Introduction
インクリメントとは、スクラム開発における作成物のことです。アジャイル開発の手法のひとつであるスクラム開発では、インクリメント、プロダクトバックログなど、独自の言葉が使われるため、わかりにくいと感じる方も多いかもしれません。
この記事では、インクリメントとは何か、スクラム開発における言葉の意味や目的などについて解説します。
目次
インクリメントとは?

スクラム開発におけるインクリメントとはどのような意味をもつ言葉なのか、またスクラム開発とはどのような開発手法なのかをご説明します。
アジャイル開発のスクラムにおける作成物
インクリメントとは、スクラム開発における作成物のことを指します。具体的には、ソフトウェア開発であればソフトウェアコード、ドキュメント、新たに追加された機能や改善されたパフォーマンスなどが該当します。
もともとインクリメント(increment)は、「増加」という意味です。コンピューターやプログラミングの分野においては、プログラム内で変数の値を1増やす演算のことを指します。
スクラム開発では、作成されたアウトプット、機能や価値などをインクリメントと呼んでいます。スクラム開発では、スプリントと呼ばれる短い開発サイクルを繰り返して開発を進め、各スプリントで一定の機能や価値をもつインクリメントが完成するのが特徴です。
それぞれのインクリメントは完了基準に従って評価され、評価基準を満たすことではじめて完成といえます。
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スクラムとは
スクラム開発とは、アジャイル開発のフレームワークのひとつです。
スクラムでは、10人以下のメンバーでチームを組み、設計、開発、テストという「スプリント」と呼ばれる短い開発サイクルを繰り返す開発手法です。チーム内にはプロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者と呼ばれる役割をもつメンバーがおり、それぞれが自発的、自律的にコミュニケーションを密にとりながら開発を進めます。
顧客を巻き込みながら開発を進めることで、顧客からの要望を開発にすばやくとり入れることが可能です。
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関連サービスについて
スクラムの3つの作成物
スクラム開発では、3つの作成物が存在するのが特徴です。作成物といっても、ソースコードやドキュメントなどの実体があるものだけではなく、スクラムによってつくり出される価値のことを表すこともあります。
ここでは、スクラムにおける3つの作成物と、それぞれの作成物が完成する際に満たすべき確約(コミットメント)について、解説します。
プロダクトバックログ
プロダクトバックログとは、プロダクトを開発するにあたって必要なタスク、要求事項などが優先順位をつけられてリスト化されたものです。
たとえば、あるシステムを開発する際に、画面に新しいボタンをつける機能追加案件と、パフォーマンスを改善する機能追加案件、バグ修正案件があったとします。これらのタスクに優先順位をつけてリスト化したものが、このシステム開発におけるプロダクトバックログです。
プロダクトゴールはスクラムチームが目標とする長期的な目標であり、これに向かって開発を進めます。このプロダクトゴールを実現するために、複数のプロダクトバックログがリスト化されます。
プロダクトバックログについてはこちらもご覧ください。
>>プロダクトバックログとは?項目や書き方・例をわかりやすく解説のページへ
スプリントバックログ
スプリントバックログとは、開発チーム内でそれぞれのスプリントで達成すべき項目をリストアップしたものです。スクラム開発を進めるための計画ともいえるでしょう。
たとえば、新しい機能の実装、前回のスプリントで発見されたバグ改修など、スプリント期間中に取り組むべきタスクが具体的に明記されます。
プロダクトバックログと同じく、スプリントバックログにも「スプリントゴール」が存在します。スプリントゴールを達成するために、複数のスプリントバックログをリスト化し、一つひとつ達成していきます。
インクリメント
インクリメントとは、スクラムフレームワークにおける作成物のひとつです。スクラム開発の公式ガイドであるスクラムガイドでは、「プロダクトゴールに向けた具体的な踏み石である」と定義されています。過去に作成されたインクリメントに追加する形で、新しいインクリメントができあがります。
インクリメントが完成するためには「完成の定義」を満たさなければなりません。「〇〇という基準を満たせば完成する」などと具体的な内容が定義され、それを満たすことでインクリメントが完成します。
インクリメントの評価

インクリメントが完成したと認められるためには、適切に評価を行う必要があります。
上記でご説明したとおり、インクリメントが完成したと認められるためには「完成の定義」を満たさなければなりません。完成の定義には、具体的に次のような項目が含まれます。
・コーディング、デバッグが完了する
・単体テスト、結合テストが完了する
・仕様書、ドキュメントが完成する
・品質基準を満たすことを確認する
・承認プロセスをすべて完了する
このような完成の定義が満たされることを評価する方法はいくつかあります。ここでは、インクリメントの評価方法や評価のポイントについて解説します。
評価方法
具体的な評価方法には、以下のようなものがあります。
・チェックリストで評価する
完成の定義ごとにチェックリストを作成しておき、インクリメントがそれらの項目を満たすかをチェックします。この方法は、複数の項目にわたって漏れなくチェックできるというメリットがあります。
・デモンストレーションで確認する
顧客などのステークホルダーに対してデモンストレーションを行い、実際の機能やパフォーマンスなどを確認してもらう方法です。フィードバックを得やすい、改善点を見つけやすいなどのメリットがあります。
・テストを自動化して評価する
自動化されたテストを導入することで、定期的にテストを実施でき、品質の評価がしやすくなります。開発を行うたびに品質の評価を実施することで、基準をクリアしているかチェックすることが可能です。テストの自動化を行う手間やコストがかかりますが、品質管理がしやすくなるというメリットがあります。
評価のポイント
評価を行うポイントには、次のようなものがあります。
・完成の定義を具体的かつ明確にする
完成の定義があいまいだと、評価もあいまいになってしまいます。定義を具体的かつ明確にすることで、評価を効率よく客観的に下せます。誰が評価しても同じ評価になるように、明確に定義することが重要です。
・テストを十分に行う
テストを十分に行って、バグや不具合が残っていないかを確認する必要があります。
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まとめ
インクリメントとは、スクラム開発における作成物のことを指します。具体的には、ソフトウェア開発であれば、ソフトウェアコードやドキュメント、新たに追加された機能や改善されたパフォーマンスなどが該当します。スクラム開発で使われる用語は独自のものが多いので、スクラムの手法を導入する場合は正しく理解しましょう。
スクラムをはじめとしたアジャイル開発は、短い開発サイクルを繰り返して完成に近づける開発手法です。顧客からの要望や改善を次の開発サイクルに組み込むことで、すばやく要望にこたえられます。開発期間が長く、一度の開発サイクルで完成させるウォーターフォール開発と比べると、柔軟に開発できるというメリットがあります。
アジャイル開発を導入して、顧客のニーズや仕様変更に柔軟に対応できる開発を行いたい場合は、SHIFTのアジャイル開発支援(SHIFT 1LINE)をご活用ください。お客様のアジャイル内製開発体制の構築とプロジェクト推進において、開発・ITガバナンス・プロダクトデザインなど、すべての局面で強力にサポートいたします。
継続的なプロダクト開発に伴走する、SHIFTのアジャイル開発支援
「顧客のニーズに柔軟に対応できる開発体制に変えたい」「新しい開発手法を導入して生産性の向上や顧客満足度の向上につなげたい」「アジャイル開発を導入したいが、社内にノウハウがない」などの悩みを抱えている企業様は多いかもしれません。
従来のウォーターフォール開発の手法では、要件定義、設計、開発、テストについて入念に計画してから長期間で開発を進めるため、開発計画を立てやすいというメリットがありました。
しかし、開発期間が長くなることが多く、仕様変更や顧客からの要望に柔軟に対応しにくいという弱点があります。一方、アジャイル開発では、短い期間の開発を繰り返すため、開発途中で改善点や顧客の要望をとり入れやすくなっています。
アジャイル開発をスムーズに進めるためには、豊富な専門知識や経験、ノウハウが必要です。アジャイル開発、スクラムなどのノウハウがない状態で、アジャイル開発にシフトするのはむずかしいでしょう。
そこで、SHIFTのアジャイル開発支援(SHIFT 1LINE)をご活用いただければ、お客様のアジャイル内製開発体制の構築とプロジェクト推進において、開発・ITガバナンス・プロダクトデザインなど、すべての局面で強力にサポートいたします。
短期的な人材確保や長期的な人材育成など、お客様のニーズにあわせて対応し、お客様のシステム開発に柔軟性とスピードをもたらします。

監修
永井 敏隆
大手IT会社にて、17年間ソフトウェア製品の開発に従事し、ソフトウェアエンジニアリングを深耕。SE支援部門に移り、システム開発の標準化を担当し、IPAのITスペシャリスト委員として活動。また100を超えるお客様の現場の支援を通して、品質向上活動の様々な側面を経験。その後、人材育成に従事し、4年に渡り開発者を技術とマインドの両面から指導。2019年、ヒンシツ大学の講師としてSHIFTに参画。
担当講座
・コンポーネントテスト講座
・テスト自動化実践講座
・DevOpsテスト入門講座
・テスト戦略講座
・設計品質ワークショップ
など多数
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ヒンシツ大学とは、ソフトウェアの品質保証サービスを主力事業とする株式会社SHIFTが展開する教育専門機関です。
SHIFTが事業運営において培ったノウハウを言語化・体系化し、講座として提供しており、品質に対する意識の向上、さらには実践的な方法論の習得など、講座を通して、お客様の品質課題の解決を支援しています。
https://service.shiftinc.jp/softwaretest/hinshitsu-univ/
https://www.hinshitsu-univ.jp/
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