Introduction
DHCPとは、ネットワーク内でIPアドレスを自動的に割りふる仕組みのことです。この仕組みを利用することで、ネットワーク管理作業の負担が軽減されます。
ネットワーク接続の際によく使われますが、実はどのような仕組みになっているのか、詳しく知らないという方も多いでしょう。
この記事では、DHCPの仕組み、利用するメリット・デメリットなどについて解説します。
目次
DHCPとは?
DHCPとは、ネットワークを利用するために欠かせない仕組みです。具体的には、どのようなものなのでしょうか?ここでは、DHCPの基本知識について解説します。
通信する際に必要な基本設定を、自動的に行う機能のこと
DHCPとは「Dynamic Host Configuration Protocol」の略で、「動的ホスト構成プロトコル」と訳されます。ネットワークを利用する際には、ネット上で宛先を特定するためのIPアドレスが必要です。DHCPは、ネットワークに接続する機器に対して、動的にIPアドレスを割り当てる仕組みです。
一般社団法人 日本ネットワークインフォメーションセンターの『インターネット用語1分解説 DHCPとは』によると、以下のように定義されています。
DHCP
DHCPとは「Dynamic Host Configuration Protocol」の略で、 IPv4ネットワークにおいて通信用の基本的な設定を自動的に行うためのプロトコルです。
ネットワーク接続を行う際にはIPアドレスが必要で、静的IPアドレスと動的IPアドレスの2種類があります。
静的IPアドレスとは、特定の端末や機器にあらかじめ設定しておく固定のアドレスです。一方、ネットワークに接続する際に自動的に割り当てられ、一定の時間が経過すると更新または解放されるのが、動的IPアドレスです。DHCPは、この動的アドレスの割り当てを行います。
DHCPがなぜ必要なのか
DHCP があれば、ネットワーク管理者が手動でIPアドレス設定を行う必要がありません。また、IPアドレスが重複しないように、IPアドレス管理も行ってくれます。
とくに企業や組織など、ネットワークに接続する機器の利用者が多い場合に、DHCPは必須の機能といえるでしょう。
DHCPの機能
DHCPの機能には、具体的にどのようなものがあるのかをご説明します。
IPアドレスを自動的に割りふる
上記でご説明したとおり、DHCPには動的にIPアドレスを割りふる機能があります。ネットワークに接続した機器に対して、自動的にIPアドレスを取得して割りふります。
IPアドレスを管理する
動的に割りふられたIPアドレスは、一定の時間が経過すると更新または解放が必要です。使わなくなったIPアドレスは解放され、ほかの機器がネットワーク接続する際に使用されます。
DHCPは、このようなIPアドレスの更新管理を行い、効率的にIPアドレス管理を行います。
サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーを設定する
ネットワーク接続を行うためには、IPアドレスのほかに、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーの4箇所の設定が必要です。これらの設定についても、DHCPが自動的に対応してくれます。
DHCPの構成要素
DHCPには、以下の3つの要素が存在します。
DHCPサーバー
端末にIPアドレスを割りふり、アドレス管理を行う役割を担っています。
DHCPクライアント
ネットワーク接続を行う機器側で、DHCPサーバーからIPアドレスを割りふられます。
DHCPリレーエージェント
DHCPサーバーとDHCPクライアントがメッセージをやりとりする際に、中継を行います。
DHCPが動作する仕組み
DHCPがIPアドレスを動的に割り当てる流れについて、簡単にご説明します。
1.DHCPクライアントからDHCPサーバーにIPアドレス割り当てを要求する
2.DHCPサーバーはDHCPクライアントに使用できるIPアドレスを提案する
3.DHCPクライアントは使用可能かを検証し、問題なければDHCPサーバーにリクエストを返す
4.DHCPサーバーはDHCPクライアントに了解したことを返す
DHCPを利用するメリット
DHCPを利用すると、IPアドレス設定の負担が大幅に軽減されます。具体的に、どのようなメリットがあるのかをご説明します。
IPアドレスを設定・管理が簡素化される
DHCPを利用すれば、パソコンやタブレットなどの機器に、手動でIPアドレスを設定する手間がなくなります。また、IPアドレスが重複しないように、管理する手間も不要です。
DHCPを利用することで、IPアドレスの設定・管理作業がほぼ必要なくなり、ネットワーク管理作業の負担が大幅に軽減されます。また、出張先や旅先などで公共ネットワークなどにつなぐ際に、事前にIPアドレスを取得する必要がなく便利です。
ヒューマンエラーの防止につながる
人間が手動でIPアドレスを払い出して機器に設定する場合、ヒューマンエラーを防ぐことはむずかしいでしょう。IPアドレスの重複や設定ミスが起こると、ネットワークに接続できないなど、正常に動作しなくなります。
しかし、DHCPにより自動的にIPアドレスを設定すれば、ヒューマンエラーが起こることはありません。そのため、ネットワーク管理作業のミスが起こる頻度を抑えることが可能です。
大規模なネットワークでも対応できる
従業員が多い大規模な企業や組織などでは、多くのパソコンやタブレット、サーバー機器などのネットワーク設定を行う必要があります。そのようなケースで、DHCPが本領を発揮します。
複数の機器を保有する企業や学校などの組織では、とくにDHCPを活用することで、ネットワーク管理作業の負担を軽減することが可能です。
DHCPを利用するデメリット
DHCPは、ネットワーク管理を行う場合になくてはならないものですが、デメリットもあります。ここでは、DHCPを利用する際に知っておくべきDHCPのデメリットについて、解説します。
障害発生時は通信できなくなる可能性がある
DHCPサーバーが障害発生などによりダウンした場合、IPアドレスを取得できなくなるため、ネットワーク接続ができません。企業などでネットワークが使えなくなると、業務に支障が生じてしまうでしょう。
そのため、DHCPサーバーの冗長化を行っておくなど、障害を防ぎ円滑な運用を行えるように、日ごろから対策を講じておく必要があります。
セキュリティリスクが存在する
DHCPには、セキュリティのリスクが存在します。具体的には、悪意ある第三者がDHCPのメッセージを偽装して、ネットワークに不正アクセスするなど、DHCPを利用したサイバー攻撃が行われる可能性もあります。
このようなセキュリティリスクを防ぐために、DHCPサーバーに対しても、セキュリティ対策を講じておく必要があるでしょう。
静的IPアドレスが必要になる場合がある
DHCPを使えば、IPアドレスの割り当て管理を自動化できます。このとき、IPアドレスは順番に割り当てられるため、どのようなアドレスになるかは決まっていません。利用者にとっては、IPアドレスが何番でもとくに問題はなく、ネットワークに接続できさえすればよいわけです。
しかし、ネットワーク管理をしやすくするために、特定のサーバーのIPアドレスを固定しておきたい場合もあります。そのような場合には、静的IPアドレスを除外しておき、個別に割り当てる作業が必要です。
DHCPを利用するために必要なこと
DHCPを利用するために必要な設定について、解説します。
DHCPサーバーの構築
まずは、DHCPサーバーの構築が必要です。ルーターにDHCP機能がついている場合、その機能をそのまま活用することも可能です。個人利用や小規模な組織の場合には、この方法がよく使われます。
従業員数が多い大企業のオフィスなどでは、専用のDHCPサーバー、ネットワーク機器を構築することが多いです。
DHCPクライアントの設定
ネットワークを利用する機器側の設定を行います。
たとえば、Windowsパソコンの場合は、Windowsに備わっているDHCPクライアントの設定を行うことにより、利用できるようになります。ネットワーク設定で「IPアドレスを自動的に取得する」を選ぶことで、設定が可能です。
DHCPについてのよくある質問
DHCPについてのよくある質問をまとめました。
割りふられたIPアドレスの確認方法は?
パソコンなどで割りふられたIPアドレスを確認する方法は、以下のとおりです。
【Windows OSの場合】
1.Windowsのスタートボタンを選び、検索窓にコントロールパネルと入力して、コントロールパネルを選ぶ
2.「ネットワークと共有センター」→「ネットワークの状態とタスクの表示」を選ぶ
3.表示されたインターネットアクセスを選ぶ
4.「詳細」を選ぶと、表示される
【MacOSの場合】
1.デスクトップの「りんごマーク」から「システム環境設定」を選ぶ
2.「ネットワーク」を選ぶ
3.「接続済み」のネットワークを選択する
4.「詳細」を選ぶ
5.上のバーの「TCP/IP」を選ぶと表示される
一度割りふられたIPアドレスは変更されない?
DHCPで割りふられたIPアドレスは、一定時間が経過すると割り当てが終了し、別のIPアドレスが割り当てられる仕組みです。しかし、IPアドレスが変わると不都合なことが起こる場合もあるため、できるだけ同じIPアドレスが割り当てられるようになっています。
IPアドレスを固定したい場合はどうすればよい?
固定して使いたいIPアドレスを、DHCPが割り当てるアドレスから除外します。そのあと、プリンターなどの固定IPアドレスを設定したい機器に、手動で固定したいアドレスを設定します。
ネットワーク内でDHCPが割り当てるIPアドレスと固定IPアドレスを同時使用できる?
同時使用することは可能です。たとえば、プリンターなどの特定の用途をもつ機器のIPアドレスをわかりやすくするために、固定IPアドレスを設定します。そして、それ以外の従業員用パソコンなどのIPアドレスは、DHCPで割りふるなどの使い方があります。
複数のDHCPサーバーを運用することはできる?
基本的に、一つのネットワークには、一つのDHCPサーバーしか運用できません。複数のDHCPサーバーが存在すると、IPアドレスが重複するなどの不具合が起こり、ネットワークを正常に使用できなくなります。
DHCPサーバーの機能をもつ機器を複数設置する場合には、最上位のサーバーのDHCP機能だけを有効にし、それ以外は無効にしておく必要があります。
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まとめ
この記事では、DHCPの仕組み、利用するメリット・デメリットなどについて解説しました。
DHCPは、企業や学校などで管理すべきパソコンやタブレットなどの機器が多い場合に、必要な仕組みです。ネットワーク接続する機器に対して動的にIPアドレスを割りふることで、ネットワーク管理者が個別にアドレス設定をする必要がなくなります。
DHCPの仕組みを利用するためには、DHCPサーバーの構築などが必要です。企業などのネットワーク管理を行う担当者は、DHCPの仕組みを理解して、サーバーの導入などを検討する必要があるでしょう。
監修
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
担当講座
・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
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