PoCとは?意味や検証内容、実施するメリット・デメリットを解説

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PoCとは?意味や検証内容、実施するメリット・デメリットを解説

株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

お役立ち資料

Introduction

新しいアイデアや技術を活用した開発を行うのは、至難の業です。アイデアや技術が実現可能であることが検証できていれば、開発難易度は大幅に下がりますが、そうとは限りません。

そこで有効なのが、新しいアイデアや技術などの実現可能性を検証する、PoCと呼ばれる手法です。

この記事では、PoCの定義、どのようなメリットを得られるのか、逆にデメリットは何か、PoCを実施する流れや成功させるポイントについて解説します。

目次

PoCとは?

PoCとは

PoC(Proof of Concept)とは、概念実証のことを指します。新しいアイデアや技術などの実現可能性を検証することです。

ここでは、PoCの定義、検証内容、ほかのよく似た単語との違いについて解説します。

新しい技術やアイデアが実現可能かを検証する工程のこと

PoCとは、新しいアイデアや技術が実現可能かを検証する工程のことを指します。技術開発などに着手する前にPoCを行うことで、プロジェクト失敗のリスクを低減することが可能です。

内閣府の『スマートシティガイドブック 別冊3』によると、以下のように定義されています。

PoC

PoCとは、新しい技術や理論、原理、手法、アイディアなどに対し、実現可能か、目的の効果や効能が得られるかなどを確認するために実験的に行う検証工程のこと

サービスや製品を開発する際に新しいアイデアや技術を用いる場合、それらのアイデアや技術が実現不可能だと、プロジェクトの失敗を招いてしまいます。

たとえば、生成AIテスト設計に活用して工数を削減しようというチャレンジを行う場合、生成AIが提示するテスト設計の精度がどうなのか、生成AIを活用することによって本当に工数が削減できるのか、など、わからないことばかりです。そこでPoCを実施してテスト設計の精度を確認したり、工数がどのくらい削減できるのかを評価したりします。より精度を高め、工数を削減するために、どのようなプロンプトやデータを生成AIに与えるとよいか、比較確認し、実際の導入に向けた足固めを行います。

このように、新しいアイデアや技術が実現可能であることを、あらかじめPoCを行うことで実証できれば、無駄なコストを費やすことを防げます。本格開発や導入の前に行うことで、ビジネスリスクを回避できるでしょう。

PoCは、新しい技術が導入されることが多いIT業界で主に使われる言葉ですが、ほかの業界でも行われています。具体的には、医薬品の研究開発、航空機の開発、また映画製作などの新しいアイデアや技術が必要とされる分野です。研究開発に多額の資金を費やす前に、必要なアイデアや技術を実現することが可能かを検証することで、出資を集めやすくなるというメリットもあります。

PoCでの検証内容

PoCで検証する具体的な内容は、費用対効果、技術的な実現性、具体性などです。

新たな技術を導入する際にはコストがかかるため、そのコストに見あう効果がなければ、開発するメリットがありません。また、その技術を現実的に実現できるかを判断することも重要で、具体的に何が必要かの情報も集める必要があります。

このような内容を本格的な開発や導入の前に検証しておくことで、プロジェクトを成功させやすくなります。

PoCと似た単語との意味の違い

PoCとよく似た言葉との意味の違いについて、ご説明します。

PoB、PoVとの違い

PoC(Proof of Concept)とよく似た言葉に、PoV、PoBがあります。いずれも「Proof」という言葉を用いていますが、何が違うのでしょうか?

PoVとPoBの意味は、それぞれ以下のとおりです。

PoV(Proof of Value):価値実証
事業などに価値があるか、ニーズがあるかを検証すること。

PoB(Proof of Business)
ビジネスの収益性やコスト構造を検証し、ビジネスとして成立するかを検証すること。

PoCはアイデアや技術が実現可能かを検証することなので、それぞれ意味あいが大きく異なることがわかります。

実証実験との違い

実証実験とは、実際の環境で製品やサービスを運用してみて、実用化に向けた問題がないかを検証することを指しています。

たとえば、自動運転技術の開発が進み、テスト環境で十分な検証が行われたとしても、実際に公道に出てみないと実用化できるかわかりません。自動運転機能を搭載した車両を公道で走らせてみることでしか、わからないこともあります。

プロトタイプとの違い

プロトタイプとは、試作品のことです。いくつもの試作品をつくることで改善を繰り返し、完成に近づけていきます。PoCの後にプロトタイプを製作することもあれば、PoCを行うためにプロトタイプの製作が必要なケースもあります。

MVPとの違い

MVP(Minimum Viable Product)とは、実用最小限の製品と訳されます。MVP開発とは、顧客に提供できる必要最小限の機能を搭載した製品やサービスをつくり、市場からの反応を見ながら改善していく手法です。

PoCとは目的が異なりますが、PoCのためにMVP開発を行うこともあります。

PoCを行うメリット

PoCを行うメリット

PoCを行うことで得られるメリットは多いです。ここでは、PoCによるメリットについて解説します。

開発リスクを抑制できる

もっとも大きなメリットは、開発リスクを抑制できることです。

本格的に開発をはじめる際に活用するアイデアや技術が、実現不可能なものなのに進めてしまうと、開発を成功させられません。技術的な問題にぶち当たり、そこから開発を進められなくなってしまうでしょう。そうなると、それまでに費やした人員やコスト、開発費用はすべて無駄になってしまいます。

しかし、まずはPoCにより実現できることの確証があれば、開発の成功率がぐんと高まります。

コストを削減できる

開発コストの削減にも役立ちます。

実現可能かわからないまま開発を進めると、実現できないことがわかった時点で、大きな軌道修正を迫られます。その際には、開発内容の変更、顧客への説明、取引先との交渉など、多くの負担がかかるでしょう。軌道修正を行う場合、そのまま当初の予定どおり開発を進めるのと比べると、多くのコストがかかってしまいます。

しかし、技術的な問題がないことがわかっていれば実現性が高く、軌道修正のための無駄なコストをかけるリスクを回避できます。

意思決定を円滑化できる

新たな開発分野で必要な技術が実現可能なことがわかっていれば、経営層も含めた社内の意思決定を円滑化できます。

社内で開発を進めるための予算を確保する際には、経営層からの理解が必要です。そこで、PoCを実施済みで実現可能なことがある程度わかっていれば、理解を得やすいでしょう。経営層側としても、PoCを実施済みで開発にリスクが少ないことがわかれば、意思決定を行いやすくなります。

外部からの注目を集められる

PoCによりメリットを得られるのは、開発を行う企業だけではありません。投資家、取引先によい材料を与えられるようになるなど、外部からの注目を集められます。

新しい技術により、品質の高い商品やサービスを開発できるなどの情報を外部に伝えられるため、外部からよい評判を得やすくなるでしょう。

PoCのデメリット・注意点

PoCを行うと、実現可能なことをわかったうえで開発に着手でき、開発の成功率を向上させることが可能です。これにより多くのメリットを得られる一方で、デメリットや注意点もあります。

ここでは、PoCのデメリット、注意すべき点について解説します。

かえってコストが増大する場合がある

PoCによりスムーズに実現可否を確認できればよいですが、必ずしもPoCが成功するとは限りません。何度検証しても、実現可否がわからない場合もあります。その場合、PoCの作業にコストや時間をかけすぎることになり、かえってコストを増大させてしまうでしょう。

そのため、PoCを行えば、必ずコスト削減につながるとは限りません。PoCの進み具合によっては、検証をやめるかどうかを検討する必要があります。

情報漏洩のリスクがある

自社内でのみPoCを行う場合はリスクが低いですが、PoCを外部委託する場合などには、情報漏洩のリスクがあります。専門の技術をもつ外部企業や、業務提携先と協業してPoCを行う場合、そのアイデアや技術を流用されてしまう可能性も十分にあるでしょう。

自社のアイデアや技術を守るためには、必ず秘密保持契約(NDA)などの適切な契約を結ぶ必要があります。また、PoCを行う業務提携先や、専門業者などのパートナー企業を選ぶ際は、慎重に検討しましょう。

検証を繰り返すうちに、本来の目的を見失う可能性がある

PoCにより検証を繰り返している間に、本来の目的を見失う可能性があります。

たとえば、開発のために必要な新たな技術を検証し、必要な機能を実現できるかを調べる必要があったとします。しかし、検証を重ねていくなかで、ほかにも新たな技術を見つけてしまい、その技術の実現可能性の検証をはじめてしまうなどです。また、より具体的に細かい検証をしはじめてしまう、より高い性能を追い求めすぎてしまうなどのケースもあります。

本来の目的を見失ってPoCに時間をかけすぎると、かえってコストがかさんでしまうでしょう。このようなケースは、PoCをはじめる際に、明確なゴールを定めていないと起こりがちです。最初の計画段階でここまでが明確になったら、目標達成というラインを決めておく必要があります。

PoCを実施する流れ

PoCを実施する際の具体的な流れについてご説明します。

①目的を明確化する

PoCをはじめる前にまずは目的を明確化し、何を検証するのか、どこまで検証するのかをはっきりさせる必要があります。明確な目的を定めないと、どこまで実現できれば検証終了なのかがはっきりしません。

たとえば、ある技術の実現性を検証する場合、どのレベルまでできれば「実現できた」といえるのかを定める必要があります。「○○時間で実現できた」「○○%の時間短縮ができた」など、数値目標が必要な場合もあるでしょう。実現できるといっても、100時間かけないと実現できない場合、それは実現できたとはいえないかもしれません。逆に、1分で実現できることを目標にすると、オーバースペックになってしまいます。

このように、目的を適切な数値目標も含めて、明確に定めることが大事です。

②目標を決めて計画を立てる

目的と数値目標などが決まったら、詳細な目標設定、タスクの洗い出し、マイルストーン決めなどを行って計画を立てていきます。

計画に沿って人員を割り当て、体制や役割分担を明確にします。

③実験・検証を実施する

計画に沿って、実験・検証を実施していきます。

できるだけ実際の環境に近い状態で、検証を行うのが望ましいでしょう。実際に利用するユーザーを集めた検証が必要な場合もあります。

環境やユーザー、実施条件などをできるだけ幅広く用意することで、精度の高い検証結果を得られる可能性が高まります。

④評価を行う

検証結果を評価します。設定した目標に達しているか、実現可能性はどれくらいかなどを評価していきます。

結果を検証してよい結果が出れば、PoCは成功です。結果をレポートにまとめて、開発プロジェクトに使えるような状態にしておきます。

よい結果が出なければ課題を明確にし、検証をつづけるかを検討します。検証をつづけても結果が出ない可能性があるため、ここの判断はとても重要です。プロジェクト全体の利益を考えて、検証をつづけるべきかを判断しなければなりません。

PoCを成功させるためのポイント

PoCを成功させるのはむずかしいですが、成功させるための重要なポイントについてご説明します。

小規模な検証からスタートする

検証をはじめる際に、いきなり大きな目標を立ててしまうと、検証が困難になります。そのため、条件を限定する、範囲を狭めるなど、小規模な検証からスタートするのが有効です。少しずつ検証を成功させていくことで、大きな目標に到達しやすいでしょう。

PDCAのサイクルを回す

一度の検証で成功することはむずかしく、PDCAを回すことで少しずつ成功に近づきます。失敗したら原因を把握して対策を立て、次のサイクルに活かします。これを繰り返すことで、次第に検証の精度が高まっていくでしょう。

目的に近づかない場合には打ち切る判断を行う

どれだけ検証を行っても目的を達成できる見込みが立たない場合には、PoCをやめる判断をどこかで行うことも重要です。PDCAを回して改善を重ねても目的を達成できる見込みが立たなければ、打ち切る判断を下します。

しかし、ただ打ち切るのではなく、それまでの状況や検討内容、打ち切った際の判断材料などを残し、次につなげる必要があります。

まとめ

この記事では、PoCの定義、どのようなメリットを得られるのか、逆にデメリットは何か、PoCを実施する流れや成功させるポイントについて解説しました。

PoCを正しく行えれば、開発の成功率を大幅に向上でき、コスト削減につながります。しかし、新しいアイデアや技術の検証はむずかしく、十分な対策を行う必要があるでしょう。

また、PoCの手法は、アジャイル開発と親和性が高いともいわれています。

SHIFTでは、アジャイル開発支援(SHIFT 1LINE)を提供しており、アジャイル開発チームの提供やアジャイル開発の内製化、定着支援なども行っています。アジャイル開発をスムーズに導入したい場合は、お気軽にご相談ください。

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永井 敏隆

 

監修

株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト 永井 敏隆

大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。

担当講座

・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
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など多数

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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
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この記事を書いた人

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著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

SHIFTは「売れるサービスづくり」を得意とし、お客様の事業成長を全力で支援します。無駄のないスマートな社会の実現に向けて、ITの総合ソリューションを提供する会社です。

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