組織に生まれるアジャイルという新しい文化を守るための仕組み

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組織に生まれるアジャイルという新しい文化を守るための仕組み

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Introduction

新しい技術や方法論への取り組みは、個人または小さな集団からはじまることが多い。アジャイルへの取り組みもその一つではないだろうか。
このような新しい取り組みをはじめた個人や集団を見つけて守り育てることは、その取り組みを推進したい組織において非常に重要である。なぜならば、新しい技術や方法論は、個々人の取り組みに対して周囲が共感し、それが共有されて広まっていく過程で型化され、やがて組織に定着していくからだ。この一連の流れは「文化の醸成」である。
本コラムでは 、アジャイルに取り組む集団を既存の組織のなかで守り、維持していく際の課題やプラクティスを紹介していく。

目次

アジャイル推進に取り組む組織が直面する問題とは

これからアジャイルを導入していこうとする組織は、さまざまな問題に直面するだろう。
例えば、これまでウォーターフォール開発に慣れ親しんできた人に、アジャイル開発を進めていくための文化の醸成を行うミッションを負わせるケースを考えてみる。

この場合、ウォーターフォールの考え方でアジャイルを語ってしまうため、大抵うまくいかない。こうなってしまうと、社内でアジャイルを推進している別の人を見つけてくるしかない。このケースは本コラムで論じないが、アジャイル推進の失敗要因の大部分である。

運よくアジャイルの文化の担い手が見つかったとしても、周囲の人たちがアジャイルに興味をもたず組織に広まっていかないことがある。この事象を読み解くためのヒントとして、Agile leadershipにおける「カルチャーバブル」と呼ばれる考え方がある。
以下はカルチャーバブルについて触れているサイトである。ぜひ、参照いただきたい。

How To Be Successful with Agile in Any Culture (どのような文化でもアジャイルを成功させる方法)
https://shift314.com/how-to-be-successful-agile-any-culture-with-bubble/ (英語)

カルチャーバブルは、新しい取り組みをバブル(泡)に例え、個々人の取り組み(バブルが生まれる)から周囲が共感し(バブルが大きくなる)、共有されて広まり文化として定着していく(大きくなったバブルがはじけてなじんでいく)ことを表したものである。

 

新しい取り組みはすぐに組織全体になじむものではない。バブルの内側(新しい取り組みをしている人たち)と外側(既存の組織の人たち)との間には共通言語がないため、取り組みに対する温度差もあれば誤解もあるだろう。そのため、バブルの外側の人たちがよかれと思って実施した施策が、バブルの成長を阻害したり、ときには割ってしまったりすることがある。
こうした事態に陥らないために、カルチャーバブルと既存の組織との間でよく起こる文化の衝突の例を見ていこう。

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新しい技術や方法論の導入障壁

新しい技術や方法論 を導入しようとして、周囲の賛同が得られなかった経験はないだろうか。
当然ながら学習コストがかかるため、これまでのやり方を変更して負荷がかかることを避ける傾向にあるだろう。
また、メリットをイメージできないがゆえに、なくても困らないという判断にもなってしまうことがある。いままでと同じやり方をしていれば、同じ結果が出るはずだ、という思いからだ。

一方で、バブルの内側の人たちでさえそのメリットを説明しきれないこともある。なぜなら、特に生まれたてのバブルは新しい取り組みをはじめたばかりであり、バブルの外側の人たちが興味をもつのに十分な成功体験をもち合わせていないことが多いからだ。

既存の組織のものさしを新しい組織にあてはめようとする

既存の組織の人々は、ウォーターフォール型プロジェクトマネジメントの方式でしかチームの状態を把握できないことがよくある。そのため、アジャイルに取り組むチームに対しても綿密なプロジェクト計画、詳細なWBSを求めてしまう。
しかし、アジャイルは素早くリリースし、そのフィードバックによってこの先につくるものを決めていくため、最初から詳細なタスクを予測することはできない。
進捗状況の報告も同様である。計画からどれだけずれているのか、どのように当初の計画に戻していくのか。既存の組織の人々はそのようなことを求めることが多いだろう。

決してアジャイル開発が計画や報告をしないといっているのではない。大まかな計画から段階的に詳細な計画へと落とし込んでいくのがアジャイルな計画であり、アジャイルチームは自らマネジメントしているのである。
こうした齟齬がカルチャーバブルの内側と外側とで積み重なると、既存の組織との調整でチームが疲弊してしまい、アジャイルを推進する意欲をなくしてしまうことにもなりかねない。

もう一つ例をあげてみる。
テクノロジーやアーキテクチャは日々進化している。使ったことのない技術を採用してリスクを負うよりも、既存の技術を使えといわれることがある。その当時は最新だったかもしれない技術を、新しい機能を追加しながら将来にわたって使いつづけるためには、多大なメンテナンスコストがかかるかもしれない。
また、真にユーザーが求めるサービスを提供するためには、新しい技術を取り入れなければ実現できないことがあるだろう。サービスの価値を高めるには、新しいことに挑戦するための「安全な」実験場や思い切って過去の産物を捨てるという判断も必要だ。
新しいアイデアを頭ごなしに否定されることは、アジャイルを推進する意欲をなくしてしまうことにつながりかねない。

できたカルチャーバブルをバラバラのチームに配置変え

アジャイル開発では、一度リリースをしたら終わりではなく、プロダクトが使われつづける限りチームは存続するだろう。その間、チームにはたくさんの知見がたまり、チームビルディングができた状態になっている。

ところが、せっかく練度の高い状態まで仕上げたチームをバラバラに解体し、部署異動させてしまうケースがあるという。このような人事異動には、決してチームを破壊したいという意図はない。むしろ、各人が別々の組織で同じような活動を広めてほしいという意図で行われるものである。

しかし、カルチャーバブルの内側のチームは、個々人ではなくそのチームに所属する全員で成果を出しているので、バラバラに配置変えをしてしまうと同じパフォーマンスを出すことはむずかしくなってしまう。

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近年、市場の変化スピードやニーズに対応するために高速リリースの重要性が高まり、アジャイル開発を導入する企業が急速に増えています。そこで、SHIFTでは、アジャイル開発を検討中、導入済の企業に対し、課題や成果、プロジェクト体制などについての調査を行い、これから導入される企業様、既に導入されている企業様のプロジェクト成功にお役立ていただけるよう調査資料にまとめました。

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アジャイルに取り組むバブルを守るには

これまで見てきたように、新しいことに取り組む集団と既存の組織との対立はよくあることである。 せっかく生まれたバブルも既存の組織との温度差や誤解によって簡単に割れてしまう。
アジャイルに取り組むバブルを守るには、バブルの内側と外側との温度差をなくし、バブルの外側の人たちにも正しく理解してもらうように働きかけていかなければならない。バブルの内側と外側との橋渡し(翻訳)をする「アダプター」と呼ばれる役割を担う人が必要なのである。

新しい取り組みと既存の組織という異なる文化が共存していくために、バブルの内側の人たちが安心して活動できる環境を整えバブルを守っていくこと、そしてバブルの外側の人たちにも活動を説明し、理解してもらい、共感してもらうように働きかけるのが「アダプター」である。

では、アダプターはどのように行動すればよいのだろうか。その具体的な例をいくつか紹介しよう。

アダプターの役割

バブルの内側のことを外側の人に翻訳する

アダプターはカルチャーバブルの内側にいる場合もあれば、外側にいる場合もある。
既存の組織に対して、カルチャーバブルの内側の状況を適切に説明したり報告したり、ときには調整したりする役割を担うのである。
例えば、アジャイルに取り組むチームのリーダーである。ここでいうリーダーは、バブルの内側にいるチームのリーダーや、チームメンバーが所属する組織のリーダー(おそらくバブルの外側)だったりする。チームが使っているダッシュボードツールを使い、チームが何を目指しているのか、いまどのような状況なのかを説明することで、バブルの外側の人たちもバブルの内側で起きていることがわかってくるだろう。

また、アジャイル開発において作成するドキュメント、コミュニケーションプランや会議体は、アダプターの役割が非常に重要となってくる。チームの進捗状況をバブルの外側にいる上司に報告しなければならないとしたら、何を見せるだろうか。
もしプロダクトバックログを何の説明もなしに提出したとすれば、必ず詳細なWBSはないのか、という指摘がくるだろう。もしかしたら、アジャイルチームはプロジェクトの進捗管理ができていないという評価を下されるかもしれない。

同じプロダクトバックログを見せるのでも、マイルストーンとそのときにリリースできるプロダクトを説明し、プロダクトバックログの読み方を説明したとすればどうだろう。WBSはなくとも別の方法で進捗を管理していることがわかれば、バブルの外側にいる人たちも安心するのではないだろうか。アジャイル開発で用いるドキュメントは、ウォーターフォール開発のドキュメントとは体裁が異なったり簡易だったりするため、読み替える方法を説明することが必要なのである。

同じことが会議体や各種イベントについてもいえる。スプリントレビューなどのイベントにバブルの外側の人を招きたい場合は、そのイベントの意味や意図を説明して協力を仰ぐ必要があるだろう。

このように、バブルの外側の人たちにもバブルの内側の活動がわかるように翻訳して説明したり調整したりするのも、アダプターの役割の一つである。
当然ながら、翻訳にはコストがかかる。このコストは、異なる文化が共存するために支払うべきコストであり、前述のカルチャーバブルの出展元ではそれを「税金」に例えている。以下は、その部分を引用したものである。

We all pay taxes. It’s just part of life. In organizations, we need to pay organizational taxes for the privilege of working in the organization.
私たちは皆、税金を払っています。それは生活の一部です。組織では、組織で働くことに対して『組織税』を支払う必要があります。
引用: https://shift314.com/how-to-be-successful-agile-any-culture-with-bubble/  執筆者訳

既存の組織の人を助ける

また、アダプターは、既存の組織の人が困っていたら進んで手を差し伸べてほしい。それも新しい取り組みの一部を使って。それによって助けられた人は「おや?」と思い、バブルの内側の人たちがどのような活動をしているのか興味をもつようになるかもしれない。それは、バブルが少し大きくなる絶好のチャンスである。 
やがてアダプターが昇進し、組織のリーダーになったらどうなるだろう。組織に対する影響力とともにバブルが大きくなり、やがては組織全体になじんでいくことになるかもしれない。

まとめ

カルチャーバブル

本コラムでは、新しい技術や方法論に取り組む個々人や集団を「カルチャーバブル」としてバブル(泡)に例えてきた。バブルが簡単に割れてしまうのと同じように、新しくできたカルチャーバブルもバブルの内側と外側との温度差や誤解によって簡単に割れてしまう。この温度差や誤解をなくし、少しずつバブルを成長させていくためのプラクティスもいくつか紹介した。

最初は小さかったバブルがだんだんと大きくなり、やがて組織になじんでいく。新しい文化が組織になじんでいくには、相応の時間と労力がかかるものである。大きくなっていくバブルのなかにまた新しいバブルが生まれてくるかもしれない。
新しい文化が生まれ、組織に定着し、また新たな文化が生まれ…それを繰り返すことで、時代の変化に柔軟に対応できる「アジャイルな組織」となっていくのではないだろうか。

新しいバブルが生まれやすく、それを守り育てる環境があるのもまた文化。読者のみなさまもぜひ、新しい取り組みにチャレンジしていってもらいたい。

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