ニューラルネットワークとは
ニューラルネットワークとは、人間の脳の働きを模した仕組みをもつAIの一種です。ここでは、ニューラルネットワークの概要について解説します。
人間の脳神経回路をモデルとした、階層性の機械学習モデル
ニューラルネットワークとは、人間の脳にある「ニューロン」と呼ばれる神経回路をモデルとした機械学習モデルのことです。人間の脳に似た階層状の構造になっており、より高度な情報を処理することが可能です。
ニューラルネットワークは、入力層・中間層(隠れ層)・出力層の3つの層から構成されています。複数の中間層でデータ処理が行われることで複雑な問題を解決でき、機械翻訳や画像認識などの精度やスピードが向上しました。
機械学習についてはこちらもご覧ください。
>>機械学習とは?AIやディープラーニングとの違い、活用事例などを解説のページへ
機械学習や深層学習(ディープラーニング)との関係性
ニューラルネットワークは機械学習の一種です。ニューラルネットワークは、入力層・中間層・出力層の3層で構成されていて、中間層が複数あることでより複雑な問題を解決できるようになったものが、ディープラーニングです。
ディープラーニングが登場する前の学習方法である「パーセプトロン」は、中間層がないものか、または少ないものでした。そのため、単純な処理しか行えませんでしたが、ニューラルネットワークを用いて中間層が複数あるディープラーニングの技術が確立されると、よりむずかしい処理を行えるようになりました。
ディープラーニングについてはこちらもご覧ください。
>>ディープラーニングとは?機械学習との違いやできること、活用事例を解説のページへ
ニューラルネットワークが重要とされる理由
従来の機械学習モデルでは困難だった複雑な処理が、ニューラルネットワークの登場により、効率よく高い精度で行えるようになりました。
具体的には、言語の翻訳、株価や気象状況の予測、物体の認識など、幅広い分野でニューラルネットワークの技術が導入されることで、予測や認識の精度が向上し処理スピードもあがっています。
このように、ニューラルネットワークの登場によって実現できることが増えたため、重視されているのです。
ニューラルネットワークの仕組み
ニューラルネットワークの仕組みについて、わかりやすく説明します。
ニューラルネットワークの構成
ニューラルネットワークは以下の3つの層から構成されています。
・入力層:情報やデータの入力を行う
・中間層(隠れ層):データの処理や分析などを行う
・出力層:分析した結果の抽出や判断などを行う
データを入力層で受けとり、次の中間層でデータを処理し、最後に出力層で予測や分析の結果を出力します。それぞれの層にはいくつものニューロン(ノード)があり、ニューロン同士が脳のシナプスのように機能する重みつき接続がされ、ネットワークをつくりあげています。
入力されたデータを中間層で分析・計算することで、複雑な問題を解決することが可能です。
なお、中間層を複数もつものはディープラーニングと呼ばれ、より複雑な問題を解決できるようになっています。
重みづけとは
各層のニューロン(ノード)はシナプスで接続されていて、シナプスには前の層から次の層へデータを受け渡す際に、そのデータがどれくらい重要かを表す「重み」が設定されます。データを学習する過程で重みが徐々に調整されていき、最終的に最適化されてより正解に近い結果を出力できるようになっています。
ニューラルネットワークの学習方法
ニューラルネットワークにはいくつかの学習方法が存在します。
・確率的勾配降下法
シナプスの重みを更新するための方法です。ランダムに選ばれた一部のデータで更新を行うため計算効率がよく、大規模なデータに対して効果を発揮します。
・誤差逆伝播法
出力層で生じた誤差を、逆方向に伝播させて重みを更新する方法です。実際に出力した結果と正解の間に生じた誤差を使用して学習を行い、モデルの精度を向上させます。
ニューラルネットワークの種類
ニューラルネットワークにはいくつかの種類がありますので、それぞれの特徴について解説します。
ディープニューラルネットワーク(DNN)
ディープニューラルネットワーク(DNN)とは、中間層が2層以上で成り立っているニューラルネットワークです。複数の層でデータを処理するため、より複雑な処理を行えます。
ただし、中間層が増えることで誤って不要な特徴を学習してしまい、精度の低下を招くこともあるため、適切なモデル設計を行う必要があります。
畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
畳み込み層やプーリング層などの特殊な層をもつニューラルネットワークで、画像認識に特化しているモデルです。画像の空間的な特徴量を自動的に抽出することで、学習を効率よく進められます。
再帰型ニューラルネットワーク(RNN)
時系列データの処理が得意なニューラルネットワークです。文脈を把握できることから、音声認識や機械翻訳に活用されています。
自己符号化器(オートエンコーダ)
入力データをエンコードし、出力時にデコードして元の形に戻して出力するモデルです。わざわざエンコードしてからデコードして元の形に戻すのは無駄に思えますが、ニューロンネットワークで何層も重ねてデータを処理して精度が落ちる問題などを解消することが可能です。
また、入力データが正常か異常かを判断する「異常検知」に応用し、画像による不良品の検出にも活用されています。
敵対的生成ネットワーク(GAN)
偽のデータを生成する「ジェネレーター」と、偽物かどうかを判別する「ディスクリミネーター」というモデルを用います。
ジェネレーターはディスクリミネーターをだまそうとし、ディスクリミネーターはジェネレーターによってつくられた偽のデータを見破ろうとします。それぞれが競いあって精度を高めていく過程で、リアルに近いデータを生成することが可能です。
ニューラルネットワークの活用事例
ニューラルネットワークが具体的にどのように活用されているかをご紹介します。
画像認識
画像や映像から必要な情報を抽出する際にニューラルネットワークの技術が使われています。画像や映像のデータを解析し、人物・物体などを高精度で検出可能です。具体的には、スマホの顔認識によるログイン認証などで活用が進んでいます。
画像認識についてはこちらもご覧ください。
>>画像認識とは?AIを活用する仕組みやメリット、今後の課題について解説のページへ
音声認識
自然言語処理(NLP)・機械翻訳
レコメンデーションエンジン
一定のルールや行動データに基づき、顧客向けに商品やコンテンツを提案する「レコメンデーションエンジン」にも、ニューラルネットワークが活用されています。
過去の膨大な操作履歴や閲覧データ、購入履歴などを分析し、行動予測を実施します。その結果をもとに、顧客が興味をもちそうな商品やコンテンツを選び、画面に表示させる仕組みです。
自動運転
自動運転に必要な画像認識にニューラルネットワークの技術が活かされています。車載カメラに搭載されたニューラルネットワークが障害物の検知、道路の認識を行うことで、より高い精度ですばやく処理を行えるようになりました。
金融・医療分野での活用
金融分野では、大量のデータの分析が必要な株価の予測などにニューラルネットワークの技術が活かされています。また、医療の分野では、CTやMRIの結果を画像診断する際に、疾患の見落としを防ぐために用いられています。
まとめ
ニューラルネットワークとは、人間の脳にある「ニューロン」と呼ばれる神経回路をモデルとした機械学習モデルのことです。人間の脳に似た階層状の構造になっており、より高度な情報の処理が可能になりました。ニューラルネットワークの登場により、AIの精度や処理効率が向上し、幅広い分野で活躍しています。
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監修
株式会社SHIFT
「ヒンシツ大学」クオリティ エヴァンジェリスト
林 栄一
組織活性化や人材開発において豊富な経験を持つ専門家として、人材と組織開発のリーダーを務め、その後、生成AIを中心にスキルを再構築し、現在新人研修プログラムや生成AI講座開発を担当している。2008年にスクラムマスター資格を取得し、コミュニティーを通じてアジャイルの普及に貢献。勉強会やカンファレンス、最近では生成AI関連のイベントに多数登壇している。チームワークの価値を重んじ、社会にチームでの喜びを広める使命をもつ。