システム開発にデザイン思考を適切に組み込むためには

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システム開発にデザイン思考を適切に組み込むためには

野口 夏樹
株式会社SHIFT
サービス&テクノロジー本部 カスタマーサクセス部
カスタマーエクスペリエンスグループ
UXコンサルタント
野口 夏樹

お役立ち資料

Introduction

デザイン思考とは、デザイナーが業務で行っている思考プロセスを用いて、問題の解決やイノベーションを起こす思考法です。システムを利用するユーザーの心理(気持ち)をベースに課題解決にアプローチするのが特徴で、近年、多くの企業で取り入れられています。

システム開発での活用も増えてきていますが、エンジニアとデザイナーの間に亀裂が生じ、うまく機能しないケースが往々にして起こることがあります。プロジェクトゴールを達成するために全員が同じ方向を向いているはずですが、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。また、エンジニアやデザイナー、あるいはほかの職種のメンバーが連携して提供価値を高めるためにはどうすればよいのでしょうか。原因と対策を考えていきたいと思います。

目次

エンジニアとデザイナーに“ズレ”が生じてしまうワケ

エンジニアとデザイナーに“ズレ”

フォーカス対象の違い

そもそも、エンジニアとデザイナーはフォーカスする対象が異なります。

エンジニアはプロダクトそのものにフォーカスするため、機能性や品質を重視しています。そのため、要件が抜け漏れなく満たせているか、あるいは機能が正しく動作するか(バグがないか)に意識を向けます。

一方、デザイナーは人の心理や気持ちにフォーカスするため、システムを利用した時の使いやすさや操作感、ひいてはユーザー満足度や推奨度などを重視します。そのため、利用時にストレスがかからないか、心地よいかなどユーザーの体験に意識を向けます。

このように、エンジニアとデザイナーはフォーカスする対象が異なるため、議論がかみ合わないことがしばしば起こります。

開発プロセスの違い

従来のシステム開発は、要件定義・設計・開発・テストと上流工程から下流に進むウォーターフォールモデルが主流でした。ウォーターフォールモデルにも多くのメリットがあるものの、“要件”が現状機能や社内要望、競合比較などからのみ定義されてしまうと、ユーザー視点が抜け落ちてしまい、使い勝手の悪いシステムとなってしまう危険性があります。

一方、デザインは、人の心理や気持ちにフォーカスするため、共感・課題定義・アイデア化・試作・テストとユーザーを中心に支持されるプロダクトに改善しつづけるサイクル型の開発プロセスとなります。

近年はデザイン思考を取り入れたアジャイル開発という開発手法が普及してきているものの、根本的な思想の違いから連携がうまく取れなくなることがあります。

デザイナーに対する知識不足

エンジニアが多い現場では、デザイナーは“画面デザインを綺麗につくってくれる人”という間違った認識をされることがあります。それは、デザイナーが何に着目しどのような進め方をするのか、前提となるデザイン知識が不足していることから起きることが散見されます。そのような間違った認識でデザイナーに限定された役割しか与えないと、本来のスキルを発揮できなくなる可能性があるのです。

デザインとは、単に表現や見た目としてのものだけでなく、ユーザーの心理や気持ちを中心にプロダクトをつくり上げるための考え方やプロセスまで含んだ広義の意味が含まれます。デザイナーに最大限スキルを発揮してもらうためには、デザインプロセスを正しく認識し開発に組み込むことが必要となるのです。

より良いシステム開発にはデザイン思考が欠かせない

より良いシステム開発にはデザイン思考が欠かせない

良いシステムは、モノとしての品質(機能性や性能など)だけでなく、UX品質(使いやすさやユーザー満足度など)も求められます。デザイナーがスキルを発揮しプロジェクトに貢献するためには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

プロジェクト計画からデザイナーを参画させる

デザイン思考は開発プロセスや体制にも影響を与えるため、プロジェクト計画の段階からデザイナーに参画してもらいPM/PMOと議論できるようにすることが重要です。デザイナーがいない状態でプロジェクト計画をつくってしまうと、デザインに必要な工程が抜けている、あるいは予算を取得していないといったことが起こる可能性があります。デザイン思考を採用する場合は、プロジェクト計画をデザイナーにレビューしてもうらうようにしましょう。

デザイナーとのコミュニケーションフローを明確にする

システム開発の現場では、さまざまな場面でデザイナーとエンジニアが連携して進めなければならない作業が発生するため、スムーズなやり取りを行うにはコミュニケーションフローを明確にすることが必要です。要件の追加や修正依頼などでスケジュールがタイトになることが頻繁に起こるため、デザイナーが意図したものと違う成果物になってしまわないように、都度ユーザー視点に立ち返って議論できるようにしておく工夫が求められます。

また、エンジニアとデザイナーで意見が対立した際に、意思決定できる人を決めておくと、スムーズに議論が進みやすいです。

仮説と検証を繰り返せる柔軟な開発プロセスに

デザイン思考は最初から100点の答えを導き出せる万能薬ではありません。ユーザー視点を起点に仮説と検証を繰り返す最もユーザーに寄り添ったアプローチです。そのため、デザイン思考を開発に取り込むためには、エンジニア含めてプロジェクト関係者全員が正しく理解するところからはじめる必要があります。

一方、デザイナーもユーザーに提供したいサービス価値や機能を正しく開発サイドに連携する必要があります。優先順位や得られる成果を連携することで、開発スケジュールやフェージングプランの検討に役立てやすくなるでしょう。プロジェクトメンバーがお互いを思いやり、理解しようという姿勢で接することが成功のカギになるのかもしれません。

いかがでしたでしょうか。

デザイン思考は顧客視点でシステムを構築するうえで必要不可欠な思考法であるものの、すべてのデザイナーが顧客心理の把握に長け、開発者とのコミュニケーションに優れているわけではありません。

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この記事を書いた人

野口 夏樹
株式会社SHIFT
サービス&テクノロジー本部 カスタマーサクセス部
カスタマーエクスペリエンスグループ
UXコンサルタント
野口 夏樹

印刷会社・CXコンサルティング企業などを経て2021年に起業。
通信、金融、飲料、精密機器、製薬、不動産、NGO/NPOなど幅広い業種・業界の企業・団体に対して、デジタルマーケティング・UI/UX等の支援を行う。調査・戦略設計などの上流工程だけでなく、制作品質まで踏み込んだプロジェクトマネジメントを得意とする。現在は株式会社SHIFTにて開発案件のUI/UX支援、ディレクションを担当。

SHIFTで手掛けたプロジェクト

  • 省庁システム開発案件のUI/UX支援
  • コンサルティング企業向けデザインガイドライン支援

など多数

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