• 業種交通・モビリティ
  • 企業規模1,001名以上~5,000名以下
  • 導入サービス
    ユーザーテストUXエキスパートレビュー

様々な業界の課題解決をPDFにまとめました

いくつかの導入事例をまとめたファイルをご用意しております。
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Summary

東武鉄道を中心に、交通、流通、レジャーなど幅広い事業を展開する東武グループ。同社が現在強力に推進しているのが、顧客接点を統合し新たな価値を創出する「1ID化」構想と、その中核となるアプリのUX(ユーザーエクスペリエンス)改善プロジェクトです。
アプリ会員数が順調に拡大するポイント事業の裏側に潜んでいた「見えない課題」とは何だったのか。そして、客観的な調査によって発覚した意外な真実と、新設部署「デジタルプラットフォーム事業部」が描く東武沿線の未来像についてお話を伺いました。

グループ共通の基盤となる
TOBU POINTの誕生と順調な拡大

今回のプロジェクトの前提となる「TOBU POINT」の概要と、
これまでの歩みについてお伺いできますでしょうか?

東武鉄道株式会社
東武鉄道株式会社 デジタルプラットフォーム事業部 主査_峯田 様(以下、峯田 様)

私たちが現在注力しているのが、東武グループの共通ポイントサービス「TOBU POINT(トブポ)」の展開です。もともとは東武マーケティング株式会社(旧株式会社東武カードビジネス)が提供するクレジット利用者向けのポイントサービスでしたが、サービス拡大を見据え、2020年11月に大きくリニューアルしました。これにより「クレジットカードのポイント」から「東武グループ全体のポイントサービス」へと生まれ変わりました。 

リニューアルのタイミングで、はじめてアプリが登場したのですね。

峯田 様

はい。アプリを中心にしたポイントサービスを目指し、専用アプリをリリースしました。クレジットカードに入会しなくても、アプリをダウンロードするだけで無料かつ気軽にポイントを貯められるようになり、沿線にお住まいの多くの方にご利用いただいています。おかげさまで、リリースから約5年間でアプリのダウンロード数は120万件を突破し、当初目標を上回るペースで成長しています。

あらゆるサービスを1つのIDで
享受する「1ID化」

会員獲得が非常に順調に進んできたなかで、次なるステップとして
掲げられている「1ID化」とはどのような構想なのでしょうか?

東武鉄道株式会社
峯田 様

これまでポイント事業として成長してきましたが、今後は「TOBU POINTのID」を活用し、東武グループのあらゆるサービスをシームレスに利用できる環境を整えていきます。ECサイト「TOBU MALL(東武モール)」においても、新たな会員組織は設けず、TOBU POINTのIDとパスワードでログインできる仕様しました。 

サービスごとにIDをつくらないということですね。

峯田 様

はい。特急券のチケットレスサービス「トブチケ!」でも、ゲスト利用は可能ですが、TOBU POINT IDでログインすればポイントの付与・利用ができます。さらに直近では、東武トップツアーズがサービスをリニューアルする際、従来の独自会員基盤を廃止し、TOBU POINT基盤へ統合しました。 
東武にはこれまで全社横断の共通基盤がなかったため、新たに構築する基盤を「TOBU POINT」に一本化し、このIDを軸にサービスを展開しています。一度IDをつくっていただければグループ内で横展開しやすくなり、結果としてポイントの価値向上にもつながると考えています。 

東武鉄道株式会社
SHIFT 営業_谷岡

東武沿線は、鉄道だけでなく生活そのものと密接につながっています。そのなかでポイントアプリが果たせる役割は非常に大きいと感じています。単なるアプリ改善ではなく、“沿線価値どう向上するか”というテーマに関われたことを、私たちとしても大変意義深く感じています。 

グループ収益の最大化とデータ利活用を担う
「デジタルプラットフォーム事業部」の発足

こうしたグループ横断構想を推進するにあたり、社内体制にも変化があったそうですね。

東武鉄道株式会社
東武鉄道株式会社 デジタルプラットフォーム事業部 参事役_松野 様(以下、松野 様)

はい。2026年4月1日付で、「デジタルプラットフォーム事業部」として新たに発足しました。これまでは統括部署の一部でしたが、ポイント事業の拡大に伴い、良質なデータが集まるプラットフォームとしての役割が高まり、より本格的に推進する体制が求められました。 

新設部署の主なミッションは何でしょうか?

松野 様

最大のミッションは「グループ収益の最大化」です。従来の“統括”という立場から一歩進み、グループ各社のデータや施策を横断的に統合・推進するマーケティング基盤を担います。蓄積データを活用した各社のキャンペーンもはじまっており、今後はグループ内に散在するデータを統合し、基盤をさらに強化していきます。社内からの期待も大きく、独立事業部として確かな成果が求められています。 

順調なアプリ成長の裏にあった
葛藤と見えない課題

会員数も目標を連続達成し、体制も強化されるなど順調に見えますが
なぜ今回SHIFTにUX調査を依頼されたのでしょうか?

東武鉄道株式会社
峯田 様

おっしゃる通り、会員獲得は順調で、目標を上回る実績を出していました。しかし詳細に見ると、会員がアプリの機能を十分に活用できていない可能性があり、新機能の利用者が想定ほど伸びず、アプリ内の回遊も生まれていない状況でした。また、ユーザーアンケートによる定量評価は高いにもかかわらず、アプリストア上の評価との間にギャップも見られました。こうした“見えない課題”を客観的に整理し、次の改善につなげたいと考え、UX調査を依頼しました。 

アプリ評価に影響した要因について、当時どのように分析されていましたか?

峯田 様

はい。「1ID化」を進めるなかで、アプリの大規模リニューアルを計画していました。ただ、自分たちの主観だけで進めてしまい、結果として使いにくいものになっては意味がありません。そこでリニューアル前に客観的な調査を実施し、外部の専門家の視点で「お客様にどう見られているのか」「どこに使いづらさがあるのか」を整理する必要があると考えました。それが、SHIFTさんにUX調査を依頼した理由です。 

230ページの調査レポートが暴いた
「機能未認知」の真実。エキスパートレビュー
とユーザーテストによる徹底的な仮説検証

ご相談を受け、どのような調査を実施されたのでしょうか?

東武鉄道株式会社
SHIFT_野口

今回は、事前に立てた課題の仮説を実際のユーザー調査で検証する「仮説検証型」のアプローチを採用しました。具体的には、UXの専門家が、画面設計や導線を専門的観点から評価する「UXエキスパートレビュー」により課題仮説を抽出し、実際のユーザーを対象とした「ユーザーテスト」で検証する2段階で分析を行いました。 

東武鉄道株式会社
SHIFT_小野塚

まずは我々UXの専門家が、事前に設定したターゲットユーザーのペルソナ(今回は30〜40代の女性・主婦層など)に基づき、利用状況を想定しながらシナリオを描きます。それをベースに実際に私たちでアプリやマイページを操作しながら、SHIFT独自に定めたUX品質ガイドライン(操作性・視認性・導線設計などの評価基準)に沿って、操作上や利用上の課題を洗い出し、仮説を構築しました。 

東武鉄道株式会社
SHIFT_長谷川

次に、その仮説が実際のユーザーにとって本当に課題になっているのか検証するのが、私の担当したユーザーテストです。今回は東武沿線にお住まいの20代から60代までの15名の方を対象に、独身層、子育て中層、シニア層といった3セグメントに分け、デプスインタビュー(1対1で深掘りする定性インタビュー)とユーザビリティテストを実施しました。前半はライフスタイルやポイントの利用状況をヒアリングし、後半は実際にアプリを操作してもらいながら、特定のシナリオ(お題)を実行していただきました。 

峯田 様

我々も非常に驚ました。鉄道情報への課題が多いと思っていましたが、実際は「そもそもアプリ内に鉄道機能が存在していること自体を知らない」という人が圧倒的に多かったのです。 

機能が認知されていなかったのですね。

峯田 様

はい。ホーム画面下にアイコンを配置し、機能を自由にカスタマイズできる設計にしていましたが、そのカスタマイズ機能自体が知られていませんでした。そのため鉄道情報が奥に埋もれたままになっており、ニーズ以前の段階でつまずいていたことに気づかされました。 

「ユーザーはアプリ内で機能を探索しない」
というカスタマージャーニーの再認識

なぜそこまで機能が認知されていなかったのでしょうか?

峯田 様

今回の調査で、我々が想定していたカスタマージャーニーが実態と異なっていたことがかりました。これまでは「サービスをある程度理解した人がアプリをダウンロードする」と考え、説明を増やすよりもシンプルさを重視した設計にしていました。 

東武鉄道株式会社
SHIFT_長谷川

しかし実際には、「駅のポスターを見て何となく検索し、そのままダウンロードした」という方がほとんどでした。まず入れてみて、レジ前でポイントを貯める時だけ起動する。それがリアルな利用実態だったのです。

峯田 様

開発側としては「使っていれば他の機能も自然に見てもらえる」と思い込んでいましたが、実際は目的以外の機能は自発的に探索しないというシンプルな事実がありました。この気づきは、リニューアルにおける大きな転換点になりました。

その結果が、200ページを超えるレポートになったのですね。

峯田 様

はい、レポートを受け取った時はそのボリュームに本当に驚きました(笑)。 

SHIFT_野口

今回の200ページ超のレポートは、小野塚と私を中心に仮説検証の企画を立て、全体の分析結果を体系化したものです。もともと「分析後にリニューアルを実施する」という前提を伺っていましたので、その後のアプリUIやマイページのビジュアル改善につながる内容にすることを強く意識しました。
重要なのは課題の数ではなく、効果の大きい改善点を見極め、優先順位を明確にすることです。もちろん網羅性も大切ですが、そのなかで「どこを重点的に改善すれば効果が大きいのか」「ユーザー満足度や実際の消費行動につながるポイントはどこか」を見極め、優先順位を明確にしてお伝えすることが価値だと考えています。リニューアルのスピードを落とさず、かつ成果につながる示唆を出すことを意識してレポートをまとめました。 

SHIFT_長谷川

我々からの「渾身のラブレター」です(笑)。15名という十分な人数のインタビューを行い、エキスパートレビューでの仮説も多岐にわたっていたため、必然的にボリュームが大きくなりました。ただ、課題が多いというより、「改善すればもっとくなる余地が多い」という前向きなメッセージとしてお伝えしました。 

定量評価で明らかになった
沿線住民からの高いロイヤリティと期待値

課題が明らかになる一方で、ポジティブな発見もあったのでしょうか?

東武鉄道株式会社
峯田 様

はい。最も勇気づけられたのは、ユーザーの定量評価です。インタビューの最後に「このアプリを使い続けたいか」を10段階で伺ったところ、「8」や「9」といった高いスコアが多く寄せられました。 

SHIFT_長谷川

他社の同種アプリと比べても高水準でした。東武沿線の方々にとって東武グループは生活インフラであり、「もっと便利にしてほしい」という期待の高さが、この評価に表れていると感じました。 

峯田 様

改善点は多く見つかりましたが、サービスそのものへの期待や信頼は非常に高い。ポイントサービスの根幹は評価されていると再確認でき、改修に向けた大きな後押しになりました。 

ポイントを軸に購買行動を促進し
東武沿線全体を盛り上げる未来のビジョン

調査結果を受け、今後どのような改善を進めていきますか?

峯田 様

まずは、ユーザー接点となるツールの役割を再定義します。これまで「マイページ」「サービスサイト」「アプリ」という3つのチャネルを展開してきましたが、実際のユーザー行動とは必ずしも合致しておらず、利用実態にも差がありました。ユーザーにとってはチャネルの違いを強く意識しているわけではなく、分かりづらさにつながっている側面もあります。そのため今後は、それぞれの定義を見直し、役割を再分類していきます。分散している位置づけを整理し、シンプルで直感的な構造へ再構築することで、誰にとっても迷わず使える体験を目指します。現在はその具体策の設計を進めています。 

最後にTOBU POINTとして描く今後のビジョンをお聞かせください。

峯田 様

最終的な目標は、ポイントを貯めやすく・使いやすい環境を整え、実際の購買行動や沿線での回遊を促進することです。例えば、アプリ内でゲームやスタンプラリーといったエンタメ要素を取り入れ、電車待ちの数分でも自然とアプリを開きたくなる仕掛けを検討しています。TOBU POINTアプリの機能を活用し、お客様の購買行動にポジティブな変化を生み出すことで、加盟店(東武グループ)の売上拡大に寄与できるよう、今後も取り組みを促進してまいります。すでに本アプリはポイントサービスの強固な基盤へと成長しています。今後はSHIFTさんとのパートナーシップを深めながらUXをさらに磨き込み、データ基盤を活用したマーケティングを推進することで、東武沿線のまちづくりに貢献し、グループ全体の価値最大化を目指していきます。 

東武鉄道株式会社

※掲載内容は2026年4月取材時のものです。

東武鉄道株式会社

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