株式会社NTTデータ 導入事例
縦割り組織を“ワンチーム”へ。
NTTデータとSHIFTが挑んだ
200人規模アジャイルの品質変革

Summary
多様化する決済手段をワンストップで提供するNTTデータ様の決済プラットフォームでは、アジャイル開発への移行に伴い、大規模開発特有の課題が顕在化していました。複数のスクラムチーム(少人数で開発を進めるチーム単位)が並行して開発を進めるなかで、品質管理や開発プロセスのルールがチームごとに異なり、組織横断での統制がむずかしくなっていたためです。
そこでSHIFTは、共通ルールの整備とテストプロセスの標準化を通じて、品質向上と開発体制の強化に取り組みました。さらに要件定義や性能テストへと参画領域を広げ、チーム間の連携を促進する体制づくりにも貢献しています。
アジャイル開発移行に挑戦。
対面と非対面をシームレスにつなぐ
決済プラットフォームの強み
まず、本プラットフォームが担う役割や特徴についてお聞かせください。
多様な決済手段を一括導入できる点が、我々のプラットフォームの最大の強みです。加えて、ECサイトなどの非対面決済と店舗での対面決済をシームレスにつなげられることも特徴です。対面決済においても、従来のレジカウンターだけでなく、セルフレジやテーブル決済、催事などの屋外販売など、購買シーンに応じた端末ラインアップを取り揃えています。
近年はECで注文し店舗で受け取るサービスや、モバイルオーダーのように事前決済と実店舗での体験が連動するケースも増えています。お客様にとっては対面か非対面かを意識する機会は少なくなっており、どのチャネルでも違和感のない決済体験を提供することが求められています。
コロナ禍を経て、購買体験における対面と非対面の境目はさらに曖昧になりました。だからこそ、プラットフォーム全体として安定した統合的な決済体験を提供できるかが重要になっています。
そのような画期的なプラットフォーム開発において、
SHIFTが参画する以前はどのような課題を抱えていらっしゃったのでしょうか。
本プラットフォームの開発がスタートしたのは2020年頃でした。当時の弊社にとって、これは非常に新しい挑戦でした。それまで主流だったウォーターフォール型(工程を順番に進める開発)ではなく、最新のデジタル技術を活用した短いサイクルで改善を重ねるアジャイル開発を採用したのです。しかし、当時は社内にその領域に関する知見が十分に蓄積されていませんでした。
開発手法を大きく転換されたのですね。具体的にはどのような問題が生じていたのでしょうか。
結論から申し上げますと、進捗と品質に関する課題が顕在化していました。目標としていたリリース時期を過ぎても開発が完了しなかったり、サービスローンチ後に予期しないトラブルが発生したりする状況がつづいていました。
弊社としても根本的な改善が必要だと判断し、2022年春頃に品質強化を目的とした新たなチームを立ち上げました。私が本プロジェクトに参画したのも、ちょうどそのタイミングです。
河辺様が着任された当時の体制をご覧になって、率直にどのような印象を抱かれましたか。
私がまず感じたのは、「全体の一体感が欠如している」という危機感でした。複数のスクラムチームに分かれて自律的に開発する体制の一方で、品質管理や情報共有の連携が十分に機能していませんでした。
結果として、それぞれのチームの視点が内向きになりがちで、サービス全体を俯瞰した統制がむずかしい状況でした。共通ルールの整備も発展途上で、品質を支える運用基盤については、さらなる強化の余地がありました。
「横串での品質管理」を期待されたSHIFTの参画と初期の取り組み
SHIFTへ依頼された背景を教えてください。
直接検討を進めたのは当時の上司だったのですが、決め手となったのは「他プロジェクトにおける確かな実績」でした。プロジェクト横断で品質基準やテスト方針を統一し、各チームの品質活動を推進する役割は既存の委託先だけでは担いきれなかったため、品質保証の専門性をもつSHIFTさんに支援を依頼しました。
現場で初期の改善を牽引された加藤さんは、参画当初の状況をどのように分析されていましたか。
プロジェクトへ参画した当初は、河辺様がおっしゃっていた通り、スクラムチームごとに品質管理や検証プロセスの進め方にばらつきがありました。
総勢200名規模のプロジェクトでは、各チームがそれぞれのやり方で開発を進めていたため、まずは現状を把握し、どのような取り組みから進めるべきかを整理する必要があると考えました。
代表的なチームへのヒアリングを実施し、各チームの取り組み状況や課題を整理しました。
具体的にどのようなアプローチをとられたのでしょうか。
ヒアリングで明らかになった課題に対して、主にテスト工程における役割や確認観点、試験計画のプロセスなどの整備を進めました。
当時は、機能テストや結合テスト(IT)、総合テスト(ST)において、誰が何をどこまで担保するのかという役割分担が不明確な部分がありました。そこで、テスト対象の選定基準と各フェーズの確認観点を整理し、試験計画の策定手順も標準化していきました。
また、ヒアリングを通じて各チームで培われていた優れた実践事例やナレッジ(集合知)も収集しました。そうした良い取り組みをプロジェクト全体へ横展開することで、各チームの強みを生かしながら、全体として品質を高めていきました。
当時の状況を補足しますと、品質への取り組み状況には凸凹がありました。不具合対応に多くの工数を割いているケースもあれば、安定した運用ができているケースもありました。
また、リグレッションテスト(回帰テスト)の自動化をはじめ、品質向上に向けた取り組みの成熟度にも差がありました。SHIFTさんは、そうした状況を正確に把握しながら、プロジェクト全体を見据えた観点で足並みを揃えてくれました。
ルールや基準の統一化を推進する上で、特に苦労したエピソードはありますか。
参画直後は特に苦労しました。最大の壁は「決済業界特有のドメイン知識」と「複雑なシステム環境」の理解でした。専門用語が飛び交うなかで、我々自身がそれを咀嚼しきれないままプロジェクトを牽引しなければならず、立ち上げの時期はかなりバタバタしてしまいました。
我々から見ても、決済特有の専門用語の壁は高かったと思います。アルファベットの略語が非常に多く、しかも人によって呼び方が違うんです。同じシステム機能の話をしているのに、「〇〇」と呼ぶ人もいれば、英文字で略す人もいる。ずっと現場にいる人間は感覚が麻痺しているので当たり前に使いますが、新しく入ってきた方は何のことか全く分からなかったはずです。
おっしゃる通りです。現場のエンジニアの方々に都度質問していては開発の妨げになってしまいます。そこで、我々のチーム内で独自に情報を集め、「自作の用語集」を作成しました。「この言葉とこの略語は同じ意味だ」といったナレッジを蓄積し、新しく参画するメンバーが即座に立ち上がれるような仕組みを泥臭くつくっていきました。
テストから要件定義へ。
V字モデルの連携で仕様バグを未然に防ぐ
SHIFTの支援範囲が拡大した背景について教えてください。
最初は、機能テストや総合テストなどの下流工程からお願いしていました。我々はV字モデルの枠組みも取り入れながら開発を進めており、システム全体の品質を上げるためには、テスト工程で得られたナレッジを上流工程へうまく還元する必要がありました。
当初、機能テストは弊社内の別部隊が担当していましたが、常駐体制ではありませんでした。そのため、結合テストを含むテスト全般をSHIFTさんに一任しました。テスト工程をスムーズに回していただける信頼関係が構築できたことで、「上流工程から参画いただいた方がより効果的だ」と判断し、支援範囲が拡大していきました。
要件定義への参画によって、どのような効果が生まれていますか。
最大のシナジーは、「仕様バグを未然に防ぐ仕組み」が構築できたことです。中村様がおっしゃる通り、V字モデルにおいて要件定義と総合テストは対になる関係です。テストを進めるなかで、「ここは仕様の考慮漏れが発生しやすい」という傾向が見えてきます。そこで培った知見を上流工程にも活かすことで、後続テストで発生しうる不具合を事前に検知し、早い段階で仕様を見直せるようになりました。
また、要件定義からテストまで一気通貫で関与させていただくことで、NTTデータ様と真の意味で「ワンチーム」となってシステムを作り上げている実感があります。これは大きな強みだと考えています。
上流工程への参画もスムーズだったのでしょうか。
先ほど加藤から「自作の用語集」などの泥臭い立ち上げの話がありましたが、その甲斐もあり、要件定義チームを発足させる際には非常にスムーズでした。すでに総合テストの現場で決済のドメイン知識やシステムの複雑な仕様を熟知したメンバーを、その役割へスライドさせることができたためです。業界知識や環境への理解が十分にある状態からスタートできたことが、早期に価値を提供できた理由でした。
また、新たに加わるメンバーについても、必ず決済業界(PSP:決済代行事業者など)の経験者をアサインするよう徹底しています。
メンバーの質の高さも素晴らしいですが、私が強調したいのは「現場との強固なコネクション」です。こうした大人数の開発体制では、「どこに相談すればよいのか分からない」という状態では仕事が進みません。しかし、みなさんはテストを通じてすでに現場との連携基盤ができていました。「この機能の要件なら、〇〇さんに相談すれば早い」という相談先が明確だったため、我々としても安心して上流工程をお任せできました。
個の力から組織の力へ。
大規模アジャイルの次なる挑戦
今後、SHIFTに期待することを教えてください。
システムの大規模化と処理能力の高度化に伴い、スクラムチームの数も増えています。
現在重視しているのは、個々のエンジニアのスキルアップに加え、200人規模の開発体制を支える「チーム力の向上」です。今後は、チーム横断での連携強化や開発プロセスの最適化など、生産性・品質向上につながる提案をさらに増やしていただきたいと考えています。個々のメンバーの高いスキルと日々の研鑽があるからこそ、次は「チーム力」を引き上げる支援に期待しています。
また、要件定義は当社社員が多く担う重要領域ですが、より深い関与にも期待しています。 さらに、当社ではAI活用を重要テーマとして掲げています。要件定義の効率化、コーディング、ナレッジ共有などで、品質管理の強みを活かしたAI活用の知見や提案を期待しています。
確かにお客様からは「SHIFT=テスト屋」というイメージをもたれることが多いです。しかし、我々の根底にある理念は「社会課題を解決する会社」であるということです。
単なるテスト実行にとどまらず、お客様が抱える本質的な課題に対して、領域を問わず切り込んでいきたいと考えています。お客様から「もっとこういう領域を支援してほしい」というご要望をいただけることは、我々にとって大きなモチベーションになります。
我々としてもチャレンジできる領域はまだまだ多くあると認識しています。これまでの取り組みを通じてお客様からの期待値が高まっていることを肌で感じておりますので、そのご期待に応えられるよう、さらなる対応力とカバー範囲の拡大に努めてまいります。
テストという我々の得意領域から参画し、要件定義や性能テストへと支援範囲を広げながら信頼関係を築いてこられたことは、弊社としても理想的な形だと感じています。今回、「AI活用」という新たなキーワードをいただきました。社内でも生成AIを活用したテスト手法や開発プロセスの研究を進めています。社会課題を共に解決していくパートナーとして、NTTデータ様とともに決済サービスのさらなる進化に貢献してまいります。
※掲載内容は2026年8月取材時のものです。
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