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B2Bサービスや社内システム開発の課題
B2Bビジネスや社内システムに関与しているみなさま、「ご自身の開発にUI/UXは関係ない!」なんて思っていませんか?
DX、デジタル化でUI/UXの重要性は高くなる一方です。B2Bビジネスでも社内システムでも、従来は紙で行っていたものが、業務効率化、生産性を高めることを目的としたり、SDGsの達成を目的としたりして、ペーパーレス化していっているといった話をよく聞きます。
とはいえ、システム化されたからといって、お客様や従業員の方々が利用するかといったらまったく別問題です。
システム化されたからつかうわけではありません。そのシステムが文字通り「つかえる」からつかうわけです。「つかいものになる」からつかうのです。なぜなら、開発されたシステムを利用するのは人間、ユーザーだからです。「わかりにくい」「つかいにくい」システムに対して、これまでつかい慣れていたものから変える、つまり「行動を変える」というのは人間にはなかなかむずかしいものです。このことはみなさまもよく直面していることでしょう。
新しく見慣れないシステムをつかうことは、ITに慣れ親しんでいる方でも、どうしても二の足を踏んでしまいます。そして、初期の学習コストを払ってでもがんばってつかわなければならない局面で、さらに「わかりにくい」「つかいにくい」となるともうお手上げです。慣れるまでに多大なる学習コストを払いつづけ、みなさまの生産性は落ちていく一方です。そして、ひとつの判断として「つかわない」もしくは「必要に迫られて最小限につかう」結果となり得ます。
そのため、我々UX専門家にはB2Bサービス提供企業のご担当者様から下記のような依頼がよくくることになります。
「問い合わせが多くて、このままでは他社競合に負けてしまう。いまのつかいにくいサービスを刷新したい」
昨今、B2Bは市場規模が大きいため、参入企業が非常に多く激戦区です。スタートアップから大企業まで競争激化しているため、重要な要素としてUI/UXが求められています。
一方で社内システム構築のご担当者様からは下記のような課題が寄せられて支援を行っています。
「せっかくDXを掲げて従業員の生産性をあげるためにシステムをつくったけれど、つかってもらえない」
社内のDXのために横断組織で活動されていたりするものの、利用のハードルが高く、つかってもらえなかったり、継続利用されないというのです。
また、社内システムは、大規模な企業ですと数百人~数万人が利用します。利用者が、たとえば1分、5分でも早くなれば、膨大な時間が節約されます。そのインパクトは測りしれないものとなり得ます。そのため、このような課題と依頼を受け、我々がUI/UXの支援をしているのです。
B2Bや社内システムにはUI/UXは必要ない?
さて、ここまでお読みいただいて、もしかするとそれは少数意見ではないかと思った方がいらっしゃるかもしれません。我々が商談をしている際にも時折こんなお話をいただきます。
「うちはB2BサービスなのでUI/UXはあまり関係がありません」
「私は社内システムの担当なのでUI/UXは求められません」
残念ながら、「UI/UXはB2Cには必要だけれど、B2Bや社内システムには必要ない」と思ってらっしゃる方が意外にも多くいるのです。その結果、「B2Bサービスや社内システムはつかうしかないから」という本末転倒な言葉を聞くことになります。
そして、そんな方々が日頃の業務で利用するB2Bサービスや社内システムに対して「つかいにくい」と文句をいっているかもしれません。
さて、実態はどうなのでしょうか?
UI/UXの向上はB2Cでは取り組まれているけれど、B2Bや社内システムでは取り組まれていないのでしょうか
それでは、最新のSHIFTの調査資料「UX開発の実態調査2023」を見ていきます。これはSHIFTが独自で行っているUXの取り組みにおける調査資料です。
取り組みの状況
前回調査では「開発でUXに取り組んでいる」と回答いただいたのは52%でしたので1ポイント上昇しています。微増ではありますが、安定的ともいえます。実に半数以上が開発でUXに取り組んでいると回答しています。
調査は、B2C、B2Bに関わらず「開発に携わっている方」を対象としています。とすると、「調査回答者の携わっている事業がB2Cで多数を占めているから、このような結果になっているのでないか?」という疑問をもたれる方もいらっしゃるかもしれません。実は調査対象者の携わっている事業は下記のとおりです。
図表の通り、回答者はB2Bが実に約8割と圧倒的に多くなっているのです。ついでB2C(C2C含む)で約11%、社内システムで約10%という結果となっています。
つまり先ほどの調査結果はB2Bサービスの開発に携わっている方々が主体なのです。我々が日頃テレビCMや広告で接することで、B2C企業のほうが多い印象がありますが、実は日本の企業の8割はB2B企業だともいわれています。実際に本調査においてもインターネット調査で「開発に携わっている方」で調査をしたところ、B2B開発に携わっている方が約8割となっています。
それでは、B2B・B2C・社内システムのそれぞれでわけた場合はどのような結果であったか。詳細の内訳を見て行きましょう。
ご覧いただいているとおり、B2B(53%)、B2C(51%)、社内システム(54%)でUXの取り組み状況を分類してみても大差は見られないのです。法人向けや消費者向けサービスはもとより、社内の従業員向けシステムの開発まで、すべてにおいてUXの取り組みが半数以上を超えているのです。
むしろ社内システムにおいては、サンプル数は少ないのですがUI/UXを向上させようと健闘しているといえそうです。
B2Bや社内システムにもUI/UX向上は取り組まれている
さて、先にお話をしました以下のお話を再掲します。
「うちはB2BサービスなのでUI/UXはあまり関係がありません」
「私は社内システムの担当なのでUI/UXは求められません」
このようないい訳は通じません。みなさま、B2Bであろうと、社内システム担当であろうと、UI/UX向上に向けて取り組んでいる方が半数以上もいるのです。
実際に我々で現状支援させていただいている企業様の実に約7割がB2Bと社内システムです。以前はB2Cの方が多かったのですが、ここ数年は圧倒的にB2Bと社内システムが多くなっており、みなさまのUI/UXの意識が高まっているのを実感しています。
まとめ
もはやUI/UXはB2C企業が行うものではありません。
「UI/UX=B2C」のイメージは捨て去り、利用者のことを見つめていきませんか?
システムやサービスは利用者がいてこそ成立します。利用者不在のシステムやサービスは何の価値も生んでいません。
また、利用者に「無理してつかってもらっている」システムやサービスの向かう先はどこでしょうか?誰にとって便益があるのでしょうか?
改めて、B2Bや社内システムにおいての「利用者」と向き合うことをおすすめします。