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開発中のプロダクトに自信がもてますか?
「このままリリースして、本当に売れるのだろうか…」
プロダクト開発を進めるなかで、漠然とした不安がよぎってしまう。このような経験はありませんか。お客様のニーズだけでなく、競合との差別化も意識しながら新しいコンセプトを立てたはずなのに、リリース後の成功に自信がもてなくなってしまう。
しかし、これは特別なことではありません。私たちが支援させていただいている開発の現場では、大手企業やベンチャー企業に限らず、同じような悩みをよく耳にします。不安を残したまま進めたくはないけれど、開発プロジェクトを中断するわけにもいかず、だからといってどのように進めれば良いのかも分からない、というプロジェクトは実に多いのです。
悩みに直面したときに大事なことは、プロダクトのコンセプトに改めて立ち返ることです。そして、想定している購入者や利用者、またはそれに近しい人に、他社製品と比べても魅力的であるかどうかを、直接評価してもらうことが大事なのです。
このような場合に活用できる最適な手段。
それが、コンセプト調査(受容性調査)です。
マーケティング活動では企画段階からよく実施されていますが、開発が始まった後でも決して遅くはありません。仮説検証サイクルを回すという意味では、企画段階だけで終わらせず、開発中、リリース後も継続して行うべきともいえるでしょう。
コンセプト調査(受容性調査)とは何か
コンセプト調査という言葉を聞いたことはありますか。新しいアイデアをもとに開発する予定のプロダクトやサービスが、お客様のニーズに合っているか、興味関心はどれくらいあるか、改善すべき点はないかなどを確かめるために行う調査です。お客様に受け入れられている度合いを調べるため、受容性調査とも呼ばれています。
その他には、市場にどの程度の受容があるかを調べたい時、お客様のニーズに合わない部分を明らかにして改善し将来の問題の発生リスクを減らしたいとき、プロジェクトの実行や変更・中止を判断したいとき、といった場合にも利用されます。
このように、コンセプト調査には主に4つの目的があります。
1. プロダクトのコンセプトを評価する
2. ターゲット市場の需要を予測する
3. 現状の問題点を改善し将来のリスクを減らす
4. プロジェクトでの意思決定を支援する
調査の方法としては、インタビューやネットアンケートなどがありますが、深層心理にまで深く踏み込んで本音を引き出したいなら、1対1のデプスインタビューがお勧めです。
コンセプト調査の盲点
コンセプト調査は、さまざまな場面で活用するための有益な情報を得ることができます。しかし、次のような盲点もありますので注意が必要です。
①対象者は自分のことをよく理解していない
対象者は自分の価値観や性格、趣味嗜好をよく理解しているわけではありません。ですから、質問に対して、必ずしも明確に答えてくれるわけではないのです。例えば、もしご自身がインタビューをされる側だったら、と考えてみてください。納得できる感じがしませんか。
②対象者はプロダクトを評価する判断基準がない
対象者の本質的なニーズまで探ろうと、モデレーター(質問者)が「なぜですか、なぜですか」と繰り返し聞いても、本人に明確な判断基準がなければ答えることはできないのです。「分からないとはいえないし…」と思い、それらしい理由をつけて答えてしまうかもしれません。
③対象者が発売後に購入するかどうかは別の話
自分のことをよく理解していない。プロダクトを評価する判断基準がない。これでは、もしコンセプト調査で受容性が高いと評価されても、実際の購入につながるかどうかは別の話といわざるを得ないでしょう。
これらの盲点に対処することなくコンセプト調査を行っても、開発者の「このままリリースして、本当に売れるのだろうか…」の悩みを解消するような結果は出てきません。コンセプト調査で本質的な欲求(顧客インサイト)を探ることが重要、とよくいわれていますが、その通りに行うのは非常に難しいことなのです。
関連サービスについて
新・コンセプト調査手法
「いままで欲しいと思っていたのは、まさにこんな製品だ!」
コラムを読んでいる方の多くは、このような声をお客様から聞けることを願いながらプロダクトを開発していることでしょう。ですから、直接評価を聞くことができるコンセプト調査に興味をもたれたかもしれません。ですが、先ほどの盲点には注意が必要です。
私たちは、これらの盲点を払拭できる新しい調査サービスを提供しています。
それが、「CXストーリー™」という独自の手法による新しいコンセプト調査(受容性調査)です。
「CXストーリー」とは、簡単にいうと、プロダクトの価値を顧客に提案するためのストーリーです。プロダクトに備わっているたくさんの魅力(価値)を凝縮し、これならお客様から高い評価を受けられるであろうという仮説に基づいてつくられています。
ストーリーといっても、単なるドラマのような物語形式ではありません。あくまで事実に基づいた文章の数々を、この順番ならお客様が納得や共感を示しやすいだろうと想定して組み立てています。最近の言葉でいうなら、“盛るような表現”はつかいません。なぜ、事実にこだわるのかというと、期待値を高めすぎてしまったら、実際のプロダクトとの間にギャップが生じてしまい正確な受容性をはかれないからです。
「CXストーリー」を利用することで、顧客はプロダクトの価値をしっかり理解することができるため、モデレーターの質問に対して、明確な理由と共に答えることができるのです。
「CXストーリー™」の5段階構造
「CXストーリー」は、次のような5段階の構造で成り立っています。
1. ニーズ :顧客の顕在化されたニーズ
2. カテゴリー :ニーズを満たしてくれるカテゴリー
3. プロダクト・サービス :そのなかでも自社のものが一番だという根拠
4. コーポレート :さらに安心・信頼につながる企業の情報
5. アクション :購入を検討しやすく背中を押すきっかけ
1から5をつなげ、俯瞰して見てください。読み手が、このプロダクトは自分のニーズを満たしてくれるにちがいないと確信して行動に移すまでのストーリーが、事実に基づき淡々と書き連ねられていきます。つまり、「いままで欲しいと思っていたのは、まさにこんな製品だ!」と評価したくなるようなストーリー(仮説)になるのです。
各項目の文字数は、およそ数百字程度です。欲求を湧かせ、価値を伝えるのに十分な情報量になっています。すべて合わせるとかなりのボリュームになりますが、逆に、このくらい丁寧にプロダクトの価値(コンセプト)を伝えないと、お客様から的確な評価は得られないのです。また、深層心理まで探りながら、改善のアイデアを見つけるといったこともできないのです。
ストーリーにはどのような価値を盛り込むのか
最後に、5段階から成る「CXストーリー」に盛り込む価値は、何をもとに、どのように抽出すればよいのかをお伝えします。
まずは、“何をもとにするか”です。
リリース後であれば、実際の利用者に魅力的に感じるポイントをインタビューする方法もありますが、開発中であれば、当時の調査・社内提案資料を収集したり、企画段階に関わった人へヒアリングをしたりするとよいでしょう。もし、製品のお客様に近しい年代や同じようなニーズをもつ社員やその家族がいる場合は、困っていることや魅力に感じるポイントを直接聞いてみることもお勧めします。
次に、“どのように抽出するか”です。
この5つの視点を持って情報を収集していけば、高い共感が得られるような価値を抽出することができるでしょう。
1. 必然性 :迷う理由がないほどのこと
2. 先進性 :先進的な技術など
3. 新奇性 :これまでにない新しさ感
4. 信頼性 :安心・信頼につながる
5. 満足性 :情緒的な満足感を得られる
新しいコンセプト調査を活用してみませんか
プロダクトの魅力(価値)を凝縮したストーリーを作成し、それをもとに1対1のインタビュー形式で、顧客の深層心理まで探りながら受容度をはかっていく。このような「CXストーリー™」を活用した新・コンセプト調査の説明はいかがでしたでしょうか。
この調査を活かせば、既存のコンセプトを正確に評価するだけでなく、機能改善やコミュニケーション上のアイデアまで導き出すことも可能です。
なおSHIFTでは、「コンセプト調査」に、実際のデモ画面を操作してもらいながら効率性などをはかる「ユーザビリティ調査」を組み合わせたサービスも提供しています。
忙しくプロジェクトを進めている方も多いと思いますが、まずは開発中のプロダクトの評価を直接顧客に聞いてみませんか。きっと、新しい気づきが得られるはずです。
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