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DX時代のUI/UXの必要性
みなさまご存知のとおり、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波は衰えを知らずの状況です。
2020年10月の株式会社富士キメラ総研の日本国内の市場調査「DXの国内市場(投資金額)」によると、2019年度のDXの市場規模は7,912億円となっており、2030年度予測では2019年度比で3.8倍の、3兆425億円になるとしています。
このような市場拡大のなかで、DXにおけるUX(ユーザーエクスペリエンス)の必要性は経済産業省のDXレポートでも述べられており、あらゆるメディアでもよく語られています。SHIFTのコラム「【DXとUX 第1回】 DX推進に効果的なUX」でも「顧客起点での取り組みが、DXの価値を高めていく重要な役割をしていることを示しています」と語らせていただいており、実際にDX文脈で数多くのUXの支援を行っています。
一方で、欧米の企業はUXを競争優位の源泉であるといち早く理解しており、すでにUXをサービスの「品質」として取り組んでいます。事実、システムやソフトウェア品質の国際規格である SQuaRE(ISO/IEC 25000 シリーズ)は、信頼性などの「製品品質」に加え、実際にユーザーが利用する際の「利用時の品質」を規定しています。
※「利用時の品質」はUXに含まれるものと解釈できます。
※SQuaRE : System and software product Quality Requirements and Evaluation (SQuaRE)
そもそもシステムやソフトウェアはその機能がどれだけ優れたものを有していようと、どのような最先端のテクノロジーを活用していようと、それ単独では何一つサービスとして提供することができません。
なぜなら、システムはその利用者との対話の起点としてあるべきUI(ユーザーインターフェース)を通して利用されることで価値提案ができるからです。つまり、UIはサービス提供の起点であり、UIを通して利用者は体験をして、そのサービスの価値提案を受け取り、実際に価値を感じることができるからです。
このようにサービスにとってもっとも重視すべきUIを通した利用者の体験であるUXは、デジタルでの顧客との接点がますます求められているDX時代に必要不可欠なものとなっているのです。
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しかし、UI/UXデザイナーがいない
先に述べた通り、現在SHIFTではさまざまな業種・業態のUXの必要性を認識している企業のUX品質の支援を行っています。支援させていただいている企業数は前年比でもかなり伸長している状況です。
しかし、そこから見えてくることは「企業にUXの人材が少ない」ということです。我々の所感ではありますが、どの企業においても競争優位性の観点からUX品質を向上させたいと考えてはいるものの、UX人材が一人もいない企業や、UX人材がいるとは言ってはいるものの、実態はクリエイティブデザイナーであり、UXを体系的に理解していないなどのケースが多くあります。
そのため、「UXの取り組み方がわからない」や「局所的な展開しかできていない」、「開発者自らが苦慮しながら対応している」など、しっかりとUXに取り組めていないということに至っているのです。
実際、IPA(情報処理推進機構)の「IT人材白書2020」にもそのような実情を裏付けているデータがあります。「IT人材白書2020」によると、「DXに対応する人材」の定義にUI/UXデザイナーが入っており、「DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材」とされています。
Source:IPA(情報処理推進機構)の「IT人材白書2020」
そのうえで、以下の図表「IT企業でDXに対応する人材の重要度」をみると、UI/UXデザイナーは6割以上が社内に在籍しておらず、そのうちの半数程度が「いないが非常に重要」だとしているのです。
Source:IPA(情報処理推進機構)の「IT人材白書2020」
つまり、UX人材が「非常に重要」なのはわかっているが、「UX人材がいない」という問題に直面しているのです。そのため、転職市場では大手企業や大手コンサルティング会社などによるUX人材の争奪戦が繰り広げられ、人材が枯渇しUX人材の年収も高騰しているのです。
SHIFTのUI/UXデザイナー育成
それでは、我々SHIFTではどのようにUX人材を確保しているのかをお話しします。まずは経験豊富で即戦力の方に外部から入社していただくケースです。このようなケースもありますが、実はここが主軸ではありません。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、SHIFTの組織能力の核として「形式知化・標準化」があります。作業と判断の分解を行い、暗黙知であったものを形式知化して、さらに標準化をしていくことです。
SHIFTではこの組織能力を用いて、ソフトウェアテストの標準化、さらに最適な人材を育成するために素養や実力の可視化を行い、検定やスキルテストなどを開発・運用しています。つまり、標準化して判断基準を構築することで、無駄がなく担当者によるバラつきのない品質保証ができるとともに、最適な素養をもつ人材にたいして適切な育成を行っているのです。
これはUXにおいても同様であり、先ずはUX品質の判断基準である「UX品質ガイドライン」を開発・運用しており、蓄積されたデータ、新しい論文や基準、社会環境の変化などを鑑みながら日々アップデートしています。このガイドラインがあることで、UXにおける明確な判断基準をもちながらUX支援を行っているのです。
一方で、ガイドラインだけではやはり充足はしません。なぜならガイドラインは誰もが使いこなせるものではなく、UXの体系的な学術的な知識(人間工学や認知心理学、アクセシビリティなど)が必要とされるからです。
そのためSHIFTではUX検定を開発して運用しています。これは、UXの考え方や実行の素養があるかを測る検定です。UXは利用者視点が重要です。事業を行っているとサービス提供者の視点で物事を判断しがちになります。そのような利用者視点の素養を検定で確認していきます。そして、決して合格率が高くない検定を突破した者にたいして育成プログラムとして用意しているUX講座を受講してもらいUXの知識と実践的なスキルを身につけていきます。
このようにSHIFTではUX品質の標準化、UX検定、UX講座を通してUX人材の育成を長期にわたって行っているのです。我々が伸長している需要に対して安定的に供給できているのはこのような理由があるのです。
UX人材はDX時代において必須の人材です。みなさまもさまざまな人材育成を行っていると思いますが、長期的なUX人材の育成を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、SHIFTでは「エンジニア向けのUX講座」と題して、開発者向けのUX講座を実施しています。我々の知見が少しでもみなさまに移転できればうれしい限りです。ご興味がございましたら、ぜひご連絡ください。
関連サービスについて
UX開発の実態調査 2023
本調査は、ソフトウェア開発におけるUXへの取り組みについて調査したものです。UXがどの程度取り入れられているか、またその成果や課題を明らかにしたものです。 UXの取り組みにおいて有用なデータとして活用いただけることを目指し調査を実施いたしました。
本調査は、ソフトウェア開発におけるUXへの取り組みについて調査したものです。UXがどの程度取り入れられているか、またその成果や課題を明らかにしたものです。 UXの取り組みにおいて有用なデータとして活用いただけることを目指し調査を実施いたしました。