B2BサービスのUX課題の原因について考える

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B2BサービスのUX課題の原因について考える

株式会社SHIFT マーケティンググループ
著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

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目次

B2BサービスのUXの課題

前回はSHIFTのB2Bサービス提供企業への独自調査を踏まえて、B2BサービスのUX(ユーザーエクスペリエンス)の課題についてみてきました。今回はその課題の原因について考察していきます。

前回提示した課題とは「使い方についての問い合わせが多い」ということでした。B2Cサービスと比較してもB2BサービスのUXは明らかに洗練されているとはいえない状況です。下の図表の調査による回答をみていきましょう。

図表 課題の原因

B2Bサービスの課題図

一番は「効果(メリット)が理解されていない」となっています。その後に懸案の「使いやすさが考慮されていない」「使い方のトレーニングがなされていない」「マニュアルがない・マニュアルが難しい」と使い方についての回答がつづいています。

まず「効果(メリット)が理解されていない」についてはどのように考えていけばよいのでしょうか。

サービスのメリットとは、サービスを利用して生み出される便益といってもよいでしょう。住宅や車、旅行などにおいては、購買者と利用者が異なることは多くありますが、通常B2Cサービスでの購買においては購買者と利用者は同一なことが多くあります。前回でも触れたとおり、B2Bサービスではその性質上、選択者と購買者と利用者がわかれていること、さらには決裁者や情報システム部門など関係者が多岐にわたっています。

つまり、選択者や購買者や決裁者はそのサービスの便益を理解していても(本当に理解しているかどうかはわかりませんが)、実際の利用者は半ば強制的にサービスを利用することになるため、その便益を理解しないまま利用せざるを得ないことが多くあります。

さて、ここで疑問が出てきます。

我々は一消費者でもあります。我々は日々さまざまなサービスの利用を通して便益を感じています。前回にも例としてあげたiPhoneはまさにみなさまも利用を通して便益を感じたのではないでしょうか。サービスは本来利用することで便益を得られるはずです。

サービスを利用されているのにもかかわらず、なぜ便益を得られていないのでしょうか。

UX開発の実態調査 2023

本調査は、ソフトウェア開発におけるUXへの取り組みについて調査したものです。UXがどの程度取り入れられているか、またその成果や課題を明らかにしたものです。 UXの取り組みにおいて有用なデータとして活用いただけることを目指し調査を実施いたしました。

本調査は、ソフトウェア開発におけるUXへの取り組みについて調査したものです。UXがどの程度取り入れられているか、またその成果や課題を明らかにしたものです。 UXの取り組みにおいて有用なデータとして活用いただけることを目指し調査を実施いたしました。

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便益をもたらすUX

利用を通したユーザーの体験から便益をもたらすのがUXです。では、UXとは具体的に何を指すのでしょうか。

SHIFTでは、わかりやすくUXの定義を「サービスの利用によって生み出される利用者の満足」としています。定義の通り「利用」です。利用を通して得られる満足がUXなのです。

関連サービスについて

UXと周辺の名称の定義図

また、ご存知の方も多いと思いますが、システムやソフトウェアの品質の国際規格である SQuaRE(ISO/IEC 25000 シリーズ)では、信頼性などの「製品品質」に加え、実際に利用者が利用する際の「利用時の品質」を規定しています。「利用時の品質」とはまさにUXに含まれるものなのです。
SQurRE : System and software product Quality Requirements and Evaluation (SQuaRE)

製品品質と利用時の品質の図

つまり、システムやソフトウェアといったサービスの利用があるからこそ便益が伝わるべきなのです。そして、そのUXの品質が圧倒的に不足しているからこそ、便益が伝わらないのです。

繰り返し述べますが、サービスは本来利用を通したインタラクションから便益を得ることができます。B2Bサービスでいえば、利用時のインタラクションを通して利用者は生産性を上げることができ、また業務上の課題解決が実現されていくのです。つまり、「効果(メリット)が理解されていない」ということは、そのいずれも達成されていない、もしくは利用が困難で達成の前にあきらめている、などが考えられるのではないでしょうか。

もちろん利用前に丁寧にサービスの便益を説明することは大切なことです。もしかしたらその説明が丁寧になされているならば、理解されたうえで利用を通して便益を感じていただけるのかもしれません。

しかし、先に述べた通り、B2Bサービスは選択者と購買者と利用者、決裁者や情報システム部門など関係者が多いのが現状です。そうであるならば、その導入していただく企業の体制に依存することなく、極力サービス利用を通して便益が伝わるようにUX品質を向上させていくことが必要ではないでしょうか。

製品品質だけを高めるためのサービス開発がなされているだけでは、UX品質は向上できません。サービス提供者はUXを品質として捉えて、サービス開発をしていかなければなりません。それが便益を伝えることになるのです。

サービス提供者と利用者のギャップを埋めるUX品質

ギャップのイメージ画像

今回は課題の原因として回答の多かった「効果(メリット)が理解されていない」について考察をしてきました。この原因とされているものは誤解をおそれずにいうと、利用者への責任転嫁ともいえるのかもしれません。

“私はわかりやすいサービスを提供している”
“私は一所懸命やっている”
“私は日々データを見て改善を重ねている”

このようなことはサービス提供者側の都合でしかありません。サービスは「利用者にとっての価値」を提案するものです。「価値がある」と認識するのはあくまでも利用者であって、提供者が「価値がある」と認識することではありません。

提供者と利用者には常に大きなギャップが存在しています。提供者と利用者は、情報は非対称であり、そのコンテクストも課題も文化も異なります。

サービスは利用者の都合で提供すべきです。そのためにも利用者を知り、利用のシチュエーションを知り、利用者とのインタラクションを重視してサービス開発を行わなければなりません。

利用者の都合でサービスを開発していく品質。それこそがUX品質なのです。

次回も引きつづきアンケート結果からUX課題の原因について考察していきます。

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この記事を書いた人

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著者 株式会社SHIFT マーケティンググループ

SHIFTは「売れるサービスづくり」を得意とし、お客様の事業成長を全力で支援します。無駄のないスマートな社会の実現に向けて、ITの総合ソリューションを提供する会社です。

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