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B2B-EC市場の成長
近年B2BのEC市場が著しく伸長していることをご存知でしょうか。「EC化率」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、B2Cビジネスではよく話題にあがっている指標です。EC化率とは経済産業省の定義によると、「全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合を指します」とされています。
わかりやすくいうとオフラインとオンラインでの商取引のうちのオンラインだけの商取引の比率です。つまりECでの販売率が高ければ高いほどEC化率は高くなります。企業内でもKPIの一つとしてEC化率をあげている企業もあります。
そのEC化率をみると、実はB2BビジネスにおけるEC化率はB2Cよりも圧倒的に高く、EC化率は31.7%とB2C-EC市場の6.76%を大きく上回り市場規模も桁違いとなっています。
一消費者である私たちはECで買い物をしていることが日常化されていますが、一消費者としてだけではなく私たちはビジネスにおいてもインターネットで購買が完結していることが多くあります。
ビジネス上において、シンプルにモノを買い付けるだけでもECで簡単に購入していますが、例えばスケジュール管理や会計ソフトもすでに小売や営業マンを介することなく購入・利用していることがあります。SaaS(Software as a Service)やサブスクリプションモデルの登場により、ますますその傾向は強まりさまざまなサービスがデジタルのみで購入・利用ができる状況になっています。
UX開発の実態調査 2023
本調査は、ソフトウェア開発におけるUXへの取り組みについて調査したものです。UXがどの程度取り入れられているか、またその成果や課題を明らかにしたものです。 UXの取り組みにおいて有用なデータとして活用いただけることを目指し調査を実施いたしました。
本調査は、ソフトウェア開発におけるUXへの取り組みについて調査したものです。UXがどの程度取り入れられているか、またその成果や課題を明らかにしたものです。 UXの取り組みにおいて有用なデータとして活用いただけることを目指し調査を実施いたしました。
B2B市場のUXの問題
このように成長をつづけるB2B市場ですが、一方でUXにおいては大きな問題があります。B2BサービスはそもそもB2Cとは異なる特性をもっています。B2Bサービスはその性質上、自ら選択をして自ら購買をして自ら利用する、という構造にはなっていません。つまり選択者と購買者と利用者がわかれていること、さらには決済者や情報システム部門など関係者が多岐にわたっているのです。その性質のためB2BとB2Cでは利用者にとっては以下の図表のような違いがあります。
つまり、直接的に利用者を想定してサービス提供されているB2Cサービスと、選択者や購買者もしくは決済者を想定してサービス提供されているB2Bサービスではその構造の違いから、UXへの取り組み方に明らかに差が出ていると考えることができます。
みなさまご存知のとおりB2Cサービスを提供している企業は日々利用者との接点を改善しつづけています。絶え間ない機能改善や絶え間ないABテスト、アンケートやインタビューなどを駆使して利用者の体験、UXを磨きつづけています。
一方でB2Bサービスを提供している企業はどうでしょうか?
利用者との直接的な接触はほとんどなく、選択者や購買者とのコミュニケーションが主となっており、実際に利用者がどのように利用しているのか、利用者が使いづらいのではないか、といったUXについてはあまり手をつけられていないのが実態ではないでしょうか。
ここでSHIFTがB2Bサービス提供企業へ独自調査を行ったデータを見てみましょう。
サービスの課題
サービスの課題について調査をしたところ、「使い方についての問い合わせが多い」がもっとも多い回答となっていました。
「使い方についての問い合わせが多い」ということは何を意味しているのでしょうか。シンプルにマニュアルに記載がないのかもしれません。しかし、本当にそうなのでしょうか。
もしかしたら、マニュアルに記載があるが、辿りつくのに大変だから問い合わせているのかもしれません。
もしかしたら、マニュアルに記載はあるが、結局理解ができなかったからかもしれません。
もしかしたら、マニュアル自体の場所がわからなかったのかもしれません。
しかし、「使いやすさ」さえあれば、そもそもの課題である問い合わせ自体をなくせるのかもしれません。
みなさまが普段体験されている通り、B2Cサービスではマニュアルがなくても使えるサービスが多くあります。直感的なデザインや直感的な操作性でそれが実現されています。みなさまも購入したサービスのマニュアルを熟読することはあまりないのではないでしょうか。
B2CサービスはB2Bと違ってシンプルであるから当然だと思われるかもしれません。しかしiPhoneの登場を考えてみてください。iPhoneはコンピュータといえます。いわゆるガラケーよりも高性能なコンピュータでした。そしてそれは見たこともない外観で、見たことのない操作方法を私たちに提案してきました。
しかし、分厚いマニュアルなどありませんでした。幼いこどもでも高齢者の方でも利用が容易でした。テクノロジーとその洗練されたUXがまったく新しい発明品を誰でも容易に利用できるようにしたのです。
一方でB2Bサービスの多くはマニュアルに頼る傾向があるのはみなさまも感じている通りです。使い方のトレーニングを提供していることもよくあります。それでは、「我々のサービスは機能が豊富すぎるので、すぐに利用できるものではない」と宣言していると同義ではないでしょうか。
マニュアルがあることやトレーニングがあることが悪いといっているわけではありません。マニュアルやトレーニングに依存することが問題なのです。UXを磨いていけば、余計な機能は不要になりますし、より操作がしやすくなるのです。そうすることにより、マニュアルの分量が半減するかもしれません。トレーニングの時間が半減するかもしれません。そして、問い合わせも半減するかもしれません。
B2Bサービスに求められるUI/UX
使い方に関する問い合わせは誰にとってもストレスの溜まるものです。問い合わせをする側も問い合わせを受ける側も、共に貴重な時間を浪費してしまいます。
利用者に「使いやすさ」を提供することで、その時間の浪費を削減することができます。利用者がストレスなく利用することができれば、利用が継続されて顧客との関係性が築かれていきます。その結果、継続的な売上の拡大に繋がっていくのです。
B2Cサービスでは、先行してUXが磨かれてきていました。B2Bサービスがオンラインで提供されるようになり、ようやくB2BサービスにおいてもUXが重要視されてきています。
先に述べたようにB2Bサービスでは使いづらくて利用したくなくても、利用者はその認知的負荷を乗り越えて利用しつづけなければなりません。いま一度、サービスのUXについて見直してみてはいかがでしょうか。
次回はアンケート結果からUX課題の原因について考察していきます。