Introduction
オフィスの入退室時やスマートフォンのロック解除時などに、顔認証システムの導入が進んでいます。自社の社内システムやオフィスなどに、顔認証システムを導入したいと考えている場合、その仕組みやメリットを詳しく知りたいと考えている企業も多いでしょう。
ここでは、顔認証システムについて、その仕組みや導入するメリット、注意点、実際の活用事例などを解説します。
目次
顔認証システムとは?

顔認証システムとは具体的にどのようなものなのか、その仕組みや必要とされている背景について解説します。
カメラで撮影した顔画像を解析し、登録データと照合する技術のこと
顔認証システムとは、カメラが撮影した画像や映像から人物の顔を検出し、あらかじめ登録されている本人の顔の画像と照合して、本人確認を行う技術です。指紋認証や声認証などと同じく生体認証と呼ばれる技術で、人がそれぞれもつ情報で認証を行うため、偽造がむずかしいといわれています。
「生体認証」は人間一人ひとりが持つユニークな生体情報を活用するため、パスワードのような漏洩リスクや、ICカードのような紛失リスクを大幅に軽減できます。顔認証システムを導入すれば、毎日の業務をスムーズに行うことができ、なおかつセキュリティレベルを高めることが可能です。
個人情報保護委員会の『「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理」に関する意見募集結果』によると、以下のように定義されています。
顔認証
顔認証とは、設置されているカメラで撮影されたデジタル画像から「顔」部分を抽出し、顔部分から特徴点をとらえた識別データを生成し、あらかじめ登録されている「顔画像データ」と照合し、その一致、不一致を判定するものです。
近年は顔認証技術が進化し、マスクや眼鏡などをしたままでも、高精度な顔認証を行える顔認証システムが登場しています。
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顔認証システムが必要とされている背景
顔認証システムが必要とされている背景には、セキュリティ対策の重要度が年々増してきていることがあります。スマートフォンやタブレット、PCなどの盗難・悪用により、個人情報や機密情報の漏えい事件が相次ぎ、セキュリティ対策の必要性が高まっています。そのため、オフィスビルの入退室管理、スマートフォンなどのロック解除などに、顔認証システムの導入が進みました。
また、顔認証技術の進化が進み、認証の精度が高まったことも、導入が進んだ要因のひとつです。顔認証が普及しはじめた2001年ごろは、認証エラーの発生率が高いという問題がありました。しかし現在は、認証精度が向上しただけでなく、認証速度も大幅に向上しており、信頼性と利便性の両面から性能が高まっています。その結果、顔認証システムの導入が進んでいるのです。
顔認証システムの仕組み・技術
顔認証は実際にどのように行われているのか、その仕組みと認証方式について解説します。
顔認証の基本的な流れ
以下のような流れで、顔認証が行われます。
1.カメラに映る映像から人の顔を検出する
2.目、鼻、口などの特徴をとらえて精密な特徴量に変換し、座標を数値化して顔データに変換する
3.登録されている顔データと照合率が一定の値を超えると同一人物とみなし、認証OKとなる
画像から読みとった情報を顔データに変換する際は、AI技術により認証精度が大幅に向上しています。そのため、眼鏡やマスクをしていても、高精度で認証できるまでに進化しました。
主な認証方式
認証方式には、2D認証、3D認証などがあります。
・2D認証(ビジュアル方式)
2D認証はビジュアル方式とも呼ばれ、カメラに映った人物の目、鼻、口などの位置を、データベースに保管された顔データと照合して、認識する方法です。最新の2D認証システムでは、AI技術の一つであるディープラーニング(深層学習)を活用して認証精度を大幅に向上させています。ニューラルネットワークを多層化した「ディープニューラルネットワーク(DNN)」によって膨大な顔画像データから学習したモデルを用いることで、照明条件や表情の変化にも対応できるようになりました。汎用性が高く一般的なカメラで利用できるため導入コストが低いのが特徴ですが、平面の写真による「なりすまし」のリスクや光の条件による認証精度の変動という課題もあります。
・3D認証(IR方式)
3D認証はIR方式とも呼ばれ、2D認証方式に赤外線センサーを追加して、顔を立体的に認識するシステムです。2D認証よりも精度が高いため、髪型や化粧などに左右されることが少なくなりました。ただし、3D認証を運用するためには、赤外線認証に対応した機器が必要です。最新の3D認証システムではRGB+赤外線カメラを用いて高度な立体認識を行うため、写真や動画を使った「なりすまし」による誤認証のリスクが大幅に低減されています 。また、周囲の明るさの影響を受けにくいというメリットもあります。ただし、専用の赤外線センサー付きカメラが必要となるため、2D認証に比べて導入コストが高くなる点が課題です。
データ管理方法による違い
データの管理方法によっても、以下のとおり認証方式が異なります。
・デバイス完結型(エッジ方式)
デバイスに顔データを保存して、認証を行うタイプです。インターネット接続が行われていない環境でも、顔認証を行うことが可能です。
・クラウド型
クラウド上に顔データを保存しておき、認証を行うタイプです。クラウド上のソフトウェアと、デバイス上のソフトウェアが通信することで認証を行います。顔データという重要な個人情報をクラウド上に保存することで、情報の流出や不正利用などのリスクがともなうため、セキュリティ対策を万全に行う必要があります。
顔認証システムを導入するメリット
顔認証システムを導入するメリットをご説明します。
セキュリティレベルの強化が期待できる
顔認証は、盗まれる可能性があるICカードやパスワードなどとは異なり、本人になりすますことが困難です。また「生体判定技術」という、まばたきや視線などから、カメラに写っている人が生体か否かを判定する技術が確立しているため、本人の写真を使ってなりすますこともむずかしくなっています。そのため、高いセキュリティレベルを維持できると期待されています。
利便性が向上する
顔認証は、ICカードをもち歩く必要も、パスワードを覚えておく必要もなく、本人がいれば認証を行うことが可能です。そのため利便性が高く、企業内で利用する従業員や、店舗などで利用する顧客の満足度の向上につながるでしょう。
紛失やパスワード忘れの心配がなくなる
ICカードによる認証の場合は、ICカードを紛失すると利用できなくなります。また、パスワード認証は、パスワードを忘れると再発行の手続きが必要です。その点、顔認証は、カードの紛失やパスワード忘れなどを心配する必要がありません。
コスト削減につながる
顔認証システムをオフィスや店舗に導入することで、警備員や管理人などの人件費を削減することも可能です。さらに、24時間対応も実現できるため、企業の運営コストを下げつつ、利便性を高められるでしょう。
非接触であるため衛生的
手を機器に触れる指紋認証などとは異なり、非接触のため衛生的です。そのため、ウイルス感染対策に役立つというメリットもあります。
顔認証システムの導入時の課題と注意点

顔認証システムを導入する場合の課題と注意点について、ご説明します。
製品によって認証精度にばらつきがある
導入する顔認証システムによっては、認証精度にばらつきが生じることがあります。たとえば、髪型や化粧などによる変化に対応できない、眼鏡やマスクを着用していると認証できないなどのケースもあります。
利用環境によっては認証精度が下がる場合がある
利用環境によって、認証精度が下がるケースもあります。たとえば、屋外での使用には適さない、光の加減によって認証精度に差が出るなどのケースです。また、湿気や汚れなどに弱い場合もあるため、使用する環境に適した製品を選ぶ必要があるでしょう。
プライバシー保護を徹底する必要がある
扱う情報が個人の顔のデータという個人情報のため、ガイドラインに従って慎重に扱う必要があります。
顔認証に必要な顔写真と名前、所属のデータは、重要な個人情報です。そのため顔認証システムを導入する際には、個人情報が流出しないようなシステム的な仕組みやルールなどを適切に定めるべきでしょう。また、利用目的を本人に通知し公表したうえで運用する、利用目的を超えてデータを利用しない、などの規定を設け、周知徹底を行わなければなりません。
他システムと連携可能かを確かめる必要がある
他システムと連携することで、さらに利便性を高められることもあります。たとえば、社内の勤怠管理システムと連携させて、社員の勤怠状況や勤務時間を記録することも可能です。また、顔認証時におでこの温度を測る検温機能を併用することで、従業員の体調管理にも役立つでしょう。
顔認証システムの活用事例
顔認証システムの実際の活用事例について、ご紹介します。
入退室管理
オフィス、サーバールーム、工場などへの入退室を管理する際に利用されることが多いです。社員はICカードなどをもっていなくても、スムーズに入退室でき、高いセキュリティレベルを維持できます。
端末やシステムへのログイン
スマートフォンやパソコンなどの端末やシステムのログイン時に、顔認証システムを導入するケースも多いです。認証が破られると、第三者に情報を盗まれるリスクがともないますが、端末やシステムに顔認証システムを導入することで、セキュリティレベルを高められます。
なりすまし防止
大学などの受験会場での替え玉受験、コンサートなどのチケットの転売などを防ぐため、顔認証が利用されるケースもあります。顔認証が導入されれば、大学受験などで第三者による替え玉受験はできなくなり、チケットを購入した人以外は会場に入場できません。
決済
店舗などを利用する際、顔認証により自動で決済できる「手ぶら決済」の導入も進んでいます。現金やスマホなどがなくても、買い物や飲食、宿泊などができ、手軽にショッピングや観光が楽しめます。
搭乗手続き・入国審査
成田空港では、2021年7月から顔認証システムを導入しています。あらかじめ自動チェックイン機で顔の写真を撮影しておけば、パスポートや搭乗券の情報をリンクさせられます。これにより、手荷物を預ける際や搭乗する際に、顔をカメラに近づけるだけで通過できるようになりました。
まとめ
顔認証システムとは、カメラが撮影した画像や映像から人物の顔を検出し、あらかじめ登録されている本人の顔の画像と照合して、本人確認を行う技術です。指紋認証や声認証などと同じく生体認証と呼ばれる技術で、人がそれぞれもっている情報で認証を行うため、偽造がむずかしいといわれています。
顔認証システムを導入してビジネスを効率化したい、セキュリティレベルを高めたいという場合は、ぜひにSHIFTにご相談ください。

監修
林 栄一
組織活性化や人材開発において豊富な経験を持つ専門家として、人材と組織開発のリーダーを務め、その後、生成AIを中心にスキルを再構築し、現在新人研修プログラムや生成AI講座開発を担当している。2008年にスクラムマスター資格を取得し、コミュニティーを通じてアジャイルの普及に貢献。勉強会やカンファレンス、最近では生成AI関連のイベントに多数登壇している。チームワークの価値を重んじ、社会にチームでの喜びを広める使命をもつ。
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