北海道歯科産業株式会社 導入事例
1日300件の電話を集約。
「担当者だからわかる」から
「会社だからわかる」へ。
営業の携帯電話廃止から始まった組織改革

Summary
長年にわたり歯科医院との信頼関係を築いてきた北海道歯科産業株式会社様。しかしその一方で、対応履歴や商談の経緯が個人に蓄積されやすく、情報共有の仕組みづくりが課題となっていました。そこで同社が取り組んだのが、営業社員の携帯電話番号を廃止し、問い合わせ窓口をコンタクトセンターへ集約する改革です。
クラウドPBX「Zoom Phone」の導入を通じて実現したのは、単なる電話環境の刷新ではありません。目指したのは、担当者個人ではなく会社全体で顧客を支える「組織営業」への転換でした。
今回は、構想の背景から導入プロセス、そしてCRM・AI活用を見据えた今後の展望について伺いました。
歯科医院の課題解決を支える「問題解決業」
商品を売るだけではない。歯科医院を支えるパートナーへ
まずは事業概要と、現在力を入れている取り組みについて教えてください。
当社は創業から80年を迎える歯科専門商社です。歯科医療機器や歯科材料の販売だけではなく、機器のメンテナンス・修理、開業や閉院、事業承継のサポート、さらにはセミナーの企画運営や院内ツールの制作に至るまで、ワンストップでサービスを提供しています。
現在は北海道内各地に営業拠点を展開し、8万点を超える歯科関連商品を取り扱っており、医療機関からの急なご要望やトラブルにも迅速に対応できる体制を整えてきました。
商品そのものでの差別化が難しい時代だからこそ、当社は付帯サービスによる付加価値の提供を通じて、顧客の課題解決を支援しています。
我々の仕事は単なる物売りではなく、「問題解決業」だと考えています。
歯科業界に関わる課題を解決し、お客様の事業運営を支える存在でありたい。そのためには、担当者個人ではなく組織全体で知見を共有しながら支える体制が必要だと考えています。
具体的にはどのようなサポートを行っているのでしょうか。
例えば、開業承継支援室の取組として、開業から事業承継、閉院まで複数の異業種と密に連携しトータルサポートをおこなっています。開業される先生に対しては、どのような歯科医療を提供し、どのような経営を行いたいか、どのような条件で事業承継・閉院したいか。こうした本質的なお話を伺った上で、事業計画の作成や、設計・建築業者の選定、告知活動および個別物件資料の作成や各種手続きなど、あらゆる面で支援しており、さらに物件の仲介も自社で行えるよう、宅地建物取引業(不動産業)の免許も取得しております。通常であれば専門業者に依頼するような領域まで、当社が二人三脚でサポートしています。ある動画のなかで、当社を一言で「歯科医療業界の心臓」と表現していただいたことがあります。業界全体に血液を循環させるように、さまざまなサービスを滞りなく回していく役割を担っていると考えています。
「担当者だからわかる」から「会社だからわかる」へ
組織営業への転換を目指した背景には、どのような課題があったのでしょうか。
歯科業界では、長年にわたり営業担当者を中心とした営業スタイルが根付いています。
それぞれが医院ごとに信頼関係を築く一方で、対応履歴や商談の経緯、顧客に関するナレッジが個人に蓄積されやすい構造になっていました。
現在、当社には約25名の営業社員が在籍していますが、それぞれがもつ知見や情報が十分に共有されておらず、業務の個人依存が大きなテーマとなっていました。
営業とお客様との関係性は非常に重要です。一方で、担当変更が発生してもスムーズに対応できる体制が必要でした。現場との信頼関係を大切にしながらも、会社全体でお客様を支える仕組みを目指しています。
長年の商習慣を変えるのは容易ではないと思いますが、具体的にどのタイミングで組織改革へ踏み切られたのでしょうか。
「この業界の商習慣は、創業時からほとんど変わっていない。そろばんがパソコンになり、固定電話が携帯電話に変わっただけで、基本的な仕事の進め方は同じまま」と社長が冗談半分でいうことがありますが、長年業界にいる身としても常にその通りだと感じていました。山田は25年ほど前から「このままでは従来の手法が通用しなくなる。個人から組織へ、コンサルティング型の営業へ転換しなければならない」と警鐘を鳴らし続けていました。大きな転機となったのは約3年前、札幌市が募集した「札幌未来牽引企業創出事業 SAPPORO NEXT LEADING ※将来的に地域経済をリードすることが期待される市内中小企業を札幌市が認定し、集中的に支援する取り組み」に当社が選定されたことです。
これを機にコンサルティング支援を受けることになり、山田の長年の思いを実現するための具体的な施策として、「問い合わせ窓口を営業社員ではなくコンタクトセンターへ集約する」という構想が本格的に動き出しました。
ちょうどプロジェクトを進めていた時期には、北海道で大雪による交通障害も発生しました。社員のなかには出社が困難になるケースもあり、そのとき改めて感じたのが「出社しなければ回らない仕組みのままで良いのか」ということでした。
北海道では、雪かきだけで大きな負担がかかり、翌日にはまた雪が積もることもあります。場所や状況に左右されず、お客様対応を継続できる環境が必要だと実感したことも、改革を後押しするきっかけになりました。
属人化からの脱却は、企業の存続に関わる重要なテーマです。顧客に関する情報を全社で共有・活用できる状態をつくり、お客様を組織全体で支える体制への転換は避けて通れない道でした。
初回のヒアリングでも、この課題は非常に印象に残っていました。単に電話環境を見直したいというご相談ではなく、「各担当者がもつ顧客情報を、いかに組織の資産として活かしていくか」というテーマが中心にありました。そのため私たちも、電話システムの導入だけではなく、将来的なCRM構築やデータ活用まで見据えた変革プロジェクトとして捉えていました。
営業の携帯電話を廃止。
コンタクトセンター構想が生まれた理由
その課題に対して、なぜ電話改革から着手されたのでしょうか。
改革前は、お客様からの問い合わせが各営業所や社員個人の携帯電話に直接入ることが常態化しており、1日の着信件数は全体で約300件にも上っていました。担当者が外出中や商談中、移動中の場合、すぐに応対できないケースも多くありました。
また、お客様とのやり取りが個人の携帯電話のなかで完結してしまうため、情報や対応履歴が組織内で共有されにくく、担当者が変わった際の引き継ぎや対応品質にも課題が生じていました。
私自身、こうした状況に対して強い危機感を抱いていました。長年続いてきたやり方が当たり前になり、「いまのやり方を変えなければならない」という意識が十分に浸透しているとは言えない状況だったと思います。
実態を調査してみると、問い合わせの9割は「これください」「いつ届きますか?」という注文や納期確認でした。
これまでは、担当者がお客様から連絡を受け、一度社内に在庫や納期を確認したうえで、改めて折り返すというやり取りが発生していました。
それならば、最初から窓口で受けた方が、社内ですぐに確認でき、より早く解決できます。
営業担当者には、顧客への提案活動や関係構築といった業務に集中してほしいと考えました。単なる受発注対応ではなく、医院経営や開業支援など、本来提供すべき価値に時間を使って欲しかったのです。また、環境を変えることで、一人ひとりがこれまでのやり方を見直し、新たな価値提供へ挑戦するきっかけにもなると考えていました。
電話を集約するにあたり、システム選定で最も重視されたポイントは何でしたか?
当初から感じていたのは、単なる電話集約ではなく、お客様との関係性を維持しながら情報を蓄積したいという思いでした。
そのため、コンタクトセンターへの集約と、必要な場合には担当者へつなげられる仕組みの両立が重要なテーマになると考えていました。
最も重視したのは、「電話の集約」と「営業直通ルート」の両立です。
これまで顧客と担当者は携帯電話で直接つながっていたため、営業を窓口から外すだけでは、顧客からも現場からも反発が起きると考えていました。
歯科業界では、日頃対応している社員でなければ把握していない細かな商談の経緯や、医院ごとの個別事情が必要になる場面もあります。
そのため、基本はお客様からの電話をコンタクトセンターに集約しつつ、IVR(自動音声応答)を活用し、「営業への直接のお問い合わせ」の窓口から必要に応じて該当メンバーへ転送できる導線を残しました。
個人の携帯番号は廃止する一方で、必要な接点は維持する。この要件を満たすことが重要でした。
要件を満たしたクラウドPBX「Zoom Phone」との出会い
その要件を満たすシステムは、どのようにして見つけ出されたのでしょうか。
さまざまなアナログ・デジタルの電話システムや、他社のクラウドPBXサービスを比較検討しました。しかし、私たちが実現したかった「電話集約」「携帯番号廃止」「社内情報共有」「IVRによる営業直通導線」のすべてを組み合わせられるシステムは、なかなか見つかりませんでした。
そんななか、SHIFTさんからの提案もあり、最終的にたどり着いたのが「Zoom Phone」でした。社員には携帯番号を持たないスマートフォンを貸与し、Zoom Phoneアプリを通じて必要な電話対応のみを行えるという仕組みは、当社が目指すコンタクトセンターと営業体制の両立に適していると判断しました。
長年の習慣を大きく変える改革ですが、導入において現場やお客様からの反応はいかがでしたか?
やはり反発は大きかったです。
現場からは「いままで直接やり取りできていたのに、なぜわざわざコンタクトセンターを挟む必要があるのか」「面倒だ」といった声もありました。
お客様側からも、特にコミュニケーションを重視される歯科医師の先生方からは、ワンクッション置かれることへの戸惑いの声がありました。
また、これまで個々の担当者に分散していた問い合わせが一気にコンタクトセンターに集まるため、受電件数が5倍近くに増加しました。人員の補充や体制の再構築など、全社的に対応が必要な時期でした。
インフラ整備から運用まで、
SHIFTの徹底的な伴走支援
そうした困難な移行期において、SHIFTのメンバーはどのように伴走支援を行ったのでしょうか。
弊社としては、単なるシステム導入ではなく、お客様が目指す組織改革をインフラ面から支えるプロジェクトとして参画しました。
具体的には、旧来のオンプレミス型PBXからクラウドPBXへの移行に伴う製品選定から始まり、Zoom Phoneの初期構築、コンタクトセンターおよび営業担当者が実務で利用できる環境の整備を行いました。
特に対応したのは、通信インフラの刷新です。コンタクトセンターの設立に伴い、営業社員が使っている携帯番号は廃止し、データ通信専用SIMの調達や、iPhoneの全社展開・固定電話機のリプレースなど、業務運用を支える環境を一から整備しました。
初めて対応する要件も多くありましたが、熊谷様をはじめとする社内チームと連携しながら、ひとつずつステップを進めていきました。
プロジェクトのなかで、特に印象に残っている出来事はありましたか。
Zoom Phoneへの切り替え当日です。番号ポータビリティの実施日に、弊社の角岡とともに北海道のお客様オフィスへ直接伺い、現地で移行作業を行いました。
当時はちょうどオフィス改修工事の調整も進んでいる時期で、そのなかでNTTによる番号ポータビリティの切り替えを待つことになりました。
切り替わるタイミングを事前に正確に把握できない状況だったのですが、待機していたZoom Phoneの端末が、切り替わった瞬間に一斉に鳴り始めたときのことは、いまでも鮮明に覚えています。実際の切り替えを現地で見届けることで、長年使われてきた電話環境が新しい仕組みに切り替わった瞬間を、お客様と一緒に迎えることができました。
SHIFTさんの支援には本当に感謝しており、満足度アンケートでも満点をつけさせていただきました。システム構築からインフラの刷新まで、もし私一人で抱え込んでいたら1年以上はかかっていたであろう膨大な作業を、SHIFTさんに支援いただいたことで、わずか2ヶ月で実現することができました。
システム導入後、現場のみなさまの働き方にはどのような変化が見られましたか。
劇的な変化がありました。私が営業をしていた頃は、1日に約30件の電話があり、着信履歴が1日で完全に埋まってしまう状態でした。
しかし導入後、現在の営業社員のスマートフォンを見ると、1日の着信件数は3~7件程度にまで減っています。電話対応に追われる時間が減り、一人ひとりが自らの時間をコントロールし、提案活動に集中しやすい環境になりました。
受電対応中心の働き方から転換したことで、時間が生まれた社員が、その時間をどう使うかが次のテーマです。
本来の役割であるコンサルティングや提案に時間を使うべきですし、余力があればコンタクトセンターの業務に入ってもらうこともできます。
現場のノウハウをもつベテラン社員がコンタクトセンターで対応すれば、お客様に対してより質の高い回答を迅速に提供できます。
人を説得して行動を変えてもらうだけではなく、仕組みを変えることで、行動が変わっていく環境をつくることが重要だと考えています。
電話の集約は入り口。
複数チャネルを横断する「CRM構築」への挑戦
電話の集約は実現されたとのことですが、今後の展望についてお聞かせください。
現在の状況は、私たちが目指す姿を実現するための「手段を得ただけ」のフェーズ1に過ぎません。達成度で言えば、まだ20~30%程度だと考えています。
現在も顧客接点が複数のチャネルに分散しており、横断的な情報共有ができていません。「昨日LINEで連絡した件だけど」と電話がかかってきても、すぐに状況を把握できないのが現状です。
今後はこれらの顧客接点を一元管理し、対応履歴、受注実績、修理履歴などを横断的に把握できるCRM(顧客関係管理)の構築を最優先で進めていきたいと考えています。
お客様に関する情報を組織全体で活かせるようになれば、個人の経験だけでは実現できない提案やサポートが可能になると考えています。
CRMの構築に加え、AIの活用なども視野に入れていると伺いました。最終的にはどのような体制を目指しているのでしょうか。
最終的に目指すのは、顧客から「わざわざ営業に来てもらわなくても、コンタクトセンターに電話するだけで十分安心だ」と言っていただける体制です。
そのためには、コンタクトセンターの対応品質を高めていく必要があります。
将来的には、蓄積されたデータを基にAIを活かし、購買周期の予測や機器の故障予測、予防保全の提案などを行いたいと考えています。
個人の経験や勘だけに頼るのではなく、データと組織全体の知見を掛け合わせた「先回りした提案」ができる体制。これが、当社が目指す姿です。
今回のプロジェクトを通じて印象に残ったことと、今後の展望について教えてください。
今回のプロジェクトでは、当初から熊谷様より「単なる電話のクラウド化ではなく、組織営業への変革プロジェクトである」という明確なロードマップを共有いただいていました。Zoom Phoneの導入自体が目的ではなく、その先にあるCRMによる顧客基盤の構築やAI活用まで見据えた構想をお持ちだったことが印象に残っています。
そのため、我々としても単にコンタクトセンターを構築して終わりではなく、その後のデータ活用や対応品質向上につながる基盤づくりという視点で取り組んでまいりました。
今回の取り組みを通じて印象的だったのは、北海道歯科産業様が組織営業の実現に向けた明確なビジョンをお持ちだったことです。今後もその実現に向けて伴走していきたいと考えています。
歯科業界という歴史ある業界において、御社が進められている取り組みは非常に先進的であり、業界全体の商習慣を変革する可能性を秘めていると感じています。
今回実現したコンタクトセンター化は、組織営業に向けた大きな第一歩です。
今後はCRMによる情報活用やAIを活用した対応品質向上、そして御社で構築したモデルの横展開など、さらなる発展に向けて引き続き伴走させていただきます。
※掲載内容は2026年9月取材時のものです。
北海道歯科産業株式会社









