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システム開発における第三者検証は、開発に携わっていない第三者が、客観的な視点で対象物の検証を行うことです。品質向上に繋げるためには欠かせない工程です。そのため第三者検証は、「一部のユーザーにしか受け入れてもらえない」「リリース後に想定外の不具合が発生した」なんてことにならないためにも実施すべきといえます。
本コラムでは、第三者検証の基本的な情報や実施するメリット、第三者検証を行なってくれる外注先選びのコツなどを解説します。開発製品に対する客観的な感想、改善点の特定などを必要としている方はぜひ参考にしてみてください。
第三者検証とは?
第三者検証とは、システム開発において、関係者以外の独立した第三者による審査や評価を行うことです。独立した第三者が客観的に評価することで、開発の当事者では気づかない不具合を検出し、信頼性や正確性を高めることができます。社内の人材で実施することもあれば、外部の専門家を利用して実施することもあります。
第三者検証は信頼性や品質の向上、透明性の確保、リスクの管理などを目的として行われます。
第三者検証を行う重要性
第三者検証は、システムの品質や信頼を担保するために不可欠な業務工程です。もし第三者検証を行わないことで”品質の低さ”に気づかなかった場合、リリース後のクレーム発生の可能性を高めるだけでなく、発生した際の信頼低下の可能性も高めてしまうことに繋がります。
そのため、第三者検証には時間や費用がかかってしまいますが、これらのコストを負担してでも第三者検証は実施する価値があるといえるでしょう。
第三者検証を行うメリット
第三者検証を実施することで得られるメリットは、主に3つあります。
・先入観なしに不具合を発見
・開発へのリソース確保で品質が向上
・利用者視点での改善に繋がる
第三者機関に依頼した場合、その独立性から生じる客観性は信頼性を高めることに繋がります。そして、検証によって得られた結果から課題を特定することに繋がるため、品質の向上に繋がります。また、リスク管理の面においても、第三者の視点から評価を受け、不具合の発見・改善に繋げることで、クレームが発生する可能性を減らすことができるでしょう。
先入観なしに不具合を発見
第三者検証を行うことによって、先入観なしにフラットな視点から不具合を発見できます。開発チーム内でシステムの不具合を発見しようとすると、システムに対する開発者の先入観が働いて発見ができなかったり、遅くなったりする可能性があります。その点、第三者検証なら先入観がないだけでなく、専門家による検証ならば、さまざまなシステムの検証をしてきた実績のもと行なってくれるため、効果的な不具合の発見に繋げてくれるでしょう。
開発へのリソース確保で品質が向上
第三者検証を行うことによって、開発チーム内からシステム検証を実施する人員を割く必要がなくなるため、開発チームのリソースを確保することが可能です。これにより、製品開発の質の維持・向上に繋げることができるため、結果的に品質の向上へと繋がります。
また、第三者検証によって、不具合の検出やユーザーの満足度を高められない要因が発見されるようなことがあれば、それらの改善に対して十分なリソースを割くこともできます。リソースを確保できれば効率よく改善作業が行えるだけでなく、改善に対する開発担当者からのさまざまな意見を抽出することにも繋がるので、よりよい製品をつくることに繋げられるでしょう。
利用者視点での改善に繋がる
開発工程の中に第三者検証を取り入れることができれば、先入観がないために利用者視点での率直な評価を得ることが可能です。結果、製品のユーザービリティの向上に繋がったり、また、ムダな機能を搭載してしまったりといった事態を防ぐことで開発コストの削減にも繋がります。
第三者検証を行うデメリット
一方で、第三者検証にはいくつかのデメリットも存在します。デメリットの内容は以下の通りです。
・費用と時間がかかる
・判断基準や評価基準にズレが生じる場合がある
まず、費用と時間がかかることがあげられます。
また、第三者の判断基準や評価基準との相違についても気をつける必要があるでしょう。
費用と時間がかかる
第三者検証はすぐに実施し、結果が出るわけではありません。調査に要する時間が必要になるだけでなく、それに付随した手数料などのコストもかかってくるでしょう。そのため、導入する際は開発予算のなかに第三者検証費用も組み込むなどして、負担コストを想定しておかなければいけません。
判断基準や評価基準にズレが生じる場合がある
第三者検証を依頼する際は、製品に対する良し悪しの判断基準や評価基準についての共有を正確に行なっておく必要があります。基準がズレていると、客観的かつ正しい評価をすることができなくなる可能性が出てくるでしょう。
第三者検証を行う方法
第三者検証を行う方法としては、社内の第三者に依頼する方法と、外部の機関に依頼、すなわち外注する方法の2種類があります。それぞれのメリット・デメリットについて以下でまとめたので参考にしてみてください。
メリット | デメリット | |
社内で行う方法 |
・検証時のテスト内容に関するノウハウを蓄積できる |
・開発者とは別で人材を確保する必要がある |
外注する方法 |
・専門的なノウハウのもとで検証をしてもらうことができる |
・依頼費用がかかる |
それぞれの内容について次項で解説します。
第三者検証を社内で行う方法
第三者検証を社内で行なう場合、主に以下の手順で行ないます。
1.独立性を確保するためのメンバーを選定
2.検証のための手法や基準を設定
3.検証の実施
4.検証結果の評価・報告書の作成
これらの工程を経て、開発チームは課題を特定のうえ、改善策を検討しましょう。
また、社内での第三者検証は、外注費用を削減できたり、第三者との円滑な連携ができたりといったメリットがあります。ですが、第三者の人材を確保しなければいけない点や、開発側との連携の末、開発側の意見を汲みとりすぎると独立性に欠けてしまう可能性があるといった点には気をつけなければいけません。
第三者検証を外注する際の流れ
続いて第三者検証を外注する手順は以下の通りです。
1.目標の設定
2.第三者機関(外注先)の選定
3.結果の報告
4.対応策の実施
外注の際には検証を実施する目標を明確にしておき、それを第三者機関に共有しなくてはいけません。この部分が正しく行なわれないと、質の高い検証が行われない可能性があります。そして、正式に依頼後は検証の結果報告を待ち、その報告に基づいた対応策を社内で検討しましょう。
外注の場合、専門的な知識や経験をもつ第三者が検証を行うため、客観的な評価が得られるメリットがあります。また、組織内のバイアスや偏りが排除されることも大きな魅力の一つです。
ただ、外注の場合は手数料などの費用がかかるので、ある程度の予算が必要となってきます。
1.目標の設定
まずは、第三者検証を実施する目的と範囲を明確に定義します。なぜ実施するのかを明確にできていないと、第三者機関も検証の方法などを決めることができません。
また、目的が明確になっていなければ、製品におけるどの範囲まで検証を実施すべきなのかも明確にならないでしょう。”質の高い検証”を実現するためには、目的や範囲を明確にした目標設定が欠かせません。
2.第三者機関(外注先)の選定
第三者機関を選定します。第三者機関は、過去の実績や評判、専門知識の有無を参考に選定するようにしましょう。実績がある場合は、どういった製品の検証を行ってきたのかも確認するようにしてみてください。そうすることで、自社が検証依頼する製品と少しでも関連があるかどうかを確認できます。
また、関連のある製品の経験・実績があれば、第三者機関との検証内容の共有も比較的効率よく済ませることができるでしょう。
3.結果の報告
第三者検証が終わると、第三者機関は評価結果や提案をまとめた報告書を提出します。開発側は、その報告書を参考に課題点を特定し、改善作業が必要な場合はその案を検討するようにしましょう。
4.対応策の実施
改善に関する案が確定したら、実際に問題点の改善や改革を実施します。
対応策を実施した後、場合によっては再度検証を行う必要もあるかもしれません。そのため、最初の報告書と改善内容に関する情報はとっておき、再度依頼する際に提示できるようにしておきましょう。
第三者検証を外注する際の企業選びのコツ
第三者検証を依頼する外注先企業は、慎重に選定しないと質の低い検証結果を招くことにもなりかねません。そのため、企業選びをする際は以下のコツを参考に選定してみてください。
・独立性と中立性で選ぶ
・専門知識や類似の検証経験で選ぶ
・過去の実績や顧客の評判で選ぶ
まず、独立性と中立性を確認しましょう。第三者機関は、クライアントとの利害関係や関係性がなく、公平な立場になくてはいけません。
次に、専門知識と経験が重要になってきます。検証対象に適した専門知識をもち、豊富な経験をもつ機関を選びましょう。また、信頼性も重要な要素です。過去の実績や顧客の評判を調査し、信頼できる機関を選定しましょう。
独立性と中立性で選ぶ
独立性と中立性は企業選びをするうえで欠かせないポイントの一つです。第三者検証はその名の通り”第三者”が客観的な視点をもって検証する作業となるため、開発側と過度に意思共有をしすぎてしまっていたり、開発側に肩入れしすぎてしまったりしては、意味のない検証となってしまいます。
社内で独立性と中立性を担保できる部門を配置できるなら問題ありませんが、それが実現しない場合は外部の企業に依頼することで、独立性と中立性を維持することが重要となってくるでしょう。
専門知識や類似の検証経験で選ぶ
外部企業に依頼するのであれば、専門知識や類似の第三者検証の経験有無はとても重要になってきます。第三者検証に対する専門知識や経験があれば、その企業のノウハウに基づいて検証に対する評価を報告してもらうことが可能です。
第三者検証は、ただ製品を利用してもらって感想や評価をもらうだけではありません。その後のリリースに向けて、品質面、信頼性、リスク管理、といったさまざまな側面を考慮したうえでの評価をもらうことが重要になってきます。だからこそ、第三者検証は専門知識や経験を豊富に持っている企業に依頼するのがおすすめです。
過去の実績や顧客の評判で選ぶ
外部企業に依頼をかける際は、どんなケースにおいても当てはまるのですが、過去の実績や顧客の評判は重視しましょう。過去に何度も依頼している企業に発注する場合は別ですが、はじめて依頼する場合には実績と評判は意識した方がよいです。
実績や評判がある企業の場合、さまざまな業界や製品に関する品質管理のノウハウをもっている可能性が高いため、質の高い検証や有意義な報告結果に期待が持てます。また、対象の製品に適したテスト内容の選択にも長けている可能性も高いため、自社が想定する以上の評価報告が上がってくることにも期待できるでしょう。
SHIFTの第三者検証の特徴
ここまでの解説を踏まえて、第三者検証を外注に依頼しようと思った場合には、SHIFTへご相談ください。
SHIFTは、第三者検証を実施するさまざまな企業のなかでも、傑出したテスト・品質保証に関する実績とテストナレッジを保有します。また、独自のメソッドでお客様のニーズを満たしたテスト・品質保証を、テスト計画から実行、品質管理まで一貫して実施できます。
【SHIFTの強み】
・属人性を排除した均質で高品質なテスト
・予算に合わせて最適なテストボリュームとパターンを提案
・インプットに依存しない安定した品質を実現
第三者検証をご検討の際は、上記のような強みをもつSHIFTにご相談ください。合格率6%の超難関適正試験に合格したテストスキルをもつ人材が、豊富な経験・スキル・ナレッジを活かしてテストを実施します。
まとめ
第三者検証は信頼性や品質向上、リスク管理に役立つ重要な手法です。客観的な評価や品質向上、リスク管理がメリットとしてあげられます。
実施の際には、第三者検証の流れや企業選びのコツを把握し、信頼できる第三者機関とのパートナーシップを築くことが重要です。SHIFTは独立性と専門知識を備えた第三者機関として、カスタマイズされたアプローチと分かりやすい結果報告を提供しています。第三者検証をご検討の際は、ぜひご相談ください。
監修
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
担当講座
・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
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