Introduction
製造業のプロダクト設計開発においてAI活用のニーズが急速に高まるなか、PwCコンサルティング、SHIFT、DeMiA(SHIFTグループ)の3社がワンチームとなり新たなプロジェクトが始動しました。一社単独では解決が困難である高度なDX課題に対し、3社それぞれの専門性を結集して挑む「次世代の設計開発支援」。本記事では、この取り組みの全体像とプロジェクトに懸ける想いをお届けします。
※写真左から
株式会社DeMiA
代表取締役 坂本 京也 / 取締役 林 一成
PwCコンサルティング合同会社
マネージャー 笹本 晃司 様 / ディレクター 渡邉 伸一郎 様 / シニアマネージャー 宮寺 厚志 様
株式会社SHIFT
モビリティ事業部 モビリティサービス部 SDVサービスグループ グループ長補佐・サービスエキスパート(SEP)小坂 健二 /
AI BPaaS事業部 AI BPaaSサービス部 AIサービスグループ グループ長 幸加木 哲治
※参加者の肩書き、所属法人などは掲載当時のものです。
目次
自動車メーカーの切実な要望から始まった
「設計開発×AI」の挑戦
――今回は、3社協業による設計開発コンサルティングについてお話を伺います。まずは、このプロジェクトが立ち上がった背景から教えてください。
【PwC 渡邉様】始まりは、私たちPwCコンサルティングが自動車メーカーの設計開発部門と向き合うなかで見えてきた本質的な課題です。自動車開発の上流工程において、膨大な要求数の検証に現場が苦しんでいる状況があり、「このままでは競争力が失われる」という危機感を抱いていました。
【SHIFT 小坂】私たちSHIFTは、以前からPwCコンサルティングと自動車メーカーのサイバーセキュリティやソフトウェアアップデート領域でお取引があり、現場の実態をよく知る立場でした。そのため、PwCコンサルティングから「 R&Dを含む、設計開発の上流そのものをAIでサポートできないか」というお声がけをいただいたのです。
【PwC 渡邉様】設計開発プロセスの上流から下流まで、さらにAIによる高度な技術実装まで含めると、1社では対応できない複雑な課題だと認識していました。そこで私から、以前から連携をさせていただいていたSHIFTに相談し、さらにAI専門の知見が必要だということでSHIFTグループのDeMiAも加わる形で、3社協業の体制が自然と整っていきました。
【DeMiA 坂本】設計開発領域に特化したAI活用は、一般的なAI実装とは異なる専門性が求められます。特にDRBFMという設計検証手法をAIで支援するには、エンジニアリングデータの特性を深く理解したうえでの実装が不可欠でした。そこで私たちDeMiAが技術面での実装を担当することになりました。
――R&DそのものをAIで支援する。それは一社では解決できない課題だったのでしょうか?
【SHIFT 幸加木】SHIFTは、現場に根差した品質保証や下流工程の知見において圧倒的な強みを有しています。一方で、経営戦略と直結する超上流の構想策定や、特殊なエンジニアリングデータを活用した先進的なAI実装領域まで含めて“最適解”を描くためには、それぞれの分野でトップクラスの知見をもつパートナーとの連携が最も合理的です。そこで、総合コンサルティングファームであるPwCコンサルティング、ならびにAI専門集団であるDeMiAと三社の強みを掛け合わせることで、クライアントに最高の価値を提供する体制を構築しました。
【PwC 渡邉様】製造業のR&D改革はまさに経営課題ですが、現場の実態と乖離したコンサルティングでは意味がありません。SHIFTの現場力と組むことで、特定のツールやベンダーに依存しない、真に価値のある次世代コンサルティングが提供できると確信したのです。
エンジニアリングチェーン全体を
AIでつなぐ独自のアプローチ
――具体的に、どのようなアプローチでR&DのAI化を進めているのでしょうか?
【DeMiA 林】最大の特徴は、「エンジニアリングチェーン全体をAIでつなぐ」という点です。巷にある既存のAIツールを単に導入して終わるのではなく、設計のプロセスそのものに入り込みます。
【PwC 渡邉様】自動車などの複雑な製品では、一部の設計変更が「どの部位に」「どの法規制に」「どのシステムに」影響を及ぼすのか、人の手ですべて網羅的に検証するのは限界がありますからね。
【SHIFT 幸加木】そこで、AIを活用して法規制への抵触リスクやシステムへの影響を事前検証する仕組みを導入する必要があります。これにより、手戻りを未然に防ぎ、開発の初期段階から確実な品質担保が可能になるのです。
――ほかにも具体的な取り組みはありますか?
【DeMiA 林】検討の初期段階で、AIによるデモやモックを作成するアプローチも強力です。設計開発特有の複雑なデータをAIに読み込ませ、エンジニアが求めるモックを瞬時に生成します。
【SHIFT 小坂】「早くつくる・早く試す」環境が整うことで、設計者はより創造的な業務に集中できるようになります。また、ECM(エンジニアリングチェーンマネジメント)上で潜在的な不具合を早期に検知できるのも、このサイクルの大きな恩恵ですね。
――スピードが上がると、品質への懸念も生まれそうですが、その点はいかがですか?
【SHIFT 幸加木】そこがまさに、我々が最もこだわっているポイントです。スピードを上げるために品質を犠牲にしては本末転倒です。我々が長年モビリティ領域で培ってきた「テスト・不具合分析・品質基準策定」のリアルな知見をAIの検証プロセスに組み込むことで、スピードと品質を高次元で両立させていくことができます。
【PwC 宮寺様】「早く作って、かつ確実である」。これを実現するためには、特定のシステムベンダーの枠に囚われることなく、上流から下流までデータが淀みなく流れる基盤を描く必要があります。私たち3社だからこそ、クライアントにとって真の全体最適が描けているのだと思います。
明確な役割と圧倒的な専門性で実現する
3社ワンチームの死角のない支援
――このプロジェクトにおける各社の役割について、改めて整理させてください。
【PwC 笹本様】私たちPwCコンサルティングは、主に「超上流」の領域を担っています。R&Dや設計開発の変革が、企業の経営や事業戦略とどう結びつくべきか。そのあるべき姿を描き、全体構想を策定します。そのうえで、上流で描いた絵が現場で“動く現実”になるまで、ステークホルダーの皆さまと一体となって伴走し、変革を最後までやり切ることが私たちのミッションです。
【SHIFT 小坂】PwCコンサルティングの構想力と推進力があるからこそ、我々の現場の取り組みが単なる業務改善で終わらず、全社的なDXへと昇華されるんです。非常に心強いパートナーです。
【SHIFT 幸加木】我々は「下流から上流へのフィードバック」を担います。設計の現場に深く入り込み、開発の実態や品質課題、不具合の影響度を徹底的に洗い出します。その現場のリアルなナレッジを、PwCコンサルティングが描く上流の構想や、DeMiAが開発するAIにフィードバックし、絵に描いた餅にならないようコントロールしています。
【DeMiA 坂本】我々は設計・開発領域に特化したデータとAI活用の専門集団として、技術実装に責任を持っています。製造業のエンジニアリングデータは非常に特殊ですが、我々はその特性を深く理解したうえで、AIによる検証機能やモックを具体的な形に落とし込みます。PwCコンサルティングの構想とSHIFTの品質基準を、テクノロジーの力で現実に変えるのが我々の役割です。
理想と現場改善が拮抗する
「3つの専門性」が生み出すシナジー
――お話を伺っていると、見事な補完関係ですね。
【PwC 宮寺様】ええ。AIを活用した設計開発の高度化は、もはや1社単独では完結できないテーマです。コンサルティング会社だけでは現場の泥臭いデータや品質課題を拾いきれませんし、ITツールを提供するだけのベンダーでは経営課題との紐づけが弱くなりがちです。
【SHIFT 小坂】だからこそ、我々が対等なパートナーとしてワンチームになる必然性があったわけです。
【PwC 渡邉様】3社で支援をすることの一番の強みは、「上流の理想」と「下流の現実」から同時にアプローチできることです。私たちが経営視点でのあるべき姿を提示しつつ、同時にSHIFTが現場の課題を吸い上げる。そして、その間をつなぐAI実装をDeMiAがスピーディに行う。このサイクルが同時に回ることで、プロジェクトの進行スピードと解像度が劇的に上がっています。
【SHIFT 幸加木】上流からの理想論だけでは不十分であり、現場からのボトムアップの改善にも限界があります。PwCコンサルティングの構想力、SHIFTの現場ナレッジと品質視点、DeMiAの技術力。この3つの異なる専門性が結集し、互いに妥協せず刺激し合うことで、かつてない推進力が生まれているのです。
【PwC 笹本様】これこそが、特定のプラットフォームやベンダーの枠を超えて提供できる、「次世代の設計開発支援」の価値だと確信しています。
「つくって終わり」じゃない。
ビジネスの成長に貢献するAI変革を
――3社の専門性が掛け合わさることで生まれる圧倒的な価値と、プロジェクトに懸ける熱意がよく分かりました。最後に、今後の展望をお願いします。
【DeMiA 坂本】いくら素晴らしい経営構想や精緻な現場データがあっても、それをテクノロジーで『動く現実』にできなければ意味がありません。我々DeMiAの使命は、AIという武器を使って、お客様の理想やアイデアを最速で形にすることです。また、システムは使われて初めて価値を生みます。PwCコンサルティングの経営視点とSHIFTの品質保証、そして血の通った『真にビジネスを勝たせるAI』で、R&Dの現場に圧倒的な変革を起こしていきたいと考えています。
【PwC 渡邉様】AI活用を単発のツール導入で終わらせず、経営の意思決定から設計・検証、品質づくりまでをワンストップでつなぐR&D変革の実現を支援していきたいです。PoC(概念実証)で止めず、現場に根づく仕組みとして回し切り、開発スピードと確実性を両立させて製造業の競争力を押し上げていきたいと考えています。
【SHIFT 幸加木】変化に強いエンジニアリングチェーンを構築することこそが、我々の目指すゴールです。この3社ワンチームの挑戦が、日本の製造業の未来を支える次世代コンサルの新たなスタンダードになるよう、これからも力強く歩みを進めていきます。
本プロジェクトに関するインタビューが、お客様のWebサイトにも掲載されています。
ぜひ両社の記事を通じて、本取り組みの詳細をご覧ください。
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/column/engineering-chain-dx-shift.html
今後もパートナーとして連携を深め、より高い価値提供を目指してまいります。