情報を付与することも可能です。
画像・映像データを認識するための方法には、以下のようなものがあります。
・物体検出
物体を矩形で囲って検出してタグづけを行う方法です。
・領域検出
物体検出では、背景などの関係のない情報も含まれてしまいます。そこで、領域検出によって、対象だけを厳密に検出することも可能です。人間、車、建物など、対象ごとに色わけして検出していきます。
・画像分類
人間は人間のカテゴリに、猫は動物カテゴリになど、画像を分類していく方法です。
テキストデータのアノテーション
テキストデータに、分類づけを行っておく方法です。これにより、膨大な文書のなかから特定の情報を抽出したり、ニュース記事をカテゴリごとに分類したりすることが可能です。
音声データのアノテーション
音声データのなかに含まれる情報に、タグづけをすることもあります。音声データに含まれる、特定の文字列一つひとつにタグづけを行うことで、音声の書き起こしや、テキストデータと音声データの整合性確認などができます。
アノテーションの活用事例
アノテーションは、さまざまな分野で活用されています。
近年、さまざまな分野で、画像や映像の検出技術が用いられています。たとえば、製造業で製造ラインを画像認識して不良品を検出する、医療機関でCT画像から疾患を検出するなどです。従来は人の目で認識して、不良品や疾患などを検出していましたが、画像や映像の認識技術が進歩したことで、自動認識する機会が増えています。
そこで用いられているのがアノテーションです。アノテーションを画像や映像認識技術に組み込むことで、画像や映像の認識時に効率を向上させることが可能です。
ここでは、各分野での活用事例についてご紹介します。
製造業
製造業では、製造ラインで流れてくる部品や製品を画像で判別して、不良品を検出することがあります。その際に、画像の特定部分をアノテーションしておくことで、不良品の検出精度をあげることが可能です。
医療機関
医療の現場では、CT、MRIなどによる医療画像を医師が判別して、疾患を検出します。その際にアノテーションを行うことで、検出精度をあげることが可能です。また、病名、治療法、副作用などをアノテーションすることにより、治療法の改善や研究に役立てます。
教育機関
国語や英語などの語学の教育において、文章の品詞分解や文法構造などをアノテーションします。これにより、自動翻訳や文章解析の精度を高めることが可能です。
自動運転
自動運転技術を向上させるためには、画像認識技術の向上が必要不可欠です。自動車の周囲の車両、歩行者、交差点、障害物、標識などを正しく認識させるためには、アノテーションが重要なポイントとなります。
セキュリティ
監視カメラの技術向上のためにも、画像認識の精度をあげることが重要です。人物、車両、物体、障害物などに、アノテーションによってラベルづけすることで、不審者を認識する精度があがります。
アノテーションの実施にあたっての注意点
アノテーションを実施する際には、注意すべき点があります。人の手で行う手動アノテーションが行われることもあり、作業方法を間違えると膨大な作業が発生してしまいます。作業量やコスト削減のためにも、注意すべきことは多いのです。
ここでは、効率よく役立つアノテーションを行うために、必要なことをまとめました。
事前のデータ収集に時間を要する可能性がある
アノテーションを行う前に、事前にデータを収集して、アノテーションの方針を決めておく必要があります。その際に、準備に時間がかかることもあり、注意が必要です。
アノテーションを行う前には、データを収集することはもちろん、そのデータをどのように分類し、どのようなタグをつけるかを計画しておく必要があります。後でデータを活用する際に、わかりにくい分類にしてしまうと、アノテーションをしても効果を得られません。また、アノテーション作業の手順を決めておく必要もあるでしょう。
このように、アノテーションを行う前段階の準備に時間がかかることもあり、注意が必要です。
人力での作業はむずかしい
アノテーションをすべて人の手で行うのは、むずかしいでしょう。手動アノテーションを行うこともありますが、大量のデータを処理することはむずかしく、できたとしても膨大なコストがかかってしまいます。また、ヒューマンエラーが発生することも多く、品質が下がってしまうリスクもあります。
そのため、人力でのアノテーション作業はむずかしいことを頭に入れておく必要があるでしょう。
ツールを使う場合も専門知識が必要となる
アノテーションを行う際には、ツールを活用するのが一般的です。アノテーション時の分類方法やタグづけ方法、ルールなどを決めておき、ツールに設定すれば、大量のデータに対して効率よくアノテーションを行えます。
しかし、ツールをうまく活用するためには、専門知識が必要です。そのため、アノテーション作業を丸ごと専門会社に外注してしまうのも、よい方法です。
自社にあったツールを選定しないと、機能を活かしきれない
ツールを活用する場合、自社の目的やデータ環境にあったツールを選定する必要があります。自社の環境や状況にあっていないツールを使ってしまうと、思ったようにアノテーションできなかったなどの不具合が起こることもあるのです。
選ぶアノテーションツールによって、つけられる注釈の種類、編集機能などに違いがあります。また、ツールを稼働させる際の作業効率や作業精度も変わってきます。自動でアノテーションできるツールはとても役立つものですが、編集精度が悪いと、せっかくコストをかけてアノテーションをしたのに、無駄になってしまう場合もあるでしょう。
このように、アノテーションツールにはさまざまな機能や種類、性能のものがあるため、自社の目的やデータ環境などにあったものを選ぶ必要があります。
外注時に品質管理の課題が発生しやすい
アノテーションを行うためには、十分な準備や専門知識、ツールなどが必要なため、専門会社に外注するのがよい方法であることはすでにご説明しました。しかし、選ぶ専門会社によって、品質に大きな差が生じることもあるため、注意が必要です。
少しでも安く外注しようと価格の安い会社を選ぶと、アノテーションの質が悪く、使えないデータになってしまうこともあります。具体的には、タグづけのミスが多い、タグの情報が足らないなども考えられます。
そのため、外注を行う際には、具体的にどのようなアノテーションを行うのか、分類方法や実際のタグの内容などを細かく確認しましょう。
アノテーションの実施手順
アノテーションを実施する手順は、以下のとおりです。
1.アノテーションの計画
アノテーションを何の目的で行うのか、どのようなアノテーションが必要なのかなどの計画を行います。
2.アノテーションの要件定義と設計
具体的な仕様を整理し、要件を定義して具体的な設計を行います。また、ツールの選定なども行っていきます。
3.アノテーションの実施
設計どおりにツールを用いて、アノテーションを実施します。
4.アノテーション結果のレビュー
アノテーション結果をレビューし、問題がないことを確認します。想定外のパターンやエラーなどを見つけたら、修正していきます。
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まとめ
この記事では、アノテーションの役割や種類、活用事例などについて解説しました。アノテーションは、AIの機械学習の分野でとくに重要なものです。
AIは非常に便利な技術ですが、AIを活用する際には、十分な品質保証を行っていく必要があります。SHIFTでは、充実したAI品質保証によって、AIシステムを利用する際の品質担保を行っています。AI品質が気になるという場合には、お気軽にご相談ください。
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