Introduction
人工知能(AI)が社会やビジネスに急速に広まり、いまやAIはなくてはならないものになりました。しかし、AIとは具体的にどのようなものなのか、正しく理解している人は少ないのではないでしょうか?
AIは、人が実現する知性や知覚を人工的に再現するものといわれていますが、決まった定義はありません。
そこで、この記事ではAIとは何か、その仕組みや種類、AIを活用するメリットやデメリット、具体的な導入事例などについて解説します。
目次
人工知能(AI)とは?

ここでは、人工知能(AI)とは何なのか、人工知能の歴史について解説します。
人間の思考プロセスと同じように動作するプログラムのこと
人工知能(AI)とは「Artificial Intelligence」の略で、人間の思考プロセスと同じように動作するプログラムのことです。あらかじめつくられたプログラムに従うだけではなく、自ら学習して理解し、状況にあわせた選択ができます。そのため、人間が行うような問題解決や計画の立案、新しいアイデアの考案なども可能です。
総務省の『令和元年度版 情報通信白書のポイント』によると、以下のように説明されています。
人工知能(AI)
AIに関する確立した定義はないのが現状である。あえていえば、「AI」とは、人間の思考プロセスと同じような形で動作するプログラム、あるいは人間が知的と感じる情報処理・技術といった広い概念で理解されている。
AIの技術は、さまざまな分野で活用が進められています。たとえば、販売履歴や顧客行動などの膨大なデータを分析してマーケティング戦略に活かす、道路に設置したカメラで車の流れを記録・分析して渋滞状況を予測するなどです。このように、膨大なデータをもとに複雑な分析を行う、データを学習して高度な判断を行うなどができるため、さまざまな分野でAI技術が活かされています。
人工知能の歴史
ここでは、人工知能の歴史について簡単に振り返ります。
・第1次AIブーム(1950年代~1960年代)
最初のAIブームは、1950年代後半ごろから欧米で起こりました。当時はコンピューターが普及しはじめたころで、推論や探索の技術を駆使して、チェスやオセロなどのゲームをプレイできるAIが開発されています。
また1964年に、簡単な受け答えができる対話型AI「ELIZA」が誕生しました。このころに登場したAIは、単純で小規模なものでした。
・第2次AIブーム(1980年代~1990年代)
1980年代ごろは、コンピューターの普及が進んだ時代で、特定の分野の知識を用いて推論を展開するシステムが、株価予測、病理診断などの分野で活躍しました。しかし、推論の精度を高めるためには、膨大な量のデータを用意しなければならない、例外的なルールや処理に対応するのがむずかしいなどの問題点がありました。
・第3次AIブーム(2000年代~)
2000年代には、コンピューターの性能が飛躍的に向上し、大量のデータを学習する機械学習が登場しました。さらに、複雑な判断が可能なディープラーニングが実用化されると、AIの進化が劇的に進みました。
2000年代になるとコンピューターの性能が飛躍的に向上したことで、大量のデータを学習する機械学習が普及しました。とくに、2012年に画像認識コンテストでディープラーニングを用いたチームが圧倒的な精度で優勝したことが転機となり、AIの進化が大きく加速したのです。
そして、2022年末にはChatGPTが一般公開され、誰もが簡単に高度なAIを利用できる時代になりました。ChatGPTの登場により生成AIの普及が爆発的に進み、「プロンプトを入力して指示に基づいた分析や推論、画像などを生成する」という流れが誰でも簡単に行えるようになりました。また、質問するとわからないことを教えてくれたり、文章を作成してくれたりするなど、まるで人間とやりとりするように手軽に情報を得られます。知識や技術を要求しない、手軽に利用できるAIツールが登場したことで、AI技術が一般に急激に普及したのです。
このように第3次AIブームは発展を続け、私たちの生活やビジネスに革命的な変化を現在進行系でもたらしています。
人工知能の種類
人工知能は、大きく特化型AIと汎用型AIの2種類に分類されます。ここでは、それぞれの種類について簡単にご説明します。
特化型AI(ANI)
特化型AIは、特定の分野に特化したタスクを行うAIで、弱いAIとも呼ばれます。たとえば、翻訳、文章の要約、株価予測、自動運転、天気予報など、特定の分野で活躍します。
汎用型AI(AGI)
汎用型AIは、人間と同様の知的行動ができる汎用的なAIで、強いAIとも呼ばれます。現時点では研究段階で、今後の研究が期待されています。
汎用型AI(AGI)についてはこちらもご覧ください。
>>AGI(汎用型人工知能)とは?従来のAIやASIとの違い、できることを解説のページへ
AIモデルの種類
AI技術について話をするときによく出てくる、AIモデルとは何なのでしょうか?
AIモデルとは、AIがデータを学習してつくり出されるモデルのことです。AIは、特定のデータセットの法則や関係性を学習することで、インプットされたデータにあったアウトプットを返します。その際に、インプットデータに対して、どのようなアウトプットを行うかを決める仕組みがAIモデルです。
AIモデルには、いくつかの種類があります。ここでは、AIモデルの種類について解説します。
機械学習
機械学習は、教師あり学習と教師なし学習にわかれます。
教師あり学習とは、正解を与えて学習させる古典的な学習方法です。たとえば、車の画像を読み込ませて「トラック」「バス」などのラベルづけされたデータを用いて、学習させていきます。
最初から答えがわかっている状態で学習させるため、精度の高いAIモデルを構築できますが、ラベルづけされたデータセットの用意が必要です。教師あり学習は、画像認識、音声認識、自然言語処理などで活用されています。
一方で、教師なし学習は、正解を与えられていない状態でデータを学習し、パターンを見つけ出して学習する方法です。データを入力する際に情報は与えられず、データの類似性や共通点などを分析していくことで、モデルを構築します。
教師なし学習は、未知のデータに対して分析ができるというメリットがあり、顧客分析や異常の検知などに活用されています。
▽あわせて読みたい▽
>>機械学習とは?AIやディープラーニングとの違い、活用事例などを解説のページへ
深層学習(ディープラーニング)
ディープラーニング(深層学習)とは、教師なし学習がさらに進化したものです。ディープラーニングは機械学習の一種で、多層のニューラルネットワークを用いて、データから特徴を自動的に抽出する技術です。ニューラルネットワークとは、人間の脳の神経回路を数学的にモデル化したものを指します。
これにより、人間が特徴量を設計しなくても画像や音声などの複雑なパターンを高精度で認識できるようになりました。高精度で汎用性が高く、自然言語処理、自動運転、株取引などに活用されています。
▽あわせて読みたい▽
>>ディープラーニングとは?機械学習との違いやできること、活用事例を解説のページへ
人工知能を活用するメリット
人工知能を活用することで得られるメリットについて、解説します。
業務効率が大幅に向上する
大量の製品の検品、監視カメラの画像解析など、定型的な作業や大量のデータを扱う作業をAI技術で自動化することが可能です。人間が作業を行う必要がなくなり、24時間365日対応もしやすくなります。その結果、業務効率が大幅に向上するでしょう。
ヒューマンエラーを削減できる
AIによる自動化は、うっかりミスや疲労による判断ミスなど、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。また、AIによる大量のデータの分析や高度な判断を業務に反映することで、「ベテラン社員しかできない作業」や「担当者が変わると品質にばらつきが出る作業」といった属人化の課題の解消にもつながります。その結果、一貫した高品質なサービスを提供することが可能になるのです。
新たな価値創造につながる
AIが大量のデータを分析することで、新しいアイデアを得られるなど、新たなビジネスチャンスを発見できます。イノベーションが加速され、新たな価値の創造につながるでしょう。
コストの削減につながる
AIにより自動化が進むと、人件費の削減につながる、在庫管理がAIによって最適化されることで在庫の無駄が減るなど、コストの削減にも役立ちます。
人工知能のデメリット・危険性
人工知能を活用することで大きなメリットを得られる一方で、デメリットもあります。ここでは、人工知能のデメリット・危険性について解説します。
人間の仕事を奪う可能性がある
単純作業や定型的な作業はAIが対応できてしまうため、人間の仕事を奪う可能性があります。また単純作業ではなくても、画像生成AIなどにより、クリエイティブな分野でもAIが人間の仕事を代替することが可能です。そのため、AIでは代替できない新しい雇用を創出する必要があるでしょう。
判断プロセスがブラックボックス化する
AIが大量のデータを分析して、複雑な判断を行う際の判断プロセスが見えず、ブラックボックス化するという問題もあります。なぜそのような結論になるのか誰もわからない状態でAIを活用すると、その判断の根拠を誰も説明できない状態になり危険です。そのため、AIを活用する際は、その仕組みやプロセスをある程度理解しておく必要があるでしょう。
情報に誤りや偏りが生じる可能性がある
AIには、ハルシネーション(幻覚)と呼ばれる、誤った情報や架空の内容を生成する現象が起こることがあります。その原因は、未知の情報にモデルが対応できていない、学習データが少なすぎる、偏っている、古いなどさまざまです。AIが出力する結果が必ずしも正しいとは限らないため、人間がチェックする仕組みを整えておくなどの対策が必要になるでしょう。
ハルシネーションについてはこちらもご覧ください
>>ハルシネーションとは?発生する原因や改善方法、トラブル防止のための対策を解説のページへ
法的・倫理的なリスクが生じる
外部企業が運営するAIツールに入力した個人情報や機密データが外部に流出する、生成AIで利用した外部データに他者の著作物が含まれることで、著作権の侵害が発生するなどのリスクも存在します。
AIに関する著作権や個人情報保護法などの法的な問題がないかをあらかじめ確認し、利用時のセキュリティポリシーなどを明確に定めておく必要があるでしょう。
AIを活用する際には、著作権侵害リスクや個人情報保護法違反を防ぐために、以下のような対策が重要です。
1.AIに提供するデータの著作権・肖像権を事前に確認する
2.社内のAI利用ガイドラインを作成し、機密情報や個人情報の入力禁止を徹底する
3.AIの出力結果は必ず人間がチェックし、法的・倫理的問題がないか確認する
4.定期的なセキュリティ研修でAI利用時のリスクと対策を共有する
これらの対策を講じることで、安全かつ効果的なAI活用が可能になるでしょう。
人工知能の活用事例

人工知能が実際にどのように活用されているのか、その事例についてご紹介します。
医療分野
医療の分野においても、AI技術は幅広く活用されています。
たとえば、多くの人の健康診断結果や生活習慣などのデータを分析し、1年後や2年後の健康状態を予測する健康アプリが開発されました。また、CTやMRIによる検査データの診断を、過去の蓄積された診断データを学習したAIが行うことも可能です。
このように、大量の健康データを健康管理に活用する、経験豊かな医師による診断結果の蓄積データを活用するなどの取り組みが行われています。
教育分野
学習塾などをはじめとした教育現場でも、AIの活用が広がっています。たとえば、過去に蓄積された生徒の学習データから、生徒一人一人にあったカリキュラムをAIで自動生成する、過去の入試問題データを分析して入試問題を予測するなどです。
ビジネス分野
ビジネスの分野では、すでに幅広くAIの活用が広がっています。
たとえば、社内の情報を従業員がいつでも確認できる、社内向けAIチャットボットがあります。これは、社内の福利厚生や旅費申請手続きなどについて、いちいち総務の担当者などに問い合わせなくても、いつでも確認できる便利なAIツールです。ほかにも、定型的なビジネスメールや報告書などを生成AIで作成する、膨大な顧客データや販売データをAIで分析して、マーケティング戦略に活用するなどが可能です。
日常生活
日常生活においても、AI翻訳ツールを使って英語の文章を読むことが可能です。また、SiriやGoogleアシスタントなどの音声認識機能には、AI技術が使われています。ほかにも、エアコンや冷蔵庫などの温度管理、写真編集アプリでの人物と背景の識別なども、AIが行っている製品があります。
まとめ
人工知能(AI)とは「Artificial Intelligence」の略で、人間の思考プロセスと同じように動作するプログラムのことです。あらかじめつくられたプログラムに従うだけではなく、自ら学習して理解し、状況にあわせた選択できます。
AIツールをビジネスシーンに導入することで、業務の効率化、生産性の向上、コストの削減、顧客満足度の向上などにつなげることが可能です。AIツールをうまく活用して、企業競争力のアップにつなげるとよいでしょう。
社内のAI活用を推進する「天才くん」
この記事でご説明したとおり、AIはいまやビジネスに欠かせないツールです。 しかし、AIツールを社内に導入してもなかなか浸透しない、効果があがらないなどの悩みをおもちの企業様も多いでしょう。
AIツールの導入にお悩みの場合は、SHIFT社のノープロンプト生成AIツール「天才くん」をぜひご活用ください。「天才くん」をオフィス導入すると、自社の業務に適したAIを簡単に作成でき、質問や業務内容を入力するだけで必要な結果が生成されます。たとえば、営業メール、報告書、SNS投稿、書類チェックなど、地味に手間だった業務を誰でも簡単に効率化することが可能です。
このように、AIは業務効率化や新たな価値創造など多くのメリットをもたらしますが、実際にAIを導入する際には「どこからはじめればよいかわからない」「導入しても社内に浸透しない」といった課題に直面することも少なくありません。
そこで、AIの導入を成功させるためには、以下のステップを踏むことが効果的です。
1.まずは小規模な業務からはじめる
2.効果測定の指標を明確にする
3.社内研修でAIリテラシーを高める
4.成功事例を社内で共有する
これらのステップを実践するには、専門知識や適切なツールが必要です。SHIFT社のノープロンプト生成AIツール「天才くん」は、AIの導入ハードルを大幅に下げ、誰でも簡単にAIを業務に活用できるソリューションです。
SHIFTでは導入から運用までを専任スタッフがフルサポートし、プロンプトの書き方から課題解決までを支援いたしますので、お気軽にご相談ください。

監修
林 栄一
組織活性化や人材開発において豊富な経験を持つ専門家として、人材と組織開発のリーダーを務め、その後、生成AIを中心にスキルを再構築し、現在新人研修プログラムや生成AI講座開発を担当している。2008年にスクラムマスター資格を取得し、コミュニティーを通じてアジャイルの普及に貢献。勉強会やカンファレンス、最近では生成AI関連のイベントに多数登壇している。チームワークの価値を重んじ、社会にチームでの喜びを広める使命をもつ。
――――――――――
ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
――――――――――