Introduction
SHIFTではUX品質の向上を目的としたサービスを展開しておりますが、UXを謳うことで、さまざまなお客様からご相談を受けるようになりました。UXが注目と期待を集めていることを感じております。このコラムを読んでいる皆さんが、さらにUXに興味を持ち、実際に取り組むことでUX品質が向上することを楽しみにしております。
今回は、非常に関係の深い「DXとUX」というテーマで3回に分けて、基礎的な内容から具体的な取り組みにいたるまでお伝えしたいと思います。これからのシステム開発やサービス企画にはDXやUXが必要不可欠であることをご理解いただき、取り組みのきっかけとなれば幸いです。
目次
DXとは
最近は聞かない日がないほどメジャーになったキーワード“DX”ですが、デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation)の略で、デジタル変革の意味として用いられています。デジタル変革でもたらされるのは、単なるデジタル化より企業活動への影響範囲がとても広いことが特徴です。
またDXでは顧客起点の価値創出をおこなう“攻め”の面と、事業起点の生産性向上をおこなう”守り”の面という二面性を持っています。顧客起点の価値創出では、UX(利用者の経験価値)を軸に置いた問題解決をおこないます。事業起点の生産性向上では、基幹システム刷新などを実施することによる生産性向上によって問題解決を行います。特にDXでは、顧客視点を積極的に取り入れることにより、ビジネスへ大きく貢献することが可能になりました。従来提供者側の都合のみで構築されてきたシステムでも、顧客起点で取り組むことで良い影響を生み出すことがわかってきました。
UXとは
もう一つの重要なキーワードである“UX”ですが、こちらもメジャーなキーワードとなっています。最近ではシステム・サービス作りに必要不可欠な要素として認識されています。UXはユーザーエクスペリエンスの略ですが、利用者の経験価値や喜びを表す言葉となっており、利用者にとってのシステムやサービスを通した価値として最も重要な要素の一つとなっています。
これまで多くのシステムやサービスの企画・設計・開発・評価は、提供者主体の視点で行われることが多かったのですが、最初から利用者であるお客様に視点を合わせて、取り組むことにより、これまで以上にお客様に喜ばれるシステム・サービスになるということで注目を集めています。
UX開発の実態調査 2023
本調査は、ソフトウェア開発におけるUXへの取り組みについて調査したものです。UXがどの程度取り入れられているか、またその成果や課題を明らかにしたものです。 UXの取り組みにおいて有用なデータとして活用いただけることを目指し調査を実施いたしました。
本調査は、ソフトウェア開発におけるUXへの取り組みについて調査したものです。UXがどの程度取り入れられているか、またその成果や課題を明らかにしたものです。 UXの取り組みにおいて有用なデータとして活用いただけることを目指し調査を実施いたしました。
UXがDXにもたらすメリット
DXへの取り組みであるDXエンジニアリングでは、次の4つ起点で実施することが示されています。*1
(1)顧客起点(UX,顧客価値)・・・利用技術:デザイン思考、アジャイル、要求工学
(2)経営戦略起点(全体俯瞰)・・・利用技術:戦略的展望、ビジネスモデルデザイン
(3)デジタルプラットフォーム起点・・・利用技術:サービス思考、機械学習ソフトウェア工学、レガシーリエンジニアリング、ソフトウェア工学
(4)事業/業務起点(効率化,収益増大)・・・利用技術:BPM、要求工学
UXはこの主要の4要素のなかで顧客起点に含まれており、DXの二面性のうち顧客起点の価値創出として”攻め”の役割を担っています。顧客起点での取り組みが、DXの価値を高めていく重要な役割をしていることを示しています。
DXでは顧客起点での新しい価値創出が求められます。しかし、新しい価値を求めるお客様であっても、お客様から具体的な新しいアイデアを受け取ることは非常に困難です。そこでまだお客様が気づいていないが潜在的に欲しいと思っていることや解決すべき問題や解決方法を知ることが必要となります。そんな時にお客様が得られる価値や喜びを創出する取り組みとしてUXが貢献できます。
また顧客起点での考え方として”デザイン思考”を取り入れるケースが増えています。試しながら仕様を固めていく”アジャイル要求工学”を用いることも増えています。デザイン思考では徹底的にお客様のことを観察し、考え抜き、配慮することでお客様にとっての価値や喜びを最大化することに取り組むため、高速で開発と検証を繰り返せるアジャイル開発を採用することが好まれています。デザイン思考による顧客視点での柔軟なUXの取り組み方と開発・検証を高速で繰り返し結果を反映できる方法としてアジャイル開発が現在でも広く浸透しています。
DX推進においてUXに配慮して取り組む際に押さえておきたいモデルがあります。UXのかかわりを示すモデルとして、J. J. Garrett(ジェシー・ジェームズ・ギャレット)氏の唱えたUXの5階層モデル *2があります。DX推進でUXに配慮する場合、どの層に携わっているかを意識すると、自分がDX推進の何に貢献できるかも明確になります。
J. J. Garrett氏のUXの5階層モデルでは一番下の層で戦略としてビジネスやサービスなどの設定をします。2階層目はビジネスやサービスの要件を定義し、一般的に1・2階層目が企画・コンセプト作成として取り組むことが多いです。3階層目で構造化を定義し、4階層目では骨格として構造やレイアウトデザイン、構成に落とし込み、5階層目で具体的なビジュアル設計として実際に操作をおこなう画面を示します。3~5階層目は開発、特に設計フェーズとして扱われます。
DX推進プロジェクトにかかわった場合、現在はどの階層に着手しているのか、自分はどの階層に携わっているのか、他の階層はどうなっているのかを意識することで、自分自身の行動を俯瞰視できるので、ぜひ覚えておくことをお勧めします。
*1 DXエンジニアリング:「DXその現状と企業システムに求められるUI/UX戦略とは」2019年11月6日講演資料(南山大学 青山幹雄教授)より再定義
*2 J. J. Garrett(ジェシー・ジェームズ・ギャレット)氏の唱えたUXの5階層モデル