Introduction
現代社会において、あらゆる面でデジタル化が推進され、いまやデジタル・IT技術は、私たちの生活になくてはならないものとなっています。既存の事業をデジタル化・データ化することにより、プロダクトやサービスを介して新しい価値を顧客に提供し、デジタルコミュニケーションによってリレーションを深めようとする企業が、世界的に増えています。
そんな競争が激化するデジタル時代において、プロダクトやサービスの機能が不具合なく動くという製品品質は、もはや必須条件となり、利用体験を指すUX(ユーザーエクスペリエンス User eXperience:ユーザーが、ひとつの製品・サービスを通じて得られる体験)品質こそが競争優位性をもたらす要因として重要視されています。
これは、どれだけ完全なシステムを開発したところで、利用者にとって「使いづらい」「わかりにくい」というものも、品質上の大きな欠陥、致命的なバグと解釈される時代となっている、ということなのです。
目次
デジタル社会において「デザイン」がもつ役割とは
利用者は、顧客接点であるインターフェースからでしか価値判断はできず、サービス提供者・開発者の「深い思い」を、直接的に伝えることができません。
利用者は、企業からの価値提供を、UI(ユーザーインターフェース User Interface:ユーザーとコンピュータとが情報をやり取りする際に接する、機器やソフトウェアの操作画面や操作方法)を通して体験し、サービスの価値を評価しているのです。
そこで、UIを通して、サービス提供者・開発者の「深い思い」と、利用者が感じる価値をつなぐ役割を担うのが「デザイン」なのです。
サービスを通して利用者との関係性を構築して長期的な顧客になっていただくことが、「デザイン」において重要視されているといえるでしょう。
理想と現実(「使いやすさ」⇔「つくりやすさ」)
「使いやすさ」の追求から、結果的に「つくりやすさ」の追求に陥っていませんか?
ここまで述べたとおり、いま、開発現場では、「UXを重視し、いいものをつくりたい」「利用者に喜びを与えたい」と全員が考えています。特に、企画や開発の上流工程ではそのマインドも十分に注入されているでしょう。
しかし、開発が進むにつれ、知らず知らずのうちに、ユーザーファーストではなく、アーキテクチャファーストになっていきます。利用者に喜びを与えるためにスタートした開発が、徐々に開発現場のための生産性や効率性に目的がすり替わり、「つくりやすい」にフォーカスされやすい環境ができあがっていくのです。
なぜなら、プロジェクトマネジメントの観点から、プロジェクトを成功に導くためには、開発業務における生産性などのタイムマネジメントや、人件費・外注費などのコストマネジメントも重要視されるからです。リリースタイミングや開発時期なども、プロジェクトの成否に大きく影響します。よいものをつくっても、開発の遅れによりリリース時期をずらすなどは、サービスとしてよいとされません。期日を守った開発も非常に重要であるため、「つくりやすさ」も時には最重要視せざるを得ないのです。
その知らず知らずのズレを、ガイドラインによって抑制し、利用者によい体験を届けることを一貫して求めていくことこそが、いま、プロダクト・サービス開発現場に求められることだと考えます。
デザインを適切に向上、確立させるために ~ デザインガイドラインの目的と成果 ~
プロダクト開発にも、数多くの指標や手法がある通り、デザインにおいても同様のもの、すなわちガイドラインを用意すべきです。
顧客体験の向上のために、開発の一貫した拠り所としても、デザインガイドラインは非常に有効です。定義し、適切に運用すれば、以下のような成果が得られます。
■デザインガイドラインの成果
・UI/UXへの留意
利用者にとってUI/UXの観点からサービスを使いやすく価値を感じられるものとするための留意点の確認ができる。
・ブランド力の向上
ブランド戦略をガイドラインに落とし込み、サービス利用者とのインタラクションを通してブランド力を高めることができる。
・開発時の一貫性
複数のデザイナー、開発者によってデザインや考え方の相違がないように開発の一貫性を確立することができ、スムーズな開発への橋渡しを行う。
開発ベンダーやデザイナーがデザインガイドラインを参照することで一貫したUX品質を保ち効率的な作業ができる。
SHIFTのデザインガイドライン
我々は、そんなデザインガイドラインを、サービス提供者・開発者と協業し、作成する支援を行っています。企業内の各部門および開発パートナーがデザインについての意識を揃え、協働するための指針として利用していただきます。
これは、企業における開発・デザイン制作に制約や制限をかけるものではありません。
筆者も10年以上、開発現場に身を置き、よりよいものをつくるため、妥協せずプライドをもって汗をかいてきました。みなさんもそうだと思います。
しかし、いまになって振り返ってみると、
「この機能をどうやって実現しようか」
「この複雑な要件を、どういうアルゴリズムで組み立てようか」
という視点に囚われ、本来の目的が薄まっていたのではないか、と感じずにはいられないのです。
開発現場の汗が、UIを通して利用者の喜びにもつながるとなれば、つくり手にとってこんなにうれしいことはないのではないでしょうか。
すべては利用者へよりよいサービスを提供するために。
サービス提供者・開発者、そして利用者の喜びが、我々SHIFTの喜びです。